センノサイド錠(一般名:センノシド)は1986年から発売されている下剤(瀉下薬、便秘薬)になります。
センノサイド錠は1961年から発売されている「プルゼニド」という下剤のジェネリック医薬品(後発品)になります。そのため主成分はプルゼニドと同等であり、効果・副作用もプルゼニドとほとんど同じです。
残念ながらセンノサイドは2014年12月で発売中止となっています。今後は徐々に見かけなくなるでしょう。
センノサイドはどんな特徴のある便秘薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。
センノサイド錠の効果や特徴についてみていきましょう。
目次
1.センノサイド錠の特徴
まずはセンノサイド錠の特徴について、かんたんに紹介します。
センノサイド(一般名:センノシド)は下剤になりますが、その中でも「大腸刺激性下剤」という種類に属します。
便秘の方の便を出す方法としては、いくつかの方法があります。その中でセンノサイドは大腸を刺激する事で大腸の動きを活性化させ、排便を促すという作用を持ちます。つまり、センノサイドは大腸の動きが低下して便秘になっている方に向いている下剤だと言う事です。
大腸を刺激して動かす事で排便を促すという方法は確実な排便を期待できるメリットがありますが、一方で使い続けていると大腸が次第に刺激に慣れてきてしまうというデメリットがあります。
お薬による大腸への刺激を慢性的に続けていると、次第に大腸は刺激に反応しなくなり、必要なセンノサイドの量がどんどんと増えてしまいます。これを「耐性が生じる」と言います。
また、これは多くの下剤に当てはまることなのですが、下剤は価格がかなり安いのもメリットです。薬局で購入する下剤と比べると非常に安価になります(1錠5円程度)。
ここからセンノサイドの特徴として次のようなことが挙げられます。
【センノサイド錠(センノシド)の特徴】
・大腸を刺激して排便を促すため、大腸の動きが悪い便秘に向く(例:寝たきり、高齢者など)
・慢性的に使い続ける耐性(慣れ)が生じて効きにくくなる
・値段が安い
2.センノサイド錠はどんな疾患に用いるのか
センノサイドはどのような疾患に用いられるのでしょうか。センノサイドの添付文書を見ると、次のように記載されています。
【効能又は効果】
便秘症
センノサイドは下剤であり、使用する疾患は「便秘症」になります。まぁ、当然ですね。
センノサイドは下剤の中でも大腸刺激性下剤に属します。
大腸刺激性下剤は大腸を刺激することで大腸の動きを活性化させます。大腸が活発に動くようになれば、便は排出されやすくなりますから、便秘症に効果があるというわけです。
腸管の動きが悪いために生じる便秘を専門的には「弛緩性便秘」と呼びます。つまりセンノサイドは便秘症の中でも、特に弛緩性便秘に効果的な下剤だと言えます。
3.センノサイド錠はどのような作用があるのか
便秘症に対して用いられるセンノサイド錠ですが、どのような作用機序で便秘を改善させているのでしょうか。
センノサイド(一般名センノシド)は、センナという生薬が主成分であり、このセンナが便秘改善に効果を示します。
具体的に見ると、口から入ったセンノサイド(主成分センナ)は、大腸まで移行し、そこで大腸の腸内細菌に分解され、レインアンスロンという物質を生成します。レインアンスロンは大腸壁を刺激し、大腸の蠕動運動を亢進させる作用を持ちます。
レインアンスロンによって大腸が活発に動くようになると、便がスムーズに大腸から肛門へ輸送されるため、排便されやすくなるという機序になります。
4.センノサイドの副作用
センノサイドはお薬によって大腸の動きを活性化するため、時に大腸を動かしすぎることによる副作用が生じます。
センノサイドはジェネリック医薬品であり、副作用の詳細な研究は行っていませんが、先発品であるプルゼニドにおいては、副作用発生率は15%前後と報告されています。
頻度の多い副作用としては、
- 腹痛
- 下痢
- 腹鳴(お腹がゴロゴロ鳴る)
- 悪心・嘔吐
といった胃腸系の副作用です。
これはセンノサイドが効きすぎてしまった事で生じる副作用で、多くの場合でセンノサイドを適量に調整すれば改善します。
このセンノサイドの効き過ぎに伴い
- 低カリウム血症
- 低ナトリウム血症
- 脱水
- 血圧低下
などが生じることもありえます。下痢によって水分が失われすぎれば脱水・血圧低下が生じ、電解質のバランスも崩れるためナトリウムやカリウム値が異常値となります。
また、センノサイドを服用していると尿が黄褐色~赤色になってしまうことがあります。
5.センノサイド錠の用法・用量と剤形
センノサイド錠は、
センノサイド錠(センノシド) 12mg
の1剤形のみになります。
センノサイド錠は、便秘症に対しては、1日1回12mg~24mgを就寝前(寝る前)に内服します。便秘の程度が強い場合は、1回48mg(4錠)まで使用することができます。
就寝前に投与するのは、センノサイドは飲んでから効くまでに8~10時間ほどかかるためです。そのため就寝前に飲めば、ちょうど朝起きた後に排便が出る計算になります。
実際は効果発現までの時間には個人差があるため、必ずこの通りになるわけではありませんがので、個々人で最適な時間を見つけて服用することになります。
しかし就寝前に飲んだからと言って、夜寝ている時に排便したくなって困ってしまう事ということはありませんので、安心してください。
6.センノサイド錠の作用時間
センノサイド錠は1回服薬すると、その8~10時間後に効果が出てくると報告されています。
もちろん個人差はありますので、必ず8~10時間後に出るというわけではありませんが、最初はこの時間を目安にして投与時間を考えるとよいでしょう。
添付文書で推奨されているのは、就寝前(寝る前)に服薬して、朝起床後に排便するというリズムです。しかし絶対にこうしなくてはいけないというわけではありません。この用法で上手くいかない場合は、別の時間に服薬しても問題ありません。
例えば効果が出るのが12時間後だということであれば、夕食後に服薬して翌朝起床後に排便が出ることを狙ってもいいですし、効果が6時間後に出るという方であれば、朝食後に服薬して昼過ぎに排便が出ることを狙っても良いでしょう。
7.センノサイド錠が向いている人は?
以上から考えて、センノサイドが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
センノサイドの特徴をおさらいすると、
・大腸を刺激して排便を促すため、大腸の動きが悪い便秘に向く(例:寝たきり、高齢者など)
・慢性的に使い続けると耐性(慣れ)が生じて効きにくくなる
・値段が安い
というものでした。
大腸の動きが悪い便秘(弛緩性便秘)を起こしやすい人というのは、まずは高齢者が挙げられます。高齢者は筋肉や腸管の機能が加齢で弱ってくるためです。また、人は動かないと腸管の動きも悪くなりますので、なんらかの理由で運動量が減っている方、例えば病気で寝たきりなどの方も良い適応になるでしょう。
ただし妊婦で運動量が減っている方への投与は慎重にすべきです。妊婦に対してのセンノサイドの投与は原則禁忌となっており、「投与しない事を原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること」という扱いになっています。絶対に投与できないわけではありませんが、やむを得ない場合に限るべきでしょう。
お薬によっては腸管の動きを悪くするものもあります。例えば、抗コリン作用を持つお薬は腸管の動きを悪くします。例えば抗ヒスタミン薬(花粉症のお薬など)や向精神薬(抗うつ剤など)ですね。これらのお薬で便秘が生じている場合も、センノサイドは便秘改善に効果があるでしょう。
またセンノサイドには耐性があることも忘れてはいけません。つまり、慢性的に使いそうな方に対しては安易に投与し続けて良いものではないということです。
ここから考えると、
・大腸の動きが悪くなっている便秘の方
・経済的になるべく安価に済ませたい方
にはセンノサイドはお勧めしやすい下剤になります。ただし高齢者など、今後長期に渡って使用をする可能性が高そうな方であれば、なるべくセンノサイド以外の排便コントロール(例えば運動習慣の導入や食生活の改善など)も並行して行い、センノサイドの服用が慢性化しないように気を付けるべきでしょう。