ソフラチュール貼付剤の効果と副作用【外用抗生剤】

ソフラチュール貼付剤(一般名:フラジオマイシン硫酸塩)は1965年から発売されている外用抗生剤になります。

外用抗生剤とは皮膚に外用する(塗る・貼る)お薬のうち、抗菌作用(細菌をやっつける作用)を持つお薬の事です。ソフラチュールは外用抗生剤の中でも「アミノグリコシド系」というタイプの抗菌薬に属します。

外用剤は病変部にのみ作用するため、飲み薬のように全身には作用しにくく、余計な副作用がでにくいというメリットがあります。しかしあくまでも局所に対する効果になるため、皮膚の深い部位の感染や広範囲の感染には向きません。

塗り薬はたくさんの種類があるため、それぞれがどのような特徴を持つのかは分かりにくいものです。

ソフラチュールはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここではソフラチュールの効果や特徴・副作用について紹介していきます。

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1.ソフラチュールの特徴

まずはソフラチュール貼付剤の特徴をざっくりと紹介します。

ソフラチュールはアミノグリコシド系に属する抗菌薬を含有します。抗菌薬とは細菌をやっつけるお薬の事ですので、外用剤であるソフラチュール貼付剤は主に皮膚の細菌感染に対して用いられます。

細菌には様々な種類がいますが、大きく分けると

  • グラム陽性球菌(ブドウ球菌、連鎖球菌など)
  • グラム陽性桿菌(リステリア菌、クロストリジウムなど)
  • グラム陰性球菌(淋菌、髄膜炎菌など)
  • グラム陰性桿菌(大腸菌、クレブシエラなど)

の4種類があります。

このうち、ほとんどの菌はグラム陽性球菌かグラム陰性桿菌に属し、その他のグラム陽性桿菌やグラム陰性球菌はあまり見かけることはありません。

アミノグリコシド系は主にグラム陰性桿菌に対して強い抗菌力を持ち、またグラム陽性球菌に対しても多少の抗菌力を持っています。主要な菌に幅広く効くため、頼れるお薬になります。

しかし皮膚の感染症の8割ほどはグラム陽性球菌であるため、グラム陽性球菌に対してそこまで強い抗菌力を持たないソフラチュールは、重症の皮膚感染症にはあまり向かない面もあります。

抗菌薬は種類によって効く菌が異なります。幅広い菌に効果を示すお薬もあれば、数少ない菌のみにしか効かないようなお薬もあります。

一見すると多くの菌に効く抗菌薬の方が良いようにも思われます。確かにどの菌が原因かどうか特定できないような感染症では、多くの菌に効く抗菌薬を使った方が治る確率は高いでしょう。

しかし、だからといって幅広く効く抗菌薬が一概に良いとは言えません。なぜならば多くの菌に作用してしまう抗菌薬は、様々な菌に中途半端に作用してしまう事で耐性菌を作ってしまいやすいというデメリットがあるからです。

【耐性菌】
特定の抗菌薬に対して耐性を獲得し、その抗菌薬が効かなくなってしまった細菌の事。細菌が様々な抗菌薬に対して耐性を獲得してしまうと「多剤耐性菌」となり、治療をする事が困難になってしまう。

ソフラチュールも抗菌薬である以上、耐性菌のリスクもあるお薬です。ソフラチュールは皮膚感染症の主要な原因菌であるグラム陽性球菌に対しては穏やかに作用するため、不十分な作用となり細菌を耐性化させてしまうリスクもあります。

ソフラチュールを用いる際にはこのようなリスクも理解し、ソフラチュールによる治療を継続していても改善が不十分な場合は漫然と使い続けることは避けなくてはいけません。

注意点として、ソフラチュールをはじめとしたアミノグリコシド系抗菌薬は、強い効果がある一方で身体に負担をかけてしまう事もあります。特に内耳と腎臓に負担がかかりやすく、これにより難聴・腎障害といった副作用が生じる事があります。

この副作用のほとんどは注射や飲み薬のアミノグリコシド系で生じるもので、外用剤のソフラチュールでこのような副作用が生じる事は極めて稀ですが、絶対に生じないとは言えないため、一定の注意は必要になります。

また外用抗生剤の多くは「塗り薬」ですが、ソフラチュールは「貼り薬」であるという特徴があります。塗り薬は生活をしている中ですぐに取れてしまう事も少なくありません。しかしソフラチュールは目の粗いコットン(木綿)に抗菌薬が塗布されているような剤型で、穏やかな粘着性を持ち、塗り薬と比べると取れにくいという利点があります。

欠点としては患部を乾燥させてしまう傾向があるため、傷の治りを阻害するのではないかという指摘が近年されている点が挙げられます。近年の傷の治療は「湿潤療法」という潤わせる事でキレイに治すという方法が主流です。

コットンを傷口に当てる事で乾燥傾向にさせてしまうソフラチュールは、傷の治りを遅くするリスクがある他、コットンが創部にくっついてしまう事で交換する時にかえって傷を悪化させてしまうリスクもあります。

以上からソフラチュール貼付剤の特徴として次のような事が挙げられます。

【ソフラチュール貼付剤の特徴】

・アミノグリコシド系の抗菌薬(細菌をやっつけるお薬)である
・貼り薬であり、お薬が皮膚から剥がれてしまう事が少ない
・グラム陰性桿菌に強い効果を示し、グラム陽性球菌にも穏やかに効く
・古くから使われており、耐性菌(ソフラチュールが効かない菌)に注意
・長期・大量使用による難聴・腎障害に注意
・創部を乾燥傾向にする事でむしろ傷の治りを悪化させるという指摘もある

2.ソフラチュールはどんな疾患に用いるのか

ソフラチュール貼付剤はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】
<適応菌種>
フラジオマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属(肺炎球菌を除く)

<適応症>
外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染

ソフラチュールの適応となる菌はフラジオマイシン感性の(フラジオマイシンが効果を示す)菌になります。またその中でも適応はグラム陽性球菌になります。

細菌には、

  • グラム陽性球菌
  • グラム陽性桿菌
  • グラム陰性球菌
  • グラム陰性桿菌

の4種類がいます。このうち、グラム陽性球菌とグラム陰性桿菌の2種類がほとんどを占めます。

ソフラチュールは主にグラム陰性桿菌(大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌など)に強い効果を発揮します。またグラム陽性球菌(ブドウ球菌、レンサ球菌など)にも穏やかに効くお薬になります。

そのためソフラチュールが使われる疾患としては、そのような菌が皮膚に感染している状態になりますが、皮膚で感染の原因となる菌の多くはグラム陽性球菌であるため、適応上はブドウ球菌とレンサ球菌となっています。

びらんや潰瘍といった、皮膚が傷ついている状態は細菌が巣食いやすいため、このような皮膚に上記のような細菌が二次感染してしまった状態に対してソフラチュールが用いられます。

【びらん(糜爛)】
表皮の欠損で、皮膚の一番上の皮が浅くえぐれてしまっているような状態。

では、これらの疾患にソフラチュールはどのくらい効くのでしょうか。

上記疾患に対するソフラチュール貼付剤の総合的な有効率は91.7%と報告されています。

内訳としては、

  • 熱傷への有効率は89.9%
  • 植皮術後への有効率は95.8%
  • 褥瘡への有効率は85.7%
  • その他(外傷・潰瘍など)への有効率は90.1%

と報告されています。

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3.ソフラチュールにはどのような作用があるのか

ソフラチュールはどのような作用機序によって細菌をやっつけているのでしょうか。

まず抗菌薬は「静菌作用」を持つものと「殺菌作用」を持つものがあります。

静菌作用というのは、「細菌の増殖を抑える作用」です。細菌を殺すわけではなく、それ以上増殖させないように作用することで、穏やかに抗菌作用を示します。

対して殺菌作用というのは、「細菌を殺す作用」です。直接細菌にダメージを与えることで、強力な抗菌作用を示します。

どちらも抗菌作用ですが、殺菌作用の方がより強い効果である事が分かります。

ソフラチュールはと言うと「殺菌作用」を持つお薬になり、強力に菌をやっつけてくれる作用を持ちます。

ではソフラチュールはどのようにして細菌を殺すのでしょうか。

ソフラチュールをはじめとしたアミノグリコシド系抗菌薬は、細菌の細胞内にあるリボソームという細胞内小器官に結合し、リボソームのはたらきを邪魔する事でその作用を発揮します。

リボソームというのは、DNA情報を元に種々のタンパク質を合成するはたらきを持ちます。

ソフラチュールがリボソームのはたらきをブロックすると、細菌は必要なタンパク質を合成できなくなってしまいます。すると、細菌が生きるために必要なタンパク質の合成までも行えなくなってしまうため、細菌は死んでしまうのです。

例えば細菌の細胞の壁の原料もタンパク質ですから、リボソームのはたらきが邪魔されると、細菌は自分の細胞の形状を保てなくなり、死んでしまいます。

このような作用によってソフラチュールは次のような菌に殺菌作用を示します。

Ⅰ.グラム陽性球菌への殺菌作用

ソフラチュールは上記の作用機序によって、一部のグラム陽性球菌に殺菌作用を示します。

実際、皮膚の細菌感染症はその多くがグラム陽性球菌です。

具体的には皮膚細菌感染の原因菌として多い、

  • ブドウ球菌種
  • レンサ球菌種

への効果が確認されています。

Ⅱ.グラム陰性桿菌への殺菌作用

ソフラチュールは、グラム陰性桿菌に対しても強い殺菌力を発揮します。

ただしグラム陰性桿菌は皮膚の細菌感染の原因として多くはないため、ソフラチュールの適応にはなっていません。

4.ソフラチュールの副作用

ソフラチュールの副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。また副作用はどのくらい多いのでしょうか。

ソフラチュールは副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし全体的に見れば外用剤であるソフラチュールの安全性は高く、副作用は少ないと言って良いでしょう。

生じる副作用もほとんどが軽度のもので、

  • 発疹
  • 接触性皮膚炎(かゆみ、発赤、腫れなど)

などが報告されています。

いずれも重篤となることは少なく、多くはソフラチュールの使用を中止すれば自然と改善していきます。

またソフラチュールをはじめとしたアミノグリコシド系では注意すべき副作用として、

  • 腎障害
  • 難聴

があります。

アミノグリコシド系は内耳や腎臓といった臓器に負担をかけることのあります。

これは主に注射剤・経口剤のアミノグリコシド系で注意すべきもので、外用剤のソフラチュールで生じることは極めて稀ですが、大量・長期間使用していると可能性はゼロではないため、一定の注意は必要になります。

またソフラチュール貼付剤を使用してはいけない例(禁忌)としては次のような状態が挙げられます。

ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン等のアミノグリコシド系抗生物質及びバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者

ソフラチュールはアミノグリコシド系に属する抗生剤ですので、同じアミノグリコシド系に過敏症のある方は使用する事は出来ません。

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5.ソフラチュールの用法・用量と剤形

ソフラチュールには、

ソフラチュール貼付剤10cm 10cm×10cm(1.8g含有)
ソフラチュール貼付剤30cm 10cm×30cm(5.4g含有)

の2剤型があります。

ソフラチュールの使い方は、

本品の1枚~数枚を直接患部に当て、その上を無菌ガーゼで覆う。

と書かれています。実際は皮膚の状態や場所によって回数や量は異なるため、主治医の指示に従いましょう。

ソフラチュールは抗生剤であるフラジオマイシンが目の粗いコットン(木綿)に含まれているような剤型になります。

貼付剤といっても湿布のように完全に創部を密封してしまうものではありません。創部を密封してしまうと中で細菌が繁殖してしまう危険があるためです。

目の粗いコットンですので密封されるリスクはありません、コットンは創部の浸出液を吸収するため、創部を乾燥させてしまう傾向があります。そのため、交換時にソフラチュールが傷口にくっついてしまい、取る時にかえって傷を悪化させてしまう事もあります。

また抗菌薬は、大量・長期間使っていると耐性菌を出現させてしまうリスクになります。そのため、ソフラチュールをはじめとした抗菌薬は、必要な期間のみしっかりと使い、漫然と長期間使い続けないように注意が必要です。

6.ソフラチュールの使用期限はどれくらい?

ソフラチュールの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。

「家に数年前に処方してもらった外用剤があるんだけど、これってまだ使えますか?」

このような質問は患者さんから時々頂きます。

これは保存状態によっても異なってきますので、一概に答えることはできませんが、適正な条件で保存されていたという前提(室温保存)だと、ソフラチュール貼付剤は「2年」が使用期限となります。

7.ソフラチュールが向いている人は?

以上から考えて、ソフラチュールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ソフラチュール軟膏・ソフラチュールクリームの特徴をおさらいすると、

【ソフラチュール貼付剤の特徴】

・アミノグリコシド系の抗菌薬(細菌をやっつけるお薬)である
・貼り薬であり、お薬が皮膚から剥がれてしまう事が少ない
・グラム陰性桿菌に強い効果を示し、グラム陽性球菌にも穏やかに効く
・古くから使われており、耐性菌(ソフラチュールが効かない菌)に注意
・長期・大量使用による難聴・腎障害に注意
・創部を乾燥傾向にする事でむしろ傷の治りを悪化させるという指摘もある

というものでした。

ソフラチュールは細菌をやっつけるお薬になりますので、細菌感染している皮膚や細菌感染が強く疑われる皮膚に貼るお薬になります。

1960年台から使われており使用実績が長いため、安心して使う事が出来る点が利点の1つですが、一方で長い間使用されているため耐性菌も多くなっている事が予想されます。

また皮膚の感染症の多くはグラム陽性球菌ですが、ソフラチュールがもっとも得意とするのはグラム陰性桿菌です。つまり、皮膚感染症はソフラチュールはある程度の効果は期待できるものの、本領が発揮できないことも多いのです。

そのため、ある程度の期間使用しても効果が得られない場合は、ソフラチュールが効かない菌であるか、ソフラチュールに耐性を持った菌の可能性もありますので、ソフラチュール以外の抗菌薬に変更する必要があります。

またソフラチュールは創部の浸出液を吸収するコットンを含むため、創部に貼る事で創部を乾燥させてしまう傾向があります。近年、傷の治療は「湿潤療法」という潤わせる事でキレイに治すという方法が主流になっており、傷を乾燥させる事は傷の治りを遅くさせる事が指摘されています。

コットンを含む事で創部を乾燥傾向にさせるソフラチュールは、傷の治りを遅くするリスクがある他、ガーゼが創部にくっついてしまう事で交換する時にかえって傷を悪化させてしまうリスクもあります。

そのため近年ではソフラチュールを使用する機会は徐々に減ってきています。使用の際はこのようなデメリットがある事も理解し、それでも必要と判断されるケースに使用する事が大切です。

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