センノシド錠の効果と副作用

センノシド錠は1970年から発売されている下剤(瀉下薬、便秘薬)になります。このお薬はジェネリック医薬品であり、1970年から発売されている「プルゼニド」のジェネリックです。

非常に古いお薬ですが、センノシドは大きな副作用がない割にしっかりとした効果がある下剤であるため、現在でも広く用いられています。

センノシドはどんな特徴のある便秘薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。センノシド錠の効果や特徴についてみていきましょう。

 

1.センノシド錠の特徴

センノシド錠というお薬の特徴についてみてみましょう。

センノシドは下剤ですが、その中でも「大腸刺激性下剤」という種類に属します。

便秘の方の便を出す方法としては、いくつかの方法があります。その中でセンノシドは大腸を刺激する事で大腸の動きを活性化させ、排便を促すという作用を持ちます。つまり、センノシドは大腸の動きが低下して便秘になっている方に向いている下剤だと言う事です。

大腸を刺激して動かす事で排便を促すという方法は確実な排便を期待できるメリットがありますが、反面で大腸が次第に刺激に慣れてくるというデメリットもあります。大腸への刺激を慢性的に続けていると、次第に大腸は刺激に反応しなくなり、必要なセンノシドの量がどんどんと増えてしまいます。これを「耐性が生じる」と言います。

センノシドは耐性が生じる可能性のあるお薬であるため、安易にどんどんと服薬しないように注意が必要になります。

また、これは多くの下剤に当てはまることなのですが、下剤は価格がかなり安いのもメリットです。薬局で購入する下剤と比べると非常に安価になります。

ここからセンノシドの特徴として次のようなことが挙げられます。

【センノシドの特徴】

・大腸を刺激して排便を促すため、大腸の動きが悪い便秘に向く(例:寝たきり、高齢者など)
・慢性的に使い続けると耐性(慣れ)が生じて効きにくくなる
・ジェネリック医薬品であり値段が安い

 

2.センノシド錠はどんな疾患に用いるのか

センノシドはどのような疾患に用いられるのでしょうか。センノシドの添付文書を見ると、次のように記載されています。

【効能又は効果】

便秘症

センノシドは下剤であり、使用する疾患は「便秘症」になります。当然ですね。

センノシドは下剤の中でも大腸刺激性下剤に属します。

大腸刺激性下剤は大腸を刺激することで大腸の動きを活性化させます。大腸が活発に動くようになれば、便は排出されやすくなりますから、便秘症に効果があるというわけです。

腸管の動きが悪いために生じる便秘を専門的には「弛緩性便秘」と呼びます。つまりセンノシドは便秘症の中でも、特に弛緩性便秘に効果的な下剤だと言えます。

 

3.センノシド錠の作用機序

便秘症に対して用いられるセンノシド錠ですが、どのような機序で便秘を改善させているのでしょうか。

センノシドは、センナという生薬が主成分であり、このセンナが便秘改善に効果を示します。

具体的に見ると、口から入ったセンノシド(主成分センナ)は、大腸まで移行し、そこで大腸の腸内細菌に分解され、レインアンスロンという物質を生成します。レインアンスロンは大腸壁を刺激し、大腸の蠕動運動を亢進させる作用を持ちます。

レインアンスロンによって大腸が活発に動くようになると、便がスムーズに大腸から肛門へ輸送されるため、排便されやすくなるという機序になります。

 

4.センノシドの副作用

センノシドはお薬によって大腸の動きを活性化するため、時に大腸を動かしすぎることによる副作用が生じます。センノシドはジェネリック医薬品であるため副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「プルゼニド」においては副作用発生率は15%前後と報告されており、センノシドも同程度だと思われます。

頻度の多い副作用としては、

  • 腹痛
  • 下痢
  • 腹鳴(お腹がゴロゴロ鳴る)
  • 悪心・嘔吐

といった胃腸系の副作用です。

これはセンノシドが効きすぎてしまった事で生じる副作用で、多くの場合でセンノシドを適量に調整すれば改善します。

このセンノシドの効き過ぎに伴い

  • 低カリウム血症
  • 低ナトリウム血症
  • 脱水
  • 血圧低下

などが生じることもありえます。下痢によって水分が失われすぎれば脱水・血圧低下が生じ、電解質のバランスも崩れるためナトリウムやカリウム値が異常値となります。

また、センノシドを服用していると尿が黄褐色~赤色になってしまうことがあります。

 

5.センノシド錠の用法・用量と剤形

センノシド錠は、

センノシド錠 12mg

の1剤形のみになります。

ジェネリック医薬品も多くの会社から発売されていますが、全てこの1剤形のみです。

センノシド錠は、便秘症に対しては、1日1回12mg~24mgを就寝前(寝る前)に内服します。便秘の程度が強い場合は、1回48mg(4錠)まで使用することができます。

就寝前に投与するのは、センノシドは飲んでから効くまでに8~10時間ほどかかるためです。そのため就寝前に飲めば、ちょうど朝起きた後に排便が出る計算になります。

実際は効果発現までの時間には個人差があるため、必ずこの通りになるわけではありませんがので、個々人で最適な時間を見つけて服用することになります。

しかし就寝前に飲んだからと言って、夜寝ている時に排便したくなって困ってしまう事ということはありませんので、安心してください。

 

6.センノシド錠の作用時間

センノシド錠は、1回服薬すると、その8~10時間後に効果が出てくると報告されています。

もちろん個人差はありますので、必ず8~10時間後に出るというわけではありませんが、最初はこの時間を目安にして投与時間を考えるとよいでしょう。

添付文書で推奨されているのは、就寝前(寝る前)に服薬して、朝起床後に排便するというリズムです。しかし絶対にこうしなくてはいけないというわけではありません。この用法で上手くいかない場合は、別の時間に服薬しても問題ありません。

例えば、効果が出るのが12時間後だということであれば、夕食後に服薬して、翌朝起床後に排便が出ることを狙ってもいいですし、効果が6時間後に出るという方であれば、朝食後に服薬して昼過ぎに排便が出ることを狙っても良いでしょう。

 

7.センノシド錠が向いている人は?

以上から考えて、センノシドが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

センノシドの特徴をおさらいすると、

・大腸を刺激して排便を促すため、大腸の動きが悪い便秘に向く(例:寝たきり、高齢者など)
・慢性的に使い続けると耐性(慣れ)が生じて効きにくくなる
・ジェネリック医薬品であり値段が安い

というものでした。

大腸の動きが悪い便秘(弛緩性便秘)を起こしやすい人というのは、まずは高齢者が挙げられます。高齢者は筋肉や腸管の機能が加齢で弱ってくるためです。また、人は動かないと腸管の動きも悪くなりますので、なんらかの理由で運動量が減っている方、例えば病気で寝たきりなどの方も良い適応になるでしょう。

ただし妊婦で運動量が減っている方への投与は慎重にすべきです。妊婦に対してのセンノシドの投与は、原則禁忌となっており、「投与しない事を原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること」という扱いになっています。絶対に投与できないわけではありませんが、やむを得ない場合に限るべきでしょう。

お薬によっては腸管の動きを悪くするものもあります。例えば、抗コリン作用を持つお薬は腸管の動きを悪くします。例えば抗ヒスタミン薬(花粉症のお薬など)や向精神薬(抗うつ剤など)ですね。これらのお薬で便秘が生じている場合も、センノシドは便秘改善に効果があるでしょう。

センノシドには耐性があることも忘れてはいけません。つまり、慢性的に使いそうな方に対しては安易に投与し続けて良いものではないということです。

ここから考えると、

・大腸の動きが悪くなっている便秘の方
・経済的になるべく安価に済ませたい方

にはセンノシドはお勧めしやすい下剤になります。ただし高齢者など、今後長期に渡って使用をする可能性が高そうな方であれば、なるべくセンノシド以外の排便コントロール(例えば運動習慣の導入や食生活の改善など)も並行して行い、センノシドの服用が慢性化しないように気を付けるべきでしょう。

 

8.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?

センノシドは「プルゼニド」というお薬のジェネリック医薬品になります。

ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。

しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。

ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。

結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。

ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。

発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、

ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。

しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。

これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。

では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。

先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。

しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。

先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。

つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。