3.スチブロンにはどのような作用があるのか
皮膚の炎症を抑えてくれるスチブロンですが、具体的にはどのような作用があるのでしょうか。
スチブロンの作用について詳しく紹介します。
Ⅰ.抗炎症作用
スチブロンは、ステロイド剤です。
ステロイドには様々な作用がありますが、その1つに免疫を抑制する作用があります。
免疫というのは異物が侵入してきた時に、それを攻撃する生体システムの事です。皮膚からばい菌が侵入してきた時には、ばい菌をやっつける細胞を向かわせることでばい菌の侵入を阻止します。
免疫は身体にとって非常に重要なシステムですが、時にこの免疫反応が過剰となってしまい身体を傷付けることがあります。
代表的なものがアレルギー反応です。アレルギー反応というのは、本来であれば無害の物質を免疫が「敵だ!」と誤認識してしまい、攻撃してしまう事です。
代表的なアレルギー反応として花粉症(アレルギー性鼻炎)がありますが、これは「花粉」という身体にとって無害な物質を免疫が「敵だ!」と認識して攻撃を開始してしまう疾患です。その結果、鼻水・鼻づまり・発熱・くしゃみなどの不快な症状が生じてしまいます。
同じく皮膚にアレルギー反応が生じる疾患にアトピー性皮膚炎がありますが、これも皮膚の免疫が誤作動してしまい、本来であれば攻撃する必要のない物質を攻撃してしまい、その結果皮膚が焼け野原のように荒れてしまうのです。
このような状態では、過剰な免疫を抑えてあげると良いことが分かります。
ステロイドは免疫を抑えるはたらきがあります。これによって炎症が抑えられます。
炎症とは、
- 発赤 (赤くなる)
- 熱感 (熱くなる)
- 腫脹(腫れる)
- 疼痛(痛みを感じる)
の4つの徴候を生じる状態のことです。今説明したように感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。
みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。皮膚に炎症が起こることを皮膚炎と呼びます。皮膚炎も外傷でも生じるし、ばい菌に感染することでも生じるし、アレルギーでも生じます。
ステロイドは免疫を抑制することで、炎症反応を生じにくくさせてくれるのです。
Ⅱ.免疫抑制作用
上記のようにスチブロンをはじめとしたステロイドは免疫力を低下させる作用があります。
スチブロンは塗り薬であるため、塗った部位の皮膚の免疫力が低下します。通常はこれはステロイドの副作用となります。
強いステロイドを長期間塗り続けていると免疫力が低下するため、ばい菌(細菌やウイルス、真菌など)に感染しやすくなってしまいます。
しかし反対に免疫が暴走してしまって自分を攻撃してしまうようなアレルギー疾患や自己免疫性疾患に対してはステロイドの免疫力低下作用が利点になる事もあります。
Ⅲ.皮膚細胞の増殖抑制作用
スチブロンをはじめとしたステロイド外用剤は、塗った部位の皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがあります。
これも主に副作用となる事が多く、強いステロイドを長期間塗り続けていると皮膚が薄くなっていき毛細血管が目立って赤みのある皮膚になってしまう事があります。
しかし反対に皮膚が肥厚してしまうような疾患(乾癬や角化症など)においては、ステロイドを使う事で皮膚細胞の増殖を抑え、皮膚の肥厚を改善させることも出来ます。
4.スチブロンの副作用
スチブロンにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。
スチブロンはジェネリック医薬品であるため副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のマイザーでは行われており、副作用発生率は、
- 軟膏で0.87%
- クリームで1.31%
と報告されています。同じ主成分から成るスチブロンも、これと同程度だと思われます。
スチブロンは外用剤であり全身に投与するものではないため、その副作用は多くはありません。
またスチブロンローションに対しては副作用発生率の調査が行われており、5.4%と報告されています。
生じる副作用はほとんどが局所の皮膚症状で、
- 毛嚢炎(毛穴の奥にある毛包の炎症)
- せつ(おでき)
- 痤瘡様発疹(にきび様のできもの)
- ステロイド潮紅・毛細血管拡張
- 皮膚萎縮
- 皮膚の乾燥・かさつき
などになります。
皮膚萎縮や毛細血管拡張やステロイド紅潮はステロイドの皮膚を薄くする作用によるものです。またステロイドは免疫力を低下させるため、皮膚をばい菌に感染しやすい状態にしてしまい皮膚に菌の感染が生じることもあります。
いずれも重篤となることは少ないのですが、長期間使えば使うほど発生する可能性が高くなります。そのためステロイドは漫然と使用する事は避け、必要な期間のみ使う事が大切です。
また滅多にありませんが、ステロイド外用薬を長期・大量に塗り続けていると全身に作用してしまい、
- 緑内障(眼圧亢進)
- 白内障
などが生じる可能性があると言われています。
ステロイド外用剤の注意点としては、ステロイドは免疫力を低下させるため免疫力が活性化していないとまずい状態での塗布はしてはいけません。具体的にはばい菌の感染が生じていて、免疫がばい菌と闘わなくてはいけないときなどが該当します。
このような状態の皮膚にスチブロンを塗る事は禁忌(絶対にダメ)となっています。
ちなみに添付文書には次のように記載されています。
【禁忌】
(1)細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症、及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)
(2)本剤に対して過敏症の既往歴のある患者
(3)鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎
(4)潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷
これらの状態でスチブロンが禁忌となっているのは、皮膚の再生を遅らせたり、感染しやすい状態を作る事によって重篤な状態になってしまう恐れがあるためです。