ペクタイトの効果・効能と副作用【去痰剤】

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ペクタイト錠(一般名:L-メチルシステイン塩酸塩)は1974年から発売されているお薬です。いわゆる「痰切り」で、専門的には「去痰剤(きょたんざい)」と呼ばれます。

ペクタイトは、主に風邪や気管支炎などで痰がからんでしまうような時に用いられます。ネバネバの痰を溶かし、サラサラにする事で喀出させやすくする作用があります。

去痰剤の中でペクタイトはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここではペクタイトの特徴や効果・副作用についてお話させて頂きます。

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1.ペクタイトの特徴

まずはペクタイトの特徴を紹介します。

ペクタイトは痰のネバネバした成分を溶かす事で粘度を下げたり、気道に漿液性(サラサラ)の分泌物を出す事で痰を柔らかくし、排出させやすくするお薬です。

ペクタイトは、痰のネバネバの原因である「ムコ蛋白」を分解する事で、痰の粘度を下げるお薬になります。粘性(ネバネバ度)を下げるため痰を「溶かす」ようなイメージで、これにより痰が喀出されやすくなります。

また気管表面から漿液性(サラサラ)の分泌物を分泌するはたらきがあります。漿液性の分泌物が痰に吸収されると痰は水分を含み柔らかくなるため、この作用も痰の喀出を助けてくれます。

意外な作用としては、唾液の分泌を増やす作用もあります。これはお薬の副作用などで口が乾いてしまう患者さんに用いられる事があります。

痰切りにもいくつかの種類がありますが、その作用を大きく分けると、

・痰を出しやすくするお薬
・痰を溶かすお薬

の2つに分けられます。

ペクタイトはこの両者の作用を持ちますが、主となる作用で考えると後者の「痰を溶かすお薬」に分類されます。

ちなみに前者に該当する去痰剤には「ムコダイン(一般名:カルボシステイン)」、「ムコソルバン(一般名:アンブロキソール)」などがあり、後者に該当する他の去痰剤には「ビソルボン(一般名:ブロムヘキシン)」などがあります。

ペクタイトは安全性も高く、重篤な副作用が生じる事は極めて稀です。

以上からペクタイトの特徴として次のような点が挙げられます。

【ペクタイトの特徴】

・ムコ多糖を分解する事で痰の粘度を下げる
・気管表面から漿液性の分泌物を出す事で痰の粘度を下げる
・唾液の分泌量を増やす作用がある
・副作用が少なく、安全性は高い

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2.ペクタイトはどのような疾患に用いるのか

ペクタイトはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

〇下記疾患の去痰

感冒、気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、けい肺

〇慢性副鼻腔炎の排膿

難しい病名が書かれていますが、基本的には痰が出るような呼吸器疾患に対して「痰切り」の目的で投与されるという認識で良いでしょう。

加えてペクタイトは副鼻腔炎にも適応があります。これはペクタイトは痰を溶かすだけでなく、漿液性の分泌物の分泌を亢進させる作用もあるためです。

気管と副鼻腔は構造的に似ているため、ペクタイトは気管の漿液性分泌物を増やすだけでなく、副鼻腔においても漿液性分泌物を増やします。副鼻腔炎で副鼻腔に膿が溜まっている場合、ペクタイトによって膿に水分が含まれるため、排膿されやすくなります。

ペクタイトはこれらの疾患の対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

ペクタイトの上記疾患に対する全体的な有効率は、67.5%と報告されています。

疾患別にみてみると、

  • 急性気管支炎の去痰に対する有効率は94.5%
  • 慢性気管支炎の去痰に対する有効率は67.8%
  • 気管支拡張症の去痰に対する有効率は77.4%
  • 肺結核の去痰に対する有効率は44.1%
  • 気管支喘息の去痰に対する有効率は69.1%
  • けい肺の去痰に対する有効率は71.4%
  • 感冒の去痰に対する有効率は64.7%
  • 上気道炎の去痰に対する有効率は69.2%
  • 慢性副鼻腔炎の排膿に対する有効率は58.0%

と報告されています。

3.ペクタイトにはどのような作用があるのか

主に痰切り(去痰剤)として用いられるペクタイトですが、どのような機序で痰を出しやすくしているのでしょうか。

ペクタイトには次のような作用がある事が知られています。

Ⅰ.ムコ蛋白を分解する

ペクタイトは、痰の構成成分であるムコ蛋白を分解するはたらきがあります。

ムコ蛋白は糖蛋白の一種で、糖分を多く含む事で粘度(ネバネバ度)を持ちます。痰にムコ蛋白が多量に含まれていると、粘度が高くなって気管にこびりついてしまうため、咳をしても喀出されにくくなります。

ペクタイトは痰に含まれるムコ蛋白のS-S結合を切り離す作用をもちます。これはペクタイトが持つ活性SH基のはたらきによります。これによりムコ蛋白を分解し、痰の粘度を下げてくれます。

痰の粘度が下がり、ネバネバの痰がサラサラになれば痰は気道にこびりつきにくくなります。これにより、痰が咳で体外に排出されやすくなるというわけです。

Ⅱ.漿液性分泌の増加

ペクタイトは、漿液性(サラサラ)の分泌物を気道から分泌させるのを促進させる作用があります。漿液性の分泌物がたくさん分泌されると、痰に漿液性成分が混ざるため、粘度が低下してサラサラになり、痰が排出されやすくなるのです。

ちなみに副鼻腔も気管支と似た構造をしているため、ペクタイトは副鼻腔の漿液性分泌物を増加させるはたらきもあります。

これにより副鼻腔に膿が溜まっている副鼻腔炎の排膿を促進する作用も期待できます。

Ⅲ.唾液分泌作用

ペクタイトはⅡ.と同様の機序にて唾液の分泌も亢進させます。そのため口が乾いているような方にしばしば用いられる事があります。

例えば精神科のお薬(向精神薬)を服用していると、副作用の抗コリン作用によって口渇が生じる事があります。このような副作用を抑えるためにペクタイトが利用される事があります。

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4.ペクタイトの副作用

ペクタイトにはどんな副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。

ペクタイトは、副作用発生率の正確な調査はされていません。しかし使用している印象としては、副作用は少なく安全性は高いお薬です。

生じうる副作用としては、

  • めまい
  • 頭痛
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 発疹

などが報告されています。

また副作用ではないのですが、ペクタイトを投与するとネバネバの痰がサラサラになって喀出されやすくなるため、一時的に痰の量が増える事があります。

痰が増えてしまうためびっくりする方もいますが、これは気道にたまっていた痰がお薬の作用で出てきただけですので、心配はいりません。

5.ペクタイトの用法・用量と剤形

ペクタイトには、

ペクタイト錠 50mg
ペクタイト錠 100mg

の2剤型があります。

ペクタイトの使い方は、

通常成人には、1回100mgを1日3回経口投与する。なお、年令、症状により適宜増減する。

と書かれています。

ペクタイト錠は、腸で溶けるように特殊なコーティングがされています。このように胃で溶けずに腸で溶けるように設計されている剤型を専門的には「腸溶錠」と呼びます。

ペクタイトは腸で溶ける事で作用がしっかりと発揮されるお薬ですので、服用時に噛んではいけません。噛んでしまうとコーティングが剥がれてしまい、腸ではなく胃で溶けてしまい、しっかりとした効果が得られなくなってしまいます。

6.ペクタイトが向いている人は?

以上から考えて、ペクタイトが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ペクタイトの特徴をおさらいすると、

・ムコ多糖を分解する事で痰の粘度を下げる
・気管表面から漿液性の分泌物を出す事で痰の粘度を下げる
・唾液の分泌量を増やす作用がある
・副作用が少なく、安全性は高い

などがありました。

ペクタイトは痰を溶かす事で喀出しやすくするお薬で、安全性も高いというメリットがあります。

臨床現場では、去痰剤を処方する際には、

・ムコダイン(一般名:カルボシステイン)
・ムコソルバン(一般名:アンブロキソール)

といった痰を出しやすくするお薬がまず用いられる事が多いのですが、ペクタイトはこれらの去痰剤とは異なる作用機序で痰を改善させてくれるため、これらのお薬の効果が不十分な時にも試してみる価値のあるお薬になります。

また精神科のお薬などの副作用によって口の渇きが出てしまっている場合、ペクタイトを服用する事で唾液の分泌が促進され、口の渇きが和らぐ事がありますので、お薬の副作用による口渇に悩んでいる方も試してみても良いかもしれません。

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