セルテクト錠(オキサトミド)の効果と副作用

セルテクト錠・セルテクトDS(ドライシロップ)(一般名:オキサトミド)は1987年から発売されているお薬で、抗アレルギー薬と呼ばれています。

アレルギーによって生じる諸症状を抑え、主に花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられています。

セルテクトは主にヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。

抗アレルギー薬の中でセルテクトはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

セルテクトの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

 

1.セルテクトの特徴

まずはセルテクトの全体的な特徴についてみてみましょう。

セルテクトは「抗ヒスタミン薬」と呼ばれ、ヒスタミンという物質のはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。ヒスタミンはケミカルメディエータ―と呼ばれるアレルギー症状発症の誘因となる物質の1つです。

抗ヒスタミン薬には、古い第1世代抗ヒスタミン薬と、新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。

そのためまずは第2世代から使用するのが現在では一般的です。

セルテクトはというと、第2世代に属する抗ヒスタミン薬になります。しかし第2世代の中では古いお薬であり、眠気などの副作用は比較的多めです。

セルテクトは主に、

  • 抗ヒスタミン作用
  • ロイコトリエン拮抗作用
  • 抗PAF(血小板活性化因子)作用

などによって、アレルギー症状を改善させるお薬です。またこれ以外にも抗セロトニン作用や抗ドーパミン作用もわずかに有し、これは時に副作用として現れてしまうことがあります。

セルテクトは多くの作用があるため、しっかりとした効果が期待できる一方で副作用もちょっと注意しなければいけないお薬なのです。

セルテクトは動物実験においても妊娠ラットに投与したところ、口蓋裂、合指症、指骨の形成不全などの児の催奇形性が報告されているため、人間においても妊婦さんに使用することは禁忌(絶対にダメ)となっています。妊婦の方はご注意下さい。

以上から、セルテクトの特徴として次のようなことが挙げられます。

【セルテクト錠・セルテクトDS(オキサトミド)の特徴】

・アレルギー症状を抑えるために用いられるお薬である
・抗ヒスタミン作用、ロイコトリエン拮抗作用、抗PAF作用がある
・眠気などの副作用が比較的多め
・妊婦には禁忌

 

2.セルテクトはどのような疾患に用いるのか

セルテクトはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

(錠剤)
アレルギー性鼻炎、じんま疹、皮膚掻痒症、湿疹・皮膚炎、痒疹

(ドライシロップ)
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、じんま疹、痒疹

セルテクトは、錠剤とドライシロップで適応疾患が若干異なっています。これは錠剤とドライシロップの効果に違いがあるからではありません。

錠剤は成人向けであり、ドライシロップは子供向けだというのが理由です。

基本的にアレルギー疾患に効くお薬という認識で良いのですが、子供においては気管支喘息に適応があります。

気管支喘息もアレルギーによって生じる疾患ですので、セルテクトは効果が期待できます。

 

3.セルテクトはどのような作用があるのか

セルテクトはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。

セルテクトの作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

Ⅰ.抗ヒスタミン作用

セルテクトは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックする作用になります。

アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。

セルテクトは、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ケミカルメディエータ―)が分泌されるのを抑える作用があります。これによりアレルギー症状を和らげてくれるのです。

ヒスタミンは代表的なケミカルメディエーターの1つです。

セルテクトは、アレルギー反応性細胞内のカルシウム濃度を抑えることによって、このような作用を発揮すると考えられています。

また、ケミカルメディエータ―の分泌を抑えるだけでなく、分泌されてしまったケミカルメディエータ―のはたらきをブロックする作用もあります。

ヒスタミンの分泌を抑え、更に分泌されてしまったヒスタミンのはたらきをブロックする。この2つの作用によってセルテクトは抗アレルギー作用を示します。

 

Ⅱ.ロイコトリエン拮抗作用

ヒスタミン以外のケミカルメディエーターとして、ロイコトリエン(LT)があります。

ロイコトリエンも肥満細胞から分泌され、身体にアレルギー反応を起こしたり、気管を収縮させたりします。

セルテクトは、ヒスタミンと同じようにこのロイコトリエンの分泌を抑えるはたらきがあります。また、すでに分泌されてしまったロイコトリエンのはたらきを強くブロックする作用に優れます。

これによってアレルギー症状を緩和させてくれます。

 

Ⅲ.血小板活性化因子拮抗作用

血小板活性化因子(PAF)は、血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、気管支喘息を誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。

セルテクトはPAFのはたらきもブロックすることが確認されており、これによって喘息症状を軽減させます。

 

4.セルテクトの副作用

セルテクトにはどんな副作用があるのでしょうか。

セルテクトの副作用は5~7.6%前後と報告されています。他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べるとやや副作用が多く、時に問題となる副作用も生じえるため、セルテクトは副作用に注意すべきお薬になります。

副作用として多いのが、

  • 眠気

です。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じやすいのですが、セルテクトは他の抗ヒスタミン薬と比べても眠気の副作用はやや多めになります。セルテクトは鎮静力の比較的強い抗アレルギー薬なのです。

他にも、

  • 倦怠感
  • 口渇
  • 下痢

などといった副作用の報告もわずかながらあります。

また、

  • 肝機能障害(AST、ALT、ɤGTP上昇)
  • 黄疸

といった肝機能障害の異常が時に生じることがあります。セルテクトを長期服薬・高用量服薬している場合などでは定期的に血液検査にて肝機能をチェックすることが望ましいでしょう。

稀ながら重篤な副作用としては、

  • アナフィラキシーショック
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)
  • 皮膚粘膜眼症候群(SJS)
  • 錐体外路症状(硬直や振戦など)
  • 内分泌異常(女性化乳房、月経障害など)

が報告されています。

錐体外路症状や内分泌異常は、セルテクトがわずかに持つ抗ドーパミン作用によるものだと考えられます。これは脳のドーパミンのはたらきをブロックしてしまう事で生じる作用です。

幼児では抗ドーパミン作用が生じやすいと報告されており、幼児に投与する際は特に注意を払わなくてはいけません。

セルテクトは動物実験において、催奇形性(児に奇形が発生してしまう可能性がある)が報告されているため、妊婦さんへの投与は禁忌(絶対にダメ)となっています。

 

5.セルテクトの用法・用量と剤形

セルテクトは、

セルテクト錠(オキサトミド) 30mg
セルテクトドライシロップ(オキサトミド) 2%

の2剤形があります。

セルテクトの使い方としては、

【錠剤の場合】
通常、成人には1回30㎎を朝及び就寝前の1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

【ドライシロップの場合】
通常、小児には1回0.mg/kgを用時水で懸濁して、朝及び就寝前の1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、1回最高用量は0.75mg/kgを限度とする。

と書かれています。

 

6.セルテクトが向いている人は?

以上から考えて、セルテクトが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

セルテクトの特徴をおさらいすると、

・アレルギー症状を抑えるために用いられるお薬である
・抗ヒスタミン作用、ロイコトリエン拮抗作用、抗PAF作用がある
・眠気などの副作用が比較的多め
・妊婦には禁忌

といったものでした。

セルテクトは、第2世代抗ヒスタミン薬になりますが、第2世代の中では古いお薬であり副作用はやや多めです。

また多くの作用を持つセルテクトは効果はしっかりしている反面で、副作用に注意が必要なお薬です。眠気くらいであればまだお薬を中止すれば済みますが、錐体外路症状や内分泌異常などの副作用は稀ながらも決して軽い副作用ではありません。

更に妊婦さんには禁忌となっており、このような面をみるとちょっと使いずらいお薬でもあります。

効果はしっかりしており、眠気の副作用は時に強い鎮静力として役立つこともあるため、このような効果が欲しい症例においては使用されることもありますが、基本的には他の副作用の少ない抗ヒスタミン薬を使用することが多く、セルテクトは現在では多く使われているお薬ではありません。

他の抗アレルギー薬で効果不十分であり、よりしっかりした効果が欲しい時や鎮静をさせた方が良いケースなどには検討されることがあります。

 

7.お薬以外の花粉症の治療法

花粉症をはじめとしたアレルギー疾患は、お薬で症状を抑える事が出来ます。

しかしお薬だけが有効な治療法はではありません。日常の生活習慣の工夫で症状を和らげる事も可能ですし、食べ物に含まれる成分にもアレルギーを抑える効果が報告されているものもあります。

最後にお薬以外で花粉症を抑える、有効な予防法について紹介します。

 

Ⅰ.花粉を目・鼻に入れない

やはり一番大切なのは、毎日の生活の中での工夫です。

花粉症の症状は、花粉が目や鼻の中に入る事で生じます。という事は花粉がこれらの部位に接触しなければ症状は生じないわけです。

当たり前の事ですが、これは非常に重要な事です。

花粉が飛散する時期になったら、外出時はメガネやマスクなどを装着するようにしましょう。これだけでも症状は大分軽減します。なるべく皮膚と密着するようなメガネ・マスクが良いでしょう。

また服装も重要です。花粉がくっつきやすい服を着ていれば、外出時に服にたくさん花粉がついてしまい、それが家の中で舞ってしまいます。

具体的には、ウールなどのモコモコした生地の服は花粉が付きやすく、ポリエステルなどのツルツルした服は花粉が付きにくいと言われています。花粉が飛散する時期は、このように服装にも気を付けるようにしてみましょう。

 

Ⅱ.乳酸菌

乳酸菌はヨーグルトなどに含まれている細菌で、いわゆる「善玉菌」として知られています。

腸内細菌のバランスを適正に整える事で、便秘や下痢、腹部膨満といった胃腸症状を改善させる作用があり、整腸剤の成分としても用いられています。

近年、乳酸菌はただ腸内細菌のバランスを整えるだけではなく、腸内細菌のバランスを整える事によって免疫力も整えてくれる事が分かってきました(免疫力:身体に有害な異物が入ってきた時に、異物を排除するシステム)。

アレルギー疾患は免疫反応の誤作動によって生じています。具体的には花粉症であれば、「花粉」という本来であれば身体に害のない物質に対して、「敵だ!排除しなければ」と免疫が誤作動してしまう事で鼻水・目のかゆみなどが生じるのです。

つまり免疫力を整えてくれる乳酸菌は、花粉症の改善にも効果が期待できるという事です。

また乳酸菌の中でも特にアレルギー反応を抑える事が確認されている菌としては、

  • L-92乳酸菌
  • フェリカス菌

などがあります。最近ではこのような抗アレルギー作用のある乳酸菌を含む乳製品(ヨーグルトやチーズなど)も発売されるようになってきましたので、花粉症の時期にはこれらを積極的に摂取するようにしましょう。

また、乳酸菌の栄養となる「オリゴ糖」の摂取も有効です。オリゴ糖が十分に腸内に届けば、それだけ乳酸菌が増殖しやすくなるためです。

 

4種類の生菌で腸内バランスを整える医薬品【ファスコン整腸錠プラス】

京都薬品より発売されている乳酸菌錠剤です。抗アレルギー作用のあるフェリカス菌をはじめ、多くの乳酸菌が含まれています。

 

Ⅱ.ポリフェノール

「ポリフェノール」は、抗酸化作用が注目される事が多く、「アンチエイジング効果がある物質」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

確かにポリフェノールには抗酸化作用がありますが、それ以外にも抗アレルギー作用もあります。

ポリフェノールはアレルギーを誘発する物質であるヒスタミンの放出を抑える作用が報告されており、抗ヒスタミン薬と似た機序でアレルギー症状を改善させてくれます。

ポリフェノールを多く含む食品としては、

  • 野菜
  • 果物
  • ワイン
  • お茶

などがあります。

ちなみにお茶には「カテキン」が含まれていますが、このカテキンもポリフェノールの1種です。

日常で野菜をあまり取れない方は、サプリメントも有効です。ただし一部のサプリメントや野菜ジュースなどにはポリフェノールがほとんど除去されてしまっているものもあるため、注意しましょう。

 

じゃばらジュース

抗アレルギー作用が確認されているポリフェノールの1種である「ナリルチン」を豊富に含むお茶です。

 

白井田七。茶

カテキンを豊富に含むお茶です。日本茶ですので、毎日の生活の中で無理なく摂取する事ができます。

 

Ⅳ.ω脂肪酸(EPA・DHA)

EPAやDHA「ω3脂肪酸」と呼ばれ、魚に多く含まれる物質で「血液をサラサラにする」という効果がよく知られています。

以前は「食べると頭が良くなる」と言われた事もありましたが、直接頭を良くする作用があるわけではありません。血液をサラサラにする事で脳の血流を増やす作用があるため、このように言われるようになりました。

その他にもコレステロールを低下させたり、精神状態を安定させる作用(抗うつ作用)なども報告されています。

近年では、アレルギーを抑える作用もある事が報告されるようになりました。アレルギーを引き起こす物質にはヒスタミン以外にも、ロイコトリエンやプロスタグランジンなどがあります。

DHAやEPAはロイコトリエンやプロスタグランジンのはたらきを抑える作用が報告されています。DHA、EPAは青魚に多く含まれていますので、花粉症の時期には積極的に摂取するようにしても良いでしょう。

またDHA・EPAはサプリメントとしても各製薬会社から発売されていますので、このようなものを利用するのも方法の1つです。

 

DHA・EPAサプリAOZA

DHA・EPAを高用量配合しているサプリメントです。

 

Ⅴ.アロマエッセンス

アロマ(精油)は日本ではまだあまり普及していませんが、海外では医薬品として病院から処方されるような国もあり、その効果は侮れません。

アロマオイルの中にはアレルギー症状に効果があるものもあります。例えばユーカリやティーツリーといったアロマオイルは免疫の調子を整え、鼻粘膜の炎症を和らげてくれる作用があると言われています。

またペパーミントは鼻腔の通りを改善させる作用があると言われています。

このような成分を配合したアロマオイルを使ってみるのも方法の1つです。

 

ナチュラルハーブスプレー

ユーカリ、ティーツリー、ペパーミントやカユプテ、ラベンダーを配合したアロマスプレーで花粉症への効果が期待できます。

 

Ⅵ.甜茶の効果は不確か?

「花粉症に効くお茶」として有名な甜茶(てんちゃ)ですが、本当に花粉症に効果があるのでしょうか。

甜茶は元々は「甘いお茶」の総称で、一口に甜茶といっても含まれる成分はお茶によって異なります。

甜茶に含まれるバラ科キイチゴ属の植物の葉に抗アレルギー効果があるという報告から、一時期甜茶が花粉症の時期に流行りましたが、明確な効果はないとする報告も多く、その抗アレルギー作用は不確かなところがあります。

厚生労働省や独立行政法人国立健康・栄養研究所などの公的機関も、甜茶の効果に対しては否定的であり、甜茶ブームも長くは続いていない事から、少なくともしっかりとした効果はないと考えられます。