ポステリザン軟膏の効果と副作用【痔疾患治療薬】

ポステリザン軟膏(一般名:大腸菌死菌)は病院で処方される軟膏で、「痔疾患治療薬」という種類のお薬になります。1953年から発売されています。

その名の通り痔を改善するために用いられているお薬です。

ポステリザン軟膏はどのような作用を持っていて、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

ポステリザン軟膏の効果・効能や特徴、副作用についてみてみましょう。

 

1.ポステリザン軟膏の特徴

まずはポステリザン軟膏の特徴をざっくりと紹介します。

ポステリザン軟膏は、副作用が極めて少なく、安全性に優れるお薬になります。

その作用は強くはありませんが、痔にばい菌が感染しないようにしながら傷の治りを促進してくれます。

ポステリザン軟膏は、「大腸菌死菌」が主成分となっています。

大腸菌死菌はその名の通り死んだ大腸菌の事ですが、これには傷の治りを促進したり、傷にばい菌が入らないように感染を防御するはたらきがあることが確認されています。

つまりポステリザン軟膏を痔に塗る事で、ばい菌が入らないようにしながら傷の治りを早めてくれるという事です。これによって痔が治りやすくなります。

ちなみに似た名前のお薬に「強力ポステリザン」というものがあります。強力ポステリザンは、ポステリザン(大腸菌死菌)にヒドロコルチゾンというステロイドも入ったお薬になります。

ステロイドは炎症を抑えるはたらきがあり、ポステリザンよりもステロイドが入った分だけ「強力に効く」という事で「強力ポステリザン」というわけです。

ポステリザンは強力ポステリザンと異なりステロイドを含まないため、炎症を抑える作用はありませんが、その分ステロイドによって生じる副作用を心配する必要もありません。

以上からポステリザン軟膏の特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。

【ポステリザン軟膏の特徴】
・痔を改善させる治療薬
・傷口の治りを促進する作用がある
・傷口のばい菌の感染を防ぐ作用がある
・ステロイドを含まないため、長期間でも使いやすい
・副作用が極めて少なく、安全性が高い

 

2.ポステリザン軟膏はどのような疾患に用いるのか

ポステリザン軟膏はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
・痔核・裂肛の症状(出血、疼痛、腫脹、痒感)の寛解、肛門部手術創

ポステリザン軟膏は、主に痔に対して良く処方される軟膏になります。

 

3.ポステリザン軟膏にはどのような作用があるのか

ポステリザン軟膏は主に痔を治療するために使われますが、どのような作用を持っているのでしょうか。

ポステリザン軟膏の主成分は大腸菌死菌であり、これが痔の改善を助けてくれます。

具体的なポステリザン軟膏の作用について紹介します。

 

Ⅰ.創傷治癒促進作用

ポステリザン軟膏は傷(創傷)の治りを促進する作用があります。これはポステリザン軟膏に含まれる大腸菌死菌が肉芽形成を促進する作用を持つことによります。

肉芽は傷が治る過程で必要なものですので、肉芽形成が促進されれば傷の治りも早くなります。

【肉芽(組織)】
皮膚に傷が出来ると、そこに繊維芽細胞がきて同部は結合組織で補充され、更にそこに血管が新生されていきます。この毛細血管と結合組織からなるものを肉芽といいます。

肉芽は傷が治る過程において必要なものです。傷が治るにつれて肉芽組織は瘢痕組織となっていき、肉芽組織の上に表皮組織が形成されていき、傷は徐々に小さくなって治っていきます。

 

Ⅱ.感染防御作用

ポステリザン軟膏に含まれる大腸菌死菌の浮遊液は、生菌増殖を抑制し、溶菌作用(菌を破壊する作用)があることが知られています。

これはワクチンと似たような機序ではないかと考えられています。死んだ大腸菌を投与することによって、ばい菌をやっつける細胞である白血球の遊走能を高め、菌に対する抵抗力を高めます。

痔が出来る肛門部というのは、大腸菌などの腸内細菌が多く生息している部位になります。そのため、ここに傷が出来るとばい菌感染が二次的に生じやすいため、このような感染防御作用は痔の改善に大きく貢献します。

ポステリザン軟膏はこの感染防御作用により、ばい菌が多い肛門部においても感染をなるべく起こさないようにしてくれます。

 

Ⅳ.便の通りを滑らかにする

ポステリザン軟膏は、油性の軟膏剤が基剤になっています。

油性の軟膏は滑りが良く、また傷口を保護してくれますので、ポステリザン軟膏を塗ることで便が傷口を刺激しにくくなります。

 

4.ポステリザン軟膏の副作用

ポステリザン軟膏は塗り薬であり、全身に投与するものではないのでその副作用も局所に留まる事がほとんどです。そのため、ポステリザン軟膏の副作用は多くはなく、副作用の報告としては288例にポステリザン軟膏を用いて、副作用を認めた例はなかったと報告されています。

とはいえ、肛門に注入するわけですので可能性のある副作用としては、

  • 掻痒感(かゆみ)
  • 便意
  • 軟便
  • 不快感

などの局所(肛門部付近)の症状が出現する可能性があります。

いずれも重篤となることは少なく、多くはポステリザン軟膏の使用を中止すれば自然と改善していきます。

ポステリザン軟膏は副作用をほとんど起こさず、安全性は極めて高いお薬だと言えます。

 

5.ポステリザン軟膏の用量・用法と剤型

ポステリザン軟膏は、

ポステリザン軟膏 25g

の1剤型があります。

ポステリザン軟膏1g中には大腸菌死菌が約2.59億個も含まれているそうです。

ポステリザン軟膏の使い方は、

通常1日1~3回適量を患部に塗布または注入する

と書かれています。

 

 

6.ポステリザン軟膏が向いている人は?

以上から考えて、ポステリザン軟膏が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ポステリザン軟膏の特徴をおさらいすると、

・痔を改善させる治療薬
・傷口の治りを促進する作用がある
・傷口のばい菌の感染を防ぐ作用がある
・ステロイドを含まないため、長期間でも使いやすい
・副作用が極めて少なく、安全性が高い

というものでした。

ポステリザン軟膏の最大の特徴は、副作用がほとんどなく安全性に優れることです。ステロイドを含まないため、痛みを抑えたり腫れを軽減したりという目に見える効果は乏しいのが欠点ですが、穏やかに痔を治してくれるお薬です。

そのため、炎症症状(発赤・熱感・腫脹・疼痛など)があまり強くない軽症の症例に向いているお薬ではないでしょうか。

炎症症状が強い場合は、ポステリザン軟膏にステロイドを入れた「強力ポステリザン」に変更してもいいかもしれません。

また、痔は軽度のものであればお薬で治すこともできますが、ある程度進行しているものだと手術などを行わないといけない場合もあります。

そのため、お薬により治療ではなかなか改善しない場合は、漫然と続けるのではなく、主治医と相談して適切な治療に切り替える必要があります。

痔の治療はお薬だけでなく生活習慣の改善が一番大切です。

  • 座る時間を減らす
  • 食事を規則正しく、バランス良く
  • 飲酒やタバコを控える
  • しっかりと睡眠を取る
  • 刺激物(からいものなど)の摂取を控える

など、生活習慣の改善も忘れないようにしましょう。