スチブロン軟膏と同じような市販薬はあるのか【医師監修】

スチブロン(一般名:ジフルプレドナート)は、1986年から発売されている「マイザー」というステロイド外用剤のジェネリック医薬品になります。

外用剤とはいわゆる塗り薬の事で、皮膚に塗るタイプのお薬です。ステロイドは炎症を抑える作用を持つため、ステロイド外用剤は主に皮膚の炎症を抑える目的で用いられます。

ステロイドはしっかりとした効果が得られる一方で、長期間漫然を使用してしまうと副作用の問題もあります。そのためステロイド外用剤は原則として皮膚科医の指導の下で使用すべきになります。

しかし多忙で病院を受診できない場合、「とりあえず市販のお薬で似たようなものを買いたい」と希望される方もいらっしゃいます。

ではスチブロンと同じような薬効が期待できる市販薬はあるのでしょうか。ここではスチブロンと同じような作用を持つ市販薬について紹介させて頂きます。

 

1.スチブロンと同じような市販薬はあるのか

スチブロンは市販薬として販売されているのでしょうか。

結論からいうとスチブロンと全く同じものは市販薬としては発売されていません。しかしスチブロンよりも作用の弱いステロイド外用剤は市販されています。

スチブロンの主成分は「ジフルプレドナート」というステロイドになります。

病院で処方されるステロイド外用剤は強さによって次の5段階に分けられています。

【分類】 【強さ】 【商品名】
Ⅰ群 最も強力(Strongest) デルモベート、ジフラールなど
Ⅱ群 非常に強力(Very Strong) アンテベート、ネリゾナ、マイザーなど
Ⅲ群 強力(Strong) ボアラ、リンデロンV、リドメックスなど
Ⅳ群 中等度(Medium) アルメタ、ロコイド、キンダベートなど
Ⅴ群 弱い(Weak) コートリル、プレドニンなど

この中でスチブロンは「Ⅱ群(非常に強力)」に属します(マイザーのジェネリック医薬品ですので、マイザーと同じ強さになります)。

ステロイドは強いほどしっかりとした効果が得られますが、一方で副作用も出やすくなります。

Ⅰ群及びⅡ群に属する強いステロイドは副作用のリスクも高いため、一般の方が市販で購入する事はできず、医師の診断の下でのみ処方できる事となっています。

一方でⅢ群・Ⅳ群・Ⅴ群に属する穏やかなステロイドは、強い効果が得られないかわりに安全性も比較的高いため、市販で購入する事が可能です。

つまりスチブロンと同じ強さのステロイド外用剤が必要な場合は、病院を受診して医師の診察を受けて処方してもらわないといけません。

しかし「スチブロンよりも弱いステロイド外用剤でも大丈夫」というケースであれば、市販薬で購入する事は可能です。

 

2.スチブロンはどのような時に使われるお薬なのか

スチブロンと同じお薬を市販で買う事は出来ませんが、一段階弱いステロイドであれば購入する事が出来ます。

ただし薬局やドラッグストアで自分でお薬を買う場合、皮膚科医による診察を受けないで使用するわけですので、今の皮膚状態に本当にそれが適しているのかは、自分で見極めないといけません。

出来れば皮膚科で一度診てもらう事が好ましいのですが、やむを得ず自分でステロイドを購入する場合は、どのような場合にステロイドが適していて、どのような時にどのくらいの強さのステロイドを使用するのが適しているのかをある程度理解しておく必要があるでしょう。

スチブロンをはじめとしたステロイドには主に、

  • 免疫反応を抑える
  • 炎症反応を抑える
  • 皮膚細胞の増殖を抑える

といった作用があります。

ステロイドの基本的な作用の1つに免疫を抑制するはたらきがあります。

免疫というのは異物が体内に侵入してきた時に、それを排除しようと攻撃する生体システムの事です。皮膚からばい菌が侵入してきた時には、ばい菌をやっつける細胞を向かわせることでばい菌の侵入を阻止します。

免疫は身体にとって非常に重要なシステムですが、時にこの免疫反応が過剰となってしまい身体を傷付けてしまうことがあります。

その代表的なものがアレルギー反応です。アレルギー反応は、本来であれば無害の物質を免疫が「敵だ!」と誤認識してしまい、攻撃してしまう事です。

代表的なアレルギーに花粉症(アレルギー性鼻炎)がありますが、これは「花粉」という身体にとって無害な物質を免疫が「敵だ!」と認識して攻撃を開始してしまう疾患です。その結果、鼻水・鼻づまり・発熱・くしゃみなどの不快な症状が生じてしまいます。

同じく皮膚にアレルギー反応が生じる疾患にアトピー性皮膚炎がありますが、これも皮膚の免疫が誤作動してしまい、本来であれば攻撃する必要のない物質を攻撃してしまい、その結果皮膚が焼け野原のように荒れてしまうのです。

このような状態では、過剰な免疫を抑えてあげると良いことが分かります。この時に役立つのがステロイドで、ステロイドには免疫を抑えるはたらきがあります。

誤作動した免疫が抑えらると、免疫があちこち攻撃することが抑えられるため、炎症が生じにくくなります。

この「炎症を抑える作用」がステロイドの2つ目の作用です。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことです。炎症は感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。皮膚に炎症が起こることを皮膚炎と呼びます。皮膚炎も外傷でも生じるし、ばい菌に感染することでも生じるし、アレルギーでも生じます。

またステロイドには皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがあり、これによって皮膚を薄くする作用も期待できます。

このような作用からステロイド外用剤は、

  • 皮膚の免疫が暴走している時(アトピーなどのアレルギー性皮膚疾患)
  • 皮膚に炎症反応が生じている時(ただしばい菌の感染による炎症は除く)
  • 皮膚が過度に肥厚している時

などに効果が期待できます。

アトピー性皮膚炎などで皮膚の免疫の暴走が生じている場合、ステロイドによって免疫のはたらきを抑えてあげると症状の改善が得られます。

また外傷など感染性でない炎症が皮膚に生じている際もステロイドは炎症を抑える作用が期待できます。ただしステロイドは免疫を抑えてしまうため、免疫が活躍しないといけない状況(例えばばい菌が皮膚に感染している時など)に塗る事は推奨されません。

ステロイドは皮膚を薄くする作用も期待できるため、皮膚が過度に肥厚している際にそれを正常まで薄くさせるためにも有効です。

スチブロンはステロイドの中でも、強力な作用を持つⅡ群に属します。そのため、皮膚が厚い部位(足の裏や背中など)に塗るのに適しています。

反対に顔や陰部など皮膚が薄い部位では効果・副作用が過度に出現してしまう可能性があるためスチブロンの使用は推奨されておらず、より効果の弱いステロイドを使う必要があります。