パミルコン錠(一般名:グリベンクラミド)は1971年から発売されている「ダオニール」「オイグルコン」という糖尿病の治療薬のジェネリック医薬品になります。糖尿病の治療薬の中でも「スルホニルウレア(SU)薬系」という種類に属します。
パミルコンは、インスリンの分泌をする臓器である膵臓に直接作用することでインスリンの分泌量を増やし、血糖値を下げるお薬になります。非常に強力な作用があるのがメリットですが、血糖を下げ過ぎてしまい「低血糖」にしてしまうリスクもあり、慎重に使用しなければいけないお薬になります。
糖尿病治療薬にもたくさんの種類のお薬があります。これらの中でパミルコンはどのような位置付けになるのでしょうか。
パミルコンの効果や特徴、どのような方に向いているお薬なのかについてみていきましょう。
目次
1.パミルコンの特徴
まずはパミルコン錠の特徴について、かんたんに紹介します。
パミルコンはインスリンの分泌量を増やすことで強力に血糖を下げるお薬になります。強力な効果が期待できる反面、血糖を下げすぎる(低血糖)リスクもあります。
パミルコンはSU(スルホニルウレア)薬と呼ばれるお薬です。SU薬にはインスリンを増やす作用があります。
インスリンとは膵臓にあるβ細胞から分泌されている血糖を下げるホルモンで、食事を食べて血糖が上がると血糖を下げるために分泌されます。SU薬はβ細胞に直接作用することでインスリンをβ細胞から絞り出すお薬になります。
SU薬を投与すると、膵臓β細胞が頑張ってインスリンを出すようになるため、血糖がしっかり下がります。
通常、インスリンは血糖が上昇するとそれをβ細胞が検知して分泌されるため食後に多く分泌され、空腹時にはあまり分泌されていません。しかしSU薬は血糖の多さに関わらずβ細胞を刺激してインスリンを分泌させます。そのため食前・食後に関わらず全体的に血糖を下げてくれるお薬になります。これは空腹時にも高血糖であるような糖尿病の方には良い作用なのですが、空腹時の低めの血糖をも更に下げてしまうリスクにもなります。
SU薬はこのような作用を持つため、血糖を下げる力だけを見れば非常に優れたお薬となります。しかし一方でお薬の力で無理矢理インスリンを絞り出すお薬となるため、時に血糖を下げすぎてしまい、低血糖になるリスクもあるお薬なのです。
パミルコンはSU薬の中でも血糖を下げる作用は最強クラスであり、低血糖には特に注意すべきお薬になります。
近年では低血糖を起こしにくい糖尿病治療薬が多く発売されているため、SU薬が最初から使用されることはほとんどありません。SU薬は「効果は強力だけど、低血糖にもなりやすい」お薬であるため、他の糖尿病治療薬で治療が不十分な方に慎重に用いるお薬になります。
またSU薬には「二次無効」という現象が生じることがあり、これもこのお薬のデメリットとなります。二次無効とは簡単に言えば、SU薬を続けていると次第に効きが悪くなっていく現象です。
これはSU薬がインスリンを無理矢理絞り出していることが原因だと考えられています。インスリンを出す力が弱まっている膵臓β細胞から無理矢理インスリンを出させるのがSU薬です。これを長く続けていると次第にβ細胞が疲弊してしまい、いよいよどんなに絞り出そうとしてもインスリンを出せなくなってしまうのです。これが二次無効が生じる理由です。
この二次無効が生じることからも、SU薬は「最後の手」とすべきお薬であり、最初から安易に使い続けていいものではないことが分かります。
以上からパミルコン錠の特徴として次のようなことが挙げられます。
【パミルコン錠の特徴】
・SU(スルホニルウレア)薬に属するお薬である
・インスリンの分泌量を増やすことで血糖を下げる
・血糖を下げる効果は非常に強力だが、低血糖に注意
・使い続けていると次第に効きが悪くなっていく(二次無効)
・低血糖のリスクのため、現在では最初から用いられることは少ない
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
2.パミルコン錠はどんな疾患に用いるのか
パミルコン錠はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
インスリン非依存型糖尿病
ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る
パミルコン錠は血糖を下げる作用を持つお薬ですから、糖尿病に使われます。
「インスリン非依存型糖尿病」と難しい名前が記載されていますが、これは要するに「2型糖尿病」のことだと考えて下さい。
糖尿病には1型と2型があります。
1型は自己免疫性の疾患で、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまっている疾患です。β細胞が破壊されてしまっていればインスリンが分泌できないため、血糖は高くなってしまいます。
2型は一般的な糖尿病で、糖分を摂取しすぎたり肥満などによってインスリンの効きが悪くことで生じてしまうものです。
パミルコンは2型糖尿病に対して用いられます。そして2型糖尿病ではまずはお薬を使う前に食事療法(規則正しくバランスの良い食事を指導する)や運動療法(適度な運動を指導する)が行われます。
これら食事療法や運動療法を行っても改善が得られない時、パミルコンのようなお薬が検討されます。
3.パミルコンにはどのような作用があるのか
パミルコンはインスリンを分泌する膵臓のβ細胞に直接作用することで、β細胞からインスリンを絞り出すお薬です。
ここではパミルコンの詳しい作用について紹介します。
Ⅰ.インスリンの分泌を増やす
パミルコンは膵臓β細胞が分泌するインスリンの量を増やす作用があります。
これはβ細胞からインスリンを「絞り出す」ようなイメージです。
どのような機序によってパミルコンはβ細胞からインスリンを分泌させているのでしょうか。
本来インスリンは血糖(グルコース)の濃度が高くなると、血糖を下げるために分泌されます。
これは膵臓β細胞の細胞膜にGLUT2という糖の輸送体があり、ここから糖分がβ細胞内に取り込まれます。そして細胞内において糖分からATPというエネルギー源が作られます。
β細胞内のATPが増えると、同じくβ細胞膜にあるATP感受性カリウムチャネルが閉じます。すると細胞膜が脱分極し細胞内にカルシウムイオンが流入し、その刺激でインスリンが分泌されるのです。
分泌されたインスリンは血液中の糖分を諸臓器(脳、心臓や筋肉など)に取り込ませることで血糖を下げます。糖はエネルギー源となるため、諸臓器はインスリンによって取り込まれた糖によって活動ができるようになります。
SU薬は、β細胞膜にあるSU受容体という部位に結合します。SU受容体はATP感受性カリウムチャネルを閉じるはたらきがあります。すると脱分極が生じ、β細胞からインスリンが放出されるのです。
Ⅱ.脂質を低下させる(動物実験)
パミルコン(正確には先発品のオイグルコン・ダオニールにおいて)は動物実験において中性脂肪を減らす作用が報告されています。
人間においても同様の作用があるかはしっかりは確認されていないものの、可能性はあります。
高脂血症の治療のためにパミルコンを投与するということは臨床ではまずありませんが、このような作用も報告はされています。
4.パミルコンの副作用
パミルコンではどのような副作用が生じるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。
パミルコンは副作用に注意が必要なお薬です。強力に血糖を下げるため「低血糖」を起こす危険があるからです。
パミルコンはジェネリック医薬品であるため副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「オイグルコン」「ダオニール」においては副作用発生率は4.3%と報告されており、パミルコンも同程度だと思われます。
中でも注意すべきは前述のとおり、
- 低血糖
になります。パミルコンが低血糖を起こす頻度は他のSU薬よりも多い印象があります。
万が一低血糖が生じた場合は、すぐにアメや糖分の入ったジュースなどを摂取するようにしましょう。意識レベルが低下し、口から摂取が不可能な場合はすぐに医療機関に搬送し、ブドウ糖を点滴してもらう必要があります。
その他に生じる副作用には、
- 体重増加
- 発疹
- 掻痒(かゆみ)
- 倦怠感
- 心窩部痛
- めまい
- 下痢
- 吐き気
などが報告されています。症状がひどい場合は減量あるいは中止となりますが、症状が軽度であればそのまま様子をみることもあります。
また、検査値の異常として
- 肝臓系酵素の上昇(AST、ALTなど)
- 白血球減少
などが報告されています。パミルコン服用中は定期的に血液検査を行うことが望ましいでしょう。
稀ですが重大な副作用として、
- 溶血性貧血
- 無顆粒球症
- 肝炎、肝機能障害、黄疸
などが報告されています。
パミルコンは投与してはいけない方がいます。下記に該当する方はパミルコンを服用できませんので、該当しないかどうか注意しましょう。
- 重篤な肝機能障害のある方
- 重篤な腎機能障害のある方
- 下痢、嘔吐等の胃腸障害のある方
- 妊婦又は妊娠している可能性のある方
- トラクリア(一般名ボセンタン)を投与している方
また下記に該当する方は、パミルコンで治療するのではなくよりインスリン製剤による厳格な治療が必要になり、同様にパミルコンを使用することは出来ません。
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある方
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の方
このようにパミルコンは副作用には注意が必要なお薬になります。
5.パミルコンの用法・用量と剤形
パミルコンは、
パミルコン錠 1.25mg
パミルコン錠 2.5mg
の2剤があります。
パミルコンの使い方は、
通常、1日量として1.25mg~2.5mgを経口投与し、必要に応じ適宜増量して維持量を決定する。ただし、1日最高投与量は10mgとする。投与方法は、原則として1回投与の場合は朝食前又は後、2回投与の場合は朝夕それぞれ食前又は後に経口投与する。
となっています。
作用時間としては12~24時間程度と考えられており、血糖の推移をみながら1日1回投与がいいのか2回投与がいいのかを決めていきます。
6.パミルコン錠が向いている人は?
以上から考えて、パミルコン錠が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
パミルコン錠の特徴をおさらいすると、
・SU(スルホニルウレア)薬に属するお薬である
・インスリンの分泌量を増やすことで血糖を下げる
・血糖を下げる効果は非常に強力だが、低血糖に注意
・使い続けていると次第に効きが悪くなっていく(二次無効)
・低血糖のリスクのため、現在では最初から用いられることは少ない
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
というものでした。
パミルコンは血糖を下げる力は非常に強力であるものの、低血糖のリスクも高いお薬になります。
またインスリンを無理矢理「絞り出す」お薬であり、漫然と長期間使い続けていると次第に膵臓β細胞が疲れてインスリンを分泌できなくなってしまいます。
血糖を下げる強力な作用は頼れるものの、このような理由から最初から使うお薬としては適していません。
他の糖尿病治療薬でどうしても治療が不十分な時、やむを得ず慎重に使うお薬になります。また低血糖のリスクがあることから安易に高用量を使うべきではなく少量から初めて慎重に少しずつ増やしていく必要のあるお薬でしょう。
糖尿病のお薬にはいくつか種類がありますが、大きく分けると3種類に分けられます。
1つ目が、血糖を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を促すことで血糖を下げようとするお薬です。これには「スルホニル尿素(SU)薬」「速効型インスリン分泌促進薬」「DPP4阻害薬」「GLP1作動薬」などがあります。
2つ目は、インスリン自体を分泌させるのではなく、インスリンの効きを高めることで血糖を下げるお薬です。これには「ビグアナイド(BG)剤」「チアゾリジン誘導体」などがあります。インスリンの作用は血液中の糖分を筋肉や脂肪などに取り込ませることですが、同じように血液中の糖分を筋肉や脂肪に取り込ませやすくするのがこれらのお薬の主な作用になります。
最後が、糖分を吸収しにくくしたり排泄しやすくするお薬です。血糖の吸収を穏やかにする「αグルコシダーゼ阻害剤」や、尿から糖をたくさん出すようにする「SGLT2阻害薬」などがあります。
この中でSU薬であるパミルコンは1つ目のインスリンの分泌を促すお薬になります。
7.お薬以外の糖尿病の治療法
お薬は疾患を治療するために重要な方法の1つです。
しかし糖尿病をはじめとした生活習慣病は、お薬だけでなく日々の生活を工夫する事も大切です。むしろこのような生活習慣の改善が主であり、お薬は補助的な役割だと考えるべきです。
実際に、糖尿病治療薬の添付文書には次のように書かれています。
本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること。
「まずは食事・運動療法を行って、それでも効果が不十分な時のみお薬は使ってね」という事です。
では糖尿病を改善させるためには、どのように食生活・運動習慣を気を付けていけばいいのでしょうか。大切なポイントをお話します。
Ⅰ.規則正しく・バランスの良い食事を
食事は規則正しく食べる事が大切です。朝食・昼食・夕食と1日3食規則正しく食べましょう。
「1日1食しか食べない」
「朝食を抜いている」
このような不規則な食生活をすると糖尿病をむしろ悪化させる事もあります。
1日に食べる量が同じでも、3食に分けて少しずつ食べるのと、1食でドカッと食べるのとでは血糖値の上がり方が異なります。一気に大量に食べると血糖値が急激に上昇するため、全身の臓器も痛みやすくなります。
また食事回数が少ないと、間食で補ってしまう事が多々あります。アメやチョコレート、スナックなど、間食には糖質を多く含むものが多く、これも糖尿病をかえって悪化させます。
食事は、よく噛んでゆっくり食べる事も大切です。ゆっくり食べればゆっくり血糖値が上昇していきますので、急いで食べるよりも臓器への負担も少なくなります。
また食事内容のバランスも大切です。
近年は糖質制限などがもてはやされていますが、糖質はエネルギーとしてある程度は必要になります。極端な偏食をするのではなく、バランス良く摂取するようにしましょう。
推奨されているバランスは、
炭水化物:たんぱく質:脂質=45~60%:10~20%:25~35%
程度と言われています。
一人暮らしなどで食事バランスを十分に考えられないという方は、配食を利用するのも手です。近年はバランスが考えられた食事を冷凍で自宅まで送ってくれる業者もあります。
▽ ウエルネスダイニング【低糖質・低カロリーご飯を配食してくれます】
ウエルネスダイニングでは、低糖質のご飯を配送してくれます。普通の米飯は1膳で250kcal(糖質55g)ほどありますが、こちらの米飯は1膳192kcal(糖質43.2g)に抑えられています。1日(3食)で考えれば約180kcalほど違ってきます。
彩ダイニングでは、糖尿病の方に向けた副食(おかず)を配送してくれます。1食240kcalに抑えて作られており、炭水化物・タンパク質・脂質も理想的なバランスになるよう考えられています。
種類もたくさんあるため、飽きずに続ける事が出来ます。
Ⅱ.野菜を先に食べよう
食事を食べる際に、普通に食べるのと、野菜を先に食べて糖質を後で食べるのとでは後者の方が糖尿病が改善しやすいという報告があります。
これは野菜を先に食べる事で血糖値の上昇が緩やかになるためだと考えられています。
食事は野菜から先に食べるようにしましょう。
生活習慣上なかなか野菜を先に食べれないという方は、サプリメントを利用するという方法もあります。
ベジファスは野菜に含まれる食物繊維を多く含んだゼリーで食事前に簡単に服用する事できます。ベジファスを最初に取る事で、血糖値の上昇を抑え、糖尿病を改善させやすくします。
Ⅲ.カロリー制限を
自分が1日に摂取してよいカロリーの上限を意識しておきましょう。
成人であればおおよそ1200~2000kcal/日になりますが、どのくらいのカロリーを摂取して良いかはその人の身長や活動量によって異なります。
摂取カロリーの決め方は「BMI×身体活動量」で簡易的に計算できます。
BMIは身長によって設定されている標準体重(理想的な体重)の事で、「BMI=身長(m)×身長(m)×22」で計算できます。
身体活動量は、日常で身体をどれくらい動かしているかで、
・軽労作:デスクワークが主・主婦など:25~30kcal
・中等度労作:立ち仕事が多い:30~35kcal
・重労作:力仕事が多い:35kcal~
と分けられます。
下表で自動で計算できますので、自分の1日摂取カロリーの上限を計算してみましょう。
[CP_CALCULATED_FIELDS id=”6″] |
どうしても甘いものや炭水化物食を食べてしまうという方は、最近はカロリーゼロスイーツや低糖質食など工夫された食事もありますので、無理な制限をするのではなく、このような食べ物を上手に利用するのも手です。
糖尿病で食事制限をしているけど、ラーメンが食べたい、という時にお勧めです。一般的なとんこつラーメンは800kcal程度ありますが、このラーメンは糖質を極限までカットしており麺とスープを合わせても約300kcalと超低カロリーになっています。
味は、やはり一般的なラーメンと比べるとやや物足りなさを感じる方もいらっしゃいますが、アンケートでも高い満足度が得られています。
くずもち、わらびもち、あんみつ、ようかん、おしるこなど、年配の方が好まれる和菓子を超低カロリーで作っています。
Ⅳ.適度な運動を
血糖値を下げるためには適度な運動も必要です。
理想は毎日ですが、毎日まで行かなくても週3回以上、1回30分以上の運動習慣を目指しましょう。
無理な運動習慣は長続きしませんので、無理なく続けられる程度の運動を設定する事が大切です。
- 毎日公園を散歩する
- プールでゆっくり泳ぐ
- ゆっくりジョギングやサイクリングする
などの負荷の低い運動でも十分に効果があります。日々続けていく事が何よりも大切です。