アルサルミン細粒・内用液(一般名:スクラルファート)は1968年から発売されている胃炎・消化性潰瘍治療剤になります。いわゆる「胃薬」です。
アルサルミンはどんな作用のあるお薬で、どんな患者さんに向いているのでしょうか。
アルサルミンの効果や特徴についてみていきましょう。
目次
1.アルサルミン細粒・内用液の特徴
まずはアルサルミン細粒・アルサルミン内用液(一般名:スクラルファート)の特徴について、かんたんに紹介します。
アルサルミンは胃薬になり、主に軽胃炎・胃潰瘍に対して用いられます。主成分は「スクラルファート水和物」と呼ばれますが、これは「ショ糖硫酸エステルアルミニウム塩」とも呼ばれ、アルミニウムの一種になります。
アルサルミンは、潰瘍や炎症が生じてしまった病変部に選択的に結合し、そこに被膜(バリア)を形成することで病変部を保護するはたらきがあります。また、胃酸のはたらきを抑えることで胃酸が病変部を刺激しにくいようにするはたらきもあります。
アルサルミンの効果は全体的に穏やかです。穏やかに効くため安全性に優れるお薬になります。しかしアルミニウムを含むため腎機能が悪い方は用いることが出来ず、透析をしている方には禁忌(絶対に使ってはだめ)になります。
またお薬は食後に服薬するものが多いですが、アルサルミンは食前に服薬した方が効果が高くなります。そのため、出来る限り食前に服用することが望まれます。
以上からアルサルミンの特徴として次のようなことが挙げられます。
【アルサルミン細粒・内用液(スクラルファート)の特徴】
・胃炎・胃潰瘍部に被膜を形成して病変部を保護する
・胃酸のはたらきを抑える
・作用は穏やかで副作用が少ない
・透析患者さんには使えない。腎機能が悪い方も慎重に
・食前(空腹時)に服薬する
2.アルサルミン細粒・内用液はどんな疾患に用いるのか
アルサルミンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪
アルサルミンは胃薬ですので、胃炎・胃潰瘍などの主に胃の病変に対して用いられます。
また胃に対する負担が強いお薬を服薬する場合、胃腸系の副作用を予防する目的で投与されることもあります。
例えば、痛み止めや解熱剤としてよく用いられる「ロキソニン(ロキソプロフェン)」などの消炎鎮痛剤には副作用として胃潰瘍があります。
この胃潰瘍を予防するために、ロキソニンにあらかじめアルサルミンを併用するという方法が臨床ではしばしば用いられています。
3.アルサルミン細粒・内用液にはどのような作用があるのか
アルサルミンは、どのような作用機序で胃を保護しているのでしょうか。
アルサルミンには胃炎・胃潰瘍を改善させるためのいくつかの作用があります。それぞれについて見てみましょう。
Ⅰ.胃粘膜保護作用
アルサルミンは胃粘膜に被膜を形成するはたらきがあり、これにより胃を保護してくれます。バリアのように病変部(潰瘍部や炎症部)を覆うことで胃酸から傷を守ってくれるのです。
胃内は胃酸という強い酸性の物質が存在するため、胃粘膜に潰瘍や炎症が生じてしまうと、病変部を胃酸が刺激してしまい、傷がなかなか治らなくなってしまいます。
アルサルミンは胃粘膜に被膜を形成することで、病変部を胃酸から守ってくれるはたらきがあるのです。
ちなみにアルサルミンは胃壁全体を覆うわけではなく、病変部だけを選択的に覆ってくれます。なぜそのようなことができるのでしょうか。
アルサルミンは潰瘍などから顔を出している基質タンパク質と結合することにより被膜を形成するのです。そのため、傷が出来ているところに集中的に膜をはってくれるのです。
Ⅱ.制酸作用
胃酸にはペプシンというタンパク質を分解する酵素や、強力な酸である塩酸が含まれています。
これらは食べ物を分解したり、胃にやってきたばい菌を殺菌するといった作用があります。しかし胃粘膜に傷ができてしまうと、これらによって傷が刺激され、なかなか治らなくなってしまいます。
アルサルミンは胃酸のはたらきを抑える作用(制酸作用)や、ペプシンのはたらきを抑える作用(抗ペプシン作用)があることが報告されており、これも胃炎・胃潰瘍の改善に役立ってくれます。
4.アルサルミン細粒・内用液の副作用
アルサルミンの副作用発生率は1.6~3.4%前後と報告されています。
アルサルミンは胃酸のはたらきを抑える作用があります。胃酸は胃炎や胃潰瘍には悪さをしてしまいますが、普段は食べ物を分解してくれるという大切なはたらきがあります。
時にアルサルミンで胃酸のはたらきが抑えられすぎてしまうことがあり、これが主な副作用になります。
具体的には、
- 便秘
- 嘔気
などが挙げられます。しかしこれらの副作用は重篤となることは少なく、様子をみている中で自然と改善してきたり、適切な量に調整をすることで改善が得られることもあります。
アルサルミンの重篤な副作用として、透析を受けている患者さんでは、
- アルミニウム脳症
- アルミニウム骨症
- 貧血
などが生じる可能性があります。
アルサルミンにはアルミニウムが含まれており、これは微量ですが体内に吸収される恐れがあります。腎機能が正常な方であれば吸収されたアルミニウムは適宜排出されるため問題ありません。しかし腎臓が悪い透析患者さんでは、アルミニウムが体内に蓄積してしまうことがあります(アルミニウムの大部分は腎臓を経て尿から排泄されます)。
そのため透析患者さんにはアルサルミンは禁忌(絶対に使用してはいけない)となっています。
5.アルサルミンの用法・用量と剤形
アルサルミンには、
アルサルミン細粒90%(1g中にスクラルファート900mg)
アルサルミン内用液10%(10ml中にスクラルファート1g)
の2剤形があります。
アルサルミンの使い方は、
<細粒>
通常、成人1回1~1.2gずつ、1日3回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する
<内用液>
通常、成人1回10mlを1日3回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する
と書かれています。
ちなみにアルサルミンは食後の服用は推奨されておらず、食前や就寝前などの「空腹時」に服薬することが推奨されています。
食後に服薬してしまうと胃内に食べ物がたくさんいます。すると本来、潰瘍の基質タンパク質に結合すべきアルサルミンが食べ物のタンパク質と結合してしまい、薬効が低くなってしまいます。
食後に服用した場合と、食前に服用した場合では、食前の方が治癒率が2~3倍も高いという報告もありますので、アルサルミンは空腹時に服薬するようにしましょう。
6.アルサルミン細粒・内用液が向いている人は?
以上から考えて、アルサルミンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
アルサルミンの特徴をおさらいすると、
・胃炎・胃潰瘍部に被膜を形成して病変部を保護する
・胃酸のはたらきを抑える
・作用は穏やかで副作用が少ない
・透析患者さんには使えない。腎機能が悪い方も慎重に
・食前(空腹時)に服薬する
というものでした。
アルサルミンは、被膜を作ることで病変部を保護してくれます。これにより胃炎・胃潰瘍に効果が期待できるお薬です。
注意点として、
- 食前(空腹時)に服薬しないと効果が弱まる
- 腎機能が悪い方には向いていない
ことがあります。
そのため、これらの注意点に該当しない方で、あまり重症ではない胃炎・胃潰瘍の方には良い適応となります。