ラキソベロン(一般名:ピコスルファートナトリウム)は1980年から発売されている下剤(瀉下薬、便秘薬)になります。大腸刺激性下剤という種類に属し、しっかりとした排便効果を得られるという特徴があるため、現在でも広く用いられています。
ラキソベロンは妊婦の方に処方されることもありますが、妊婦に対する安全性はどうなのでしょうか。
ラキソベロンの妊娠そして授乳中の使用について紹介します。
1.ラキソベロンは体内にほとんど吸収されない
ラキソベロンはその特徴として、腸管内に留まり、体内にほとんど吸収されないことが知られています。
実際にラットを用いた研究では、ラキソベロンを服薬後、血中の濃度を測定しても検出できる濃度以下であったことが示されています。また、妊娠中のラットを用いた研究においても、胎盤・羊膜・子宮に分布する血液からはラキソベロンは同様に検出できず、母ラットと同様に胎児ラットにも影響がないことが確認されています。
母乳にもほとんど移行していないことがヒトを対象にした研究で示されています。
このようにラキソベロンは、腸管から体内にほとんど吸収されません。腸管の中だけで作用し、そのまま便と一緒に排泄されるということです。体内に入ってこないということは、赤ちゃんにも薬物が移行していかないということであり、ラキソベロンは妊娠中・授乳中にも安全に使える下剤だということが出来ます。
2.ラキソベロンを妊婦が使用しても大丈夫か
結論から言うと、ラキソベロンは妊娠中に使用することが可能です。
妊娠中に安全に使用できる下剤というのは限られており、妊婦には使用できない下剤も少なくありません。具体的には、
・腸液分泌促進薬であるアミティーザ(ルビプロストン)
は妊婦に対して禁忌となっています。禁忌とは、「絶対に使用してはいけない」という意味です。
また、
・大腸刺激性下剤(アントラキノン系誘導体)であるプルゼニド(センノシド)やアローゼン(センナ・センナ実)
も妊婦に対しては原則禁忌になっています。原則禁忌とは、「原則としては使用できないけども、どうしても使用せざるを得ない時には慎重に投与すること」というものです。
ラキソベロンは、プルゼニドやアローゼンと同じ大腸刺激性下剤には属しますが、ジフェノール誘導体をいう異なる物質ですので、作用機序も異なります。先ほど説明した通り、ラキソベロンは腸管のみに作用し、体内に入ってこないため、妊娠中も安全に使用することが出来るのです。
3.ラキソベロンを服用しながら授乳しても大丈夫か
ラキソベロンは授乳中にも用いることが出来ます。
先ほども紹介したように、ラキソベロンを服用した母親から分泌される母乳を検査したところ、母乳中のラキソベロンやその代謝物は検出できる濃度以下であったという研究があります。
ラキソベロンは腸管のみで作用し、体内にほとんど吸収されないため、当然母乳にもほとんど移行しません。
そのため、授乳中も服用しなたら授乳を続けることが可能です。
4.とはいっても主治医には相談しましょう
このようにラキソベロンは、妊娠・授乳中にも安全に使える下剤です。
しかし、とは言ってもラキソベロンを使っている時に、妊娠したり、授乳をすることになった場合は、必ず主治医に報告し、主治医の同意を得た上で使用を続けて下さい。