マイカサールカプセルの効果と副作用【痛み止め・鎮痛剤】

マイカサール(一般名:メフェナム酸)は1966年から発売されている「ポンタール」というお薬のジェネリック医薬品になります。非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)と呼ばれ、炎症を抑える事で熱を下げたり痛みを抑えたりする作用を持ちます。

NSAIDsにはたくさんの種類があります。どれも大きな違いはありませんが、細かい特徴や作用には違いがあり、医師は痛みの程度や性状に応じて、その患者さんに一番合いそうな痛み止めを処方しています。

NSAIDsの中でマイカサールはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、マイカサールの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

(マイカサールは2016年に発売中止となっています)

 

1.マイカサールの特徴

まずはマイカサールの特徴を紹介します。

マイカサールは、解熱鎮痛作用がまずまず強く、またジェネリック医薬品であるため薬価が安いという特徴があります。

マイカサールはNSAIDsに属します。NSAIDsとは「非ステロイド性消炎鎮痛剤」の事で、ステロイド作用を持たない炎症を抑えるお薬の事です。炎症が抑えられると熱を下げたり、痛みを抑えたりといった効果が期待できるため、臨床では主に熱さまし(解熱剤)・痛み止め(鎮痛剤)として用いられています。

マイカサールはNSAIDsの中でも「アントラニル系」という種類に属します。アントラニル系は、同種のNSAIDsの中で鎮痛作用はやや強めの部類に入ります。

剤型はカプセルしかありません。カプセルは錠剤と比べると剤型が大きく飲み込みにくいというデメリットがあります。そのためカプセルが飲めないような方には向きません(小さいお子様やお年寄りの方など)。

副作用としては、長期使用による胃腸障害に注意しなければいけません。これはマイカサールに限らずほとんどのNSAIDsに言えることですが、NSAIDsは胃腸を痛めてしまうリスクのあるお薬になります。またNSAIDsは喘息を誘発しやすくすることが知られており、喘息の方にはできる限り用いるべきではありません。

以上からマイカサールの特徴として次のような点が挙げられます。

【マイカサールの特徴】

・痛みを抑える作用はやや強め
・カプセルしか剤型がない
・副作用の胃腸障害に注意(他のNSAIDsと同様)
・喘息には使えない(他のNSAIDsと同様)
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

 

2.マイカサールはどのような疾患に用いるのか

マイカサールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
1.手術後及び外傷後の炎症及び腫脹の緩解

2.下記疾患の消炎、鎮痛、解熱
変形性関節症、腰痛症、症候性神経痛、頭痛(他剤が無効な場合)、副鼻腔炎、月経痛、分娩後疼痛、歯痛

3.下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

マイカサールは解熱鎮痛剤であり、炎症を抑える事で熱を下げたり痛みを和らげる作用があります。

そのため用いる疾患は、発熱を来すようなもの、痛みを来すようなものになります。

難しい病名が書かれていますが、大きな認識としては「痛みや熱などが認められる疾患に対して、その症状の緩和に用いる」という認識で良いでしょう。

しかしマイカサールを始めとするNSAIDsは根本を治す治療ではなく、あくまでも対症療法に過ぎないことを忘れてはいけません。

対症療法とは「症状だけを抑えている治療法」の事です。あくまでも表面的な症状を感じにくくさせているだけの治療法で根本を治している治療ではない事を忘れてはいけません。

例えば急性上気道炎(いわゆる風邪)の発熱・痛みに対してマイカサールを投与すれば、確かに熱は下がるし、痛みも軽減します。

しかしこれは風邪の原因であるウイルスをやっつけているわけではなく、あくまでも発熱や発痛を起こしにくくしているだけに過ぎません。

対症療法が悪い治療法だということはありませんが、対症療法だけで終わってしまうのは良い治療とは言えません。対症療法に加えて、根本を治すような治療も併用することが大切です。

例えば先ほどの急性上気道炎であれば、マイカサールを使用しつつも、

  • 栄養をしっかり取る
  • 十分に休養する
  • マスクで感染予防する

など、ウイルスをやっつけるための治療法も併せて行う必要があります。

マイカサールはジェネリック医薬品であるため、有効率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のポンタールに関しては、「やや有効以上」の割合が、

  • 手術後の痛みに対しては88.1%
  • 外傷痛に対しては88.7%
  • 関節痛に対しては76.6%
  • 腰痛に対しては80.8%
  • 神経痛に対しては85.3%
  • 頭痛に対しては72.5%
  • 鼻・副鼻腔炎に対しては86.8%
  • 月経痛に対しては81.3%
  • 分娩後疼痛に対しては78.8%
  • 歯痛に対しては88.9%

と報告されており、マイカサールもおおむね同程度だと考えられます。

 

3.マイカサールにはどのような作用があるのか

マイカサールは「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」という種類に属しますが、NSAIDsの作用は、消炎(炎症を抑える)事によって解熱(熱を下げる)と鎮痛(痛みを抑える)ことになります。

マイカサールも他のNSAIDsと同様に中枢性の鎮痛作用と末梢性の消炎作用を有しています。その作用機序について説明します。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。

マイカサールは、炎症の原因が何であれ、炎症そのものを抑える作用を持ちます。つまり、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるという事です。

具体的にどのように作用するのかというと、マイカサールなどのNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質のはたらきをブロックするはたらきがあります。

COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。

プロスタグランジンは炎症や痛み、発熱を誘発する物質です。そのため、マイカサールがCOXをブロックすると炎症や痛み、発熱が生じにくくなるのです。

 

4.マイカサールの副作用

マイカサールにはどんな副作用があるのでしょうか。またどの頻度はどのくらいなのでしょうか。

マイカサールはジェネリック医薬品であるため、副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のポンタールにおいては副作用発生率は6.59%と報告されており、マイカサールも同程度だと考えられます。

生じうる副作用としては、

  • 胃腸障害
  • 吐き気
  • 下痢・軟便
  • 発疹

などが報告されています。

マイカサールをはじめとしたNSAIDsには共通する副作用があります。

もっとも注意すべきなのが「胃腸系の障害」です。これはNSAIDsがプロスタグランジンの生成を抑制するために生じます。

プロスタグランジンは、実は胃粘膜を保護するはたらきを持っているため、NSAIDsによってこれが抑制されると胃腸が荒れやすくなってしまうのです。

胃痛や悪心などをはじめとして、胃炎や胃潰瘍・大腸炎などになってしまうこともあります。このため、NSAIDsは漫然と長期間使用し続けないことが推奨されています。

また、腸管のバランスを崩すことで下痢や軟便などが生じることもあります。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • アナフィラキシーショック
  • 溶血性貧血、無顆粒球症
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)
  • 急性腎不全
  • ネフローゼ症候群
  • 間質性腎炎
  • 劇症肝炎

などが記載されています。重篤な副作用は稀ではあるものの絶対に生じないわけではありません。マイカサールの服薬がやむを得ず長期にわたっている方は、定期的に血液検査にて血球異常や肝機能・腎機能などのチェックを行う必要があります。

またマイカサールは次のような患者さんには投与する事が出来ません(禁忌)

  • 消化性潰瘍のある方(胃潰瘍・十二指腸潰瘍などをより悪化させる)
  • 重篤な血液の異常のある方(血液異常を更に悪化させる)
  • 重篤な肝障害のある方(肝障害をより悪化させる)
  • 重篤な腎障害のある方(腎障害をより悪化させる)
  • 重篤な心機能不全のある方(心臓の仕事量を増やし心不全を更に悪化させる)
  • マイカサールに対して過敏症の既往歴のある方
  • アスピリン喘息またはその既往歴のある方(喘息発作を誘発する)
  • 重篤な高血圧症の方(浮腫や血圧上昇を更に悪化させる)
  • 過去にマイカサールにより下痢を起こした方(下痢の再発の可能性が高い)
  • 妊娠末期の女性(胎児の動脈管を収縮させてしまう可能性がある)

また、NSAIDsは喘息を誘発する危険があるため、できる限り喘息の患者さんには投与しない方が良いでしょう。

 

5.マイカサールの用法・用量と剤形

マイカサールは次の剤型が発売されています。

マイカサールカプセル 250mg

マイカサールの使い方は適応疾患によって異なります。

1.手術後及び外傷後の炎症及び腫脹の緩解
2.下記疾患の消炎、鎮痛、解熱
変形性関節症、腰痛症、症候性神経痛、頭痛(他剤が無効な場合)、副鼻腔炎、月経痛、分娩後疼痛、歯痛

の場合は、

通常成人1回500mg、その後6時間毎に1回250mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

となっています。また、

3.下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

の場合は、

通常成人には、1回500mgを頓用する。なお年齢、症状により適宜増減する。ただし、原則1日2回までとし、1日最大1500mgを限度とすること。

とされています。

また、いずれの場合も

空腹時の投与は避けさせることが 望ましい

と注意されています。これは空腹時に投与すると、胃腸へのダメージが更に生じやすくなるためです。

 

6.マイカサールが向いている人は?

マイカサールはどのような方に向いているお薬なのでしょうか。

マイカサールの特徴をおさらいすると、

・痛みを抑える作用はやや強め
・カプセルしか剤型がない
・副作用の胃腸障害に注意(他のNSAIDsと同様)
・喘息には使えない(他のNSAIDsと同様)
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

といった特徴がありました。

基本的にNSAIDsは、どれも大きな差はないため、処方する医師が使い慣れているものを処方されることも多々あります。

マイカサールは、

  • 痛みを抑える作用が強めである事
  • ジェネリック医薬品であり薬価が安い事

がメリットとして挙げられます。

そのためやや強めの効果が欲しい方、経済的に負担少なく治療をしたい方には向いているお薬になります。

薬価は先発品の「ポンタール」の約1/3程度と非常に安価に設定されており、経済的には助かります。

しかし、

  • カプセル剤しかない事
  • 効果が強めである代わりに副作用もやや多め

といったデメリットもあります。

カプセルは飲みにくい剤型であるため、あまりメジャーな剤型ではありません。特に小さなお子様やお年寄りの方からは敬遠される傾向があります。

上記のメリットとデメリットを理解した上で主治医と相談してマイカサールを使用するかどうかは判断しましょう。

 

7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?

マイカサールは「ポンタール」というお薬のジェネリック医薬品になります。

ジェネリックは薬価も安く、患者さんにとってメリットが多いように見えます。

しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。

ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。

結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。

ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。

発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、

ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。

しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。

これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。

では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。

先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。

しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。

先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。

つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。