エルカルチン錠の効果と副作用

エルカルチン錠(一般名:レボカルニチン)は1990年から発売されているお薬です。「カルニチン製剤」と呼ばれており、主にカルニチンという物質が欠乏している方に、カルニチンを補充する目的で投与されるお薬になります。

カルニチンは、遺伝疾患によって生まれつき欠乏してしまう他、お薬の副作用などでも欠乏してしまう事があります。カルニチンが欠乏すると身体に様々な症状が出現してしまいます。カルニチンを補充することで、それを防いでくれるのがエルカルチンになります。

ここではエルカルチン錠の効果や特徴、どのような副作用があってどのような方に向いているお薬なのかなどについてお話させて頂きます。

 

1.エルカルチン錠の特徴

まずはエルカルチン錠の特徴について、かんたんに紹介します。

エルカルチン錠はカルニチンを補充するお薬になります。

エルカルチン錠は、「カルニチン」という生体に元々存在する物質です。カルニチンは私たちの身体の中で、生体活動に必要なはたらきをしているため、カルニチンが欠乏すると様々な支障を来たします。カルニチンをお薬として投与することで、カルニチン欠乏を改善してくれるのがエルカルチンになります。

カルニチンは食べ物にも含まれている物質であり、普通の食生活を送っていればまず欠乏することはありません。特に動物性食品(肉など)に多く含まれています。

カルニチンのはたらきは、

  • 有害物質の排泄
  • 脂質の燃焼
  • 胃腸運動の活性化

などがあります。

カルニチン欠乏によって大きく困るのは1つ目の「有害物質の排泄」が出来なくなることで、これを防ぐために投与されます。

 

以上からエルカルチンの特徴として次のようなことが挙げられます。

【エルカルチン錠(レボカルニチン)の特徴】

・カルニチン製剤である
・主に遺伝疾患やお薬の副作用によるカルニチン欠乏に用いられる

 

2.エルカルチン錠はどんな疾患に用いるのか

エルカルチン錠はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

カルニチン欠乏症

エルカルチン錠はカルニチン製剤ですので、「カルニチンが欠乏している状態」への投与が認められています。

とはいっても具体的にどのような疾患で、カルニチン欠乏が生じるのでしょうか。

カルニチンは生体にとって必須の物質ですが、私たちが普段食べる食べ物(肉など)に含まれており、普通の食生活を送っていれば大きく欠乏することはまずありません。

にも関わらずカルニチンが欠乏してしまうのは、主に

  • 遺伝性疾患(生まれつき、カルニチンのはたらきが弱い)
  • お薬の副作用(副作用によってカルニチンが減ってしまう)

というケースがほとんどです。

先天性疾患としては、

  • プロピオン酸血症
  • メチルマロン酸血症

といった疾患ではカルニチンが欠乏します。これらの疾患はそれぞれある酵素が欠乏(あるいははたらきが低下)していることによりカルニチンの代謝異常が生じ、カルニチン低下が生じる疾患です。

またお薬の副作用としては、「デパケン(バルプロ酸ナトリウム)」というてんかんや双極性障害、偏頭痛に用いられるお薬は、副作用としてカルニチンが減少することが知られています。この場合はエルカルチンを併用することで、カルニチンの減少を抑えることができます。

デパケン以外にも一部の抗生物質(第3世代セフェム系)は、カルニチンを減少させるものがあります。フロモックス(セフカペン)、メイアクトMS(セフジトレン)などになります。

 

3.エルカルチン錠にはどのような作用があるのか

エルカルチン錠はカルニチンという生体内に元々存在する物質になります。カルニチンは生体活動において必要な物質であり、これが低下・欠乏してしまうと様々な支障を来たします。

では具体的にエルカルチン(カルニチン)は生体内でどのようなはたらきをしてくれるのでしょうか。

エルカルチン(カルニチン)の作用について紹介します。

 

Ⅰ.有害物質であるプロピオニル基の排泄

カルニチンは、生体にとって有害な物質であるプロピオニル基をプロピオニルカルニチンという毒性の低い物質に変え、尿中から排泄させるというはたらきがあります。

カルニチンが欠乏しているとこの過程が踏めなくなるため、体内にプロピオニル基が蓄積してしまい、様々な問題を引き起こします。

具体的には、

  • 筋肉の破壊(筋肉壊死)
  • 低血糖
  • 脂肪肝
  • 高アンモニア血症とそれに伴う精神症状

などが挙げられます。

エルカルチンは、カルニチンとしてはたらくことにより、この有害物質の分解、排泄を促してくれます。

 

Ⅲ.脂質燃焼

脂質の燃焼は、細胞内にある小器官「ミトコンドリア」で行われます。ミトコンドリア内で脂質は分解され、そこからエネルギーが取り出されます。このエネルギーを元に私たちは日々活動を行っているのです。

カルニチンは、このミトコンドリアへ脂質を運ぶ役割があります。

また先ほどお話した「プロピオニル基」は、ミトコンドリアのはたらきを弱めてしまうのですが、カルニチンはプロピオニル基を分解することで、プロピオン酸がミトコンドリアのはたらきを弱めてしまうことを防ぎます。

カルニチンはサプリメントにもよく配合されていますが、それはこの脂質燃焼効果があるためです。

 

4.エルカルチン錠の副作用

エルカルチン錠の主成分は、元々生体内に存在する「カルニチン」です。元々身体の中にあるものですので、有害な物質ではなく、適量を摂取する分には大きな副作用はなく安全なお薬になります。

カルニチンの副作用発現率は、3.07%と報告されています。

主な副作用としては、

  • 食欲不振
  • 下痢
  • 腹部膨満

などの消化器系の副作用が挙げられます。これは、カルニチンのうちDL-カルニチンという物質は消化管に作用する特徴があるために生じていると考えられます(DL-カルニチンは胃腸の動きを促進させる胃薬としても使われています)。

また海外においては

  • 魚臭(魚の臭いがする)

が報告されています。

 

5.エルカルチンの用法・用量と剤形

エルカルチンは、

エルカルチン錠(レボカルニチン塩化物) 100mg
エルカルチン錠(レボカルニチン塩化物) 300mg

の2剤があります。

エルカルチンの使い方は、

通常成人には、1日1.8~3.6gを3回に分割経口投与する。なお、患者の状態に応じて適宜増減する。

通常小児には、1日体重1kg あたり30~120mgを3回に分割経口投与する。なお、患者の状態に応じて適宜増減する。

となっています。

 

6.エルカルチン錠が向いている人は?

以上から考えて、エルカルチン錠が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

エルカルチン錠の特徴をおさらいすると、

・カルニチン製剤である
・主に遺伝疾患やお薬の副作用によるカルニチン欠乏に用いられる

というものでした。

エルカルチンは生体にとって必要な物質である「カルニチン」になります。そのため、カルニチンが欠乏しているような状態において、投与されるお薬になります。