レルベアの効果と副作用【喘息治療薬】

レルベア(一般名:ビランテロールトリフェニル酢酸塩/フルチカゾンフランカルボン酸エステル)は2013年から発売されているお薬で、気管支喘息の治療に用いられている吸入剤です。

口から吸入することで直接気管に作用し、気管の炎症を抑えたり気管を拡げることで息苦しさなどの症状を和らげてくれます。

吸入剤には多くの種類があり、それぞれ配合されている成分も異なっています。そのため、それぞれの吸入薬にどのような作用があって、どの吸入剤が自分に適しているのかというのはなかなか分かりにくいものです。

吸入剤の中でレルベアはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

レルベアの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

 

1.レルベアの特徴

まずはレルベアの特徴についてみてみましょう。

レルベアは主に慢性期(維持期)の発作予防に用いる吸入剤です。2つの成分を配合することによりしっかりと喘息の予防をしてくれます。飲み薬と異なり全身への作用が少ないため、副作用も少なく安全に用いることができます。

同種のお薬の中でのレルベアの最大の特徴は1日1回の吸入で1日効果が持続するという点です。

通常、吸入剤というのは用途によって2種類あります。

1つ目が発作が生じた時、今生じている発作をすぐに抑えるために用いる「発作止め(レリーバー)」です。これには「メプチン」「サルタノール」などがあり、効果は長くは続かないものの即効性があります。主に即効性のβ2刺激薬が用いられます。

【β2刺激薬】
アドレナリンβ2受容体を刺激するお薬。気管の平滑筋をゆるめることで気管を拡げるはたらきを持つ

2つ目がこれからの発作を起きないようにするための「予防薬(コントローラー)」です。多くの吸入剤はこれに属し、ステロイド剤、ステロイドとβ2刺激薬が混ざったもの、抗コリン薬などがあります。即効性はありませんが、長時間作用し続け、発作が起きないように気管を守ってくれます。

この中でレルベアは「予防薬(コントローラー)」になります。喘息の発作が起きている時に慌てて吸入しても効果は得られませんが、普段から定期的に吸入をしておくことで喘息の発作を生じにくくさせます。

レルベアは、ステロイド(フルチカゾンフランカルボン酸エステル)とβ2刺激薬(ビランテロールトリフェニル酢酸塩)という2つの成分が配合されています。

ステロイド(フルチカゾンフランカルボン酸エステル)は炎症を抑えるはたらきがあります。喘息では、気管に炎症が生じていることが症状を引き起こす原因になっているため、炎症を抑えると呼吸苦・咳・痰などの症状を和らげることが出来ます。

【喘息】
アレルギー反応によって気管支が収縮してしまい、呼吸苦などの症状が生じる疾患。

β2刺激薬(ビランテロールトリフェニル酢酸塩)は気管を拡げる作用があります。喘息ではアレルギー症状によって気管が狭くなってしまうことで呼吸苦が生じます。

レルベアはこの2つの成分によって喘息発作が起きないように気管をしっかりと守ってくれます。またステロイドとβ2刺激薬はお互いがお互いの作用を強めあうという特徴を持っており、それぞれを単独で投与するよりも高い効果が得られます。

レルベアのような吸入剤は飲み薬と比べて副作用が少ないというのも大きなメリットです。吸入したレルベアはほぼ気管のみに塗布されるため、飲み薬のように全身にお薬が回りにくいのです。ステロイドは通常の飲み薬であれば長期間投与すると副作用の心配がありますが、吸入によって気管にのみ作用させる吸入剤はその心配も大分少なくなります。

レルベアは主に喘息に用いる吸入剤ですが、海外ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)にも適応をもっています。しかし日本では現時点では喘息にしか適応がありません。機序的にはCOPDにも効果があるお薬であるため、今後はCOPDに対しても使用できるようになると思われます。

【COPD】
慢性閉塞性肺疾患。以前は「肺気腫」と呼ばれていた。タバコによって肺胞が破れたり気管支が炎症によって狭くなり、呼吸苦などが生じる疾患。

以上から、レルベアの特徴として次のようなことが挙げられます。

【レルベアの特徴】

・喘息の治療薬として用いられる
・呼吸苦・咳・痰などを改善させてくれる
・ステロイドとβ2刺激薬が配合されている
・喘息発作を抑える予防薬であり、発作止めとしては使えない
・気管にのみ作用するため、全身への副作用が少ない
・1日1回の吸入で1日効果が持続する
・現時点では日本ではCOPDへの適応はない

 

2.レルベアはどのような疾患に用いるのか

レルベアはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】
・気管支喘息 (吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)

レルベアは気管の炎症を抑え、気管を拡げる作用を持つお薬であるため、気管に炎症が生じている疾患、気管が狭くなってしまう疾患に対して用いられます。

具体的には「気管支喘息」と「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」になります。ただしCOPDに対しては日本ではまだ適応が取れていません(海外では適応があります)。

気管支喘息においては、吸入ステロイドとβ2刺激薬は初期から推奨される治療法になるため、レルベアは初期から検討されるお薬になります。

 

3.レルベアはどのような作用があるのか

レルベアはどのような作用機序によって、喘息の症状を改善させてくれるのでしょうか。

レルベアの気管への作用について詳しく紹介します。

 

Ⅰ.抗炎症作用

レルベアには「フルチカゾンフランカルボン酸エステル」というステロイドが配合されています。ステロイドには「抗炎症作用」があり、フルチカゾンもこの作用を狙って配合されています。

ステロイドには飲み薬や塗り薬などもありますが、これらも同じ作用があります。飲み薬のステロイドは全身の炎症を抑えるために用いられ、関節リウマチなどの自己免疫性疾患や重症の感染症などに用いられることがあります。

塗り薬のステロイドは皮膚の炎症を抑えるために用いられ、主に皮膚炎(アレルギー性皮膚炎など)に用いられます。

同じようにレルベアに含まれる「フルチカゾンフランカルボン酸エステル」は、気管の炎症を抑えるために用いられます。

喘息では気管にアレルギーが生じてしまい、それにより気管に炎症が生じます。炎症が生じると気管が腫れるため、気管が狭くなり、呼吸苦や咳・痰などが生じます。

このような状態の気管にステロイドを使用すると、気管の炎症が軽減します。すると気道の腫れが和らぐため、呼吸苦・咳・痰の改善が得られるのです。

ちなみにステロイドである「フルチカゾン」のみを主成分とした吸入薬には「フルタイド」があります。

 

Ⅱ.アドレナリンβ2刺激作用

レルベアには「ビランテロールトリフェニル酢酸塩」というβ2刺激薬が含まれています。

アドレナリンという物質が作用する部位をアドレナリン受容体と呼びますが、アドレナリン受容体には、α受容体とβ受容体があることが知られています。

β受容体は、心臓の収縮力を強めたり脈拍を早める作用(強心作用)や、気管にある平滑筋という筋肉を緩めて気管を広げたり、また血管の平滑筋を緩めることで血圧を下げる作用があります。

そしてβ受容体にもいくつか種類があります。

主に心臓に存在し、心臓の収縮力を強めたり脈拍を早めるのがβ1受容体になります。また主に気管や血管に存在し、気管や血管を拡げるのがβ2受容体になります(それ以外にもβ3受容体もありますが、今回はあまり関係ないので省略します)。

気管支喘息で主に効いて欲しいのはβ2受容体になります。

レルベアに含まれるビランテロールトリフェニル酢酸塩はβ受容体の中でもβ2受容体に対して選択性が高く、気管を広げる作用のみにはたらき、心臓などには作用しにくい特徴を持っています。このため、ビランテロールは「β2刺激薬」と呼ばれています。

また吸入することにより局所にのみ塗布されるため、全身の血圧を下げるといった副作用も生じにくくなっています。

喘息に使われるβ2刺激薬には

  • SABA(吸入短時間作用性β2刺激薬)
  • LABA(吸入長時間作用性β2刺激薬)

の2種類があります。

SABAは即効性がありますが、効果は長くは続きません。そのため喘息発作が起きた時に抑える「発作止め(レリーバー)」になります。

LABAは即効性はありませんが、効果が長く続きます。そのため、発作をすぐに抑えることは出来ませんが、発作が起きないように「予防薬(コントローラー)」になります。

レルベアに含まれるビランテロールはLABAに属し、長時間効くお薬になります。実際、ビランテロールは約24時間の気管支拡張作用がある事が確認されています。

 

ちなみにこれら「ステロイド」と「β2刺激薬」はお互いがお互いの作用を強めあう事が確認されています。両者を配合しているレルベアはそれぞれを単独で投与するよりも高い効果を得ることができます。

ステロイドはアドレナリンβ2の受容体の数を増やす作用があり、この作用によってβ2刺激薬による気管支を広げる作用が増強されることが動物実験で確認されています。

またβ2刺激薬はステロイドが作用する部位であるグルココルチコイド受容体の核内への移行を促進することが確認されており、これによりステロイドの作用を増強することが期待できます。

 

4.レルベアの副作用

レルベアにはどんな副作用があるのでしょうか。

レルベアは吸入剤であり飲み薬と違って全身にほとんど作用しません。そのため安全性は高いお薬だと言って良いでしょう。

ただし吸入することで口腔内や咽喉頭、気管には塗布されるため、これらの部位に副作用が生じることはあります。

レルベアの副作用発生率は、7.1~26.1%と報告されています。数字を見ると副作用の数自体は少なくはありませんが、重篤なものが生じる可能性は低いお薬になります。

生じる副作用としては、

  • 発声障害(嗄声)
  • 口腔カンジダ症

などがあります。

レルベアにはステロイドが含まれています。ステロイドは炎症を抑える効果が期待できる反面で、「感染に弱くなってしまう」というリスクがあります。それにより嗄声や口腔カンジダ症などが生じやすくなってしまいます。また、稀ですが肺炎に至る事もあり得ます。

レルベアにはβ2刺激薬も含まれていますが、β2刺激薬は気管の平滑筋を緩めることで気管を広げる作用があります。同様に血管の平滑筋を緩める作用があります。これにより頭痛などが生じることもあります。

頻度は稀ながら重篤な副作用としては、

  • アナフィラキシー反応
  • 肺炎

が報告されています。

ちなみにレルベアは

  • 有効な抗菌剤の存在しない感染症
  • 深在性真菌症

の患者様には禁忌(投与したら絶対にダメ)となっています。

これはレルベアがステロイドを含有しているためです。ステロイドは炎症を抑えてくれる効果がある反面で、免疫力を下げてしまう作用があります。免疫力とは病原菌に対して抵抗する力のことで、これが弱まるとばい菌に感染しやすくなってしまいます。

元々、難治性の感染症にかかっている方にステロイドを使用してしまうと、更にばい菌が悪さをしてしまう環境になるため、このような方への投与は認められていません。

 

5.レルベアの用法・用量と剤形

レルベアにはどのような剤型があるのでしょうか。

レルベアは、

レルベア100エリプタ 14吸入用
レルベア100エリプタ 30吸入用

レルベア200エリプタ 14吸入用
レルベア200エリプタ 30吸入用

といった剤形があります。

レルベアの後についている「エリプタ」というのは意味なのでしょうか。

「エリプタ」というのはレルベアの吸入器の名称で、エリプタは2種類の吸入薬(ステロイドとβ2刺激薬)を簡便に吸入できるような工夫がなされています。

エリプタの中で、ステロイドとβ2刺激薬はそれぞれ別の場所に保管されていますが、カバーを開くと自動的に2つのお薬が吸入口にセットされる仕組みになっています。

このように「カバーを開ける」という1動作だけで、簡便に吸入できます。

ちなみにエリプタは「楕円形」という意味のellipseが語源となっています。これは恐らくこの容器の形状を表しているのでしょう。

 

レルベアの使い方としては、

通常、成人にはレルベア100エリプタ1吸入を1日1回吸入投与する。なお、症状に応じてレルベア200エリプタ1吸入を1日1回吸入投与する。

と書かれています。

レルベアのようなステロイド吸入剤は吸入後にうがい・口すすぎをすることが推奨されています。ステロイドは免疫力を弱めてばい菌が感染しやすい環境にしてしまうためです。

うがいをして口の中のステロイドを洗い流すことにより、口腔内にばい菌が繁殖するのを防げます。

 

6.レルベアが向いている人は?

以上から考えて、レルベアが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

レルベアの特徴をおさらいすると、

・喘息の治療薬として用いられる
・呼吸苦・咳・痰などを改善させてくれる
・ステロイドとβ2刺激薬が配合されている
・喘息発作を抑える予防薬であり、発作止めとしては使えない
・気管にのみ作用するため、全身への副作用が少ない
・1日1回の吸入で1日効果が持続する
・現時点では日本ではCOPDへの適応はない

といったものでした。

レルベアは喘息で使用することの多い吸入剤になりますが、その最大の特徴は1日1回の吸入で良いという点です。

近年では2つの成分が入った配合剤も増えてきましたが、1日1回の吸入で良いものは現在レルベアしかありません。

お薬の吸入忘れが多い方や、忙しくて1日2回の吸入が難しい方などにとっては良い選択肢となるでしょう。

また吸入剤というのは当たり前ですが、しっかりと気管や肺に届くまで吸い込まないと効果が得られません。正しい吸入法が出来るように医師や薬剤師からしっかりと指導を受けるようにしましょう。ネットでも吸入法の動画なども製薬会社から配布されていますので、ぜひご覧になってください。