ペミラストンの効果と副作用

ペミラストン(一般名:ペミロラストカリウム)は1991年から発売されている抗アレルギー薬です。

アレルギーによって生じる諸症状を抑え、主にアレルギー疾患の治療薬として用いられています。

抗アレルギー薬の中でペミラストンはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

ペミラストンの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

 

1.ペミラストンの特徴

まずはペミラストンの全体的な特徴についてみてみましょう。

ペミラストンはケミカルメディエーターの分泌を抑えることでアレルギー症状を改善させます。またアレルギー発症の原因になる好酸球の遊走・浸潤を抑える作用もあります。

アレルギー症状はアレルギー反応性細胞(肥満細胞や好酸球など)が、アレルギー誘発物質を過剰に分泌することで発症します。

このアレルギー誘発物質は「ケミカルメディエーター」と呼ばれ、ヒスタミン、ロイコトリエン、PAF(血小板活性化因子)など様々な物質があります。

ペミラストンは、これらのケミカルメディエーターがアレルギー反応性細胞から分泌されるのを抑制するはたらきがあります。これによってアレルギー症状を抑えてくれるのです。

以上から、ペミラストンの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ペミラストンの特徴】

・ケミカルメディエーターのはたらきを抑え、アレルギー症状を抑える
・好酸球の遊走・浸潤を抑えることでアレルギー症状を抑える

 

2.ペミラストンはどのような疾患に用いるのか

ペミラストンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

気管支喘息
アレルギー性鼻炎

ペミラストンはアレルギーの原因となるケミカルメディエーターのはたらきを抑えるため、アレルギー疾患に対して適応があります。

具体的には喘息やアレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)などですね。

ペミラストンの有効性については、

  • 気管支喘息で改善した率は69.9%(ドライシロップは72.1%)
  • アレルギー性鼻炎で中等度以上に改善した率73.6%

という結果が出ています。

ペミラストンをアレルギー性鼻炎に用いる場合、ペミラストンはヒスタミンだけでなくロイコトリエンなど様々なケミカルメディエーターに作用するため、抗ヒスタミン薬と比べると鼻水症状(鼻水が垂れる)だけでなく、鼻閉症状(鼻が詰まる)にも効果があるという特徴があります。

 

3.ペミラストンにはどのような作用があるのか

ペミラストンはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。

ペミラストンの作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

Ⅰ.ケミカルメディエーターの抑制

アレルギー症状は、アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)が体内に入ってくると生じます。

アレルゲンによって、アレルギー反応性細胞(肥満細胞や好酸球など)からアレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)が分泌されます。これがそれぞれの受容体に結合することで様々なアレルギー症状が発症します。

ケミカルメディエーターには、

  • ヒスタミン
  • ロイコトリエン
  • PAF(血小板活性化因子)
  • ECP(Eosinophil Cationic Protein:好酸球塩基性蛋白)
  • EPX(Eosinophil Protein X:好酸球蛋白X)

などがあります。抗アレルギー薬の中にはこれらのケミカルメディエーターに対してブロックする作用があるものもあります。例えば、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬などがあります。

ペミラストンは特定のケミカルメディエーターをブロックするわけではなく、アレルギー反応性細胞から、上記のようなケミカルメディエーターが分泌されるのを抑える作用があります。

これによって種々のケミカルメディエーターの分泌を抑え、アレルギー症状の発症を防ぐことが出来るのです。

 

Ⅱ.抗好酸球作用

アレルギー反応の1つに、アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)によって好酸球の脱顆粒(好酸球が顆粒を分泌する)という現象があります。

好酸球から分泌される顆粒には様々な成分が含まれており、上記のようなゲミカルメディエーターもその1つです。また、炎症の原因となる物質も放出してしまい、これによってアレルギー反応がより悪化してしまう事もあります。

アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となる物質)の刺激によって好酸球がその部位に浸潤し、アレルギー反応を引き起こしてしまうことがあります。

ペミラストンはアレルゲンの刺激によって好酸球が浸潤してくるのを防ぐはたらきがあります。

また、好酸球がEPO(好酸球ペルオキシダーゼ)や活性酸素などを遊離するのを抑制するはたらきもあり、これもアレルギー症状の緩和に役立っていると考えられています。

 

4.ペミラストンの副作用

ペミラストンにはどのような副作用があるのでしょうか。

ペミラストンの副作用は1.71%前後(ドライシロップは0.56%前後)と報告されており、その副作用は多くはありません。

具体的な内容としては、

  • 腹痛、下痢
  • 眠気
  • 嘔気

などが報告されています。

また、

  • 肝機能障害(AST、ALT、ALP上昇)

といった検査の異常が生じることがあります。ペミラストンを長期服薬・高用量服薬している場合などでは定期的に血液検査を行うことが望ましいでしょう。

またペミラストンは妊娠している方は服用する事ができません。

その理由として、ラットでの動物実験でペミラストンを大量投与したところ、胎児の発育が遅延した例が報告されたからです。

人間においても同じような事が生じるのかは不明ですが、可能性はあるため妊娠中の方は禁忌(絶対に服用してはダメ)となっています。

 

5.ペミラストンの用法・用量と剤形

ペミラストンは、

ペミラストン錠 5mg
ペミラストン錠 10mg
ペミラストンドライシロップ 0.5%

の3剤形があります。

ペミラストンの使い方としては、

【気管支喘息】
通常,成人には1回10mgを1日2回、朝食後及び夕食後(又は就寝前)に経口投与する。

小児においては、通常、下記の年齢別投与量を1回量とし、1日2回、朝食後及び夕食後(又は就寝前)に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

5歳以上11歳未満 5mg
11歳以上 10mg

【アレルギー性鼻炎】
通常、成人には1回5mgを1日2回、朝食後及び夕食後(又は就寝前)に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

となっています。

またドライシロップは主に子供が服用するためのもので、その使い方は、

【気管支喘息】
通常、小児には1回0.2mg/kgを1日2回、朝食後及び就寝前に、用時溶解して経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

年齢別の標準投与量は、通常下記の用量を1回量とし、1日2回朝食後及び就寝前に、用時溶解して経口投与する。

1歳以上5歳未満 2.5mg
5歳以上11歳未満 5.0mg
11歳以上 10.0mg

【アレルギー性鼻炎】
通常、小児には1回0.1mg/kgを1日2回、朝食後及び就寝前に、用時溶解して経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。年齢別の標準投与量は、通常、下記の用量を1回量とし、1日2回朝食後及び就寝前に、用時溶解して経口投与する。

1歳以上5歳未満 1.25mg
5歳以上11歳未満 2.5mg
11歳以上 5.0mg

となっています。

 

6.ペミラストンが向いている人は?

以上から考えて、ペミラストンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ペミラストンの特徴をおさらいすると、

・ケミカルメディエーターのはたらきを抑え、アレルギー症状を抑える
・好酸球の遊走・浸潤を抑えることでアレルギー症状を抑える

といったものがありました。

現在はアレルギー疾患に対するお薬が数多く揃っているため、比較的古いお薬に属するペミラストンが使われる機会はそこまで多くはありません。

現在の代表的な抗アレルギー薬は抗ヒスタミン薬ですが、ペミラストンは抗ヒスタミン薬とは異なる作用機序でアレルギー症状を抑えるため、抗ヒスタミン薬があまり効かない方にとっては選択肢の1つになります。