ナフトピジルの効果と副作用【前立腺肥大症治療薬】

ナフトピジルは、1999年から発売されている「フリバス」というお薬のジェネリック医薬品になります。

ジェネリック医薬品とは、先発品(フリバス)の特許が切れた後に他社から発売された同じ成分からなるお薬の事です。お薬の開発・研究費がかかっていない分だけ、先発品よりも薬価が安くなっているというメリットがあります。

ナフトピジルは尿道を広げることで排尿障害(尿が出にくくなる症状)を改善させるお薬です。特に前立腺の肥大によって尿道が押しつぶされてしまい、排尿障害が認められる場合に用いられています。

排尿障害治療薬にもいくつかの種類がありますが、その作用や特徴はそれぞれ違いがあります。

その中でナフトピジルはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ここではナフトピジルの特徴や効果・副作用を紹介させて頂きます。

 

1.ナフトピジルの特徴

まずはナフトピジルというお薬の総合的な特徴を簡単に紹介します。

ナフトピジルは排尿障害の治療薬ですが、排尿障害(尿が出にくくなる症状)を改善させる作用に加えて、蓄尿障害(尿を溜めておけず、頻回に排尿するようになる症状)に対しての効果も期待できるという特徴があります。

ナフトピジルをはじめとする排尿障害治療薬は、主に前立腺肥大症に伴う排尿障害に用いられます。

前立腺肥大症は前立腺が大きくなってしまう疾患です。前立腺は膀胱の下部にあり、尿道を囲むように位置しています。そのため、前立腺が肥大してしまうと尿道が圧迫され、尿が出にくくなってしまうのです。

ナフトピジルは前立腺と尿道の筋肉に存在するα1A受容体という部位をブロックする作用があります。これにより前立腺と尿道の筋肉を緩み、尿道が広がります。前立腺によって圧迫されていた尿道が広がると、尿が出やすくなるというわけです。

ここまでは他の排尿障害治療薬と同じなのですが、ナフトピジルはこの作用に加えて畜尿障害を改善させる作用も有しています。

ナフトピジルは、膀胱に存在するα1D受容体をブロックする作用もあります。α1D受容体が刺激されると膀胱は収縮して排尿が促されます。そのため過度にα1D受容体が刺激されてしまうと頻尿となってしまいます。

ナフトピジルはα1D受容体をブロックする事で膀胱の収縮を起こしにくくさせます。これにより膀胱内に尿が溜まりやすくなり、頻尿を改善できるという効果も期待できるのです。

前立腺肥大症は高齢の男性に多い疾患ですが、ナフトピジルはOD錠(口腔内崩壊錠)もある事も特徴です。OD錠とは、口の中で溶ける剤型の事で、水なしでも服用する事が出来ます。

高齢者のような飲み込む力(嚥下能)が弱くなっている方は、普通錠よりもOD錠の方が服用しやすいため、OD錠はこのような方々でも服用しやすい剤型です。

作用時間も長く、1日1回の服用で十分な効果が得られるのも利点です。

更にナフトピジルはジェネリック医薬品ですので、先発品の「フリバス」に比べて薬価が安いというメリットもあります。

以上からナフトピジルの特徴として以下のような点が挙げられます。

【ナフトピジルの特徴】

・膀胱・前立腺に存在するα1A受容体をブロックし、排尿障害(尿が出にくくなる)を改善させる
・膀胱に存在するα1D受容体をブロックし、蓄尿障害(尿を溜めておけず頻尿になる)も改善させる
・作用時間が長く、1日1回の服用で良い
・OD錠もあるため、嚥下能の低下した高齢者でも使いやすい
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

 

2.ナフトピジルはどのような疾患に用いるのか

ナフトピジルはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

前立腺肥大症に伴う排尿障害

前立腺肥大症とは、その名の通り前立腺が肥大する疾患です。前立腺は前立腺液を作る臓器で、これは精子の一部となる液です。男性にしかない臓器であるため、前立腺肥大症は男性特有の疾患になります。

なぜ前立腺が肥大するのかははっきりとは分かっていませんが、加齢や高血圧、高脂血症、遺伝などが関係すると言われています。特に加齢の影響は大きく、高齢者では高い確率で前立腺肥大症が認められます。

前立腺は膀胱の下部にある尿道を囲むようにして存在しています。そのため、前立腺が肥大すると尿道が圧迫され尿が出にくくなってしまいます。

ナフトピジルは前立腺肥大症によって生じた排尿障害(尿が出にくくなる状態)に対して効果があるお薬だという事です。

ではナフトピジルは前立腺肥大症に伴う排尿障害に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

ナフトピジルはジェネリック医薬品であるため、有効性に対する詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「フリバス」では行われており、その調査結果が参考になります。

フリバスを3カ月以上、前立腺肥大症に伴う排尿障害を有する患者さんに用いた調査では、フリバスの改善率は56.1%と報告されています。

同じ主成分からなるナフトピジルの有効率もこれと同程度であると考えられます。

 

3.ナフトピジルにはどのような作用があるのか

ナフトピジルは主に前立腺肥大症に伴う排尿障害(尿が出にくい症状)に対して用いられるナフトピジルですが、具体的にはどのような作用機序を有しているのでしょうか。

ナフトピジルの作用機序について紹介します。

 

Ⅰ.排尿障害を改善させる

ナフトピジルは前立腺や尿道の平滑筋という筋肉に存在するα(アドレナリン)1A受容体をブロックする作用を持ちます。

α1A受容体がブロックされると、前立腺・尿道の平滑筋は弛緩する(緩む)事が知られています。そして尿道の筋肉が緩めば尿道は広がりやすくなります。これがナフトピジルの主な作用になります。

これによって、尿の出にくさ、排尿時痛、残尿感などの前立腺肥大症に伴う排尿障害の各症状の改善が期待できます。

 

Ⅱ.畜尿障害を改善させる

またナフトピジルはα1A受容体だけでなく、α1D受容体をブロックするはたらきも持っています。

α1D受容体が刺激されると膀胱は収縮して排尿が促されます。ナフトピジルはこれをブロックする事により膀胱の収縮を起こしにくくさせます。これにより膀胱内に尿を多く溜められるようになります。

膀胱に少し尿が溜まっただけでα1D受容体が刺激されて頻尿になってしまうような方にとって、ナフトピジルのα1D受容体をブロックする作用は、頻尿を抑えてくれる作用になるのです。

そのためナフトピジルは蓄尿障害を伴う前立腺肥大症にも良い適応となります。

ちなみにα1受容体は、前立腺・尿道以外の平滑筋にも存在しています。例えば血管の平滑筋にも存在しており、ここにも作用してしまうと血管が拡張してしまい血圧が下がってしまいます。

ナフトピジルは前立腺・尿道の平滑筋に選択的に作用するように作られており、血管などその他の部位の平滑筋にはあまり作用しません。そのため、時には血圧低下などの副作用が起こりますが、その頻度は多くはありません。

 

4.ナフトピジルの副作用

ナフトピジルにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

ナフトピジルはジェネリック医薬品であるため、副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「フリバス」では行われており、副作用発生率は3.28%と報告されています。

同じ主成分からなるナフトピジルの副作用発生率もこれと同程度であると考えられます。

ナフトピジルをはじめとしたα1受容体遮断薬は安全性は高く、副作用の頻度は全体的に少なめです。

生じうる副作用としては、

  • めまい、ふらつき
  • 立ちくらみ、
  • 低血圧
  • 胃部不快感

などが報告されています。

また頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • 肝機能障害、黄疸
  • 失神、意識消失

が報告されています。

先ほど説明した通り、ナフトピジルはα(アドレナリン)1受容体をブロックするお薬です。前立腺・尿道の平滑筋に存在するα1受容体に選択的に作用するように作られてはいますが、時に他の部位に存在するα1受容体に作用してしまう事があります。

血管の平滑筋に存在するα1受容体に作用してしまうと血管が拡張し、血圧低下、めまい、ふらつき、立ちくらみなどが生じることがあります。ひどい場合だと稀に失神や意識障害などに至る事もないとは言えません。

また胃部不快感などの消化器症状の報告もあります。

ナフトピジルは主に肝臓で代謝されます。そのため、肝障害が生じることがあり、それに伴い血液検査で肝臓系酵素の上昇が認められることがあります。AST、ALTなどの肝臓系酵素の上昇が生じることもあることが報告されており、肝機能障害に伴う黄疸が出ることも報告されています。

特に肝障害が元々ある方は特に注意しなければいけませんので、事前に主治医に自分の病気についてしっかりと伝えておきましょう。

 

5.ナフトピジルの用法・用量と剤形

ナフトピジルは次の剤型が発売されています。

ナフトピジル錠 25mg
ナフトピジル錠 50mg
ナフトピジル錠 75mg

ナフトピジルOD錠 25mg
ナフトピジルOD錠 50mg
ナフトピジルOD錠 75mg

ナフトピジルの使い方は、

通常成人には1回1回25mgより投与を始め、効果が不十分な場合に1~2週間の間隔をおいて50~75mgに漸増し、1日1回食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は75mgまでとする。

と書かれています。

ナフトピジルは半減期が約10~20時間ほどのお薬です。半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、そのお薬の作用時間の一つの目安になる数値です。半減期には幅がありますが、おおよそ1日持つと考えられており1日1回の服用とされています。

またナフトピジルは食事の影響をほとんど受けないと報告されています。添付文書上は食後の服用となっていますが、空腹時(例えば寝る前など)に服薬しても、同様の効果が得られるという事になります。

 

6.ナフトピジルが向いている人は?

以上からナフトピジルが向いている人はどんな方なのかを考えてみましょう。

ナフトピジルの特徴をおさらいすると、

【ナフトピジルの特徴】

・膀胱・前立腺に存在するα1A受容体をブロックし、排尿障害(尿が出にくくなる)を改善させる
・膀胱に存在するα1D受容体をブロックし、蓄尿障害(尿を溜めておけず頻尿になる)も改善させる
・作用時間が長く、1日1回の服用で良い
・OD錠もあるため、嚥下能の低下した高齢者でも使いやすい
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

などがありました。

ここから、

・排尿障害だけでなく、蓄尿障害も認める方
・OD錠(口腔内崩壊錠)が良いという方
・1日に何回も服薬したくない方
・なるべく治療費を抑えたい方

などにとって向いているお薬となるでしょう。