スターシス錠の効果と副作用【糖尿病治療薬】

スターシス錠(一般名:ナテグリニド)は1999年から発売されている糖尿病の治療薬になります。糖尿病の治療薬の中でも「グリニド系(速効性インスリン分泌促進薬)」という種類に属します。

スターシスは、インスリンの分泌量を増やすことで血糖値を下げるお薬になります。SU薬(スルホニルウレア薬)と同じ作用機序を持ちますが、SU薬と違い短時間しか作用しないという特徴があり、両者は糖尿病の状態によって使い分けられます。

糖尿病治療薬にもたくさんの種類のお薬があります。これらの中でスターシスはどのような位置付けになるのでしょうか。

スターシスの効果や特徴、どのような方に向いているお薬なのかについてみていきましょう。

なおスターシスは「ファスティック」という糖尿病治療薬と同じお薬になります。販売している会社が異なるだけで主成分は全く同じですので、両者は効能・作用も同等になります。

 

1.スターシスの特徴

まずはスターシス錠の特徴について、かんたんに紹介します。

スターシスは主に食後のインスリンの分泌量を増やすことで、食後の血糖を下げるお薬になります。短時間のみ作用するため、食後の血糖はしっかりと下げつつ空腹時の血糖はあまり下げません。そのため血糖を下げすぎる(低血糖)リスクが低くなっています。

スターシスはグリニド系と呼ばれるお薬です。グリニド系は短時間のみインスリンを増やす作用があります。食直前に服用すると食後のインスリン量を増やせるため、食後の高血糖を改善させる作用に優れます。

インスリンとは膵臓にあるβ細胞から分泌されている血糖を下げるホルモンで、食事によって上がった血糖値を下げるために分泌されます。グリニド系はβ細胞に直接作用することでインスリンをβ細胞から絞り出すお薬になります。

グリニド系は作用機序としてはSU薬(スルホニルウレア薬)と同じになります。SU薬は一日を通して全体的にインスリン量を増やすのに対し、グリニド系は食後の短時間しかインスリン量を増やしません。そのため食後の血糖のみを下げ、空腹時の血糖にはあまり影響しないという特徴があります。

これは低血糖を起こさないというメリットにもなりますが、一方で空腹時にも高血糖を認める糖尿病患者さんには効果が不十分になってしまうということでもあります。

通常の糖尿病の経過は、初期は食後のみ血糖が高くなり、進行してくると空腹時も血糖が高くなってきます。ここから考えるとグリニド系は、SU薬よりも初期に用いるお薬になります。

グリニド系は食直前に服用するお薬で、これによって食後にちょうど効くようになっています。間違えて食事の大分前や食後しばらく経ってから服用してしまうと低血糖のリスクが高くなるため注意が必要です。

またスターシスはグリニド系の中で唯一、透析中の方への投与は禁忌となっていますので、透析中の方・重度の腎機能障害がある方は使わないように気を付けましょう。

以上からスターシス錠の特徴として次のようなことが挙げられます。

【スターシス錠の特徴】

・グリニド系(速効型インスリン分泌改善薬)薬に属するお薬である
・インスリンの分泌量を増やすことで血糖を下げる
・短時間のみ作用し、主に食後の高血糖を改善させる
・主に食後にのみ効くため低血糖が生じにくい
・グリニド系の中では唯一、透析患者さんには禁忌

 

2.スターシス錠はどんな疾患に用いるのか

スターシス錠はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

2型糖尿病における食後血糖推移の改善

ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。
1.食事療法・運動療法のみ
2.食事療法・運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用
3.食事療法・運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用
4.食事療法・運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用

スターシス錠は血糖を下げる作用を持つお薬ですから、糖尿病に使われます。

スターシスは即効性があり、短時間の作用にとどまるという特徴を持ちます。一日を通して全体的に血糖値を下げるわけではなく、食後の血糖値を中心に下げるお薬です。

このことから、特に食後の高血糖に対して効果的なお薬だと言えます。

糖尿病には1型と2型があります。

1型は自己免疫性の疾患で、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまっている疾患です。β細胞が破壊されてしまっていればインスリンが分泌できないため、血糖は高くなってしまいます。

2型は一般的な糖尿病で、糖分を摂取しすぎたり肥満などによってインスリンの効きが悪くことで生じてしまうものです。

スターシスは2型糖尿病に対して用いられます。そして2型糖尿病ではまずはお薬を使う前に食事療法(規則正しくバランスの良い食事を指導する)や運動療法(適度な運動を指導する)が行われます。

これら食事療法や運動療法を行っても改善が得られない時、あるいは上記のような他の糖尿病治療薬を用いても改善が不十分であるとき、スターシスのようなお薬が検討されます。

 

3.スターシスにはどのような作用があるのか

スターシスはインスリンを分泌する膵臓のβ細胞に直接作用することで、β細胞からインスリンを絞り出すお薬です。

ここではスターシスの詳しい作用について紹介します。

 

Ⅰ.インスリンの分泌を増やす

スターシスは膵臓β細胞が分泌するインスリンの量を増やす作用があります。

どのような機序によってスターシスはβ細胞からインスリンを分泌させているのでしょうか。

これはβ細胞からインスリンを「絞り出す」ようなイメージです。

本来インスリンは血糖(グルコース)の濃度が高くなると、血糖を下げるために分泌されます。

スターシスの作用機序を知るためには、まずは通常のインスリンが分泌される機序を知ることが大切です。

膵臓β細胞の細胞膜にGLUT2という糖の輸送体があります。血液中の血糖が増えると、ここから糖分がβ細胞内に取り込まれます。そして細胞内において糖分からATPというエネルギー源が作られます。

β細胞内のATPが増えると、同じくβ細胞膜にあるATP感受性カリウムチャネルが閉じます。すると細胞膜が脱分極し細胞内にカルシウムイオンが流入し、その刺激でインスリンが分泌されるのです。

分泌されたインスリンは血液中の糖分を諸臓器(脳、心臓や筋肉など)に取り込ませることで血糖を下げます。糖はエネルギー源となるため、諸臓器はインスリンによって取り込まれた糖によって活動ができるようになります。

ちょっと難しいですが、要するに「血糖が高くなるとβ細胞がそれを感知してインスリンを分泌する」ということです。

これを踏まえた上で、スターシスがどのようにインスリンの分泌を増やすかを見ていきます。

スターシスをはじめとしたグリニド系は、β細胞膜にあるSU受容体という部位に結合します(これはSU薬が作用する部位と全く同じになります)。SU受容体はATP感受性カリウムチャネルを閉じるはたらきがあります。すると脱分極が生じ、β細胞からインスリンが放出されるのです。

スターシスはSU薬と比べると、即効性に優れ、またその作用は短時間にとどまります(反対にSU薬は一日中作用するようなお薬です)。

食直前に服用することで、約15~20分後にインスリンの分泌量が増えだします。それは食後の血糖が上昇しだすタイミングを重なるため、スターシスは食後高血糖を集中的に改善させることが出来るのです。

 

4.スターシスの副作用

スターシスにはどのような副作用があるのでしょうか。スターシスの副作用発生率は7.0%~17.8%前後と報告されています。

生じる副作用には、

  • 体重増加
  • めまい
  • 浮腫
  • 倦怠感
  • 胃腸症状(吐き気、便秘、腹部膨満、腹痛、下痢など)
  • 発疹、
  • 掻痒(かゆみ)
  • 頭痛

などが報告されています。症状がひどい場合は減量あるいは中止となりますが、症状が軽度であればそのまま様子をみることもあります。

また検査値の異常として

  • 肝臓系酵素の上昇(AST、ALT、ɤGTPなど)
  • 白血球減少
  • 貧血
  • 血小板減少
  • カリウム上昇
  • 腎機能障害(BUN、Crの上昇など)

などが報告されています。スターシス服用中は定期的に血液検査を行うことが望ましいでしょう。

稀ですが重大な副作用として、

  • 低血糖
  • 肝機能障害、黄疸
  • 心筋梗塞、突然死(他国で)

などが報告されています。

スターシスは投与してはいけない方がいます。下記に該当する方はスターシスを服用できませんので、該当しないかどうか注意しましょう。

  • 透析を必要とするような重篤な腎機能障害のある患者さん
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある方

また下記に該当する方は、スターシスで治療するのではなくよりインスリン製剤による厳格な治療が必要になり、同様にスターシスを使用することは出来ません。

  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者さん
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1 型糖尿病の患者さん

 

5.スターシスの用法・用量と剤形

スターシスは、

スターシス錠 30mg
スターシス錠 90mg

の2剤があります。

スターシスの使い方は、

通常、成人には1回90mgを1日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を120mgまで増量することができる。

となっています。

スターシスをはじめとしたグリニド系は食直前に服用しなければいけません。これはなぜかというと食後の血糖上昇を抑えたいためです。

具体的には毎食前10分以内に服用することが推奨されています。

食後に服薬してしまうと、食事によってスターシスの吸収が遅れてしまって食後の血糖上昇に間に合わなくなってしまいます。

反対に空腹時(例えば食前30分前)などに投与してしまうのも危険です。食事によって血糖が上がる前に効き始めてしまうため、低血糖が生じやすくなります。

スターシスが血糖を下げる力はどれくらいかというと、個人差はありますが血糖の平均値であるHba1cをおおよそ0.7前後下げることが出来ます(90mg/日の服用を一定期間続けた場合)。

SU薬と同じ部位に作用するグリニド系ですが、短時間しか作用しないためSU薬ほど強くは血糖値を改善させません。

 

6.スターシス錠が向いている人は?

以上から考えて、スターシス錠が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

スターシス錠の特徴をおさらいすると、

・グリニド系(速効型インスリン分泌改善薬)薬に属するお薬である
・インスリンの分泌量を増やすことで血糖を下げる
・短時間のみ作用し、主に食後の高血糖を改善させる
・主に食後にのみ効くため低血糖が生じにくい
・グリニド系の中では唯一、透析患者さんには禁忌

というものでした。

スターシスは食直前に服用することで、主に食後の高血糖を下げる作用に優れます。

そのため、糖尿病の中でも食後高血糖があって空腹時血糖はそこまで悪くないという方に向いているお薬になります。

お薬は食後に飲むものが多いのですが、スターシスは食直前に服用しないといけないため、やや手間に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし間違えて食直前以外に服用してしまうと、効きが悪くなるばかりか低血糖のリスクも上がってしまいます。ここから食直前にしっかりと服薬できる方というのも服用が推奨される条件になるでしょう。

またスターシスはグリニド系の中では唯一、透析患者さんや重度の腎機能障害の患者さんには禁忌になっていますので、該当する方は別のグリニド系を選んだ方が良いでしょう。

ちなみにスターシスが属する「グリニド系」は、同じく糖尿病治療薬であるSU薬との併用は推奨されていません。なぜならば両者は同じ作用点に作用するからです。

糖尿病のお薬にはいくつか種類がありますが、大きく分けると3種類に分けられます。

1つ目が、血糖を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を促すことで血糖を下げようとするお薬です。これには「スルホニル尿素(SU)薬」「グリニド系(速効型インスリン分泌促進薬)」「DPP4阻害薬」「GLP1作動薬」などがあります。

2つ目は、インスリン自体を分泌させるのではなく、インスリンの効きを高めることで血糖を下げるお薬です。これには「ビグアナイド(BG)剤」「チアゾリジン誘導体」などがあります。インスリンの作用は血液中の糖分を筋肉や脂肪などに取り込ませることですが、同じように血液中の糖分を筋肉や脂肪に取り込ませやすくするのがこれらのお薬の主な作用になります。

最後が、糖分を吸収しにくくしたり排泄しやすくするお薬です。血糖の吸収を穏やかにする「αグルコシダーゼ阻害剤」や、尿から糖をたくさん出すようにする「SGLT2阻害薬」などがあります。

この中で速効型インスリン分泌促進薬であるスターシスは1つ目のインスリンの分泌を促すお薬になります。

 

7.お薬以外の糖尿病の治療法

お薬は疾患を治療するために重要な方法の1つです。

しかし糖尿病をはじめとした生活習慣病は、お薬だけでなく日々の生活を工夫する事も大切です。むしろこのような生活習慣の改善が主であり、お薬は補助的な役割だと考えるべきです。

実際に、糖尿病治療薬の添付文書には次のように書かれています。

本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること。

「まずは食事・運動療法を行って、それでも効果が不十分な時のみお薬は使ってね」という事です。

では糖尿病を改善させるためには、どのように食生活・運動習慣を気を付けていけばいいのでしょうか。大切なポイントをお話します。

 

Ⅰ.規則正しく・バランスの良い食事を

食事は規則正しく食べる事が大切です。朝食・昼食・夕食と1日3食規則正しく食べましょう。

「1日1食しか食べない」
「朝食を抜いている」

このような不規則な食生活をすると糖尿病をむしろ悪化させる事もあります。

1日に食べる量が同じでも、3食に分けて少しずつ食べるのと、1食でドカッと食べるのとでは血糖値の上がり方が異なります。一気に大量に食べると血糖値が急激に上昇するため、全身の臓器も痛みやすくなります。

また食事回数が少ないと、間食で補ってしまう事が多々あります。アメやチョコレート、スナックなど、間食には糖質を多く含むものが多く、これも糖尿病をかえって悪化させます。

食事は、よく噛んでゆっくり食べる事も大切です。ゆっくり食べればゆっくり血糖値が上昇していきますので、急いで食べるよりも臓器への負担も少なくなります。

また食事内容のバランスも大切です。

近年は糖質制限などがもてはやされていますが、糖質はエネルギーとしてある程度は必要になります。極端な偏食をするのではなく、バランス良く摂取するようにしましょう。

推奨されているバランスは、

炭水化物:たんぱく質:脂質=45~60%:10~20%:25~35%

程度と言われています。

一人暮らしなどで食事バランスを十分に考えられないという方は、配食を利用するのも手です。近年はバランスが考えられた食事を冷凍で自宅まで送ってくれる業者もあります。

 

ウエルネスダイニング【低糖質・低カロリーご飯を配食してくれます】

ウエルネスダイニングでは、低糖質のご飯を配送してくれます。普通の米飯は1膳で250kcal(糖質55g)ほどありますが、こちらの米飯は1膳192kcal(糖質43.2g)に抑えられています。1日(3食)で考えれば約180kcalほど違ってきます。

 

彩ダイニング【食事療法用食を提供】

彩ダイニングでは、糖尿病の方に向けた副食(おかず)を配送してくれます。1食240kcalに抑えて作られており、炭水化物・タンパク質・脂質も理想的なバランスになるよう考えられています。

種類もたくさんあるため、飽きずに続ける事が出来ます。

 

Ⅱ.野菜を先に食べよう

食事を食べる際に、普通に食べるのと、野菜を先に食べて糖質を後で食べるのとでは後者の方が糖尿病が改善しやすいという報告があります。

これは野菜を先に食べる事で血糖値の上昇が緩やかになるためだと考えられています。

食事は野菜から先に食べるようにしましょう。

生活習慣上なかなか野菜を先に食べれないという方は、サプリメントを利用するという方法もあります。

 

食事前に食べる野菜ゼリー「ベジファス」

ベジファスは野菜に含まれる食物繊維を多く含んだゼリーで食事前に簡単に服用する事できます。ベジファスを最初に取る事で、血糖値の上昇を抑え、糖尿病を改善させやすくします。

 

Ⅲ.カロリー制限を

自分が1日に摂取してよいカロリーの上限を意識しておきましょう。

成人であればおおよそ1200~2000kcal/日になりますが、どのくらいのカロリーを摂取して良いかはその人の身長や活動量によって異なります。

摂取カロリーの決め方は「BMI×身体活動量」で簡易的に計算できます。

BMIは身長によって設定されている標準体重(理想的な体重)の事で、「BMI=身長(m)×身長(m)×22」で計算できます。

身体活動量は、日常で身体をどれくらい動かしているかで、

・軽労作:デスクワークが主・主婦など:25~30kcal
・中等度労作:立ち仕事が多い:30~35kcal
・重労作:力仕事が多い:35kcal~

と分けられます。

下表で自動で計算できますので、自分の1日摂取カロリーの上限を計算してみましょう。

[CP_CALCULATED_FIELDS id=”6″]

どうしても甘いものや炭水化物食を食べてしまうという方は、最近はカロリーゼロスイーツや低糖質食など工夫された食事もありますので、無理な制限をするのではなく、このような食べ物を上手に利用するのも手です。

 

▽ 低糖質のとんこつラーメン

糖尿病で食事制限をしているけど、ラーメンが食べたい、という時にお勧めです。一般的なとんこつラーメンは800kcal程度ありますが、このラーメンは糖質を極限までカットしており麺とスープを合わせても約300kcalと超低カロリーになっています。

味は、やはり一般的なラーメンと比べるとやや物足りなさを感じる方もいらっしゃいますが、アンケートでも高い満足度が得られています。

 

▽ カロリーゼロの和スイーツ

くずもち、わらびもち、あんみつ、ようかん、おしるこなど、年配の方が好まれる和菓子を超低カロリーで作っています。

 

Ⅳ.適度な運動を

血糖値を下げるためには適度な運動も必要です。

理想は毎日ですが、毎日まで行かなくても週3回以上、1回30分以上の運動習慣を目指しましょう。

無理な運動習慣は長続きしませんので、無理なく続けられる程度の運動を設定する事が大切です。

  • 毎日公園を散歩する
  • プールでゆっくり泳ぐ
  • ゆっくりジョギングやサイクリングする

などの負荷の低い運動でも十分に効果があります。日々続けていく事が何よりも大切です。