レザルタス配合錠（一般名：オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン）は2010年から発売されている降圧剤（血圧を下げるお薬）になります。
レザルタスは「配合錠」という名前からも分かるように、2つの成分が配合された降圧剤です。
具体的にはアンジオテンシンII受容体拮抗薬（AngiotensinⅡ Receptor Blocker：ARB）である「オルメテック（一般名：オルメサルタン メドキソミル）」とカルシウム拮抗薬である「カルブロック（一般名：アゼルニジピン）」が配合されています。
2種類の成分を1剤にまとめているためお薬の管理も楽になりますし、服薬する錠数も減らせます。高血圧の方は複数の降圧剤を飲まれている方もいらっしゃいますから、このような配合剤は服用の手間を軽減させてくれます。
近年ではこのような配合剤は多く発売されています。その中でレザルタスはどのような特徴の持っていて、どのような患者さんに向いている降圧配合剤なのでしょうか。
ここではレザルタス配合錠の特徴や効果・副作用についてみていきます。
目次
１．レザルタス配合錠の特徴
まずは、レザルタス配合錠の全体的な特徴について紹介します。
レザルタス配合錠は、
- オルメテック（一般名：オルメサルタン メドキソミル）
- カルブロック（一般名：アゼルニジピン）
といった2種類の降圧剤（血圧を下げるお薬）が含まれた合剤になります。
要するにレザルタスを服用する事は、オルメテックとカルブロックの2剤を服用しているのと同じです。なんで合剤にしてまとめたのかと言うと、服用の手間が軽減するためです。また薬価（お薬の値段）も安くなるというメリットもあります。
レザルタスに含まれるオルメテック（一般名：オルメサルタン）はARB（アンジオテンシンII受容体拮抗薬）という種類の降圧剤になります。
ARBはアンジオテンシンⅡという物質のはたらきをブロックすることで、血圧を下げるお薬になります。アンジオテンシンⅡは血圧を上げる作用が強い物質なので、これをブロックすると血圧が下がるのです。
またARBは血圧を下げるだけでなく臓器保護作用があり、心臓や腎臓を保護してくれます。そのため、心不全や腎不全の方にも向いているお薬になります。
オルメテックはARBの中で「降圧力が強い」という特徴があります。強力に血圧を下げてくれるため、血圧がなかなか下がらない方にとっても頼れるお薬です。
レザルタスに含まれるカルブロック（一般名：アゼルニジピン）はカルシウム拮抗薬という種類の降圧剤になります。カルシウム拮抗薬は血管の平滑筋に存在するカルシウムチャネルというカルシウムが通る穴をふさぐ作用があります。
カルシウムチャネルをカルシウムが通ると平滑筋が収縮します。動脈の周りを覆っている平滑筋が収縮すれば血圧は上がります。カルシウム拮抗薬はこれをブロックするため、血圧を下げることになります。
カルブロックはカルシウム拮抗薬の中での降圧力は標準的ですが、「抗炎症作用」や「腎保護作用」など様々な付加作用を有しています。作用時間もまずまず長く、1日1回の服用で１日を通して効果が持続します。
以上からオルメテックとカルブロックを配合したレザルタスには、次のような特徴が挙げられます。
| 【レザルタスの特徴】
・2つの降圧剤が含まれており、血圧を下げる力がしっかりしている |
２．レザルタス配合錠はどのような疾患に用いるのか
レザルタスはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
高血圧症
レザルタスは降圧剤ですので、「高血圧症」の患者さんに用います。
注意点としてレザルタスは2つの降圧剤が配合されているお薬であるため、治療において一番最初から使う事は出来ません。
レザルタスを最初から投与するという事は、降圧薬を一気に2つ始めてしまうのと同じことだからです。まずは1剤から始め、それでも効果が不十分な時に初めて2剤目は検討されるべきです。
レザルタスは2つの降圧剤が含まれているため、1つの降圧剤で効果が不十分であったときに検討されるお薬になります。
ではレザルタスは高血圧に対してどれくらいの効果が期待できるのでしょうか。
レザルタスは2つの降圧剤を配合しているため、一般的な降圧剤よりは降圧効果は高くなります。
調査によると、レザルタスの服用を12週間続けると平均で、
- レザルタスLDの投与で収縮期血圧が20.3mmHg、拡張期血圧が13.0mmHgほど下がる
- レザルタスHDの投与で収縮期血圧が23.6mmHg、拡張期血圧が14.2mmHgほど下がる
と報告されています。
更に降圧作用は一日を通してしっかりと持続している事が確認されています。
ちなみにレザルタスを服薬してからどれくらいで効果を判定すれば良いのでしょうか。
これは明確に決まっているわけではありませんが、通常2週間程度で効果は現れはじめます。しっかりとした効果を判定するには「約1カ月」程度を考えます。
３．レザルタス配合錠にはどのような作用があるのか
レザルタスは具体的にどのような作用機序によって血圧を下げてくれるのでしょうか。
レザルタスの作用機序について紹介します。
Ⅰ．降圧作用（アンジオテンシンⅡのブロック）
レザルタスにはオルメテックというARBと同じ成分が含まれており、これに血圧を下げる作用があります。
ではオルメテックはどのように血圧を下げるのでしょうか。
私たちの身体の中には、血圧を上げる仕組みがいくつかあります。その1つに「RAA系」と呼ばれる体内システムがあります（RAA系とは「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン」の略です）。
RAA系は本来、血圧が低くなりすぎてしまった時に血圧を上げるシステムです。
腎臓は血液から老廃物を取り出して尿を作る臓器ですが、ここに「傍糸球体装置」というものがあります。傍糸球体装置は腎臓に流れてくる血液が少なくなると「レニン」という物質を放出します。
レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠという物質に変えるはたらきがあります。
更にアンジオテンシンⅠはACEという酵素によってアンジオテンシンⅡになります（ちなみにこれをブロックするのがACE阻害薬という降圧剤です）。
アンジオテンシンⅡは副腎という臓器に作用して、アルドステロンというホルモンを分泌させます。
アルドステロンは血液中にナトリウムを増やします（詳しく言うと、尿として捨てる予定だったナトリウムを体内に再吸収します）。血液中のナトリウムが増えると血液の浸透圧が上がるため、ナトリウムにつられて水分も血液中に引き込まれていきます。これにより血液量が増えて血圧も上がるという仕組みです。
通常であればこのRAA系は、血圧が低くなった時だけ作動する仕組みです。しかし血圧が高い状態が持続している方は、このRAA系のスイッチが不良になってしまい、普段からRAA系システムが作動してしまっていることがあります。
オルメテックをはじめとしたARBは、アンジオテンシンⅡのはたらきをブロックすることで、RAA系が作動しないようにします。すると血圧を上げる物質が少なくなるため、血圧が下がるというわけです。
ちなみにオルメテックは他のARBと比べても降圧力が高いのですが、その理由はオルメテックの持つ「インバースアゴニスト作用」によります。
ARBはアンジオテンシンⅡ受容体という部位をブロックするのですが、実はアンジオテンシンⅡ受容体は何も結合していない状態でもある程度勝手に活性化してRAA系を作動させています。
この受容体自身が持つ活性をも抑制する作用がインバースアゴニスト作用です。
オルメテックはアンジオテンシンⅡ受容体をブロックしてアンジオテンシンⅡが結合した時の活性が生じないようにするほか、アンジオテンシンⅡ受容体自身が持っている活性をもブロックする事でより高い降圧力を発揮してくれるのです。
Ⅱ．降圧作用（カルシウムチャネルのブロック）
レザルタスにはカルブロックというカルシウム拮抗薬と同じ成分が含まれており、これも血圧を下げる作用があります。
ではカルブロックはどのように血圧を下げるのでしょうか。
カルシウム拮抗薬は、血管の平滑筋という筋肉に存在しているカルシウムチャネルのはたらきをブロックするというのが主なはたらきです。
チャネルという用語が出てきましたが、これはかんたんに言うと、様々なイオンが通る穴だと思ってください。つまりカルシウムチャネルは、カルシウムが通ることが出来る穴です。
カルシウムチャネルは、カルシウムイオンを通すことにより、筋肉を収縮させるはたらきがあります。これをブロックするのがカルシウム拮抗薬です。
この作用でカルシウムイオンが流入できなくなると、筋肉が収縮できなくなるため拡張します。そして血管を覆っている平滑筋が拡張する（広がる）と、血圧は下がります。
ちなみにカルシウムチャネルにはL型、T型、N型の3種類があることが報告されています。このうち、平滑筋に存在しているカルシウムチャネルはほとんどがL型です。
【L型カルシウムチャネル】
主に血管平滑筋・心筋に存在し、カルシウムが流入すると筋肉を収縮させる。ブロックすると血管が拡張し、血圧が下がる【T型カルシウムチャネル】
主に心臓の洞結節に存在し、規則正しい心拍を作る。また脳神経にも存在し神経細胞の発火に関係している【N型カルシウムチャネル】
主にノルアドレナリンなど興奮性の神経伝達物質を放出する。
カルブロックはL型カルシウムチャネルに選択性が高いため、しっかりと血圧を下げてくれ、またT型カルシウムチャネルにも多少作用する事により、後述の腎保護作用や抗炎症作用を発揮してくれます。
Ⅲ．臓器保護作用
オルメテックには臓器保護作用があります。
具体的には心臓・腎臓や脳に対して、これらの臓器が傷付くのを防いでくれるのです。
心臓が傷んでしまい、十分に機能できなくなる状態を「心不全」と呼びます。高血圧は心不全のリスクになるため、オルメテックの降圧作用はそれ自体が心保護作用になります。
またそれ以外にも先ほど説明したRAA系の「アンジオテンシンⅡ」は心臓の筋肉（心筋）の線維化を促進し、これも心臓の力を弱める原因となります。
オルメテックはアンジオテンシンⅡのはたらきをブロックしてくれるため、これも心保護作用になります。
実際、オルメテックのようなARBは心不全に対しての第一選択薬となっています。
また腎臓に対しても同様です。
腎臓が傷んでしまい、十分に機能できなくなる状態は「腎不全」と呼ばれ、これも高血圧が発症リスクになるため、オルメテックの降圧作用はそれ自体が腎保護作用になります。
アンジオテンシンは腎臓の線維化も促進し、これも腎不全の原因になるのですが、オルメテックは同様の機序で腎臓の線維化を抑え、腎保護作用を発揮します。
更にレザルタスに含まれるカルブロックがT型カルシウムチャネルに作用する事でも、腎保護作用を発揮します。
Ⅳ．抗炎症作用
レザルタスに含まれる「カルブロック」は、T型カルシウムチャネルをブロックする事で炎症を抑えるはたらきが多少あります。
４．レザルタス配合錠の副作用
レザルタスの副作用はどのようなものがあるのでしょうか。またレザルタスは安全はお薬なのでしょうか、それとも副作用が多いお薬なのでしょうか。
レザルタスの副作用発生率は自他覚症状5.4％・臨床検査値異常4.6%と報告されており、副作用は多くはありません。
生じうる副作用としては、
- めまい
- 頭痛
- AST、ALT、γ-GTP上昇
- CK (CPK)上昇
- 尿酸上昇
などが報告されています。
また、稀ですが重篤な副作用として
- 血管浮腫（顔面、口唇、咽頭、舌の腫脹など）
- 腎不全、高カリウム血症
- ショック、失神、意識消失
- 肝機能障害、黄疸
- 血小板減少
- 低血糖
- 房室ブロック、洞停止、徐脈
などが報告されています。
また、レザルタスは
- レザルタスの成分に対し過敏症の既往歴のある方
- 妊婦又は妊娠している可能性のある方
- アゾール系抗真菌剤（イトラコナゾール、ミコナゾール等）、HIVプロテアーゼ阻害剤（リトナビル、サキナビル、インジナビル等）を投与中の方
は原則服薬することが出来ません。
レザルタスに含まれる「オルメテック（一般名：テルミサルタン）」は、妊婦さんに投与する事で児の奇形の発生率が高まるという報告があり、このような理由から妊婦さんへの投与は禁忌となっています。
レザルタスに含まれるカルブロックは、アゾール系抗真菌薬と併用する事で血中濃度が高くなってしまう事が報告されているため、両者を併用する事は出来ません。
５．レザルタスの用法・用量と剤形
レザルタスは、
レザルタス配合錠LD （オルメサルタン10mg／アゼルニジピン8mg）
レザルタス配合錠HD （オルメサルタン20mg／アゼルニジピン16mg）
の2剤形があります。
レザルタスの使い方は、
通常、成人には1日1回1錠を朝食後経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。
となっています。
2つの成分を含むレザルタスは高血圧治療を行う時に最初に用いてはいけません。まずはオルメテックやカルブロックといった単剤で治療をはじめ、それでも効果不十分な時にのみ、レザルタスのような合剤が検討されます。
６．レザルタス配合錠が向いている人は
以上から考えて、レザルタスが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
レザルタスの特徴をおさらいすると、
| 【レザルタスの特徴】
・2つの降圧剤が含まれており、血圧を下げる力がしっかりしている |
というものがありました。
レザルタスはARBの中でも作用の強い「オルメテック」と、カルシウム拮抗薬の中でも様々な作用を持つ「カルブロック」を合体させたお薬です。
そのため、
・しっかりと血圧を下げたい方
・心臓・腎臓などの臓器をしっかりと保護したい方
に向いているお薬となります。
またレザルタスは2剤を配合することにより1剤ずつで処方してもらうよりも薬価が安くなっています。薬価をなるべく抑えたい方にとっても良い選択肢になります。