プロブコールは1985年から発売されている「シンレスタール」「ロレルコ」おいうお薬のジェネリック医薬品です。主に脂質異常症(≒高脂血症)の治療薬として用いられています。
プロブコールは脂質の中でもLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を下げる作用を持ちます。そのため高脂血症の中でもLDLコレステロールが高い方に主に用いられます。
プロブコールはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに使うお薬なのでしょうか。ここではプロブコールの特徴や効果・副作用について紹介していきます。
目次
1.プロブコールの特徴
まずはプロブコールの特徴を紹介します。
プロブコールは体内のコレステロールの排泄を促したり、合成を抑える事によってLDLコレステロールを低下させます。デメリットとしてHDLコレステロール(善玉コレステロール)も低下させてしまう作用があります。
プロブコールは、コレステロールを胆汁酸に変えるはたらきがあります。胆汁酸は消化管に分泌されますが一部はそのまま便と一緒に排泄されてしまいます。プロブコールがコレステロールから胆汁酸への異化を促進すると、胆汁酸の排泄量が増える分だけ、コレステロール量が低下するというわけです。
またプロブコールは肝臓でのコレステロールの合成を減らす作用もあり、これもコレステロールを低下させる作用になります。
高脂血症の治療薬として現在主に用いられているお薬としては、「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)」が有名ですが、プロブコールはスタチン系とは全く異なる作用機序でコレステロール値を下げます。
スタチン系と比べると効果は弱いものの、作用機序が異なるため両者を併用する事でより高い効果を得る事も可能です。
プロブコールのデメリットとしてHDLコレステロール(善玉コレステロール)も低下させてしまう点が挙げられます。HDLコレステロールは高い方が良いと考えられていますので、これはプロブコールのデメリットとなります。
中性脂肪に関しては、全体的に見れば低下させるものの個人差も大きく、効果は一定しません。
またプロブコールはジェネリック医薬品であり、先発品と比べると薬価が安いという点もメリットになります。
以上からプロブコールの特徴として次のような点が挙げられます。
【プロブコールの特徴】
・コレステロールを胆汁酸に異化する事でコレステロール量を減らす
・LDLコレステロールを低下させる
・HDLコレステロールも低下させてしまう
・中性脂肪(TG)を低下させる効果は個人差も大きく一定しない
・効果は穏やかで弱め
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
2.プロブコールはどんな疾患に用いるのか
プロブコールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
高脂血症(家族性高コレステロール血症、黄色腫を含む)
プロブコールは主にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げる作用がありますので、高脂血症(高LDLコレステロール血症)の患者さんに用いられます。
黄色腫というのは、皮膚や腱などに脂肪が沈着してしまって生じる状態です。黄色腫の原因は脂肪ですから高脂血症によって生じます。そのため高脂血症の治療薬は黄色腫も改善させる効果もあります。
プロブコールは高脂血症に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。
プロブコールはジェネリック医薬品であり有効性に対する詳しい調査は行われていません。しかし先発品のロレルコ500~750ml/日投与を16週間継続した試験では、
- 総コレステロールが15%低下
- 中性脂肪は全体としては低下するが個人差が大きい
という結果が出ています。
また、
- 総コレステロールが10%以上低下した率は76.5%
- 中性脂肪(TG)が20%以上低下した率は43.7%
であったと報告されています。
プロブコールもこれと同程度の有効性があると考えられます。
3.プロブコールにはどのような作用があるのか
高コレステロール血症の患者さんの血中コレステロールを下げるために投与されるプロブコールですが、どのような機序で高コレステロール血症を改善させるのでしょうか。
プロブコールの具体的な作用機序を紹介します。
Ⅰ.悪玉(LDL)コレステロールを下げる
プロブコールには、
- 体内のコレステロールを異化(≒分解)して胆汁酸にする作用
- 体内のコレステロールの合成を初期段階で抑制する作用
という2つの作用があり、これがLDLコレステロールを低下させるはたらきになります。
胆汁酸はコレステロールを原料に作られる物質で、消化管内に分泌されて主に脂肪の吸収を助けるはたらきがあります。
食べ物に含まれる脂肪を体内に吸収する過程で胆汁酸も体内に吸収されるため、消化管内に分泌された胆汁酸はそのほとんど(90%程度)が体内に再吸収されるのですが、残りの10%は再吸収されずにそのまま便と一緒に体外に排泄されてしまいます。
プロブコールがコレステロールを胆汁酸に異化させると、排泄させる胆汁酸の量も増える事になるため、体内のコレステロール量は少なくなります。これがプロブコールがコレステロールを低下させる機序の1つです。
またコレステロールは肝臓で合成されますが、プロブコールはコレステロール合成の初期段階に作用し、コレステロールの合成を抑えるはたらきがあると考えられています。
この作用もコレステロール量を低下させる作用となります。
Ⅱ.中性脂肪(TG)を多少下げる(*個人差あり*)
プロブコールは中性脂肪(TG:トリグリセリド)を多少下げる作用もあります。
中性脂肪も脂質の1つです。生命活動のエネルギー源となる物質ですが、多すぎれば血管を痛めたり、膵臓などの臓器を痛めるという弊害も出てきます。
プロブコールには中性脂肪を減らす作用も報告されています。しかしその作用は個人差が大きく、わずかにしか下がらない人もいれば、しっかり下がる人もいます。またプロブコールの量を増やせば増やすほど下がるというものでもなく、その効果は一定しません。
全体的に見れば中性脂肪は低下するものの、効果が一定しないため、中性脂肪が高い方がメインに用いるお薬としては向いていません。
Ⅲ.善玉コレステロールを減らしてしまう
プロブコールはコレステロールを減らすお薬ですが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)だけでなく、HDLコレステロール、通称「善玉コレステロール」も減らしてしまうというデメリットがあります。
善玉コレステロールは、動脈硬化を抑えるはたらきを持ちます。具体的には動脈にこびりついてしまっているコレステロールを回収して、肝臓に運ぶはたらきがあるのです。
動脈のコレステロールがこびりついていると、動脈硬化や狭窄の原因になるためHDLコレステロールは高いことが良いと考えられています。
プロブコールはABCA1を抑制したり、CETP活性を亢進させてしまうはたらきがあり、これによってHDLコレステロールが減ってしまうのだと考えられています。
ABCA1は「ATP Binding Cassette A1」と呼ばれる蛋白質で、HDLを作るのに必要な物質になります。プロブコールがABCA1のはたらきを抑制すれば、HDLが作られなくなりHDLコレステロールの量も減ります。
CETPは「コレステロールエステル輸送蛋白」と呼ばれ、簡単に言うとHDLを減らし、LDLを増やす方向にはたらく物質です。
CETPはHDLのコレステロールをLDLに転送することで、HDLとLDLの質と量を調整するはたらきがあります。実際、遺伝的にCETPが欠損しているCETP欠損症の方は、HDLコレステロール値が著明に高値になる事が知られています。
HDLコレステロールが低い方がプロブコールを服用してしまうと、更に値が低くなってしまうので、低HDL血症の方はプロブコールの服用は推奨されません。
Ⅳ.脳梗塞・心筋梗塞のリスクを下げる
血液中のLDLコレステロールが高いと、脳梗塞・心筋梗塞といった血管系イベントが生じやすくなる事が知られています。
これらの疾患はいずれも血管が詰まる事で生じます。脳の血管が詰まれば脳梗塞が生じ、心臓を栄養する冠動脈が詰まれば心筋梗塞が生じます。
血管が詰まる原因はいくつかありますが、その1つとして血管内壁にコレステロールが沈着してしまう事が挙げられます。
コレステロールが沈着すれば、その分だけ血管の内腔が狭くなるため血管が詰まりやすくなってしまうのです。また付着したコレステロールは血栓などを誘発しやすいため、これも血管を詰まらせる原因になります。
プロブコールは血液中のLDLコレステロールを下げることで、血管内壁にコレステロールが沈着する事を予防してくれます。これにより脳梗塞・心筋梗塞を予防する事ができるのです。
またプロブコールは強力な抗酸化作用を持っています。LDLは動脈硬化などを促進してしまいますが、LDLの中でももっとも害が強いのはLDLが酸化されて生じる酸化LDLになります。
プロブコールは抗酸化作用を持つため、LDLが酸化LDLになるのを抑えてくれます。これにより血管系イベントが生じるのを減らしてくれるのです。
4.プロブコールの副作用
プロブコールにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。
プロブコールはジェネリック医薬品のため副作用発生率の詳しい調査は行われてません。しかし先発品の「ロレルコ」の副作用発生率は2.07%と報告されており、プロブコールも同程度だと考えられます。全体的には副作用は少なく、安全性に優れるお薬になります。
生じうる主な副作用としては、
- 下痢、軟便
- 腹痛
- 嘔気・嘔吐
- 発疹
- かゆみ
などが報告されています。
プロブコールは主に消化管で作用しますので消化器系の副作用が多くなります。
また検査値の異常として、
- 肝機能の異常(AST、ALT、LDH、ALPなどの上昇)
- CK上昇
- BUN上昇
などが報告されています。
頻度は稀ですが重篤な副作用として、
- 心室性不整脈(Torsades de pointes)
- 失神
- 消化管出血
- 末梢神経炎
- 横紋筋融解症
が報告されています。
高脂血症の中でプロブコールは心臓の副作用が生じる可能性があります。頻度は稀ながら命に関わる事もある重篤な不整脈を生じるリスクがある事は注意しておかなければいけません。
プロブコールを使用してはいけない方(禁忌)としては、
- プロブコールの成分に対し過敏症の既往歴のある方
- 重篤な心室性不整脈(多源性心室性期外収縮の多発)のある方
- 妊婦又は妊娠している可能性のある方
が挙げられてます。
プロブコールは稀にですが重篤な不整脈の報告があります。そのため元々重篤な不整脈を持病に持っている方はそれを誘発してしまう可能性があるため使用できません。
またプロブコールは動物実験においては催奇形性(赤ちゃんに奇形が生じてしまう事)は報告されていないものの、胎盤を通過して赤ちゃんにお薬の成分が移行してしまう事が報告されています。そのため、妊婦さんはプロブコールを服用してはいけない事となっています。
5.プロブコールの用法・用量と剤形
プロブコールには、
プロブコール錠 250mg
の1剤型のみが発売されています。
プロブコールの使い方は、
通常、成人には1日量500mgを2回に分けて食後に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、家族性高コレステロール血症の場合は、プロブコールとして1日量1,000mgまで増量することができる。
と書かれています。
6.プロブコールが向いている人は?
以上から考えて、プロブコールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
プロブコールの特徴をおさらいすると、
・コレステロールを胆汁酸に異化する事でコレステロール量を減らす
・LDLコレステロールを低下させる
・HDLコレステロールも低下させてしまう
・中性脂肪(TG)を低下させる効果は個人差も大きく一定しない
・効果は穏やかで弱め
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
などがありました。
ここから、
・悪玉(LDL)コレステロールが高い方
に向いているお薬になります。
効果だけを見れば、高LDL血症に対してはプロブコールよりもHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)の方がしっかりとLDLコレステロールを下げてくれます。
実際、現状ではLDLコレステロールが高い方のほとんどは、プロブコールではなくスタチン系が処方されます。
しかしスタチン系とプロブコールは作用機序が異なるため、併用する事で更に高い効果を期待する事も出来ます。そのためスタチン系を服用しているけども、まだ十分にLDLコレステロールが下がらないという方は検討しても良いお薬になります。
またジェネリック医薬品であり薬価が安いため、経済的負担を少なくしたい方にも向いているでしょう。
一方でHDLコレステロールを下げてしまうというデメリットがありますので、元々HDLコレステロールが低い方はプロブコールを服用する事は推奨されません。
また中性脂肪(TG)を下げる作用も効果が一定しませんので、高TG血症には補助的に用いる程度で、主剤としては向きません。
更にプロブコールは頻度は稀ながら重篤な不整脈を起こすリスクがあるため、心臓の機能が悪い方にもあまり向かないお薬となります。
ちなみに脂質というと、血液検査で中性脂肪(TG:トリグリセリド)とコレステロール(Chol)の2つがありますが、この2つはどう違うのでしょうか。
中性脂肪は、俗に言う「体脂肪」の脂肪分が血液中に流れているもので、これはエネルギー源として使われます。中性脂肪は体脂肪として貯蔵される事で、いざという時に活動するためのエネルギーになるのです。
一方コレステロールはというと「身体を作るための材料」として使われています。コレステロールは細胞を構成する材料となったり、体内で様々なはたらきをしているホルモンを作る材料となったり、胆汁酸やビタミンの材料となったりします。
中性脂肪もコレステロールも、どちらも身体にとって必要なものですが、過剰になりすぎれば害となります。
7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?
プロブコールは「ロレルコ」「シンレスタール」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリックは薬価も安く、患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば使い心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。
しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。
先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。