プラノプロフェンの効果と副作用【非ステロイド性消炎鎮痛剤】

プラノプロフェンは1988年から発売されている「ニフラン」というお薬のジェネリック医薬品で、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)という種類に属します。

「非ステロイド性消炎鎮痛剤」というと難しい名前ですが、いわゆる「痛み止め」「熱さまし」として使われているお薬のことです。ステロイドでないお薬で、炎症を和らげ痛みを抑えるはたらきを持つものを非ステロイド性消炎鎮痛剤と呼びます。

NSAIDsにはたくさんの種類があります。どれも大きな違いはありませんが、細かい特徴や作用には違いがあり、医師は痛みの程度や性状に応じて、その患者さんに一番合いそうな痛み止めを処方しています。

NSAIDsの中でプラノプロフェンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、プラノプロフェンの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

 

1.プラノプロフェンの特徴

まずはプラノプロフェンの特徴を紹介します。

プラノプロフェンは炎症を抑える事で解熱(熱さまし)・鎮痛(痛み止め)作用を持ちます。NSAIDsの中で効果は中等度です。

プラノプロフェンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)と呼ばれるお薬で、消炎(炎症を抑える)作用を持ちます。NSAIDsの中でも「プロピオン酸系」という種類に属し、同種のNSAIDsの中で効果の強さは中等度になります(お薬の効きは個人差があるためあくまでも目安です)。

NSAIDsの主な用途としては、炎症を抑える事で、

  • 解熱(熱さまし)
  • 鎮痛(痛み止め)

を目的として投与されます。

プラノプロフェンは作用時間が短く半減期(お薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間)が約1.3~5.4時間です。そのため1日を通して効果を持続させたいのであれば1日3回服薬するようになっています。

効きの速さとしては、可もなく不可もなくという感じで、服用してから30~60分後に効果が出始め、2時間ほどで効果が最大となります。

解熱・鎮痛作用の強さとしては、個人差がありますがおおむね「中等度(普通くらい)」になります。

プラノプロフェンはNSAIDsの中で、これといった目立つ特徴は少ないのですが、逆に言えばソツのないバランスの取れたNSAIDsだとも言えます。

ほとんどのNSAIDsに言えることですが、NSAIDsは副作用としては胃腸を痛めてしまうことがあります。もちろんプラノプロフェンにもこの副作用が生じる可能性はあり、特に大量に服用していたり長期間服用している場合は注意が必用です。

またNSAIDsは喘息を誘発しやすくすることが知られており、喘息の方にはできるだけ服用しない方が良いでしょう。

以上からプラノプロフェンの特徴として次のような点が挙げられます。

【プラノプロフェンの特徴】

・鎮痛作用(痛みを抑える)、解熱作用(熱を下げる)は中等度
・副作用の胃腸障害に注意(他のNSAIDsと同様)
・喘息の方は使用に注意(他のNSAIDsと同様)

 

2.プラノプロフェンはどのような疾患に用いるのか

プラノプロフェンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

○下記疾患ならびに症状の消炎・鎮痛
関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、頸肩腕症候群、歯根膜炎、痛風発作

○下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

○外傷後,小手術後ならびに抜歯後の消炎・鎮痛

プラノプロフェンは消炎鎮痛剤ですから、炎症によって生じる症状を抑えるために用いられます。

実臨床では、

  • 痛みを抑える
  • 熱を下げる

のどちらかの目的で投与される事がほとんどです。

適応疾患には難しい病名がたくさん書かれていますが、おおまかな理解としては「痛みや発熱が認められる状態に対して、その症状の緩和に用いる」という認識で良いでしょう。

プラノプロフェンはジェネリック医薬品であるため有効率の詳しい調査は行われていませんが、先発品の「ニフラン」においては、

  • 腰痛症への有効率は59.9%
  • 変形性関節症への有効率は62.3%
  • 頸腕症候群への有効率は51.3%
  • 関節リウマチへの有効率は33.3%
  • 急性上気道炎への有効率は65.1%
  • 歯根膜炎への有効率は66.7%
  • 外傷後・小手術後・抜歯後への有効率は66.1%
  • 痛風発作への有効率は90.0%

と報告されており、プラノプロフェンも同程度だと推測されます。

ただし上記疾患にプラノプロフェンが有効なのは間違いありませんが、プラノプロフェンを始めとするNSAIDsは根本を治す治療ではなく、あくまでも対症療法に過ぎないことを忘れてはいけません。

対症療法とは「症状だけを抑えている治療法」で根本を治しているわけではない「その場しのぎの」治療です。

例えば腰の筋力低下によって腰痛が出現している方に対してプラノプロフェンを投与すれば、確かに痛みは軽減します。しかしこれは原因である腰部の筋肉低下を治しているわけではなく、あくまでも発痛を起こしにくくしているだけに過ぎません。

対症療法が悪い治療法だということではありませんが、対症療法だけで終わってしまうのは良い治療とは言えません。対症療法と合わせて、根本を治すような治療も併用することが大切です。

例えば先ほどの腰痛であれば、プラノプロフェンを使用しつつも、

  • 適度な運動・リハビリをする
  • 栄養をしっかり取る

などの根本的な治療法も併せて行う必要があるでしょう。

 

3.プラノプロフェンにはどのような作用があるのか

プラノプロフェンは「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」という種類に属しますが、NSAIDsの作用はその名のとおり消炎(炎症を抑える)ことで鎮痛する(痛みを抑える)事になります。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。

プラノプロフェンは炎症の原因が何であれ、炎症そのものを抑える作用を持ちます。つまり、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるという事です。

具体的にどのように作用するのかというと、プラノプロフェンなどのNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質のはたらきをブロックするはたらきがあります。

COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。

プロスタグランジンは炎症や痛み、発熱を誘発する物質です。そのため、プラノプロフェンがCOXをブロックすると炎症や痛み、発熱が生じにくくなるのです。

プラノプロフェンはCOXのはたらきをブロックする事で炎症を抑え、これにより

  • 熱を下げる
  • 痛みを抑える

といった効果が期待できます。そのためプラノプロフェンのようなお薬を「COX阻害薬」と呼ぶ事もあります。

ちなみにNSAIDsの解熱作用は、炎症を抑える作用以外にも、脳の視床下部に存在する体温調節中枢に作用する事で体温を下げるという作用もあると考えられています。

またNSAIDsは高くなっている体温を正常体温に下げるはたらきはありますが、正常体温に対してはほとんど影響を与えない事が確認されており、更に低体温にしてしまうリスクはほとんどありません。

 

4.プラノプロフェンの副作用

プラノプロフェンの副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。また副作用はどのくらい多いのでしょうか。

プラノプロフェンはジェネリック医薬品であるため、副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「ニフラン」においては副作用発生率は2.79%と報告されており、プラノプロフェンも同程度だと考えられます。

主な副作用としては、

  • 胃痛
  • 腹部不快感
  • 下痢
  • 発疹
  • 浮腫

などががあります。

プラノプロフェンをはじめとしたNSAIDsには共通する副作用があります。

もっとも注意すべきなのが「胃腸系の障害」です。これはNSAIDsがプロスタグランジンの生成を抑制するために生じます。

プロスタグランジンは胃粘膜を保護するはたらきを持っており、実際にプロスタグランジンを誘導するようなお薬は胃薬として用いられています。そのため、NSAIDsによってこれが抑制されると胃腸が荒れやすくなってしまうのです。

胃痛や悪心などをはじめとして、胃炎や胃潰瘍などになってしまうこともあります。このため、NSAIDsは漫然と長期間使用し続けないことが推奨されています。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • ショック、アナフィラキシー様症状
  • 喘息発作の誘発
  • 皮膚粘膜眼症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症
  • 急性腎不全、ネフローゼ症候群
  • 消化性潰瘍、胃腸出血
  • 肝機能障害、黄疸
  • 間質性肺炎
  • 好酸球性肺炎

などが記載されています。重篤な副作用は稀ではあるものの絶対に生じないわけではありません。プラノプロフェンの服薬がやむを得ず長期にわたっている方は定期的に血液検査にて肝機能・腎機能などのチェックを行う必要があります。

また、プラノプロフェンは次のような方には禁忌(絶対に使ってはダメ)となっていますので注意しましょう。

1.消化性潰瘍のある方
2.重篤な血液の異常のある方
3.重篤な肝障害のある方
4.重篤な腎障害のある方
5.重篤な心機能不全のある方
6.重篤な高血圧症のある方
7.プラノプロフェンに過敏症の既往歴のある方
8.アスピリン喘息又はその既往歴のある方
10.妊娠末期の婦人

胃を荒らす可能性のあるお薬ですので、胃腸に潰瘍がある方はそれを更に増悪させる可能性があり用いてはいけません。

また心臓、肝臓、腎臓といった臓器にダメージを与える可能性がありますので、これらの臓器に重篤な機能不全がある場合もプラノプロフェンは用いてはいけません。

また動物実験においてプラノプロフェンを妊娠後期に投与すると、胎児動脈管収縮、分娩時間の延長が生じる可能性があることが報告されています。ここから人においても妊娠末期の妊婦さんがプラノプロフェンを服用することは禁忌となっています。

 

5.プラノプロフェンの用法・用量と剤形

プラノプロフェンは次の剤型が発売されています。

プラノプロフェン錠 75mg
プラノプロフェンカプセル 75mg
プラノプロフェン液 1.5%

また、プラノプロフェンの使い方は適応疾患によって異なります。

○下記疾患ならびに症状の消炎・鎮痛
関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、頸肩腕症候群、歯根膜炎、痛風発作

○外傷後,小手術後ならびに抜歯後の消炎・鎮痛

の場合は、

通常、成人1回75mgを1日3回食後に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

頓用の場合には1回75mgを経口投与する。

痛風発作には、成人1回150mg~225mgを1日3回、その後翌日から通常、成人1回 75mgを1日3回食後に経口投与する。

となっています。

痛風は痛みが非常に強いため、急性期の初日には高用量の投与が認められています。

また、

○下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

の場合は、

通常、成人には1回75mgを頓用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、原則として1日2回までとし、1日最大225mgを限度とする。また、空腹時の投与は避けさせることが望ましい。

とされています。

プラノプロフェンを初めとしたNSAIDsは空腹時に投与すると、胃腸へのダメージが更に生じやすくなるため、なるべく空腹時には服用しない事が推奨されています。

プラノプロフェンは作用時間が短めであるため、1日を通して効果を持続させるには3回服用しないといけませんが、その分即効性に優れます。

服薬してから血中濃度が最大になるまでにかかる時間は約1.9時間であり、体感的には30分~60分で効果が出始めます。

 

6.プラノプロフェンが向いている人は?

プラノプロフェンはどのような方に向いているお薬なのでしょうか。

プラノプロフェンの特徴をおさらいすると、

・鎮痛作用(痛みを抑える)、解熱作用(熱を下げる)は中等度
・副作用の胃腸障害に注意(他のNSAIDsと同様)
・喘息の方は使用に注意(他のNSAIDsと同様)

といった特徴がありました。

基本的にNSAIDsはどれも大きな差はないため、処方する医師が使い慣れているものを処方する傾向があります。

プラノプロフェンはNSAIDsの中でもこれといった目立つ特徴はないのですが、だからといって悪いお薬だという事ではありません。どんな状態の炎症にもある程度対応できるバランス型のNSAIDsという事が出来るでしょう。

またジェネリック医薬品であるプラノプロフェンは先発品の「ニフラン」よりも薬価が安いというメリットがあります。しかしニフラン自体も薬価が安いお薬であるため、その恩恵はあまり感じられないかもしれません。

 

7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?

プラノプロフェンは「ニフラン」というお薬のジェネリック医薬品になります。

ジェネリックは薬価も安く、患者さんにとってメリットが多いように見えます。

しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。

ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。

結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。

ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。

発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、

ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。

しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。

これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。

では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。

先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。

しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。

先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。

つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。