ルパフィンの効果と副作用【抗アレルギー薬】

ルパフィン錠(一般名:ルパタジンフマル酸塩)は、2017年から発売されているお薬です。

アレルギー症状を抑える「抗アレルギー薬」であり、花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられます。

ルパフィンは主にヒスタミンのはたらきを抑える事でアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」という種類に属するお薬になります。

抗アレルギー薬、そして抗ヒスタミン薬にも様々なお薬がありますが、その中でルパフィンはどのような特徴を持ち、どのような作用を持っているお薬なのでしょうか。

ここではルパフィンの特徴や効果・副作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

1.ルパフィンの特徴

まずはルパフィンというお薬の全体像や特徴についてみてみましょう。

ルパフィンは、

  • ヒスタミンのはたらきをブロックする
  • PAF(血小板活性化因子)のはたらきをブロックする

という2つの作用によって、しっかりとアレルギー症状を抑えてくれるお薬です。

ヒスタミンはアレルギー症状を引き起こす物質(ケミカルメディエーター)の1つです。ヒスタミンが過剰に分泌されると、かゆみや鼻汁などといったアレルギー症状が出現します。

つまり、ヒスタミンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を和らげる事ができるという事です。これを狙っているのが「抗ヒスタミン薬」で、ルパフィンも抗ヒスタミン薬の1つです。

抗ヒスタミン薬には古い第1世代抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多いという問題があります。副作用が改良されたのが第2世代で、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。

この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位への作用が少ないのも副作用が少ない理由の1つです。

このうちルパフィンは第2世代の抗ヒスタミン薬に属し、副作用は第1世代と比べると少なめになります。

現在では、まず副作用が少ない第2世代から開始するのが一般的です。第2世代の抗ヒスタミン薬にもたくさんの種類がありますが、その中でのルパフィンの特徴はというと、PAF(血小板活性化因子)を抑えるはたらきを有しているという点が挙げられます。

PAF(血小板活性化因子)というのは、元々は血小板を活性化させる物質として発見されたものですが、近年では気管支喘息などのアレルギー疾患の発症にも関わっている事が明らかになってきており、ヒスタミンと同じくケミカルメディエーターの1つだと考えられています。

ルパフィンの主成分であるルパタジンフマル酸塩は、抗ヒスタミン作用を持つ「ピペリジニル構造」と、抗PAF作用を持つ「ルチジニル構造」をあわせもった物質であり、1剤で2つのアレルギーを抑える作用が期待できるのです。

ルパフィンの副作用は特別に多くはないものの、他の抗ヒスタミン薬と同様に「眠気」が生じる可能性がある点には注意が必要です。これはヒスタミンが脳の覚醒にも関わっている物質であるためです。抗ヒスタミン薬はヒスタミンのはたらきをブロックするため、脳の覚醒度も落としてしまう可能性があり、これにより眠気が生じます。

このような理由から眠気の副作用が出ると困る方(運転をする方、高所で作業する方など)では、ルパフィンの服用には注意が必要です。

以上から、ルパフィンの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ルパフィンの特徴】

・アレルギー症状を抑えるお薬で、花粉症やじんましんなどに用いられる
・抗ヒスタミン作用、抗PAF作用を持つ
・第2世代抗ヒスタミン薬に属し、第1世代よりは副作用が少ない
・他の抗ヒスタミン薬と同様に眠気の副作用に注意

 

2.ルパフィンの適応疾患と有効率

ルパフィンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

・アレルギー性鼻炎
・蕁麻疹
・皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒

ルパフィンは抗アレルギー薬ですので用いられるのは、アレルギー疾患になります。

代表的なアレルギー疾患には、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあり、ルパフィンもこれらの疾患に用いる事が出来ます。

ではルパフィンはこれらの疾患に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

ルパフィンは、

  • アレルギー性鼻炎(花粉症など)
  • じんましん
  • 皮膚疾患い伴うそう痒

のいずれにおいてもプラセボ(何の成分も入っていない偽薬)と比較して、有意なアレルギー抑制効果が確認されています。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

季節性アレルギー性鼻炎の患者さんに対してルパフィンを投与した調査では、投与2週間後の総鼻症状スコア(くしゃみ、鼻汁、鼻閉及び鼻内そう痒感の合計値)の推移は、

  • プラセボでー0.78
  • ルパフィン10mg/日でー1.86
  • ルパフィン20mg/日でー2.29

と有意に改善し、またルパフィンの量が増えるほど改善の程度も強まる事が示されています。

同様に通年性のアレルギー性鼻炎の患者さんに対してルパフィンを投与した調査でも、ルパフィン服用群の方が総鼻症状スコアが改善された事が示されています。

慢性蕁麻疹の患者さんに対してルパフィンを投与した調査では、投与2週間後の総そう痒スコア(日中の痒み及び夜間の痒みの合計)の推移は、

  • プラセボでー1.16
  • ルパフィン10mg/日でー3.34
  • ルパフィン20mg/日でー3.30

とこちらも有意な改善が得られた事が報告されています。ただし蕁麻疹に関してはルパフィンは10mgでも20mgでも効果はほぼ同じという結果になっています。

同様に通年性の皮膚疾患に伴うそう痒の患者さんに対してルパフィンを投与した調査でも、ルパフィン服用群の方が総そう痒スコアが改善された事が示されています。

 

3.ルパフィンの作用

ルパフィンはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。

ルパフィンの作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

Ⅰ.抗ヒスタミン作用

ルパフィンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。

アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。

アレルゲン(アレルギーを引き起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体などに結合することで様々なアレルギー症状が発症します。

ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。

ルパフィンのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合するヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状の出現を抑える作用もあります。

更にルパフィンは体内で「デスロラタジン」という物質に代謝されますが、このデスロラタジンも抗ヒスタミン作用を持ちます。ちなみにこのデスロラタジンは「デザレックス」という抗ヒスタミン薬の主成分です。

ルパフィンはこれらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれるのです。

 

Ⅲ.抗PAF作用

血小板活性化因子(PAF)も、ケミカルメディエーターの1つです。

当初は血小板を活性化させたり、血管を拡張させたりする作用が知られていたため「血小板活性化因子」という名前がついています。

しかしその後、PAFは気管支喘息を誘発する物質の1つでもあることが明らかになり、近年ではアレルギーを誘発する物質(ケミカルメディエーター)の1つと考えられるようになりました。

ルパフィンはPAFのはたらきもブロックすることが確認されており、これによってもアレルギー症状を軽減させます。

 

4.ルパフィンの副作用

ルパフィンにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどれくらいなのでしょうか。

ルパフィンの副作用発生率は12.7%と報告されています。数値だけを見ると多くも見えますが、第1世代抗ヒスタミン薬と比べると第2世代であるルパフィンは副作用が少なく、服薬しやすいお薬となります。

近年は副作用発生率の調査をより厳密に行うようになっているため、近年発売されたお薬は昔のお薬と比べて副作用発生率が報告上は高く出やすいという傾向があるのです。

ルパフィンの副作用として多いのは、

  • 眠気、傾眠

になります。

ルパフィンに限らず抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあります。もちろんルパフィンも例外ではありません。

これはヒスタミンが脳の覚醒にも関与する物質であるためです。ヒスタミンの作用を抑えるルパフィンは、脳の覚醒レベルも抑えてしまうため、眠気が生じる事があります。

また、その他の副作用として、

  • 口渇
  • 倦怠感
  • 尿糖・尿蛋白陽性
  • 肝機能障害(AST、ALT、ɤGTP上昇)

なども報告されています。

口喝(口の渇き)は抗コリン作用(アセチルコリンのはたらきをブロックすることで生じてしまう作用)という副作用になります。

実はヒスタミンが作用する部位であるヒスタミン受容体と、アセチルコリンが作用する部位であるアセチルコリン受容体は構造的に似た形をしています。

そのため抗ヒスタミン薬は多少、アセチルコリン受容体もブロックしてしまうのです。これによって生じるのが抗コリン作用です。抗コリン作用では口喝の他、排尿障害や便秘などが生じる事もあります。

また頻度は多くはありませんが、尿検査の異常や肝機能障害などの報告もあるため、ルパフィンを長期間服薬している場合などでは定期的に血液検査・尿検査を行うことが望ましいでしょう。

頻度は稀ですが、ルパフィンで生じうる重大な副作用として、

  • ショック、アナフィラキシー
  • てんかん、けいれん
  • 肝機能障害、黄疸

が報告されています。

 

5.ルパフィンの用法・用量と剤形

ルパフィンには、

ルパフィン錠 10mg

の1剤形のみがあります。

ルパフィンの使い方としては、

通常、12歳以上の小児及び成人には1回10mgを1日1回経口投与する。

なお、症状に応じて、1回20mgに増量できる。

となっています。

ルパフィンは1日1回服用しますが、服用するタイミングは食後でも食前(空腹時)でも問題ありません。毎日同じ時間に服用する必要はありますが、服用タイミングは自由に決める事が出来ます。

 

6.ルパフィンが向いている人は?

以上から考えて、ルパフィンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ルパフィンの特徴をおさらいすると、

【ルパフィンの特徴】

・アレルギー症状を抑えるお薬で、花粉症やじんましんなどに用いられる
・抗ヒスタミン作用、抗PAF作用を持つ
・第2世代抗ヒスタミン薬に属し、第1世代よりは副作用が少ない
・他の抗ヒスタミン薬と同様に眠気の副作用に注意

といったものがありました。

ルパフィンは、第2世代抗ヒスタミン薬になり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対してまず最初に検討されるお薬の1つです。

第2世代の中では抗PAF作用を持つのが特徴で、これは抗ヒスタミン作用とは異なった機序でアレルギー症状を抑えてくれるという利点があります。

また1日1回の服用で1日を通して効果が持続するのもメリットで、服薬の手間が少なくて済みます。

ここから、

  • 抗ヒスタミン作用を持つお薬だけでは効果不十分の方
  • 1日1回の服薬が良い方

には向いているお薬になります。

抗ヒスタミン作用を持つお薬で症状はある程度改善したんだけど、もう一歩改善させたいという場合、抗ヒスタミン作用に加えて抗PAF作用を持つルパフィンは良い選択肢になるのではないでしょうか。

 

7.お薬を使わない花粉症の治療法

花粉症をはじめとしたアレルギー疾患は、お薬で症状を抑える事が出来ます。

しかしお薬だけが有効な治療法はではありません。日常の生活習慣の工夫で症状を和らげる事も可能ですし、食べ物に含まれる成分にもアレルギーを抑える効果が報告されているものもあります。

最後にお薬以外で花粉症を抑える、有効な予防法について紹介します。

 

Ⅰ.花粉を目・鼻に入れない

やはり一番大切なのは、毎日の生活の中での工夫です。

花粉症の症状は、花粉が目や鼻の中に入る事で生じます。という事は花粉がこれらの部位に接触しなければ症状は生じないわけです。

当たり前の事ですが、これは非常に重要な事です。

花粉が飛散する時期になったら、外出時はメガネやマスクなどを装着するようにしましょう。これだけでも症状は大分軽減します。なるべく皮膚と密着するようなメガネ・マスクが良いでしょう。

また服装も重要です。花粉がくっつきやすい服を着ていれば、外出時に服にたくさん花粉がついてしまい、それが家の中で舞ってしまいます。

具体的には、ウールなどのモコモコした生地の服は花粉が付きやすく、ポリエステルなどのツルツルした服は花粉が付きにくいと言われています。花粉が飛散する時期は、このように服装にも気を付けるようにしてみましょう。

 

Ⅱ.乳酸菌

乳酸菌はヨーグルトなどに含まれている細菌で、いわゆる「善玉菌」として知られています。

腸内細菌のバランスを適正に整える事で、便秘や下痢、腹部膨満といった胃腸症状を改善させる作用があり、整腸剤の成分としても用いられています。

近年、乳酸菌はただ腸内細菌のバランスを整えるだけではなく、腸内細菌のバランスを整える事によって免疫力も整えてくれる事が分かってきました(免疫力:身体に有害な異物が入ってきた時に、異物を排除するシステム)。

アレルギー疾患は免疫反応の誤作動によって生じています。具体的には花粉症であれば、「花粉」という本来であれば身体に害のない物質に対して、「敵だ!排除しなければ」と免疫が誤作動してしまう事で鼻水・目のかゆみなどが生じるのです。

つまり免疫力を整えてくれる乳酸菌は、花粉症の改善にも効果が期待できるという事です。

また乳酸菌の中でも特にアレルギー反応を抑える事が確認されている菌としては、

  • L-92乳酸菌
  • フェリカス菌

などがあります。最近ではこのような抗アレルギー作用のある乳酸菌を含む乳製品(ヨーグルトやチーズなど)も発売されるようになってきましたので、花粉症の時期にはこれらを積極的に摂取するようにしましょう。

また、乳酸菌の栄養となる「オリゴ糖」の摂取も有効です。オリゴ糖が十分に腸内に届けば、それだけ乳酸菌が増殖しやすくなるためです。

例えば、カルピス社が販売しているこの飲料にはL-92乳酸菌が含まれており、アレルギー症状の改善も期待できます。

 

Ⅱ.ポリフェノール

「ポリフェノール」は抗酸化作用が注目される事が多く、「アンチエイジング効果がある物質」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

確かにポリフェノールには抗酸化作用がありますが、実はそれ以外にも抗アレルギー作用もあるのです。

ポリフェノールはアレルギーを誘発する物質であるヒスタミンの放出を抑える作用が報告されており、抗ヒスタミン薬と似た機序でアレルギー症状を改善させてくれます。

ポリフェノールを多く含む食品としては、

  • 野菜
  • 果物
  • ワイン
  • お茶

などがあります。

ちなみにお茶には「カテキン」が含まれていますが、このカテキンもポリフェノールの1種です。

日常で野菜をあまり取れない方は、サプリメントも有効です。ただし一部のサプリメントや野菜ジュースなどにはポリフェノールがほとんど除去されてしまっているものもあるため、注意しましょう。

べにふうき茶は、ポリフェノールの一種である「メチル化カテキン」を含み、花粉症をはじめとしたアレルギー症状に効果が期待できます。

 

Ⅳ.ω脂肪酸(EPA・DHA)

EPAやDHA「ω3脂肪酸」と呼ばれ、魚に多く含まれる物質で「血液をサラサラにする」という効果がよく知られています。

以前は「食べると頭が良くなる」と言われた事もありましたが、直接頭を良くする作用があるわけではありません。血液をサラサラにする事で脳の血流を増やす作用があるため、このように言われるようになったようです。

その他にもコレステロールを低下させたり、精神状態を安定させる作用(抗うつ作用)なども報告されています。

近年では、アレルギーを抑える作用もある事が報告されるようになりました。アレルギーを引き起こす物質にはヒスタミン以外にも、ロイコトリエンやプロスタグランジンなどがあります。

DHAやEPAはロイコトリエンやプロスタグランジンのはたらきを抑える作用が報告されています。DHA、EPAは青魚に多く含まれていますので、花粉症の時期には積極的に摂取するようにしても良いでしょう。

またDHA・EPAはサプリメントとしても各製薬会社から発売されていますので、このようなものを利用するのも方法の1つです。

 

Ⅴ.アロマエッセンス

アロマ(精油)は日本ではまだあまり普及していませんが、海外では医薬品として病院から処方されるような国もあり、その効果は侮れません。

アロマオイルの中にはアレルギー症状に効果があるものもあります。例えばユーカリやティーツリーといったアロマオイルは免疫の調子を整え、鼻粘膜の炎症を和らげてくれる作用があると言われています。

またペパーミントは鼻腔の通りを改善させる作用があると言われています。

このような成分を配合したアロマオイルを使ってみるのも方法の1つです。

 

Ⅵ.甜茶の効果は不確か?

「花粉症に効くお茶」として有名な甜茶(てんちゃ)ですが、本当に花粉症に効果があるのでしょうか。

甜茶は元々は「甘いお茶」の総称で、一口に甜茶といっても含まれる成分はお茶によって異なります。

甜茶に含まれるバラ科キイチゴ属の植物の葉に抗アレルギー効果があるという報告から、一時期甜茶が花粉症の時期に流行りましたが、明確な効果はないとする報告も多く、その抗アレルギー作用は不確かなところがあります。

厚生労働省や独立行政法人国立健康・栄養研究所などの公的機関も、甜茶の効果に対しては否定的であり、甜茶ブームも長くは続いていない事から、少なくともしっかりとした効果はないと考えられます。