ポラプレジンクの効果と副作用【胃薬】

ポラプレジンクOD錠・ポラプレジンク顆粒は 1994年から発売されている「プロマック」という胃薬のジェネリック医薬品になります。

胃薬にもたくさんの種類がありますが、ポラプレジンクは「亜鉛」を含んでおり独特の作用機序を持つ胃薬になります。

ポラプレジンクはどんな作用を持つお薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ここではポラプレジンクの特徴や効果・副作用についてみていきましょう。

 

1.ポラプレジンクの特徴

まずはポラプレジンクの全体的な特徴について紹介します。

ポラプレジンクは、含有されている「亜鉛」や「L-カルシノン」が胃炎・胃潰瘍部に付着し、創傷(キズ)を修復したり、炎症を抑えたりするという作用を持つ胃薬になります。

ポラプレジンクは、「亜鉛」と「L-カルシノン」という2つの成分が錯体を形成しているという構造をしています。

亜鉛とL-カルシノンには、

  • 組織を修復する作用
  • 活性酸素を除去する作用
  • 炎症を抑える作用
  • 肥満細胞の膜安定化作用

などがあります。これらの作用が胃炎・胃潰瘍の改善に役立ちます。

組織を修復する作用は傷を治す作用であり、胃に生じた創傷(胃炎・胃潰瘍)を治してくれます。

活性酸素は組織に障害を与える物質ですので、それを除去する作用は傷の治りを早めたり、傷を出来にくくする作用につながります。

また炎症を抑える作用は、胃炎・胃潰瘍によって生じた胃痛や胃部不快感を和らげてくれます。

肥満細胞は胃粘膜下層に存在し、ヒスタミンやセロトニンなどを分泌する細胞ですが、これらの物質が分泌されると胃に炎症が引き起こされてしまいます。ポラプレジンクは肥満細胞の膜安定化作用によって、肥満細胞がヒスタミンやセロトニンを分泌しにくいようにする作用もあり、これも傷を治りやすくする作用につながります。

ポラプレジンクは、亜鉛とL-カルシノンの持つこのような作用によって胃炎・胃潰瘍を治してくれるのです。

他の胃薬には無い、独特の作用機序を持っていることがポラプレジンクの特徴です。

これらの作用は穏やかで決して強力ではありませんが、その分副作用も多くはありません。

ポラプレジンクは主に日本で使われており、海外においては主要な胃薬ではありません。そのため世界的に見ればメジャーな胃薬ではありませんが、独特な作用機序を持つポラプレジンクは他の胃薬では効果が不十分な場合でも役立つ可能性があります。

またポラプレジンクは胃薬なのですが、亜鉛を含むため、胃疾患以外にも用いられる事があります。具体的には、

  • 味覚障害
  • 褥瘡などの皮膚疾患

にもある程度の効果が期待できます。

ポラプレジンクはジェネリック医薬品ですので先発品の「プロマック」と比べて薬価が安いのもメリットの1つになります。

以上からポラプレジンクの特徴として次のような事が挙げられます。

【ポラプレジンクの特徴】

・亜鉛とL-カルシノンの持つ作用により胃炎・胃潰瘍を治療する
・創傷治癒促進作用、活性酸素除去作用、肥満細胞の膜安定化作用、抗炎症作用などがある
・作用は穏やかで副作用が少ない
・味覚障害や褥瘡にも効果が期待できる
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

 

2.ポラプレジンクはどんな疾患に用いるのか

ポラプレジンクはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

胃潰瘍

ポラプレジンクの適応は胃潰瘍のみになっています。

ポラプレジンクは胃潰瘍に対してどのくらいの効果が期待できるのでしょうか。

ポラプレジンクはジェネリック医薬品ですので有効性に対する詳しい調査は行われていません。しかし先発品のプロマックでは行われており、この調査結果が参考になります。

胃潰瘍の患者さんにプロマックを投与した調査では、胃潰瘍が著明に改善した率は54.3%、中等度以上に改善した率は77.3%と報告されています。

ポラプレジンクの胃潰瘍に対する改善率もこれと同程度だと考えられます。

また、実はポラプレジンクは「亜鉛」を含むことから、胃潰瘍以外の疾患にも効果があることが報告されています。

例えば適応外の使い方にはなりますが、味覚障害の治療に用いられることもあります。

味覚障害というのは、食べ物の味を感じにくくなったり感じなくなってしまう事です。亜鉛が不足すると味覚障害が生じることが知られているため、ポラプレジンクは亜鉛不足によって生じている味覚障害に効果を示します。

また亜鉛は上皮細胞の再生を促進するという作用もあります。そのため亜鉛不足で生じている褥瘡などといった皮膚疾患に対しても効果が期待でき、褥瘡患者さんに投与されることもあります。

 

3.ポラプレジンクにはどのような作用があるのか

ポラプレジンクはどのような作用機序を持つお薬なのでしょうか。

ポラプレジンクには

  • 亜鉛
  • L-カルシノン

という2つの有効成分が含まれており、これらがそれぞれ胃を保護するはたらきを持ちます。

亜鉛は必須微量元素であり、創傷治癒促進作用や抗炎症作用などがあります。

・創傷治癒促進作用:創傷(傷)の治りを早める作用
・抗炎症作用:炎症を和らげる作用

またL-カルシノンも組織修復促進作用、肥満細胞膜安定化作用、抗炎症作用などがあります。

・組織修復促進作用:組織が障害を受けた時に治りを早める作用
・肥満細胞膜安定化作用:肥満細胞の細胞膜を安定化させる事により、セロトニンやヒスタミンなどの分泌を抑える作用

これらが胃炎・胃潰瘍を治すために役立ちます。

それではポラプレジンクの作用について詳しくみていきましょう。

 

Ⅰ.潰瘍部の創傷治癒を促進する

ポラプレジンクは、胃の損傷部(潰瘍などが生じている部位)に集中的に付着し、浸透していく特徴があります。

潰瘍部にポラプレジンクが入っていくと、そこで亜鉛とL-カルシノンが持つ組織の修復作用が発揮され、傷の治りを早めてくれます。

具体的には、組織の再生に必要な細胞増殖因子を増やすことで、繊維芽細胞や血管内皮細胞、胃粘膜上皮細胞の増殖を促進させ、胃に出来た傷が早く治るように助けてくれます。

またポラプレジンクは抗炎症作用も持ちます。炎症とは「発赤(赤くなる)」「熱感(熱を持つ)」「腫脹(腫れる)」「疼痛(痛む)」の4つの徴候が生じる状態の事で、組織が障害を受けた時にも認められます。

ポラプレジンクはこの抗炎症作用により、損傷部に生じた炎症を和らげ、これにより傷の治りを早めるという作用もあります。

ちなみにポラプレジンクは胃の損傷部に集中的に付着できるのですが、これはどのような仕組みなのでしょうか。

この答えはポラプレジンクの構造にあります。ポラプレジンクは亜鉛とL-カルシノンが錯体を形成しています(錯体:金属イオンと配位子と呼ばれるイオンが結合したもの)。

この錯体の構造が、胃の組織損傷部位との親和性を持つため、ポラプレジンクは正常な胃粘膜にはあまり付着せず、損傷部にのみ集中的に付着するのだと考えられています。

 

Ⅱ.活性酸素除去作用

ポラプレジンクは活性酸素を除去するはたらきがあります。

活性酸素は細胞に損傷を与える物質で、胃に発生すれば胃粘膜に損傷を与え、胃炎や胃潰瘍の原因となります。ストレスや喫煙などで発生しやすいと言われています。

活性酸素が多くなると胃粘膜細胞が障害されるため、傷の治りは悪くなってしまいます。

ポラプレジンクは活性酸素を除去するはたらきを持ち、これも胃の炎症・潰瘍の治りを助けれくれます。

 

Ⅲ.肥満細胞の膜安定化作用

ポラプレジンクには肥満細胞の膜安定化作用があります。

膜安定化作用というとどんな作用なのかイメージが沸きにくいですが、これは胃粘膜下層に存在する肥満細胞の細胞膜を安定させる作用になります。

胃粘膜の下には肥満細胞が存在しています。この肥満細胞はストレスを受けることによってセロトニンやヒスタミンといった物質を放出することが知られています(これを脱顆粒と呼びます)。

この、放出されたセロトニン・ヒスタミンは胃粘膜に炎症を引き起こし、組織を損傷させてしまいます。

ポラプレジンクは、肥満細胞の細胞膜を安定化させる事によって、肥満細胞が脱顆粒しにくいようにします。

するとセロトニンやヒスタミンによる胃粘膜障害が生じにくくなるため、胃を保護するはたらきにつながります。

 

4.ポラプレジンクの副作用

ポラプレジンクにはどのような副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいでしょうか。

ポラプレジンクはジェネリック医薬品ですので副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のプロマックでは行われており、副作用発生率は2.9%と報告されています。

ポラプレジンクの副作用発生率もこれと同程度だと考えられ、安全性は高いお薬だと言えます。

生じうる副作用としては、

  • 発疹
  • 便秘
  • 吐き気

などの消化器症状が主に挙げられます。いずれも重篤となることは少なく、ほとんどの例で様子をみている中で自然と改善してきたり、減量をすることで改善が得られます。

どうしても副作用がつらい場合は、ポラプレジンクを中止すれば、後遺症などが残ることはありません。

また、血液検査にて

  • 肝機能の異常(AST、ALT、ALP、LDHなど)
  • 好酸球増多
  • 中性脂肪の異常

などが生じる可能性が報告されています。ポラプレジンクを長期に渡って服薬する場合は、定期的に血液検査を行うことが望まれます。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • 肝機能障害、黄疸
  • 銅欠乏症

が報告されています。

ポラプレジンクは肝臓に負担をかける可能性があるお薬ですので、服用が長期に渡る場合は、定期的に肝機能を血液検査などで見ておく必要があります。

また亜鉛を含むポラプレジンクは稀に銅を欠乏させてしまう事があります。これは亜鉛が銅の吸収をジャマするためです。

特に元々栄養状態が悪い方などでは銅が欠乏し、貧血や汎血球減少(赤血球・白血球・血小板など全ての血球の数が減る事)などが生じる事がありますので注意が必要です。

 

5.ポラプレジンクの用法・用量と剤形

ポラプレジンクには、

ポラプレジンクOD錠 75mg
ポラプレジンク顆粒 15%

の2剤形があります。

OD錠というのは「口腔内崩壊錠」の事で、これは唾液で溶けるタイプのお薬になります。水が無くても服用できるため、外出先で服用する機会の多い方や、飲み込む力が低下している高齢者などに使いやすい剤型です。

ポラプレジンクの使い方は、

通常、成人には1回75mgを1日2回朝食後及び就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する

となっています。

 

6.ポラプレジンクが向いている人は?

以上から考えて、ポラプレジンクが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ポラプレジンクの特徴をおさらいすると、

【ポラプレジンクの特徴】

・亜鉛とL-カルシノンの持つ作用により胃炎・胃潰瘍を治療する
・創傷治癒促進作用、活性酸素除去作用、肥満細胞の膜安定化作用、抗炎症作用などがある
・作用は穏やかで副作用が少ない
・味覚障害や褥瘡にも効果が期待できる
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

というものでした。

ポラプレジンクは穏やかに効き、副作用も少なめですので、主に軽症の胃炎・胃潰瘍に使いやすいお薬になります。

しかし海外においてはほとんど使われておらず、主に日本でのみ使われているお薬ですので、世界的に見ればメジャーなお薬ではありません。

ポラプレジンクに含まれる亜鉛は、胃を保護するはたらき以外にも亜鉛不足による味覚障害を改善したり、皮膚の組織修復を促進するために褥瘡の治療などにも使われることがあります。

そのため、

  • 味覚障害
  • 褥瘡

などに胃炎・胃潰瘍を合併しているような症例においては一石二鳥の効果が期待できます。

また他の胃薬とは作用機序が異なるため、他の胃薬であまり効果が得られなかった時でも、ポラプレジンクは効果が得られる可能性がありますので、試してみても良いかもしれません。

ジェネリック医薬品であるポラプレジンクは先発品と比べて薬価が安いのも特徴です。経済的負担少なく治療をしたい方にもおすすめしやすいお薬になります。