タベジール(一般名:クレマスチンフマル酸塩)は1970年から発売されているお薬です。抗アレルギー薬と呼ばれ、アレルギーによって生じる諸症状を抑え、花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられています。
タベジールは主にヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。
抗アレルギー薬の中でタベジールはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。
タベジールの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。
1.タベジールの特徴
まずはタベジールの全体的な特徴についてみてみましょう。
タベジールはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。古いお薬で副作用が多いため、現在ではあまり用いられていません。
ヒスタミンはアレルギーを誘発する原因となる物質(ケミカルメディエーター)です。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を改善させることができます。それを狙っているのがタベジールをはじめとした「抗ヒスタミン薬」になります。
抗ヒスタミン薬には古い第1世代抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。
この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位への作用が少なく、これも副作用を低下させる理由となっています。
そのため、現在では副作用が少ない第2世代から使用するのが一般的です。
タベジールはというと第1世代の抗ヒスタミン薬になります。今となっては古い抗アレルギー薬になるため、現在では最初から用いられることはほとんどありません。
タベジールは副作用として「眠気」と「抗コリン症状」に気を付ける必要があります。
ヒスタミンは覚醒に関わっている物質であるため、ヒスタミンをブロックすると眠くなってしまうことがあります。そのため抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあり、中でも第1世代抗ヒスタミン薬は眠気が起きやすいお薬になります。
またヒスタミン受容体はアセチルコリン受容体と類似した構造をしているため、抗ヒスタミン薬はアセチルコリン受容体のはたらきをブロックしてしまう事があり、これにより抗コリン症状が生じる事があります。
代表的な抗コリン症状としては、口渇(口の渇き)、便秘、吐き気、尿閉(尿が出にくくなる)などがあります。
以上から、タベジールの特徴として次のようなことが挙げられます。
【タベジールの特徴】
・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・古い第1世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が多め
・眠気、抗コリン症状(口渇、便秘、吐き気など)に注意
2.タベジールはどのような疾患に用いるのか
タベジールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
1.アレルギー性皮膚疾患(蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、そう痒症)
2.アレルギー性鼻炎
3.感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽(タベジールシロップのみ)
基本的にアレルギー疾患に効くお薬という認識で良いでしょう。
アレルギーで生じる疾患として代表的なものには、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあります。
また感冒(いわゆる風邪)に伴って生じる鼻水も、抗アレルギー薬によって改善が得られます。
タベジールの有効性については、
- アレルギー性皮膚疾患に対する有効率は78.2%(シロップは90.4%)
- アレルギー性鼻炎に対する有効率は70.3%(シロップは86.6%)
- 感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽に対する有効率は86.6%(シロップのみ)
という結果が出ています。
臨床的な印象としてもタベジールのアレルギーを抑える作用はしっかりとしています。しかし第1世代であるタベジールは副作用も多く、現在では最初から積極的に使われる位置づけのお薬ではありません。
3.タベジールにはどのような作用があるのか
タベジールはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。
タベジールの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ.抗ヒスタミン作用
タベジールは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。
アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。
アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体に結合することで様々なアレルギー症状が発症します。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。ヒスタミンは主要なケミカルメディエーターの1つなのです。
タベジールは、ヒスタミンが結合するヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状の出現を抑える作用があります。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれるのです。
4.タベジールの副作用
タベジールにはどんな副作用があるのでしょうか。
タベジールの副作用は13.4%前後(シロップは2.8%)と報告されています。第1世代抗ヒスタミン薬であるタベジールは副作用が多めのお薬となります。
副作用として多いのは、
- 眠気
です。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあります。タベジールも例外ではありません。
特にタベジールは第一世代の抗ヒスタミン薬であり、脳へ移行しやすいため眠気を起こしやすいお薬になっています。
その他の副作用としては、
- 倦怠感
- 口渇(口の渇き)
- 食欲不振
- 吐き気・嘔吐
などが報告されています。これらは抗ヒスタミン薬が持つ抗コリン作用というアセチルコリンのはたらきを抑えてしまう作用が関係しています。ヒスタミンの受容体とアセチルコリンの受容体は構造が類似しているため、抗ヒスタミン薬は時にアセチルコリン受容体にも作用してしまうのです。
抗コリン作用は唾液の分泌を減少させたり、胃腸の動きを低下させてしまいます。特にタベジールのような第1世代は抗コリン作用が生じやすいため、このような副作用が生じることがあるのです。
頻度は稀ですが、重大な副作用として、
- けいれん
- 興奮
- 肝機能障害、黄疸
が報告されています。
またタベジールのような第1世代抗ヒスタミン薬は上記の抗コリン作用があるため、次のような方は使用することが出来ません。
- 緑内障の方
- 前立腺肥大などの下部尿路に閉塞性疾患がある方
- 狭窄性消化性潰瘍または幽門十二指腸閉塞のある方
このような疾患がある方に抗コリン作用のあるお薬を投与してしまうと症状を悪化させてしまう可能性があります。
抗コリン作用は涙の通り道を狭くしてしまい眼圧を上げてしまう可能性があるため、緑内障の方に使う事は出来ません。また尿道を収縮させるはたらきもあるため、尿道の閉塞がある方に用いるのも危険です。
また抗コリン作用は腸管の動きを抑制するため、腸管に閉塞や狭窄がある方に用いるのも危険になります。
5.タベジールの用法・用量と剤形
タベジールは、
タベジール錠 1mg
タベジール散 0.1%
タベジール散 1%
タベジールシロップ 0.01%
の4剤形があります。
タベジールの使い方としては、
【錠剤・散剤】
通常成人1日量2mgを朝晩2回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。【シロップ】
通常1日2mgを2回に分けて経口投与する。用量は患者の症状、年齢・体重などにより適宜増減することができる。幼小児に対する標準的な用量として、下記の1日量がすすめられる。
1歳以上3歳未満 4ml(0.4mg)
3歳以上5歳未満 5ml(0.5mg)
5歳以上8歳未満 7ml(0.7mg)
8歳以上11歳未満 10ml(1.0mg)
11歳以上15歳未満 13ml(1.3mg)1歳未満の乳児に使用する場合には、体重、症状などを考慮して適宜投与量を決める。
となっています。
6.タベジールが向いている人は?
以上から考えて、タベジールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
タベジールの特徴をおさらいすると、
・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・古い第1世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が多め
・眠気、抗コリン症状(口渇、便秘、吐き気など)に注意
といったものがありました。
タベジールは、第1世代抗ヒスタミン薬になり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対して用いられるお薬になります。
古い第1世代になり副作用が多めのお薬であるため、現在では最初から用いられる事はほとんどないお薬です。
副作用の少ない第2世代抗ヒスタミン薬を使っても十分な効果が得られない場合は、何らかの理由で第2世代抗ヒスタミン薬が使用できない場合にやむを得ず検討されるお薬になります。
また保険適応上の問題ですが、第2世代は「風邪に伴う鼻水」に対して適応が無いのに対して、タベジールなどの第1世代は適応を持っているため、風邪に伴う鼻水に関しては第1世代が用いられることがあります。