新レシカルボン坐薬の効果と副作用

新レシカルボン坐剤(一般名:炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム)は1992年から発売されている下剤になります。

新レシカルボン坐剤は坐薬であり、便秘の方に対して直接肛門から挿入することで排便を促すお薬になります。

新レシカルボン坐剤はどんな特徴のある便秘薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

新レシカルボン坐剤の効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

 

1.新レシカルボン坐剤の特徴

まずは新レシカルボン坐剤の特徴についてみてみましょう。

新レシカルボン坐剤は下剤であり便秘症に対して用いられます。下剤の中では「刺激性下剤」という種類に属します。

便秘の方の排便を改善させる方法としては、主に2つの方法があります。それは、

  • 便に水分を含ませることで便を柔らかくする
  • 大腸の動きを活性化させる

の2つです。下剤のほとんどはこの2つのどちらかの作用を持っています。

新レシカルボン坐剤はというと、直腸で炭酸ガス(CO2)を発生させることで大腸を刺激し、大腸(特に直腸)の動きを活性化させます。

新レシカルボン坐剤を挿入すると、坐薬は徐々に腸内で溶けだし炭酸ガスを発生します。炭酸ガスは元々腸管に存在するガスで、腸の動きを活性化させることが知られています。

新レシカルボン坐剤の良いところはこの「元々腸に存在する炭酸ガス」を用いている事です。生理的な物質を使っているため、新レシカルボン坐剤は安全に排便させることができます。

そのため刺激性下剤に多い副作用である「耐性」(お薬に徐々に慣れてしまい効きにくくなっていくこと)も生じにくいお薬です。同じ下剤でも大腸刺激性下剤のプルゼニド(センノシド)やアローゼン(センナ・センナ実)には耐性の副作用がありますが、新レシカルボン坐剤は耐性はゼロではないものの、非常に軽度となっています。

また衰弱してしまったり認知症がひどくて会話が出来ない高齢者の方は、飲み薬だと飲むことができないことがあります。この場合も新レシカルボン坐剤は坐薬なので使う事ができます。

ここから新レシカルボン坐剤の特徴として次のようなことが挙げられます。

【新レシカルボン坐剤の特徴】

・坐薬である
・飲み薬の下剤が飲めない人にでも使える
・大腸下部に炭酸ガスを発生させ、腸管の動きを促す
・大腸刺激性下剤と異なり、耐性を形成しにくい

 

2.新レシカルボン坐剤はどのような疾患に用いるのか

新レシカルボン坐剤はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

便秘症

新レシカルボン坐剤の主な用途は下剤であり、「便秘症」になります。

新レシカルボン坐剤は肛門に挿入して、下部大腸である直腸やS状結腸に炭酸ガスを発生させます。新レシカルボン坐剤1個当たりで、約110mlの炭酸ガスが発生します。

炭酸ガスは腸管を刺激して、排便を促すはたらきがあることが確認されており、これにより新レシカルボン坐剤は便秘に対して効果を発揮します。

つまり新レシカルボン坐剤は、便が下部大腸(S状結腸や直腸)まで下りてきている状態でないと、あまり効果を発揮しないということです。

 

3.新レシカルボン坐剤の作用機序

便秘症に対して用いられる新レシカルボン坐剤ですが、どのような機序があるのでしょうか。

新レシカルボン坐剤の主な作用を紹介します。

新レシカルボン坐剤の主な作用は、「炭酸ガスを発生させること」になります。新レシカルボン坐剤は直腸に入った後少しずつ溶け出し、それによって徐々に炭酸ガス(CO2)を発生させます。

炭酸ガスは、通常も腸管に発生しているガスであり異物ではありません。私たちが普段行っている自然な排便も、直腸に存在する炭酸ガスが腸管を刺激していることでスムーズに行われているのです。

新レシカルボン坐剤は、その炭酸ガスを人工的に発生させることで排便を促すというお薬になります。そのため、自然な排便に近い機序で排便を促すことができるのが新レシカルボン坐剤の良い点になります。

ただし発生した炭酸ガスは主に大腸の下側(下部大腸)である直腸・S状結腸に作用するため、新レシカルボン坐剤は便が下部大腸にまで下りてきている状態で使用しないとあまり効果が得られません。

新レシカルボン坐剤があまり効かない場合は、便が下部大腸にまで十分に降りてきていない可能性がありますので、別の作用機序を持つ下剤の使用を検討する必要があります。

 

4.新レシカルボン坐剤の副作用

新レシカルボン坐剤にはどんな副作用があるのでしょうか。

基本的に新レシカルボン坐剤は坐薬であるため、局所にしか作用せず、お薬の成分が全身に回らないため、大きな副作用はほとんどありません。

坐薬は肛門にお薬を入れる形になりますから、その際肛門に、

・刺激感
・不快感
・残便感

が生じることがあります。また、下剤として効きすぎてしまうと、

・下腹部痛
・下痢

などが生じることが報告されています。しかしこれは坐剤が効きすぎてしまって生じる副作用ですので、新レシカルボン坐剤を適量に減量すれば多くの場合で改善します。

稀ですが、注意すべき副作用としては、

・ショック

があります。

これは新レシカルボン坐剤の薬物の作用として生じるというよりは、肛門に異物を入れたことによる迷走神経反射であることが多く、顔面蒼白・血圧低下・呼吸困難などが生じる可能性があります。

簡単に言うと、急に肛門に異物を入れたことに身体がびっくりしてしまって生じるという事です。大事に至ることは稀で、安静にしていれば自然と改善することがほとんどですが、ショックが疑われる状態になったら念のため主治医にすぐに相談するようにはしましょう。

臨床でほとんど経験することのない稀な副作用ですが、新レシカルボン坐剤を肛門に入れる場合にはゆっくり慎重に入れるようにしましょう。

 

5.新レシカルボン坐剤の用法・用量と剤形

新レシカルボン坐剤は、

新レシカルボン坐剤 (炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム)

の坐薬1剤形のみがあります。

使い方としては、

通常1~2個を出来るだけ肛門内深く挿入する。重症の場合には1日2~3個を数日間続けて挿入する。

と書かれています。

注意点としては、新レシカルボン坐剤は冷蔵庫などの冷所で保存しなくてはいけません。常温(30℃)保存だと1週間ほどしか薬効が確認されておらず、1週間以上経過すると薬効が失われている可能性があります。

 

6.新レシカルボン坐剤の作用時間

新レシカルボン坐剤は肛門から挿入してから、どのくらいで効果を発揮するのでしょうか。

臨床的な感覚としては15~30分くらいであり、直接肛門から入れるだけあって即効性に非常に優れるお薬だと感じます。

研究においても、ビーグル犬に新レシカルボン坐剤を使用したところ、排便までの時間は平均で18分後であったとの報告があり、臨床の感覚とだいたい一致します。

 

7.新レシカルボン坐剤が向いている人は?

以上から考えて、新レシカルボン坐剤が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

新レシカルボン坐剤の特徴をおさらいすると、

・坐薬である
・飲み薬の下剤が飲めない人にでも使える
・大腸下部に炭酸ガスを発生させ、腸管の動きを促す
・大腸刺激性下剤と異なり、耐性を形成しにくい

というものでした。

新レシカルボン坐剤の一番の特徴は、直腸やS状結腸といった下部の大腸を刺激する効果に優れるという点です。

そのため、下部大腸にまで便が下りてきていて、あと一歩という便秘に対して向いています。反対に便が下部大腸にまで下りてきてない場合は、あまり効果が期待できません。

坐薬というお薬の特性上、飲み薬が飲めない方であっても使えるのは利点です。特に寝たきりの方や飲み込む力が弱くなっている高齢者などでは、ご家族が新レシカルボン坐剤を使って排便させてあげるというケースは少なくありません。

しかし基本的に新レシカルボン坐剤をはじめとした下剤は、ずっと使うものではありません。やむを得ず長期服用になるケースもあるのが現状ですが、新レシカルボン坐剤を使用しながらも、排便に良いと思われる生活習慣の改善(運動、食生活の是正など)は並行して行っていきましょう。