ネオマレルミン(一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)は1964年から発売されている「ポララミン」というお薬のジェネリック医薬品になります。抗アレルギー薬と呼ばれ、アレルギーによって生じる諸症状を抑え、花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられています。
ネオマレルミンは主にヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。
抗アレルギー薬の中でネオマレルミンはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。
ネオマレルミンの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。
目次
1.ネオマレルミンの特徴
まずはネオマレルミンの全体的な特徴についてみてみましょう。
ネオマレルミンはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。古いお薬で副作用が多いため、現在ではあまり用いるべきではありませんが、いくつかの理由で現在でもまずまず処方されています。
ヒスタミンはアレルギーを誘発する原因となる物質(ケミカルメディエーター)です。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を改善させることができます。それを狙っているのがネオマレルミンをはじめとした「抗ヒスタミン薬」になります。
抗ヒスタミン薬には古い第1世代抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。
この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位への作用が少なく、これも副作用を低下させる理由となっています。
そのため、現在では副作用が少ない第2世代から使用するのが一般的です。
ネオマレルミンはというと第1世代の抗ヒスタミン薬になります。今となっては古い抗アレルギー薬になるため、現在では最初から用いられることはほとんどありません。
しかし現状ではネオマレルミンが処方される頻度はまずまずあります。これは何故でしょうか。
理由は2つあります。
1つ目はネオマレルミンは妊婦さんに対して比較的安全に使えるからです。ネオマレルミンが妊婦さんに対して確実に安全だと言えるわけではないのですが、古いお薬であるため妊婦さんに対する使用実績も多く、他の抗ヒスタミン薬と比べると妊婦さんに安全に使いやすいのです。
そのため、妊婦さんに抗ヒスタミン薬を処方しなくてはいけないときは、ネオマレルミンは使いやすいお薬になります。
2つ目は、ネオマレルミンをはじめとした第1世代は「感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽」に保険適応を持っているからです。ちなみに2世代はこの適応を持っていません。内科で最も頻度の多い疾患は感冒(いわゆる風邪)ですが、風邪の鼻水症状に対してネオマレルミンは保険的に処方できますが、第2世代は処方できないのです。
作用機序的には第2世代でも良いのですが、このような保険適応上の問題から風邪に伴う鼻水症状にはネオマレルミンのような第1世代が処方されやすい側面があります。
ネオマレルミンは副作用としては「眠気」と「抗コリン症状」に気を付ける必要があります。
ヒスタミンは覚醒に関わっている物質であるため、ヒスタミンをブロックすると眠くなってしまうことがあります。そのため抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあり、中でも第1世代抗ヒスタミン薬は眠気が起きやすいお薬になります。
またヒスタミン受容体はアセチルコリン受容体と類似した構造をしているため、抗ヒスタミン薬はアセチルコリン受容体のはたらきをブロックしてしまう事があり、これにより抗コリン症状が生じる事があります。
代表的な抗コリン症状としては、口渇(口の渇き)、便秘、吐き気、尿閉(尿が出にくくなる)などがあります。
以上から、ネオマレルミンの特徴として次のようなことが挙げられます。
【ネオマレルミンの特徴】
・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・古い第1世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が多め
・妊婦さんには比較的安全に使える抗ヒスタミン薬である
・眠気、抗コリン症状(口渇、便秘、吐き気など)に注意
2.ネオマレルミンはどのような疾患に用いるのか
ネオマレルミンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
(ネオマレルミン錠)
蕁麻疹、血管運動性浮腫、枯草熱、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症、薬疹)、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽(ネオマレルミンTR錠)
感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、枯草熱、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症)、じん麻疹
難しい病名がたくさん書かれていますが、基本的にはアレルギー疾患に効くお薬という認識で良いでしょう。
保険適応上は、ネオマレルミン錠とTR錠の適応疾患が微妙に違いますが、実際はほぼ同じ用途と考えて問題ありません。
アレルギーで生じる疾患として代表的なものには、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあります。
また感冒(いわゆる風邪)に伴って生じる鼻水も、抗アレルギー薬によって多少の改善が得られます。
ちなみに「枯草熱」という病名はあまり聞きなれないものですが、これは花粉症のことです。
ネオマレルミンはジェネリックであるため有効性についての詳しい調査は行われていませんが、先発品の「ポララミン」の有効性は、
- 全体の有効率は75.7%
- じんましんに対する有効率は80.5%
- 湿疹・皮膚炎に対する有効率は74.6%
- 枯草熱、アレルギー性鼻炎に対する有効率は75.0%
という結果が出ており、ネオマレルミンも同程度の有効率があると考えられます。
臨床的な印象としてもネオマレルミンのアレルギーを抑える作用はしっかりとしています。しかし第1世代であるネオマレルミンは副作用も多く、現在では最初から積極的に使われる位置づけのお薬ではありません。
3.ネオマレルミンにはどのような作用があるのか
ネオマレルミンはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。
ネオマレルミンの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ.抗ヒスタミン作用
ネオマレルミンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。
アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。
アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体に結合することで様々なアレルギー症状が発症します。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。ヒスタミンは主要なケミカルメディエーターの1つなのです。
ネオマレルミンは、ヒスタミンが結合するヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状の出現を抑える作用があります。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれるのです。
4.ネオマレルミンの副作用
ネオマレルミンにはどんな副作用があるのでしょうか。
ネオマレルミンは副作用発生率の明確な調査はされていません。しかし第1世代抗ヒスタミン薬であるネオマレルミンは古いお薬であり、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬と比べると副作用が多めのお薬になります。
副作用として多いのは、
- 眠気
です。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあります。特にネオマレルミンは第一世代の抗ヒスタミン薬であり、脳へ移行しやすいため眠気を起こしやすいお薬になっています。
その他の副作用としては、
- 倦怠感
- 口渇(口の渇き)
- 頭重感
- 下痢
- 吐き気・嘔吐
などが報告されています。これらは抗ヒスタミン薬が持つ抗コリン作用というアセチルコリンのはたらきを抑えてしまう作用が関係しています。ヒスタミンの受容体とアセチルコリンの受容体は構造が類似しているため、抗ヒスタミン薬は時にアセチルコリン受容体にも作用してしまうのです。
抗コリン作用は唾液の分泌を減少させたり、胃腸の動きを低下させてしまいます。特にネオマレルミンのような第1世代は抗コリン作用が生じやすいため、このような副作用が生じることがあるのです。
また皮膚の異常として、
- 発疹
- 光線過敏症
なども報告されています。
頻度は稀ですが、重大な副作用として、
- ショック
- 痙攣、錯乱
- 再生不良性貧血、無顆粒球症
が報告されています。
またネオマレルミンのような第1世代抗ヒスタミン薬は上記の抗コリン作用があるため、次のような方は使用することが出来ません。
- 緑内障の方
- 前立腺肥大などの下部尿路に閉塞性疾患がある方
- 低出生体重児、新生児
このような疾患がある方に抗コリン作用のあるお薬を投与してしまうと症状を悪化させてしまう可能性があります。
抗コリン作用は涙の通り道を狭くしてしまい眼圧を上げてしまう可能性があるため、緑内障の方に使う事は出来ません。また尿道を収縮させるはたらきもあるため、尿道の閉塞がある方に用いるのも危険です。
抗ヒスタミン薬は中枢神経を興奮させる作用もあり、それによって精神症状(幻覚、興奮、運動失調、けいれん)が生じることがあります。そのため、特に神経の発達の途中にある低出生体重児、新生児にはネオマレルミンは使えません。
5.ネオマレルミンの用法・用量と剤形
ネオマレルミンは、
ネオマレルミン錠 2mg
ネオマレルミンTR錠 6mg
の2剤形があります。
TR錠とは「Time Release」の略で、これは「徐放性」という意味になります。ネオマレルミTR錠は外層錠と内核錠の2層性となっており、それぞれ作用発現時間が異なるように設計されているため、ネオマレルミン錠よりも長い作用持続を発揮できます。
ネオマレルミンの使い方としては、
【錠剤】
通常、成人には1回2mgを1日1~4回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。【TR錠】
通常成人1回6mgを1日2回経口投与する。なお、年齢・ 症状により適宜増減す る。
となっています。
6.ネオマレルミンが向いている人は?
以上から考えて、ネオマレルミンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ネオマレルミンの特徴をおさらいすると、
・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・古い第1世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が多め
・妊婦さんには比較的安全に使える抗ヒスタミン薬である
・眠気、抗コリン症状(口渇、便秘、吐き気など)に注意
といったものがありました。
ネオマレルミンは、第1世代抗ヒスタミン薬になり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対して用いられるお薬になります。
古い第1世代になり副作用が多めのお薬であるため、現在では最初から用いられる事はほとんどないお薬です。
副作用の少ない第2世代抗ヒスタミン薬を使っても十分な効果が得られない場合は、何らかの理由で第2世代抗ヒスタミン薬が使用できない場合にやむを得ず検討されるお薬になります。
臨床で使われる機会が多いのは、妊婦さんに抗ヒスタミン薬を処方する場合です。ネオマレルミンは妊婦さんへの使用実績が他の抗ヒスタミン薬よりも豊富であるため、比較的安全に用いることができます。
また保険適応上の問題ですが、第2世代は「風邪に伴う鼻水」に対して適応が無いのに対して、ネオマレルミンなどの第1世代は適応を持っているため、風邪に伴う鼻水症状の改善に対してはネオマレルミンのような第1世代が用いられることがあります。
先発品のポララミンと比べるとネオマレルミンは、徐放製剤であるTR錠があるのがメリットです。TR錠はゆっくり長く効くため、
- 服薬回数が少なくて済む
- ゆっくり効くため副作用が生じずらい
という効果が期待できます。