ボンアルファ軟膏・ボンアルファクリーム・ボンアルファローション(一般名:タカルシトール)は病院で処方される塗り薬で、「角化症治療剤」という種類のお薬になります。1993年から発売されています。
ボンアルファは角化症や角化異常といった角質(皮膚の表面)が厚くなってしまう疾患に対して用いられます。
ボンアルファはどのような作用機序があって、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。
ボンアルファの効果・効能や特徴、副作用について詳しくみてみましょう。
目次
1.ボンアルファの特徴
まずはボンアルファの特徴をざっくりと紹介します。
ボンアルファは、皮膚の角化異常を改善する作用を持つ塗り薬になります。
角化異常というのは皮膚の分化に異常が生じて、角質の肥厚や増殖が生じてしまうことです。
【分化】
細胞が構造的・機能的に変化していくこと。
皮膚の表面を「表皮」と呼びますが、表皮はケラチノサイト(角化細胞)がほとんどを占めます。ケラチノサイトは表皮の一番下にある基底層で作られ、一番上にある角質層に達するまでに徐々に分化していき、角質層に達すると角質細胞となります。この一連の過程を「角化」と言います。
この角化に異常が生じるのが角化異常です。ケラチノサイトの分化が正常に行われないため、皮膚が肥厚したり、赤くなったりします。また角質の増殖によって、鱗屑(りんせつ:皮膚が剥がれ落ちて白い粉をふいたようになる)が出現することもあります。
角化異常が生じると皮膚のかゆみといった症状以外にも、見た目の問題などもあり、患者さんはとてもつらい思いをしてしまう事があります。
ボンアルファは、このような角化異常を改善する作用を持っています。
ボンアルファは2μg/gという濃度になりますが、ボンアルファでも効果が不十分な角化異常に対しては、より高濃度のボンアルファ ハイというお薬もあり、これは20μg/gの高濃度のお薬になります。効果不十分の時は高濃度の同製剤があるというのはボンアルファのメリットの1つです。
またボンアルファは、「軟膏」「クリーム」「ローション」と剤型が豊富であり、部位に応じて適切な剤型を用いることができる点もメリットになります。
デメリットとしては、ボンアルファは同種のお薬の中で、効果が弱いという点です。効果が弱い分だけ副作用も軽いため一概にデメリットとは言えませんが、ボンアルファはこのような特徴から、主に軽症の皮膚症状の方に用いられます。
以上からボンアルファの特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。
【ボンアルファ軟膏・ボンアルファローションの特徴】
・皮膚の角化(角質の肥厚)を治す作用がある
・効果不十分の際に、より高濃度のボンアルファ ハイもある
・剤型が豊富
・同種のお薬と比べて効果は弱く副作用も少ない
2.ボンアルファはどのような疾患に用いるのか
ボンアルファはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
乾癬
魚鱗癬
掌蹠膿疱症
掌蹠角化症
毛孔性紅色粃糠疹
適応疾患として5つの病名が挙げられていますが、これらは全て「角化異常」によって生じる疾患になり、皮膚の表面にある「角質」の肥厚が原因になります。
通常、表皮のケラチノサイト(角化細胞)は1~2か月かけて徐々に生まれ変わっていきます。しかし角化異常が生じるとそのスピードが速まってしまい、短い時間でどんどんと皮膚が作られていきます。
すると角質がどんどんと肥厚していってしまうのです。
角化異常が生じると、見た目的な問題だけでなく、かゆみや痛みが生じたり、鱗屑(皮膚が剥がれ落ちて白い粉が落ちる)が生じたりといった症状が生じ、患者さんの生活に支障を来たします。
3.ボンアルファにはどのような効果・作用があるのか
ボンアルファは、皮膚の角化異常に対して用いられますが、どのような機序で角化異常を改善させているのでしょうか。
ボンアルファの主成分であるタカルシトールは、活性型ビタミンD3の誘導体になります。
活性型ビタミンD3は、角化異常が生じている表皮の角化細胞にあるビタミンD受容体にくっつくことで、細胞の増殖を抑える作用があることが知られています。
角化異常が生じている角化細胞は、細胞増殖のスピートが正常より早まっており、これによって皮膚がどんどんと厚くなってしまいます。活性化ビタミンD3は細胞増殖を抑えるため、これによって角化細胞の増殖が抑制され、角化異常の改善が得られるというわけです。
また角化異常の原因としては、ケラチノサイト(角化細胞)の分化異常も指摘されています。
ケラチノサイトは表皮の一番下にある層である基底層で作られ、一番上の層である角質層に達する間に徐々に分化していきます。しかし角化異常ではその分化が正常に行われていないのです。
ボンアルファは、このケラチノサイトの分化を促進するはたらきを持っていることが確認されており、ケラチノサイトの正常分化の指標となるインボルクリンの合成を促進することが確認されています。また同じく正常分化の所見の1つであるケラチンパターンの形成やケラトヒヤリンを有する顆粒層の形成も確認されています。
4.ボンアルファの副作用
ボンアルファにはどのような副作用があるのでしょうか。
副作用発生率は3%前後と報告されています。
副作用の内容としては、
- 掻痒感(かゆみ)
- 発赤
- 刺激感、ヒリヒリ感
などの局所の副作用が多くを占めます。ボンアルファは人によっては皮膚に対する刺激となってしまう事があるようです。
ボンアルファと同じ活性型ビタミンD3誘導体のお薬(オキサロール、ドボネックス)には、注意すべき副作用として「高カルシウム血症」があります。これは活性型ビタミンD3はカルシウム代謝を調節する作用があり、カルシウム濃度を上げてしまう可能性があるためです。
ボンアルファも作用機序上は高カルシウム血症が生じる可能性はゼロではありませんが、安全性の高いボンアルファではこの副作用はほとんど生じません。
5.ボンアルファの用量・用法と剤型
ボンアルファは、
ボンアルファ軟膏2μg/g(タカルシトール) 10g
ボンアルファ軟膏2μg/g(タカルシトール) 30g
ボンアルファ軟膏2μg/g(タカルシトール) 100g
ボンアルファ軟膏2μg/g(タカルシトール) 500gボンアルファクリーム2μg/g(タカルシトール) 10g
ボンアルファクリーム2μg/g(タカルシトール) 100gボンアルファローション2μg/g(タカルシトール) 10g
と剤型が豊富にあります。
一般的に軟膏は身体に用い、頭部にはローションが用いられます。
ボンアルファの使い方は、
通常1日2回適量を患部に塗布する。
と書かれています。
ちなみに塗り薬には、「軟膏」「クリーム」「ローション」などがありますが、これらはどう違うのでしょうか。
軟膏は、ワセリンなどの油が基材となっています。保湿性に優れ、刺激性が少ないことが特徴ですが、べたつきは強く、これが気になる方もいらっしゃいます。
クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。軟膏よりも水分が入っている分だけ伸びがよく、べたつきも少なくなっていますが、その分刺激性はやや強くなっています。
ローションは水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、保湿効果は長続きしません。刺激性が強めというデメリットがある反面で、浸透力が高く、皮膚が厚い部位でも効果が期待できます。
それぞれ一長一短あるため、皮膚の状態に応じて主治医とよく相談し、使い分ける事が大切です。
6.ボンアルファ向いている人は?
以上から考えて、ボンアルファが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ボンアルファの特徴をおさらいすると、
・皮膚の角化(角質の肥厚)を治す作用がある
・効果不十分の際に、より高濃度のボンアルファ ハイもある
・剤型が豊富
・同種のお薬と比べて効果は弱いが副作用も少ない
というものでした。
ここから、
・角化異常(乾癬など)を持っていて
・軽症例の方
に向いている治療薬だと考えられます。
同種のお薬としては「オキサロール(一般名:マキサカルシトール)」「ドボネックス(カルシポトリオール)」があり、これも活性型ビタミンD3誘導体になります。
全体的な処方数としてはオキサロールが多く、オキサロールの方がメジャーなお薬にはなります。
オキサロール・ドボネックスの方が濃度が高いため、効果も全体的に強いですが副作用も多くなっています。そのため、皮膚の状態や重症度に応じて使い分ける必要があります。
ボンアルファは低濃度のため効果は弱めですが、その分副作用が少なく安全性に優れます。また、効果不十分の場合は「ボンアルファ ハイ」というボンアルファより10倍濃度が高い製剤もありますので、そちらに切り替えるという方法も取れます。