ピドキサール錠の効果と副作用【ビタミン剤】

ピドキサール錠(一般名:ピリドキサールリン酸エステル水和物)は1965年から発売されているビタミン剤で、ビタミンの中でも「ビタミンB6」になります。

ビタミンB6は基本的には食事から摂取できるものです。そのため、まずは規則正しい食生活によって摂取していただきたいのですが、どうしても十分なビタミンを食事から摂取できない場合、ピドキサールのようなお薬でビタミンを補うことがあります。

ビタミンB6であるピドキサールは、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

ここではピドキサールの効果や特徴・副作用について紹介していきます。

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1.ピドキサールの特徴

まずはピドキサールの全体的な特徴についてみてみましょう。

ピドキサールはビタミンB6で、栄養素(特にたんぱく質)の代謝に関与しており、皮膚・粘膜の形成促進・炎症抑制によって皮膚の状態を整えたり、神経伝達物質の合成を促進するはたらきなどがあります。

ピドキサールの主成分は「ピリドキサールリン酸エステル水和物」であり、これはビタミンB6になります。

ビタミンB6は、「ピリドキシン(PIN)」「ピリドキサール(PAL)」「ピリドキサミン(PAM)」の3種類があり、中でも生体内で主に作用をしているのは「ピリドキサール」になります。

ピドキサールは「ピリドキサール」の活性型を主成分としたビタミン剤で、効率的にビタミンB6を補う事が出来ます。

ちなみにビタミンB6は体内でどのようなはたらきをしているのでしょうか。

ビタミンB6は「補酵素」と呼ばれる物質です。補酵素とは私たちの体内で様々なはたらきを担っている「酵素」を補助するはたらきを持ちます。

ビタミンB6は様々な酵素の補酵素として働いています。具体的にはたんぱく質・炭水化物・脂質といった栄養素の代謝を補助し、中でもたんぱく質の代謝に大きく関与しています。

身体の各組織やホルモン、神経伝達物質などはたんぱく質を素に作られており、ビタミンB6はたんぱく質の代謝を補助する事で、これらの合成や安定化に役立ちます。

例えばたんぱく質の代謝を補助する事で、皮膚・粘膜の形成を促進したり、炎症を抑えるはたらきがあり、これは皮膚の状態を整える作用となります。

また神経伝達物質(神経から神経に情報を伝えるために必要な物質)は、脳や神経が正常な活動を行うために欠かす事ができないものですが、ビタミンB6はたんぱく質の代謝を補助する事で、これら神経伝達物質の合成も促進し、神経のはたらきを正常化させます。

ビタミンB6は現在の日本において、ある程度規則正しく食事を取っていれば、まず欠乏する事はないものです。肉や魚、豆類など、私たちが日常的に食べるものに豊富に含まれています。

そのため通常の生活を送っている方で、お薬で追加補充が必要になる方は多くはありません。

ビタミンB6の皮膚の調子を整える作用などを聞き、「美肌のために欲しい」と安易な気持ちで処方を希望される方もいらっしゃいます。しかし、そのようなケースではまず食生活で十分にビタミンB6が摂取できるように工夫するのが先です。

水溶性ビタミンであるビタミンB6はたくさん取れば取るほど良いというものではありません。多すぎるビタミンB6はそのまま尿として排泄されてしまうだけですし、過剰な投与は稀に横紋筋融解症などの副作用を引き起こすとの報告もあります(適切な量の摂取であれば副作用はほとんどありません)。

ビタミンB6が失われやすい状態にある方(妊婦さんや授乳婦さんなど)、お薬の副作用でビタミンB6が減ってしまっている方(一部の抗結核薬や抗生剤)ではピドキサールの服用が必要な事もありますが、市販サプリメント感覚で安易に処方を希望されるのは、処方医としては正直あまり気が進まないところがあります。

以上から、ピドキサールの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ピドキサールの特徴】

・ビタミンB6である
・栄養素(特にたんぱく質)の代謝を促す作用がある
・皮膚・粘膜の形成促進・炎症抑制作用がある
・神経伝達物質の合成を促進する作用がある
・ビタミンB6は肉類や魚類、豆類に多く含まれており、通常の食生活で十分摂取できる
・妊婦さんや授乳婦さん、一部の抗結核薬や抗生剤服用中の方はビタミンB6が失われやすいためピドキサールの投与が必要になる事がある
・副作用はほとんどなく、安全性に優れる

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2.ピドキサールはどのような疾患に用いるのか

ピドキサールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

○ 下記疾患のうち、ビタミンB6の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合

口角炎、口唇炎、舌炎、口内炎、急・慢性湿疹、脂漏性湿疹、接触皮膚炎、アトピー皮膚炎、尋常性ざ瘡、末梢神経炎、放射線障害(宿酔)

○ ビタミンB6の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦等)

○ ビタミンB6依存症(ビタミンB6反応性貧血など)

○ ビタミンB6欠乏症の予防及び治療(薬物投与によるものを含む。例えばイソニアジド)

なお、上記適応(効能・効果)のうち、「ビタミンB6の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合」の疾患に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない。

まず当たり前ですがピドキサールはビタミンB6ですので、ビタミンB6が足りていない時に投与されるお薬になります。

逆に言えばいくら上記に記載されている状態であっても、ビタミンB6が十分足りているのであれば服用しても意味はありません。つまり、ビタミンB6を十分摂取できていた上で生じている口内炎には効果はほとんどないという事です。

ビタミンB6は主にたんぱく質の代謝を促進する事で、皮膚・粘膜の状態を整える作用があります。

そのため、

  • 口内炎、口角炎、舌炎といった粘膜疾患
  • 湿疹、脂漏性湿疹、接触皮膚炎、アトピー皮膚炎、尋常性ざ瘡といった皮膚疾患

の改善に効果が期待できます。

また神経伝達物質の合成を促進しますから、神経がダメージを受けて神経伝達物質の分泌が低下しているような状態(末梢神経炎など)にも効果が期待できます。

放射線障害(宿酔)というのは放射線療法の副作用で、宿酔(いわゆる「二日酔い」)に似た症状が生じてしまう現象です。具体的にはめまいやふらつき、吐き気などが生じる事があります。

また妊婦さんや授乳婦さんでは、通常よりも多くのビタミンB6が必要となり、ビタミンB6が欠乏しやすくなります。このような場合はビタミンB6をピドキサールで補う事が認められています。

一部のお薬の中には、副作用としてビタミンB6を欠乏させてしまうものがあります。代表的なものとしては、抗結核薬であるイスコチン(一般名:イソニアジド)や一部の抗生剤などがあります。

ピドキサールはこれらの疾患に対してどのくらいの有効率があるのでしょうか。

ピドキサールの有効率に関しては詳しい調査は行われていませんが、適応疾患の1つである「脂漏性皮膚炎」を対象に行われた試験では、ピリドキサール投与群における有効率は81.0%であり、プラセボ(何の成分も入っていない偽薬)投与群における有効率26.6%と比べて有意に症状を改善させた事が示されています。

3.ピドキサールにはどのような作用があるのか

ピドキサールにはどのような作用があるのでしょうか。

ピドキサールはビタミンB6になります。ビタミンの作用というのは多岐に渡るため、ここでは代表的な作用に絞って紹介させていただきます。

Ⅰ.栄養素(特にたんぱく質)の代謝

ピドキサールには栄養素の代謝を促進するというはたらきがあります。

三大栄養素として、

  • 炭水化物(いわゆる糖質)
  • 脂質
  • たんぱく質

がありますが、ビタミンB6はこれらの栄養素の代謝を促し、生体活動を活性化させる作用があります。

私たちはこれらの栄養素を食事から摂取し、、代謝(≒分解、合成)する事で様々な生体活動を行っています。例えば、栄養素を分解してエネルギーを取り出す事で身体を動かすエネルギーを生み出します。また栄養素を原料に、組織やホルモンなど生命維持に必要な物質が作られます。

ピドキサールは主にたんぱく質を分解してエネルギーを取り出しやすくするはたらきがあります。また摂取したたんぱく質を素に新たな物質を合成しやすくするはたらきもあり、これによって次項で紹介する皮膚・粘膜といった組織の形成を促進したり、神経伝達物質の合成を促進させます。

Ⅱ.皮膚・粘膜の形成促進・炎症抑制

ビタミンB6は皮膚や粘膜細胞の再生を促したり、炎症を抑えるはたらきがあります。

ビタミンB6が欠乏するとこれらの作用が弱まるため、皮膚や粘膜が痛みやすくなり、皮膚炎・口内炎などの皮膚・粘膜トラブルが生じやすくなります。

ビタミンB6を十分に摂取する事によって皮膚や粘膜を良好な状態を保てるようになるのです。

Ⅲ.神経への作用

ビタミンB6は神経伝達物質の合成に関わっています。

神経伝達物質はアミノ酸(たんぱく質が分解されて出来る物質)から合成され、神経細胞から神経細胞に情報を伝達する役割を持っています。

神経伝達物質が少なくなると神経から神経に情報が伝達されにくくなるため、様々な支障が生じるようになります。

神経間の伝達の不調によってけいれん発作が生じやすくなったり、またうつ病などの精神疾患を発症しやすくなる可能性も指摘されています。

ピドキサールは神経伝達物質の合成を促進する事で、神経間の情報伝達がスムーズに行われるようにするはたらきがあります。

4.ピドキサールの副作用

ピドキサールにはどのような副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。

ピドキサールはビタミンB6になり、ビタミンというのは本来食べ物などに含まれている成分になります。

元々普段から口にしている成分ですので、適正に摂取している分には大きな副作用が出ることはほとんどありません。

報告されている副作用としては、

  • 発疹等の過敏症状
  • 悪心、食欲不振、腹部膨満感、下痢、嘔吐などの消化器症状
  • 肝機能異常

などがあります。

一定の注意は必要になりますが、適正量の摂取ではほとんど問題になる事はなく、その頻度も少なく、また重篤となる事もほとんどありません。

注意すべき重篤な副作用としては、乳幼児に大量に用いた場合に、

  • 横紋筋融解症

の報告がありますが、これも適正量を摂取しているのであれば、まず生じないと考えてよいでしょう。

5.ピドキサールの用法・用量と剤形

ピドキサールは、

ピドキサール錠 10mg
ピドキサール錠 20mg
ピドキサール錠 30mg

の3剤形があります。

ピドキサールの用法・用量は次のようになります。

通常、成人1日10~60mgを1~3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

極めてまれであるが、依存症の場合には、より大量を用いる必要のある場合もある。

ピドキサールは食品にも含まれるビタミンが主成分であるため、その飲み方もある程度幅を持たせた服薬法となっています。

なお1日に必要なビタミンB6の量は1~2mgですので、ピドキサールを投与する事で大量のビタミンB6が摂取できる事になります。

ただし多ければ多いほど良いものでもありませんので、あくまでも足りない分の摂取にとどめるようにしましょう。

ビタミンB6の1日の上限量は60mgと言われています。上限量を超えた投与を漫然と続けていると、前項で紹介した副作用が生じやすくなる可能性がありますので、適正な量の摂取にとどめる事が大切です。

6.ピドキサールが向いている人は?

以上から考えて、ピドキサールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ピドキサールの特徴をおさらいすると、

【ピドキサールの特徴】

・ビタミンB6である
・栄養素(特にたんぱく質)の代謝を促す作用がある
・皮膚・粘膜の形成促進・炎症抑制作用がある
・神経伝達物質の合成を促進する作用がある
・ビタミンB6は肉類や魚類、豆類に多く含まれており、通常の食生活で十分摂取できる
・妊婦さんや授乳婦さん、一部の抗結核薬や抗生剤服用中の方はビタミンB6が失われやすいためピドキサールの投与が必要になる事がある
・副作用はほとんどなく、安全性に優れる

というものでした。

誤解してはいけないのが、ピドキサールはそもそも食事からビタミンB6を十分に摂取できている人には不要なお薬だという事です。

十分なビタミンB6が食事で補えているのに、「もっと皮膚の状態を良くしたい!」と大量にピドキサールを服薬しても意味はありません。ピドキサールは水溶性ビタミンですので、摂取された余分なビタミンB6は尿として排泄されてしまうだけです。

十分なビタミンB6が摂取できていなかったり、ビタミンB6の消耗が通常より激しいと予測されるような状態において、口内炎・舌炎などが生じたり、皮膚炎が生じたりした際はピドキサールを使うことで改善が得られる可能性があります。

7.ビタミンB6を多く含む食品は?

ピドキサールを服用する事で、効率的にビタミンB6を摂取する事ができますが、本来ビタミンというのは医薬品から摂取するものではなく、食事から十分に摂取できるものです。

ビタミンB6の1日必要量としては、おおよそ1mg前後だと言われています(性別、年齢で多少異なります)。

妊婦さんや授乳婦さんなどではもう少し多くなりますが、それでも1日2mgも摂取すれば十分です。

ではビタミンB6が豊富に含まれている食品にはどのようなものがあるでしょうか。

ビタミンB6は主に肉類に多く含まれます。特に、牛肉・豚肉・鶏肉などに多く含まれる他、魚類や豆類にも豊富に含まれています。

ピドキサールの服用を検討している方は、その前にまずは食事から十分に摂取できないかを考えるようにしましょう。

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