オロパタジンは、2001年から発売されている「アレロック」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリック医薬品とは、先発品(アレロック)の特許が切れた後に他社から発売された同じ成分からなるお薬の事です。お薬の開発・研究費がかかっていない分だけ、薬価が安いというメリットがあります。
オロパタジンは抗アレルギー薬に属し、アレルギーによって生じる諸症状を抑える作用を持ちます。主に花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどのアレルギー疾患に用いられています。
抗アレルギー薬にも多くの種類のお薬がありますが、その中でオロパタジンはどのような特徴を持つお薬なのでしょうか。
ここではオロパタジンの特徴や効果・副作用についてみていきましょう。
目次
1.オロパタジンの特徴
まずはオロパタジンの全体的な特徴を紹介します。
オロパタジンはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑える「抗ヒスタミン薬」になります。
その作用は強く、即効性もあり頼れるお薬ですが、同系統のお薬の中では眠気などの副作用も多めになります。
抗アレルギー薬にも様々な作用機序のものがありますが、オロパタジンはヒスタミンという物質のはたらきを抑える事でアレルギー症状を抑えます。
ヒスタミンはアレルギーを誘発する物質(ケミカルメディエーター)の1つですので、このヒスタミンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を改善させることができます。
それを狙っているのが抗ヒスタミン薬であり、オロパタジンのその1つになります。
抗ヒスタミン薬は、古い第1世代の抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代の抗ヒスタミン薬に分ける事が出来ます。
第1世代は効果は強いのですが眠気などの副作用が多いという欠点があります。一方で第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。
この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位へ作用しにくく、これも副作用を低下させる理由となっています。
現在では副作用が少ない第2世代を使用するのが一般的で、第1世代が用いられるのは何らかの理由で第2世代が使えなかったり、第2世代では効果が不十分であるケースに限られます。
オロパタジンは第2世代の抗ヒスタミン薬になります。第2世代の中でも作用は強力であり、現在もアレルギー疾患の治療薬としてよく用いられています。
オロパタジンは抗ヒスタミン薬ですので、主に「抗ヒスタミン作用」によってアレルギー症状を抑えます。しかしそれ以外にもロイコトリエンやタキキニン、炎症性サイトカインなどといったアレルギーに関係する物質のはたらきを抑える作用もあり、これもアレルギー症状の改善に役立っています。またアレルギー物質を放出する好酸球のはたらきを抑える作用もあります。
一方でヒスタミンは覚醒にも関わっている事が知られています。そのためヒスタミンをブロックすると眠くなってしまうことがあります。これは主に副作用となり、基本的に抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあります。
オロパタジンは第2世代の中でも作用が強力であるため、眠気の頻度も多めです。効果が強くて頼れるお薬ではあるのですが、副作用にも注意すべきなのがオロパタジンになります。
またオロパタジンはジェネリック医薬品であるため、先発品のアレロックと比べると薬価が安いというメリットもあります。
以上から、オロパタジンの特徴として次のようなことが挙げられます。
【オロパタジンの特徴】
・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える |
2.オロパタジンの適応疾患とその有効率
オロパタジンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
<成人>
アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚瘙痒症、尋常性乾癬、多形滲出性紅斑)<小児>
アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症)に伴う瘙痒
色々と難しく書かれていますが、基本的には「アレルギー疾患に効くお薬」という認識で良いでしょう。
アレルギー疾患として代表的なものには、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあります。またアレルギー性の機序で生じている皮膚のかゆみにも効果があります。
ではオロパタジンはこれらの疾患に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。
オロパタジンはジェネリック医薬品であるため、有効性についての詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「アレロック」では行われており、
- アレルギー性鼻炎への有効率は62.9%
- じんま疹への有効率は80.6%
- 湿疹・皮膚炎への有効率は74.6%
- 痒疹への有効率は50.8%
- 皮膚瘙痒症への有効率は49.3%
- 尋常性乾癬への有効率は52.8%
- 多形滲出性紅斑への有効率は83.3%
と報告されています。
同じ主成分からなるオロパタジンも同程度の有効率があると考えられます。
臨床的な印象としてはオロパタジンは他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べると、その効果は強めになります。
他の抗ヒスタミン薬よりも強くて頼れるお薬ではあるのですが、一方で眠気などの副作用もやや多めのお薬になるため、注意も必要です。
3.オロパタジンの作用
オロパタジンはアレルギー症状を抑える抗アレルギー薬ですが、具体的にはどのような作用を持っているのでしょうか。
オロパタジンの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ.抗ヒスタミン作用
オロパタジンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックする作用です。
アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。
アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体などに結合することで様々なアレルギー症状が発症してしまうのです。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。
オロパタジンのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合する部位であるヒスタミン受容体にフタをしてしまう事でヒスタミンが結合できないようにしてしまう作用もあり、これによってもアレルギー症状の発現を抑えてくれます。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれるのです。
Ⅱ.抗ロイコトリエン作用・抗トロンボキサン作用
ケミカルメディエーターにはヒスタミン以外にも様々な物質があります。
オロパタジンは、ヒスタミン以外のケミカルメディエーターのうち、
- ロイコトリエン(LT)
- トロンボキサン
の分泌を抑えるはたらきもあり、これによってもアレルギー症状を緩和させてくれます。
実際、抗アレルギー薬には抗ヒスタミン薬以外にも
- 抗ロイコトリエン薬(商品名:オノン、シングレアなど)
- 抗トロンボキサン薬(商品名:バイナスなど)
などがあります。ロイコトリエンやトロンボキサンをブロックすることがアレルギー症状の緩和につながることがここからも分かりますね。
Ⅲ.抗好酸球作用
好酸球は白血球の一種で、アレルギーに関係する細胞になります。
具体的にはアレルギー反応の制御を行うはたらきがあり、肥満細胞などのアレルギー反応性細胞が暴走してしまいヒスタミンなどのケミカルメディエーターを多量に放出した際に、それを不活化させる働きなどを持ちます。
しかし一方で好酸球から分泌される物質には、炎症の原因となる物質もあり、これによってアレルギー反応がより悪化してしまう事もあります。
アレルギーのある方は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となる物質)の刺激によって好酸球がその部位に浸潤してしまう事で、かえってアレルギー症状が悪化してしまう事があるのです。
オロパタジンはアレルゲンの刺激によって好酸球が浸潤してくるのを防ぐはたらきがあります。
またPAF(血小板活性化因子)という物質も、好酸球を浸潤させてアレルギー反応を引き起こすことがありますが、オロパタジンはこのPAFの産生や分泌を抑える作用があることも確認されています。
PAFは本来は血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、アレルギーを誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。
Ⅳ.抗炎症作用
アレルギーが起きると、その部位に炎症が生じてしまいます。
炎症は、
- 発赤(赤くなる)
- 腫脹(腫れる)
- 熱感(熱くなる)
- 疼痛(痛くなる)
の4つの徴候を起こす反応のことです。
例えば身体をぶつけたり傷が出来るとこのような症状が皮膚に生じますが、これは皮膚に炎症が生じているという事です。
アレルギーも炎症を引き起こす反応の1つです。ケミカルメディエーターによってアレルギー反応が誘発されると、その部位に炎症が生じます。
鼻にアレルギーが生じれば「アレルギー性鼻炎」という炎症が生じますし、眼にアレルギーが生じれば「アレルギー性結膜炎」という炎症が生じます。
オロパタジンはアレルギー反応を抑えるだけでなく、アレルギー反応によって生じた炎症反応を緩和するはたらきもあります。
具体的には炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)であるインターロイキン6(IL-6)・インターロイキン8(IL-8)の産生・分泌を抑えるはたらきがあります。
また疼痛を引き起こす神経伝達物質であり、アレルギーの発症にも関与していると考えられているタキキニンの分泌も抑える作用があります。
オロパタジンのこの作用もアレルギー症状の緩和に役立っています。
4.オロパタジンの副作用
オロパタジンにはどのような副作用があるでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいでしょうか。
オロパタジンはジェネリック医薬品であり、副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「アレロック」では行われており、副作用発生率は5.6%と報告されています。
同じ主成分からなるオロパタジンの副作用発生率も同程度だと考えられます。
オロパタジンは古い第1世代抗ヒスタミン薬と比べれば副作用が少ないのですが、他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べると副作用はやや多めになります。
オロパタジンは効果が強力な分、副作用も少なくない抗ヒスタミン薬なのです。
副作用として多いのは、
- 眠気
です。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがありますが、オロパタジンは他の第2世代よりも一段階眠気が生じやすい印象があります。
その他の副作用としては、
- 口渇(口の渇き)
- 倦怠感
- 吐き気
などが報告されています。
これらは抗ヒスタミン薬がわずかに持つ抗コリン作用というはたらきが関係しています。
抗コリン作用とはアセチルコリンのはたらきを抑えてしまう作用の事ですが、実はヒスタミンの受容体とアセチルコリンの受容体は構造が類似しているため、抗ヒスタミン薬は時にアセチルコリン受容体にも作用してしまうのです。
抗コリン作用が生じると、唾液の分泌量が減少したり、胃腸の動きが低下したりします。オロパタジンのような第2世代は第1世代と比べると抗コリン作用は少なくはなっているのですがゼロではないため、時にこのような副作用が生じることがあります。
また、
- 肝機能障害(AST、ALT、ɤGTP、ビリルビン上昇)
- 白血球増多
といった検査の異常が生じることもあります。オロパタジンを長期・高用量服用している場合は定期的に血液検査を行うことが望ましいでしょう。
頻度は稀ですが、重大な副作用としては、
- 肝機能障害
- 黄疸
- 劇症肝炎
が報告されています。
これらの重篤な副作用を生じさせないためにも、やはり定期的に血液検査で肝機能を評価する必要があります。
5.オロパタジンの用法・用量と剤形
オロパタジンには、
オロパタジン錠 2.5mg
オロパタジン錠 5mgオロパタジンOD錠 2.5mg
オロパタジンOD錠 5mgオロパタジン顆粒 0.5%
といった剤形があります。
OD錠というのは「口腔内崩壊錠」の事です。これは唾液で溶けるタイプのお薬になります。水が無くても服用できるため、外出先で服用する機会の多い方や、飲み込む力が低下している高齢者などに使いやすい剤型です。
オロパタジンの使い方としては、
<成人>
通常、成人には1回5mgを朝及び就寝前の1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。<小児>
通常、7歳以上の小児には1回5mgを朝及び就寝前の1日2回経口投与する。通常、2歳以上7歳未満の小児には1回2.5mgを朝及び就寝前の1日2回経口投与する。(顆粒のみ)
となっています。
6.オロパタジンが向いている人は?
以上から考えて、オロパタジンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
オロパタジンの特徴をおさらいすると、
【オロパタジンの特徴】
・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える |
といったものがありました。
オロパタジンは副作用の少ない第2世代の抗ヒスタミン薬であり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対してよく用いられているお薬の1つです。
第2世代であり効果がしっかりと得られつつも眠気などの副作用が少なめであるため、アレルギー性疾患の治療を考える際にまず検討されるお薬となります。
ジェネリック医薬品であり先発品のアレロックと比べると薬価も安いため、経済的にも負担になりにくいというメリットもあります。
ただしオロパタジンは効果は強力なのですが、副作用も他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べるとやや多めのお薬になります。特に眠気が生じて困る方は少なくありません。
また1日2回の服用が必要なお薬で、1回服用しただけでは1日効果は持続しません。
ここから、
- 比較的症状が重いアレルギー症状の方
- しっかりと症状を抑えたい方
- なるべくお薬代を安く抑えたい方
に向いているお薬だと言えるでしょう。
7.先発品と後発品の効果は本当に同じなのか?
オロパタジンは「アレロック」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。
しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。
先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。
8.お薬以外のアレルギーの改善法
花粉症をはじめとしたアレルギー疾患は、お薬で症状を抑える事が出来ます。
しかしお薬だけが有効な治療法はではありません。日常の生活習慣の工夫で症状を和らげる事も可能ですし、食べ物に含まれる成分にもアレルギーを抑える効果が報告されているものもあります。
最後にお薬以外で花粉症を抑える、有効な予防法について紹介します。
Ⅰ.花粉を目・鼻に入れない
やはり一番大切なのは、毎日の生活の中での工夫です。
花粉症の症状は、花粉が目や鼻の中に入る事で生じます。という事は花粉がこれらの部位に接触しなければ症状は生じないわけです。
当たり前の事ですが、これは非常に重要な事です。
花粉が飛散する時期になったら、外出時はメガネやマスクなどを装着するようにしましょう。これだけでも症状は大分軽減します。なるべく皮膚と密着するようなメガネ・マスクが良いでしょう。
また服装も重要です。花粉がくっつきやすい服を着ていれば、外出時に服にたくさん花粉がついてしまい、それが家の中で舞ってしまいます。
具体的には、ウールなどのモコモコした生地の服は花粉が付きやすく、ポリエステルなどのツルツルした服は花粉が付きにくいと言われています。花粉が飛散する時期は、このように服装にも気を付けるようにしてみましょう。
Ⅱ.乳酸菌
乳酸菌はヨーグルトなどに含まれている細菌で、いわゆる「善玉菌」として知られています。
腸内細菌のバランスを適正に整える事で、便秘や下痢、腹部膨満といった胃腸症状を改善させる作用があり、整腸剤の成分としても用いられています。
近年、乳酸菌はただ腸内細菌のバランスを整えるだけではなく、腸内細菌のバランスを整える事によって免疫力も整えてくれる事が分かってきました(免疫力:身体に有害な異物が入ってきた時に、異物を排除するシステム)。
アレルギー疾患は免疫反応の誤作動によって生じています。具体的には花粉症であれば、「花粉」という本来であれば身体に害のない物質に対して、「敵だ!排除しなければ」と免疫が誤作動してしまう事で鼻水・目のかゆみなどが生じるのです。
つまり免疫力を整えてくれる乳酸菌は、花粉症の改善にも効果が期待できるという事です。
また乳酸菌の中でも特にアレルギー反応を抑える事が確認されている菌としては、
- L-92乳酸菌
- フェリカス菌
などがあります。最近ではこのような抗アレルギー作用のある乳酸菌を含む乳製品(ヨーグルトやチーズなど)も発売されるようになってきましたので、花粉症の時期にはこれらを積極的に摂取するようにしましょう。
また、乳酸菌の栄養となる「オリゴ糖」の摂取も有効です。オリゴ糖が十分に腸内に届けば、それだけ乳酸菌が増殖しやすくなるためです。
例えば、カルピス社が販売しているこの飲料にはL-92乳酸菌が含まれており、アレルギー症状の改善も期待できます。
Ⅱ.ポリフェノール
「ポリフェノール」は抗酸化作用が注目される事が多く、「アンチエイジング効果がある物質」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
確かにポリフェノールには抗酸化作用がありますが、実はそれ以外にも抗アレルギー作用もあるのです。
ポリフェノールはアレルギーを誘発する物質であるヒスタミンの放出を抑える作用が報告されており、抗ヒスタミン薬と似た機序でアレルギー症状を改善させてくれます。
ポリフェノールを多く含む食品としては、
- 野菜
- 果物
- ワイン
- お茶
などがあります。
ちなみにお茶には「カテキン」が含まれていますが、このカテキンもポリフェノールの1種です。
日常で野菜をあまり取れない方は、サプリメントも有効です。ただし一部のサプリメントや野菜ジュースなどにはポリフェノールがほとんど除去されてしまっているものもあるため、注意しましょう。
べにふうき茶は、ポリフェノールの一種である「メチル化カテキン」を含み、花粉症をはじめとしたアレルギー症状に効果が期待できます。
Ⅳ.ω脂肪酸(EPA・DHA)
EPAやDHA「ω3脂肪酸」と呼ばれ、魚に多く含まれる物質で「血液をサラサラにする」という効果がよく知られています。
以前は「食べると頭が良くなる」と言われた事もありましたが、直接頭を良くする作用があるわけではありません。血液をサラサラにする事で脳の血流を増やす作用があるため、このように言われるようになったようです。
その他にもコレステロールを低下させたり、精神状態を安定させる作用(抗うつ作用)なども報告されています。
近年では、アレルギーを抑える作用もある事が報告されるようになりました。アレルギーを引き起こす物質にはヒスタミン以外にも、ロイコトリエンやプロスタグランジンなどがあります。
DHAやEPAはロイコトリエンやプロスタグランジンのはたらきを抑える作用が報告されています。DHA、EPAは青魚に多く含まれていますので、花粉症の時期には積極的に摂取するようにしても良いでしょう。
またDHA・EPAはサプリメントとしても各製薬会社から発売されていますので、このようなものを利用するのも方法の1つです。
Ⅴ.アロマエッセンス
アロマ(精油)は日本ではまだあまり普及していませんが、海外では医薬品として病院から処方されるような国もあり、その効果は侮れません。
アロマオイルの中にはアレルギー症状に効果があるものもあります。例えばユーカリやティーツリーといったアロマオイルは免疫の調子を整え、鼻粘膜の炎症を和らげてくれる作用があると言われています。
またペパーミントは鼻腔の通りを改善させる作用があると言われています。
このような成分を配合したアロマオイルを使ってみるのも方法の1つです。
Ⅵ.甜茶の効果は不確か?
「花粉症に効くお茶」として有名な甜茶(てんちゃ)ですが、本当に花粉症に効果があるのでしょうか。
甜茶は元々は「甘いお茶」の総称で、一口に甜茶といっても含まれる成分はお茶によって異なります。
甜茶に含まれるバラ科キイチゴ属の植物の葉に抗アレルギー効果があるという報告から、一時期甜茶が花粉症の時期に流行りましたが、明確な効果はないとする報告も多く、その抗アレルギー作用は不確かなところがあります。
厚生労働省や独立行政法人国立健康・栄養研究所などの公的機関も、甜茶の効果に対しては否定的であり、甜茶ブームも長くは続いていない事から、少なくともしっかりとした効果はないと考えられます。