サリベートエアゾールは1986年から発売されている噴霧剤(スプレーのようなもの)で、人工唾液という種類に属します。
人工唾液とはその名の通り人工的に合成された唾液で、人の唾液の成分に近くなるように合成された物質です。口腔内に噴霧する事により口腔内を潤してくれるため、唾液の分泌量が少なくなって口が渇いてしまうような方に用いられます。
ここではサリベートエアゾールの特徴や効果・効能、副作用について紹介していきます。
目次
1.サリベートの特徴
まずはサリベートの特徴をざっくりと紹介します。
サリベートは、唾液の成分に似せて作られた人工的な物質です。主に口が渇いてしまうような疾患の方に用いられます。
サリベートには複数の物質が含まれており、これによってヒトの唾液と成分や組成、pH、粘度などが同じになるように作られています。
唾液は本来口の中を潤わせる事で、口腔粘膜を傷付きにくくするはたらきがあります。また、ばい菌が繁殖するのを抑えたり食べ物をスムーズに胃腸へ流すはたらきもあります。
何らかの原因によって唾液量が低下してしまうとこれらの作用が得られなくなるため、口の中が乾燥し、口腔粘膜に傷が入りやすくなり、ばい菌も繁殖しやすくなってしまいます。
これを防ぐのがサリベートです。
サリベートは唾液の成分だけを似せているのではなく、粘度(ねばり気)なども同程度となるように作られているため長時間口腔内にとどまってくれます。
注意点として、唾液中には様々な酵素が含まれていますが、サリベートにはそれらは含まれていません。
例えば唾液中には、食べ物を分解する酵素である「アミラーゼ」、ばい菌をやっつける酵素である「リゾチーム」などが含まれています。しかしサリベートには含まれていません。
副作用はほとんどなく安全性に優れますが、わずかに甘味があるため、これが合わないという方もいます。
以上から、サリベートの特徴としては次のようなことが挙げられます。
【サリベートエアゾールの特徴】
・人工唾液で、成分・粘度などが唾液と類似している
・何らかの原因で唾液の分泌が低下している方に用いられる
・唾液中に含まれる酵素は含まれていない
・副作用は少ないが、やや甘味あり
2.サリベートはどのような疾患に用いるのか
サリベートはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
下記疾患に対する諸症状の寛解1.シェーグレン症候群による口腔乾燥症
2.頭頸部の放射線照射による唾液腺障害に基づく口腔乾燥症
難しく書かれていますが、サリベートは「口の中の乾燥を防ぐために使われる」と考えていただければ良いでしょう。
口の中が乾燥してしまう疾患には、
- シェーグレン症候群
- 頭頚部の放射線治療後
などがあります。
シェーグレン症候群は膠原病と呼ばれる自己免疫性疾患の1つです。自己免疫性疾患というのは、自分の細胞を自分で攻撃してしまう疾患です。
本来自分の細胞は敵ではありませんが、免疫系(ばい菌などから身体を守るシステム)が誤作動を起こし、自分の細胞に対して「敵だ!」と攻撃をしてしまうのが自己免疫性疾患です。
シェーグレン症候群では免疫系の誤作動により、免疫系が涙腺と唾液腺を攻撃するようになります。するとこれらの組織が破壊され、涙液(涙)や唾液の分泌量が低下してしまうのです。
また癌などの治療のために頭頚部に放射線を当てている方も、放射線によって唾液腺(唾液を分泌する腺)が破壊されてしまい、唾液量が低下する事があります。
このような疾患にサリベートを使用することで、乾燥した口腔内を潤わせる事ができます。
サリベートは各疾患に対してどのくらいの有効性があるのでしょうか。
サリベートの有効率は、
- シェーグレン症候群による口腔乾燥症で有効以上との回答は41.8%
(やや有効以上との回答は70.0%) - 頭頸部の放射線照射による 唾液腺障害に基づく口腔乾燥症で有効以上との回答は54.8%
(やや有効以上との回答は54.8%)
と報告されています。
3.サリベートにはどのような作用があるのか
サリベートは、どのような作用を持つお薬なのでしょうか。
サリベート1缶(50g)中には、
・塩化ナトリウム42.2mg
・塩化カリウム60.0mg
・塩化カルシウム水和物7.3mg
・塩化マグネシウム2.6mg
・リン酸二カリウム17.1mg
が含まれています。
唾液と成分・組成・pH・粘度が同等となっており、噴霧する事で不足している唾液を補うはたらきがあります。
唾液は口の中を適度に潤わせる事で、
- 口腔粘膜を保護する
- ばい菌が繁殖しにくいようにする
- 食べ物をスムーズに飲み込めるようにする
などといったはたらきがあります。サリベートは不足している唾液を補う事で、これらのはたらきを正常に戻す作用が期待できるのです。
ただし注意点として、唾液中には様々な酵素が含まれていますがサリベートには酵素は一切含まれていません。
唾液中に含まれている代表的な酵素として、
- アミラーゼ:食べ物の分解をする
- リゾチーム:ばい菌をやっつける
といったものがありますが、サリベートにはこれらは含まれていないため、酵素によるこのような作用は得られない事になります。
4.サリベートの副作用
サリベートにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用はどのくらいの頻度で生じるのでしょうか。
サリベートの副作用発生率は3.3%と報告されており、多くはありません。臨床的な実感としては副作用はまず生じないと考えても良いお薬です。実際、サリベートと水の噴霧を比較した試験では、サリベートの副作用は水と同程度かそれ以下であったと報告されています。
報告されている副作用としては、
- 嘔気(吐き気)、悪心
- むかつき
- 味覚変化
- 腹部膨満感
などがあります。いずれも重篤となることは少なく、様子を見れる程度のものがほとんどです。ただし、あまりに不快である場合は使用を中止しましょう。
5.サリベートの用量・用法と剤型
サリベートには、
サリベートエアゾール 50g
の1剤型があります。
サリベートの使い方は、
通常1回に1~2秒間口腔内に1日4~5回噴霧する。なお、症状により適宜増減する。
と書かれています。
使用の注意点として、サリベートは使用前に缶をよく振り、缶を垂直に立てて噴霧するようにしてください。
6.サリベートの使用期限はどれくらい?
サリベートの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。
「家に数年前に処方してもらったサリベートがあるんだけど、これってまだ使えますか?」
このような質問をいただく事があります。捨ててしまうのはもったいないですから、使えるものなら使いたいですよね。
保存状態によっても使用期限は異なってきますので一概に答えることはできませんが、適切な条件(室温)で保存されていたのであれば、製造後2年が使用期限になります。
7.サリベートが向いている人は?
以上から考えて、サリベートが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
サリベートの特徴をおさらいすると、
・人工唾液で、成分・粘度などが唾液と類似している
・何らかの原因で唾液の分泌が低下している方に用いられる
・唾液中に含まれる酵素は含まれていない
・副作用は少ないが、やや甘味あり
というものでした。
基本的に副作用はほとんど生じないため、唾液量が低下して口腔内に乾燥・不快感を感じている方は使用を検討して良いお薬になります。
ただわずかな甘味があり、人によってはこれが合わないという方もいます。