スルプロチン軟膏・クリームの効果と副作用【非ステロイド抗炎症剤】

スルプロチン軟膏・スルプロチンクリーム(一般名:スプロフェン)は1989年から発売されている塗り薬(外用剤)で「非ステロイド系抗炎症剤」という種類に属します。

非ステロイド系抗炎症剤とは、

  • ステロイドではなく
  • 主に炎症を抑えたり痛みを和らげる作用を持つ

お薬の総称で、NSAIDsとも呼ばれています。

スルプロチンは塗り薬ですので、皮膚に生じた急性の炎症に対して、炎症を抑えたり痛みを軽減する目的で処方されます。

皮膚に塗る外用剤はたくさんの種類があります。その中でスルプロチンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ここではスルプロチン軟膏・スルプロチンクリームの特徴や効果・効能、副作用についてみていきましょう。

 

1.スルプロチンの特徴

まずはスルプロチンの特徴をざっくりと紹介します。

スルプロチンは、主に炎症を和らげる(消炎)はたらきと痛みを和らげる(鎮痛)はたらきを持ちます。効果は穏やかですがステロイドではないため、ステロイドが使いにくいような疾患にも向いています。

スルプロチンは「非ステロイド性消炎鎮痛剤」と呼ばれますが、その名の通り「ステロイドではない」「消炎・鎮痛作用がある」ことが特徴です。

ステロイドではないため、ステロイドを塗ることが推奨されないような感染性の湿疹(帯状疱疹など)や酒さ様皮膚炎などにも塗ることが出来ます。

ステロイドは炎症を抑えるのに優れたお薬ですが、免疫力(ばい菌と闘う力)を下げてしまう作用を持つため、ばい菌が感染しているような皮膚には向きません。また酒さ様皮膚炎は、ステロイドの副作用によって皮膚炎を生じている疾患ですので、ステロイドを用いるわけにはいきません。

スルプロチンは主に急性の湿疹に対して用いられることが多く、帯状疱疹など一時的に炎症や痛みが強くなる皮膚疾患において用いられる事が多いお薬です。

デメリットとしては、スルプロチンを塗ることによって接触皮膚炎(いわゆる「かぶれ」)が生じてしまう事が頻度は低いながらもある事です。ちなみにスルプロチンと同じ非ステロイド性消炎鎮痛剤のアンダーム(一般名:ブフェキサマク)というお薬は、接触性皮膚炎の副作用の問題などもあり、2010年に販売中止となっています。

以上から、スルプロチンの特徴としては次のようなことが挙げられます。

【スルプロチン軟膏・スルプロチンクリームの特徴】
・消炎作用(炎症を抑える)・鎮痛作用(痛みを和らげる)がある
・効果は穏やかであるため、主に軽症例に用いられる
・ステロイドではないため、ステロイドが向かない疾患にも使える
(感染性疾患や酒さ様皮膚炎など)
・接触性皮膚炎に注意

 

2.スルプロチンはどのような疾患に用いるのか

スルプロチンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
急性湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、酒皶様皮膚炎・口囲皮膚炎、帯状疱疹

たくさんの病名に対して適応を持っていますが、実際に用いる事が多いのは、

  • 急性湿疹
  • 酒さ様皮膚炎
  • 帯状疱疹

あたりになります。

スルプロチンは消炎作用と鎮痛作用を有していますが、それ以外の作用はほとんどありません。アレルギーを抑える作用や傷を早く治す作用があるわけではなく、炎症を抑える事で「痛み」などの症状を抑えるだけになります。

そのためアレルギーが原因であるアトピー皮膚炎に対しては、ステロイドや保湿剤など他の塗り薬を用いることが多いのが実情です。

また創傷(キズ)の治りを早める作用に優れるわけでもないため、慢性湿疹などに対しても別の塗り薬を用いることが多いのが現状です。

接触皮膚炎に対しては、スルプロチンは炎症を抑える効果は期待できますが、スルプロチン自体が接触皮膚炎の原因になってしまう事もあるため、あまり用いられることがありません。

スルプロチンは各疾患に対してどのくらいの有効性があるのでしょうか。

スルプロチンの改善率(中等度以上改善した率)は軟膏で75.8%、クリームでも73.0%と報告されています。

その内訳としては、

  • 急性湿疹での改善率は、軟膏で82.1%・クリームで81.6%
  • 接触皮膚炎での改善率は、軟膏で80.4%・クリームで79.4%
  • アトピー皮膚炎での改善率は、軟膏で58.8%・クリームで55.8%
  • 慢性湿疹での改善率は、軟膏で67.0%・クリームで59.4%
  • 皮脂欠乏性湿疹での改善率は、軟膏で77.5%・クリームで78.4%
  • 酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎への有効率は、軟膏で65.0%・クリームで67.8%
  • 帯状疱疹での改善率は、軟膏で89.7%・クリームで87.9%

と報告されています。

 

3.スルプロチンにはどのような作用があるのか

スルプロチンは、どのような作用を持つお薬なのでしょうか。

スルプロチンを塗る事で期待できる作用について紹介します。

 

Ⅰ.抗炎症作用

スルプロチンは、炎症を和らげる作用を持ちます。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

例えば身体をぶつけたり、身体にばい菌が入ったりすると、その部位が赤くなったり熱感を持ったり、腫れたり、痛んだりという状態になりますよね。これが炎症です。

皮膚に炎症が起こることを皮膚炎と呼びます。皮膚炎も外傷でも生じるし、ばい菌に感染することでも生じるし、アレルギーでも生じます。

どのような原因であれ、炎症そのものを抑えてくれる作用が抗炎症作用です。スルプロチンは抗炎症作用があり、発赤・熱感・腫脹・疼痛といった症状を和らげてくれます。

スルプロチンをはじめとしたNSAIDsは、シクロオキシゲナーゼ(COX)という物質をブロックするはたらきがあります。

COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。

プロスタグランジンは炎症や痛みを誘発する物質であるため、スルプロチンがCOXをブロックすると炎症や痛みが生じにくくなるのです。

炎症が起きると血管の透過性が亢進し、血管内から血管外へ様々な物質が移動していきます。これは炎症の原因となっているもの(ばい菌や外傷など)を修復する作用がある一方で、「発赤」「熱感」「腫脹」「疼痛」を引き起こしてしまいます。また浮腫(むくみ)の原因になることもあります。

スルプロチンは、COXの作用をブロックすることで、炎症や浮腫を和らげるはたらきがあるのです。

 

Ⅱ.鎮痛作用

炎症は疼痛(痛み)も引き起こします。

スルプロチンはCOXをブロックすることで炎症を和らげ、痛みを抑える作用も有しています。

ただしその効果は強くはありません。

 

4.スルプロチンの副作用

スルプロチンにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用はどのくらいの頻度で生じるのでしょうか。

スルプロチンの副作用発生率は軟膏で1.32%・クリームで3.20%と報告されており、多くはありません。

報告されている副作用としては、

  • 発赤
  • 刺激感
  • 掻痒感(かゆみ)
  • 紅斑

などがあります。いずれも重篤となることは少なく、スルプロチンの使用を中止すれば改善することがほとんどです。

またスルプロチンは長期間連用していると、皮膚に過敏症状が現れる事がありますので、漫然と使用を続けないようにしましょう。

スルプロチンを使用してはいけない方(禁忌)として、

  • スルプロチンの成分に対し過敏症の既往歴のある方
  • ケトプロフェン(外皮用剤)、チアプロフェン酸、フェノフィブラート及びオキシベンゾンに対して過敏症の既往歴のある方

が挙げられています。

ケトプロフェン、チアプロフェン酸はスルプロチンと同じく非ステロイド性消炎鎮痛剤の成分になります。

フェノフィブラートは高脂血症の治療薬の成分であり、オキシベンゾンは日焼け止めなどに用いられている成分です。

これら製剤とスルプロチンは交叉感作性の報告があるため、これらに過敏症がある方はスルプロチンにも同様に過敏症が出現する可能性があるため、スルプロチンを使用する事はできません。

 

5.スルプロチンの用量・用法と剤型

スルプロチンには、

スルプロチン軟膏1% 10g(アルミチューブ)
スルプロチン軟膏1% 500g(ガラス容器)

スルプロチンクリーム1% 10g(アルミチューブ)

といった剤型があります。

スルプロチンの使い方は、

急性湿疹、接触皮膚炎、アトピー皮膚炎、慢性湿疹、酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎については、本品の適量を1日数回患部に塗布する。

帯状疱疹については、本品の適量を1日1~2回患部に塗布又は貼布する。

と書かれています。

ちなみに塗り薬には、「軟膏」「クリーム」「ローション」などがありますが、これらはどう違うのでしょうか。

軟膏は、ワセリンなどの油が基材となっています。長時間の保湿性に優れ、刺激性が少ないことが特徴ですが、べたつきは強く、これが気になる方もいらっしゃいます。また皮膚への浸透力も強くはありません。

クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。軟膏よりも水分が入っている分だけ伸びがよく、べたつきも少なくなっていますが、その分刺激性はやや強くなっています。

ローションは水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、保湿効果は長続きしません。しかし皮膚への浸透力は強く、皮膚が厚い部位などに使われます。

それぞれ一長一短あるため、皮膚の状態に応じて主治医とよく相談し、使い分ける事が大切です。

スルプロチンには軟膏剤とクリーム剤があります。

 

6.スルプロチンの使用期限はどれくらい?

スルプロチンの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。

「家に数年前に処方してもらった軟膏があるんだけど、これってまだ使えますか?」

このような質問は患者さんから時々頂きます。

これは保存状態によっても異なってきますので一概に答えることはできませんが、適切な条件で保存されていたのであれば

  • スルプロチン軟膏は4年
  • スルプロチンクリームは3年

が使用期限になります。

スルプロチンは基本的には遮光、室温で保存するものですので、この状態で保存していたのであれば上記期間持つと考えて良いでしょう。反対に暑い場所で保管していたり、光が当たる場所で保管していた場合は、使用期限は短くなる可能性があります。

 

7.スルプロチンが向いている人は?

以上から考えて、スルプロチンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

スルプロチンの特徴をおさらいすると、

・消炎作用(炎症を抑える)・鎮痛作用(痛みを和らげる)がある
・効果は穏やかであるため、主に軽症例に用いられる
・ステロイドではないため、ステロイドが向かない疾患にも使える
(感染性疾患や酒さ性皮膚炎など)
・接触性皮膚炎に注意

というものでした。

スルプロチンは穏やかに炎症を抑え、痛みを取ってくれるため、主に軽症の皮膚疾患に用いるお薬になります。しっかりと症状を抑える必要がある場合は、より強い効果が得られるステロイドなどを検討する必要があるでしょう。

スルプロチンはステロイドではないため、ステロイドが好ましくないような皮膚状態で、かつ消炎・鎮痛をした方が良い皮膚には向いているお薬です。

具体的には、

  • 感染性の皮膚疾患(帯状疱疹など)
  • 酒さ様皮膚炎

などが挙げられます。

スルプロチンはあくまでも炎症を抑えているだけで根本を治しているわけではない事は知っておく必要があります。

例えば帯状疱疹に用いれば、帯状疱疹で生じる皮膚のピリピリした痛みは和らぎますが、原因であるヘルペスウイルスをやっつける作用はありません。スルプロチンで痛みを抑えながらも抗ウイルス薬も併用していく必要があります。