ナボールSRカプセルの効果と副作用【痛み止め・鎮痛剤】

ナボールSRカプセル(一般名:ジクロフェナクナトリウム)は1990年から発売されているお薬です。非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)と呼ばれ、炎症を抑える事で熱を下げたり痛みを抑えたりする作用を持ちます。

NSAIDsにはたくさんの種類があります。どれも大きな違いはありませんが、細かい特徴や作用には違いがあり、医師は痛みの程度や性状に応じて、その患者さんに一番合いそうな痛み止めを処方しています。

NSAIDsの中でナボールSRカプセルはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、ナボールSRカプセルの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

 

1.ナボールSRカプセルの特徴

まずはナボールSRカプセルの特徴を紹介します。

ナボールSRカプセルは、強力な解熱(熱さまし)・鎮痛(痛み止め)作用を持ちます。作用が強い分副作用も生じやすいのですが、SR製剤(徐放製剤)にすることで副作用を軽減させるという工夫がなされています。

ナボールSRカプセルはNSAIDsに属します。NSAIDsとは「非ステロイド性消炎鎮痛剤」の事で、ステロイド作用を持たない炎症を抑えるお薬の事です。炎症が抑えられると熱を下げたり、痛みを抑えたりといった効果が期待できるため、臨床では主に熱さまし(解熱剤)・痛み止め(鎮痛剤)として用いられています。

ナボールSRカプセルは、「ボルタレン」という強力な作用を持つことで有名なNSAIDsと同じ成分を持つお薬になります。従ってナボールもボルタレンと同等の強力な作用にあります。

NSAIDsに属するお薬はたくさんありますが、その中でもナボールの効果は強いと言えます。もちろんお薬の効きには個人差がありますが、一般的にはNSAIDsの中でもトップクラスの解熱鎮痛作用を持ちます。

またナボールは「SR製剤(徐放製剤)」であることも大きな特徴です。徐放製剤というのは、ゆっくりと身体に吸収されるように工夫された製剤の事です。ゆっくり吸収されるため即効性はなくなるものの、穏やかに長時間効き、また急激な作用がないため副作用も軽減されます。

具体的に見ると、普通の製剤である「ボルタレン錠」と徐放製剤である「ナボールSRカプセル」の最高血中濃度到達時間(血中濃度が最大になるまでにかかる時間)を比較すると、

  • ボルタレン錠:2.72時間
  • ナボールSRカプセル:7時間

となっており、ナボールSRカプセルはゆっくり効く事が分かると思います。

しかしゆっくり効くSRカプセルとは言え、副作用が生じないわけではありません。元々ナボール中に含まれるジクロフェナクは、作用が強力である反面副作用も強力な成分になり、ナボールSRカプセルも副作用には一定の注意が必要です。

特にNSAIDsでしばしば問題となる胃腸障害(胃炎・胃潰瘍など)の発生にはナボールも注意すべきであり、使用はできるだけ短期間に留める必要があります。

以上からナボールSRカプセルの特徴として次のような点が挙げられます。

【ナボールSRカプセルの特徴】

・解熱・鎮痛作用は強力
・速放製剤(ボルタレン錠)と比べ、即効性はないが持続力に優れる
・速放製剤(ボルタレン錠)と比べれば副作用は軽減されている

 

2.ナボールSRカプセルはどのような疾患に用いるのか

ナボールSRカプセルはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
下記の疾患並びに症状の消炎・鎮痛

関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群

ナボールSRカプセルは解熱鎮痛剤であり、炎症を抑える事で熱を下げたり痛みを和らげる作用があります。

そのため用いる疾患は、発熱を来すようなもの、痛みを来すようなものになります。しかしナボールSRカプセルはゆっくり長く効く徐放製剤であるため、急激な発熱・疼痛に対してというよりは慢性的な発熱・疼痛に対して用いられます。

実際は慢性的な痛みを生じる疾患は多いですが、慢性的に発熱する疾患は多くはないため、適応疾患は慢性的に痛みが生じる疾患となっています。

各種疾患に対するナボールSRカプセルの有効率(中等度改善以上)は、

  • 関節リウマチに対する有効率は32.9%
  • 変形性関節症に対する有効率は72.0%
  • 腰痛症に対する有効率は80.0%
  • 肩関節周囲炎に対する有効率は58.4%
  • 頸肩腕症候群に対する有効率は63.0%

と報告されています。

ナボールSRカプセルを始めとするNSAIDsを使用する際は、これらは根本を治す治療ではなくあくまでも対症療法に過ぎないことを忘れてはいけません。

対症療法とは「症状だけを抑えている治療法」の事です。あくまでも表面的な症状を感じにくくさせているだけの治療法で根本を治している治療ではない事を忘れてはいけません。

例えば腰痛症の痛みに対してナボールSRカプセルを投与すれば、確かに痛みは軽減します。

しかしこれは腰痛の原因である骨の異常を治しているわけではなく、あくまでも疼痛を起こしにくくしているだけに過ぎません。

対症療法が悪い治療法だということはありませんが、対症療法だけで終わってしまうのは良い治療とは言えません。対症療法に加えて、根本を治すような治療も併用することが大切です。

例えば腰痛症であれば、ナボールSRカプセルを使用しつつも、

  • 適度な運動をして骨や筋肉を強くする
  • 栄養をしっかり取る事で身体を丈夫にする
  • 安静時や運動時の体位に気を付けることで腰への負担を抑える

などといった、根本を改善させるような治療法も併せて行う必要があります。

 

3.ナボールSRカプセルにはどのような作用があるのか

ナボールSRカプセルは「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」という種類に属しますが、NSAIDsの作用は、消炎(炎症を抑える)事によって解熱(熱を下げる)と鎮痛(痛みを抑える)ことになります。

ナボールSRカプセルも他のNSAIDsと同様に解熱作用と鎮痛作用を有しています。その作用機序について説明します。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。

ナボールSRカプセルは炎症の原因が何であれ、炎症そのものを抑える作用を持ちます。つまり、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるという事です。

具体的にどのように作用するのかというと、ナボールSRカプセルなどのNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質のはたらきをブロックするはたらきがあります。

COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。

プロスタグランジンは炎症や痛み、発熱を誘発する物質です。そのため、ナボールSRカプセルがCOXをブロックすると炎症や痛み、発熱が生じにくくなるというわけです。

ナボールSRカプセルはCOXをブロックする作用が強力であり、そのために強い解熱・鎮痛作用を有しています。

 

4.ナボールSRカプセルの副作用

ナボールSRカプセルにはどんな副作用があるのでしょうか。またどの頻度はどのくらいなのでしょうか。

ナボールSRカプセルの副作用発生率は3.26%と報告されています。徐放製剤であるナボールSRカプセルは、同成分の速放製剤の「ボルタレン」の副作用発生率(10.85%)と比べれば副作用の頻度は少なくなっています。

生じうる副作用としては、

  • 消化器症状(胃痛、胃部不快感、腹痛など)
  • 浮腫
  • 搔痒感(かゆみ)、発疹
  • 頭痛
  • 眠気
  • 肝機能障害(AST、ALTの上昇)

などが報告されています。

ナボールSRカプセルをはじめとしたNSAIDsでもっとも注意すべきなのが「胃腸系の副作用」です。これはNSAIDsがプロスタグランジンの生成を抑制するために生じます。

プロスタグランジンは炎症を起こす作用とは別に、実は胃粘膜を保護するはたらきを持っています。NSAIDsによってこれが抑制されると胃腸が荒れやすくなってしまうのです。

胃痛や悪心などをはじめ、ひどい場合は胃炎や胃潰瘍・大腸炎などになってしまうこともあります。このため、NSAIDsは漫然と長期間使用し続けないことが推奨されています。

またナボールSRカプセルは調査によって

  • 男性(2.46%)よりも女性(4.10%)で副作用が生じやすい

ことが明らかになっています。女性で長期間・高用量のナボールを使用している方はとりわけ副作用に注意しなければいけません。

重篤な副作用としては、

  • ショック、アナフィラキシー
  • 出血性ショック又は穿孔を伴う消化管潰瘍
  • 再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)
  • 紅皮症(剥脱性皮膚炎)
  • 急性腎不全(間質性腎炎、腎乳頭壊死等)、ネフローゼ症候群
  • 重症喘息発作(アスピリン喘息)
  • 間質性肺炎
  • うっ血性心不全、心筋梗塞
  • 無菌性髄膜炎
  • 重篤な肝障害(劇症肝炎、広範な肝壊死等)
  • 急性脳症
  • 横紋筋融解症
  • 脳血管障害

が報告されています。これらは頻度は稀ではあるものの、絶対に生じないわけではありません。特に使用が長期に渡る場合はとりわけ注意が必要です。

またナボールSRカプセルは次のような患者さんには投与する事が出来ません(禁忌)。

  • 消化性潰瘍のある方(胃潰瘍・十二指腸潰瘍などをより悪化させる)
  • 重篤な血液の異常のある方(血液異常を更に悪化させる)
  • 重篤な肝障害のある方(肝障害をより悪化させる)
  • 重篤な腎障害のある方(腎障害をより悪化させる)
  • 重篤な高血圧症の方(浮腫や血圧上昇を更に悪化させる)
  • 重篤な心機能不全のある方(心臓の仕事量を増やし心不全を更に悪化させる)
  • ナボールSRカプセルに対して過敏症の既往歴のある方
  • アスピリン喘息またはその既往歴のある方(喘息発作を誘発する)
  • 妊娠または妊娠している可能性のある婦人(胎児の動脈管を収縮させてしまう可能性がある)
  • トリレテンを投与中の方(併用で急性腎不全が現れる事がある)

またNSAIDsは喘息を誘発する危険があるため、できる限り喘息の患者さんには投与しない方が良いでしょう。

 

5.ナボールSRカプセルの用法・用量と剤形

ナボールSRカプセルは次の剤型が発売されています。

ナボールSRカプセル錠 37.5mg

ナボールSRカプセルの「SR」というのは「Slow Release」の略で、これは「ゆっくり放出される」という意味になります。

ナボールSRカプセルは剤型に工夫がされており、有効成分がゆっくりと身体に吸収されることによって、穏やかに長い時間効く剤型になっています。

具体的にみるとナボールSRカプセルは、「速溶部(すぐに吸収される部位)」と「徐溶部(ゆっくり吸収される部位)」に分かれており、それぞれ

  • 速溶部:11.25mg
  • 徐溶部:26.25mg

のジクロフェナクナトリウム(有効成分)が含有されています。

この徐溶部のジクロフェナクがゆっくり効く事で、副作用の軽減、作用時間の長期化を実現しています。

ナボールSRカプセルの使い方は、

 

通常、成人には1回37.5mgを1日2回食後に経口投与する。

 

となっています。

 

6.ナボールSRカプセルが向いている人は?

ナボールSRカプセルはどのような方に向いているお薬なのでしょうか。

ナボールSRカプセルの特徴をおさらいすると、

・解熱・鎮痛作用は強力
・速放製剤(ボルタレン錠)と比べ、即効性はないが持続力に優れる
・速放製剤(ボルタレン錠)と比べれば副作用は軽減されている

といった特徴がありました。

基本的にNSAIDsは、どれも大きな差はないため、処方する医師が使い慣れているものを処方されることも多々あります。

ナボールSRカプセルのメリットは、鎮痛(痛み止め)の作用が強力である事に尽きます。またSR製剤にすることで作用は強力でありながら副作用の程度が軽減されている点も利点になります。

一方でデメリットは、SR製剤であり即効性は期待できないという点です。

そのため、「今ある熱を急いで下げたい」「痛みを今すぐ抑えたい」という緊急的な使用には向きません。

「毎日の痛みを定期的な副作用で軽減させたい」といった、ゆっくりとした使い方が基本担います。

しかし、漫然と長期間使用してしまうと、いくらSR製剤と言えども副作用が生じてしまう可能性はあります。定期的にお薬の必要量を再確認し、漫然と続けないように注意が必要です。