ストロカイン錠・ストロカイン顆粒(一般名:オキセサゼイン)は1962年から発売されている胃薬になります。
ストロカインは過剰な胃酸の分泌を抑える事で、胃を保護してくれる作用を持ちます。古いお薬で強い効果はありませんが、ユニークな作用機序を持つお薬です。
胃薬にはたくさんの種類のお薬があります。これらの中でストロカインはどのような位置付けになるのでしょうか。
ストロカインの効果や特徴・副作用、どのような作用機序を持つお薬でどのような方に向いているお薬なのかについてみていきましょう。
目次
1.ストロカインの効果・特徴
まずはストロカインの特徴について、かんたんに紹介します。
ストロカインは胃酸の分泌を抑える作用と、胃腸の動きを穏やかにする作用を持ちます。効果は穏やかですがユニークな作用機序を持ちます。特にストレス性の胃腸症状に効果が期待できます。
ストロカインの主な作用は胃酸の分泌を抑える事になります。強力な酸である胃酸を抑える事で、胃酸が胃壁などを傷付ける事を防ぎます。
また胃に分布する自律神経である迷走神経のはたらきをブロックすることで、胃腸の動きを緩やかにします。
これにより胃酸が過剰に分泌されていたり、胃腸の動きが亢進しすぎていて胃腸症状が出現している場合に特に効果が期待できます。
特にストレス性の胃腸症状には相性が良いお薬です。ストレスを受けると胃酸の分泌が亢進して胃痛が生じたり、胃腸の動きが亢進して腹痛や下痢が生じる事が多いため、このような場合はストロカインは良い適応です。
副作用も多くはなく、特に重篤な副作用はほとんど生じません。安全性にも優れるお薬になります。
注意点としては、ストロカインは麻酔作用によって胃酸の分泌を抑えるというユニークな作用機序を持っているため、お薬をかみ砕いたり、口の中に長時間入れたままにしておくと、口の中にしびれ感が生じる事があります。
そのためストロカインはかみ砕かずに速やかに飲み込む事が推奨されます。
以上からストロカインの特徴として次のようなことが挙げられます。
【ストロカインの特徴】
・胃酸の分泌を抑える作用を持つ
・胃腸の動きを穏やかにする作用を持つ
・効果は穏やかだが、副作用も少ない
・麻酔作用により口の中がしびれることがある
2.ストロカインはどんな疾患に用いるのか
ストロカインはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
下記疾患に伴う疼痛・酸症状・噯気・悪心・嘔吐・胃部不快感・便意逼迫
食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸症(イリタブルコロン)
ストロカインは古いお薬であるため、適応疾患も今ではあまり使われない用語が使われています。
分かりやすく言い換えると、
噯気(あいき・おくび):げっぷのこと
便意逼迫(べんいひっぱく):便の回数が多くなること
過敏性大腸症(イリタブルコロン):現在では過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)と呼ばれている。
となります。
ストロカインはこのような胃腸症状の改善に用いられます。
3.ストロカインにはどのような効果・作用があるのか
ストロカインは胃炎や胃潰瘍といった疾患に対して効果を発揮するお薬ですが、具体的にはどのような作用機序で胃疾患を改善させているのでしょうか。
ストロカインの主な効果・作用について詳しく紹介します。
Ⅰ.胃酸の分泌を抑える
ストロカインの主な作用は、胃酸の分泌を抑えることです。
現在良く使われている胃酸を抑えるお薬には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミン2阻害薬(H2ブロッカー)があります。これらのお薬はストロカインよりも新しいお薬で、強力に胃酸の分泌を抑える作用があります。
しかしストロカインはこれらのお薬とは異なる作用機序によって胃酸の分泌を抑えてくれます。
PPIやH2ブロッカーというのは、胃酸分泌に関わっている受容体をブロックする事で、胃酸の分泌を抑えます。
一方でストロカインは「コカイン」と同系統の物質であり麻酔作用を持ち、これにより胃酸の分泌を抑えます。胃粘膜に存在するガストリン分泌細胞を麻酔する事で、ガストリンを分泌させにくくします。
ガストリンはペプシン(タンパク質を分解する酵素)や、胃酸の分泌を促す作用があるため、ストロカインの麻酔作用によってガストリンの分泌が抑えられると、胃酸が分泌されにくくなるというわけです。
胃酸は食べ物を分解したり、体内に入ってきた細菌をやっつけたりするために重要な働きをしていますが、強力な酸であるため時に自分の身体を傷つけてしまう事もあります。
食生活の荒れやストレスなどで胃酸の分泌が多くなりすぎてしまうと、胃壁を攻撃してしまい胃炎や胃潰瘍が生じる事が知られています。
ストロカインは胃酸の分泌を抑えることで、胃を保護してくれるのです。
Ⅱ.胃腸の動きを穏やかにする
ストロカインのもう一つの作用に、胃腸の蠕動運動に関係する自律神経(迷走神経など)をブロックする作用があります。
迷走神経は副交感神経に属し、主に胃腸の蠕動運動を高める働きがあります。ストロカインはこれを抑えるため、胃腸の動きが抑制されます。
ストレスや細菌感染などによって胃腸の動きが高まり、腹痛や頻回の下痢などが生じている場合は、ストロカインのこの作用により症状を改善させる事ができます。
4.ストロカインの副作用
ストロカインの副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。また副作用はどのくらい多いのでしょうか。
ストロカインの副作用発生率は4.00%と報告されており、副作用は多くはありません。
生じうる副作用としては、
- 便秘、下痢
- 食欲不振
- 口の渇き
- 吐き気
- 頭痛
- めまい
- 発疹
などが報告されています。
ストロカインは、「コカイン」と同系統に属するお薬です。コカインは脳の覚醒作用や依存性を持つ物質でもあるため、これと同系統を聞くと「ストロカインも怖い薬なのではないか」と感じてしまうかもしれません。
しかしストロカインはコカインと異なり、毒性は極めて低く覚醒作用などもない事が確認されています。
お薬ですから副作用が生じないとは言えませんが、安全性は高いお薬だと考えて問題ありません。
5.ストロカインの用法・用量と剤形
ストロカインは、
ストロカイン錠 5mg
ストロカイン顆粒 5%
の2剤型があります。
ストロカインの使い方は、
通常成人1日15~40mgを3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
となっています。
錠剤であれば1日3~8個服用します。また細粒であれば1日0.3~0.8gを服用します。
注意点としてストロカインは麻酔作用を持っていますので、お薬をかみ砕いたり長時間口の中に入れておくと、しびれ感が出現する事があります。
そのため、服用したら速やかに飲み込むようにしましょう。
6.ストロカインが向いている人は?
以上から考えて、ストロカインが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ストロカインの特徴をおさらいすると、
・胃酸の分泌を抑える作用を持つ
・胃腸の動きを穏やかにする作用を持つ
・効果は穏やかだが、副作用も少ない
・麻酔作用により口の中がしびれることがある
というものでした。
ここから、
- 胃酸の分泌が増えてしまっている状態
- 胃腸の動きが亢進しすぎている状態
の方に用いる事で良い効果が期待できるお薬です。
具体的にはストレス性の胃腸症状の方は向いています。ストレスで胃腸系に症状が出る事は多く、胃酸の分泌が増えてしまい「ストレス性胃潰瘍」が生じることもありますし。胃腸の蠕動運動が亢進しすぎてしまい「過敏性腸症候群」が生じることもあります。
このような場合にはストロカインは良い効果を期待できるでしょう。
またそれ以外の場合でも、胃酸の分泌が多い状態や胃腸の動きが亢進しすぎている状態には候補に挙がる治療薬となります。