テノゼット(テノホビル)の効果と副作用【B型肝炎治療薬】

テノゼット錠(一般名:テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩)は2014年から発売されているお薬です。B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖を抑える事で、慢性B型肝炎を改善させる作用を持ちます。

B型肝炎ウイルスに感染しても、私たちの身体は自力でウイルスをやっつけてしまう事もあります。一方で、ウイルスをやっつける力が弱い状態で感染してしまうと、B型肝炎ウイルスをやっつけきれずに体内にウイルスが残存してしまう事もあり、これは慢性化と呼ばれます。

慢性化を放置しておくと、肝臓は徐々に痛めつけられていき、肝硬変や肝細胞癌といった命に関わるような疾患が引き起こされるリスクがあります。

テノゼットは、このような慢性B型肝炎の方の体内に存在するHBVの増殖を抑える事で、なるべく肝臓が痛まないようにし、肝硬変や肝細胞癌が発症するのを抑える作用があります。

とても頼りになるお薬ですが、使用に当たっては注意点も多く、必ずB型肝炎治療に熟知している医師の元で使用する必要があります。

テノゼットはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここではテノゼットの特徴や効果・副作用についてお話させて頂きます。

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1.テノゼットの特徴

まずはテノゼットの特徴を紹介します。

テノゼットはB型肝炎ウイルスの増殖を抑えるお薬になります。

同種のお薬の中でも効果は強く、耐性化が非常に少ないという特徴があります。

テノゼットの主成分である「テノホビル」は元々はHIV(ヒト免疫不全ウイルス、いわゆるエイズ)感染の治療薬として開発されました。

HIVは増殖する時に、「逆転写酵素(DNAポリメラーゼ)」という酵素を使って自分の遺伝子を複製します。テノゼットはHIVの逆転写酵素のはたらきをブロックする作用があり、これによりHIVを増殖できなくします。

実際、HIV治療薬としてのテノホビルは「ビリアード」という製品名で2004年から発売されています。

その後、テノホビルはB型肝炎ウイルスに対する増殖抑制効果も確認され、「テノゼット」の名称で2014年に発売されました。

テノゼットはHIVと同様、B型肝炎ウイルスにおいても逆転写酵素のはたらきをブロックし、B型肝炎ウイルスが増殖にできないようにするはたらきがあります。

このようにHBVの遺伝子(DNA)に作用する事でウイルスの増殖を抑えるお薬を「核酸アナログ製剤」と呼びます。テノゼットは4番目に発売された核酸アナログ製剤です。

一番目の核酸アナログ製剤である「ゼフィックス(一般名:ラミブジン)」は副作用は少ないのですが、効果も中等度で、更に耐性化が多いという特徴がありました。

耐性化というのはお薬を使っているうちに、そのお薬が効かないウイルスが生まれてきてしまう現象です。耐性化が生じるとそのお薬は効かなくなるため、別のお薬に変更あるいは別の核酸アナログ薬を追加をする必要があります。

二番目に発売された核酸アナログ製剤の「ヘプセラ(一般名:アデホビル ピボキシル)」は効果はゼフィックスと同じくらいで、耐性化が少ないという利点がありました。ただし腎臓に負担をかけやすいというデメリットもありました。

ゼフィックスもテノゼットも優秀な核酸アナログ製剤ですが、いずれも効果がもう一歩というところがありました。

テノゼットは、前者2つの核酸アナログ製剤と比べると、効果が強めであり、かつ耐性化も非常に少ないお薬になります。そのため現在もっとも用いられている核酸アナログ製剤の1つになります。

テノゼットのメリットとしては、前述のように効果が強い割に耐性化が非常に少ないという事です。もちろんテノゼットで耐性化が生じる事もあるのですが、その頻度はゼフィックスと比べるとかなり少なくなっています。

デメリットとしては、他の核酸アナログ製剤と比べて錠剤がとても大きく、飲みにくい事が挙げられます。長径が17mmほどあり、一般的なお薬と比較してもかなり大きいお薬です。

またテノゼットは中止すると、中止後にウイルスが再増殖してしまい、肝機能悪化や肝炎を引き起こす事があります。これはテノゼットに限らず、核酸アナログ製剤に共通する特徴なのですが、テノゼットをはじめとした核酸アナログ製剤の中止の判断は医師が慎重に行い、勝手にやめる事をしてはいけません。

以上からテノゼットの特徴として次のような点が挙げられます。

【テノゼットの特徴】

・B型肝炎ウイルスの増殖を抑える作用がある
・効果の強さは核酸アナログ製剤の中でも強い
・耐性化がほとんど生じない
・錠剤がとても大きい
・中止した際に肝機能悪化や肝炎が生じるリスクがある

2.テノゼットはどのような疾患に用いるのか

テノゼットはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるB型肝炎ウイルスの増殖抑制

とても難しく書かれていますね。

これを読んだだけでは、「B型肝炎に使うお薬っぽい」という事は何となく分かりますが、具体的にどのような方が適応になるのかイメージが沸きにくいと思います。

テノゼットはB型肝炎ウイルスに感染しているだけで投与されるお薬ではありません。

適応となるのは、

  • B型肝炎ウイルス量が多い状態であり(B型肝炎ウイルスの増殖を伴い)、
  • B型肝炎を発症していて(肝機能の異常が確認された)、
  • 慢性化している(B型慢性肝炎)

時に使用できるお薬になります。

具体的にこれに該当する状態がどのような状態なのかを考えるために、まず私たちはどのようにB型肝炎ウイルス(HBV)に感染するのかを見てみましょう。

HBVは、何らかの原因によって私たちの血液中に侵入する事で感染します。感染する経路としては主に、

  • 垂直感染(産道感染)
  • 水平感染(性行為など)

があります。

垂直感染(産道感染)とは、母親から子供に感染してしまう経路になります。これはHBVに感染している母親が出産する際、子供が産道を通る時に母親の血液が子供の体内に入ってしまう事で感染します。

水平感染は主に性行為などが原因になります。HBVに感染している方との性行為によって、血液がHBVに感染していない方の体内に入ってしまうと感染します。

しかしHBVに感染してもすべての人が肝炎になるわけではありません。身体の中にHBVはいるものの、肝炎が生じてない方もいらっしゃいます。

この状態(HBVに感染しているけど、肝炎を起こしてない状態)は、「無症候性キャリア」と呼ばれます。

HBVは肝臓に住み着いてしまうウイルスですが、HBV自体は肝臓を攻撃する事はほとんどありません。ではなぜ肝炎が起こるのかというと、HBVが体内に侵入してくると、私たちの身体の免疫システム(ばい菌などの異物を排除するシステム)がそれを感知しHBVを攻撃するからです。

この免疫システムがHBVを攻撃すると、HBVが住み着いている肝臓も一緒にダメージを受けてしまうため、肝炎が発症してしまうのです。これが「B型肝炎」と呼ばれる状態です。

免疫系の攻撃によってHBVをやっつける事が出来れば、一時的に肝炎が生じてもその後は「治癒(HBVが体内から排除された状態)」となりますが、中には免疫系が十分にHBVを排除できなかったり、免疫系が十分に機能せずにHBVを発見できない場合もあり、この場合は感染が慢性化してしまう事になります(慢性B型肝炎)。

慢性化してしまうと、何年・何十年と長期間に渡ってHBVが住み着いている肝臓を免疫システムが攻撃し続けるため、肝臓が痛みやすく、肝硬変や肝細胞癌を発症しやすくなってしまいます。

このような状態に対してテノゼットは投与する事が出来ます。

テノゼットは投与する事により、HBVの増殖が抑える事が出来ます。すると、免疫システムが肝臓を攻撃しにくくなるため、肝臓が痛みにくくなるのです。その結果、肝硬変や肝細胞癌を発症させにくくする事が出来ます。

では、テノゼットを投与できる3つの条件、

  • B型肝炎ウイルス量が多い状態であり、
  • B型肝炎を発症していて、
  • 慢性化している

はどのように判定すればよいのでしょうか。

現在B型肝炎ウイルスに感染しているのかどうかは、血液検査で判定する事が出来ます。

検査項目としては「HBs抗原」が現在のHBV感染の有無を調べる項目となり、これが陽性であれば、現在体内にHBVが存在すると考えられます。

また現在B型肝炎ウイルスが多い状態なのかどうかを判断するには、「HBV-DNA」「HBe抗原」を血液検査で確認する事で推定できます。

血液検査でHBV-DNAが高値であったり、HBe抗原が陽性だと、ウイルス量が多く活発に活動している状態であると考える事が出来ます。

次に肝炎を発症しているかどうかはどのように判断すればいいでしょうか。

HBVに感染していても必ず肝炎を起こしているわけではないため、B型肝炎を起こしているのかどうかは、血液検査の肝機能の項目を調べたり、超音波検査で肝臓を調べたり、あるいは生検(針を刺して肝細胞を採取する)などの方法があります。

血液検査の場合「ALT」という項目が1つの指標になり、B型肝炎ウイルスの存在が確認された上でこれが増加している場合(ALT>30)、肝炎を発症している可能性が高くなります。

このようなケースに対してテノゼットは投与されます。

では、テノゼットは慢性B型肝炎に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

ざっくりとした印象では、テノゼットは同種のB型肝炎治療薬(核酸アナログ製剤)の中でもしっかりとした効果があります。

現在、核酸アナログ製剤は古い順に、

  • ゼフィックス(一般名:ラミブジン)
  • ヘプセラ(一般名:アデホビル ピボキシル)
  • バラクルード(一般名:エンテカビル)
  • テノゼット(一般名:テノホビル)

がありますが、前者2つの効果は中等度、後者2つの効果は強力、というイメージです。

B型慢性肝炎にテノゼットを96週間投与した海外臨床試験では、

  • HBV-DNAが陰性化した率は85.8%
  • ALT(肝酵素)が正常化した率は62.0%
  • セロコンバージョン率は10.8%

と報告されており、しっかりとした効果が確認されています。

セロコンバージョンというのは、検査でHBe抗原という検査値が陰性になり、代わりにHBe抗体が陽性になる現象です。これはHBVの活動性が落ち着いた事を示してます。

HBe抗原というのは、HBVの内部に存在する抗原です。この抗原が多く認められる(陽性)という事は、HBVが活発に増殖しているという事が出来ます。そのため、HBe抗原はウイルス量の多さを示す1つの指標となります。

HBe抗体とは、HBe抗原に対する抗体です。この抗体が出てくると、HBVの増殖が弱まっているという事が出来ます。

そして、HBe抗原陽性の状態からHBe抗体陽性の状態に切り替わる事を「セロコンバージョン」と言い、これはHBVの活動性が弱まっている事を表す指標になります。

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3.テノゼットにはどのような作用があるのか

テノゼットはB型肝炎ウイルスの増殖を抑える作用を持ちますが、どのような作用機序を持っているのでしょうか。

テノゼットの作用機序を理解するためには、そもそもB型肝炎ウイルスがどのように増殖するのかを理解する必要があります。

B型肝炎ウイルスは私たちの血液中への侵入に成功すると、血液に乗って肝臓に到達し、肝細胞の中に入り込みます。

肝細胞の中でB型肝炎ウイルスは、肝細胞のRNAポリメラーゼという酵素を利用して、自分のDNA情報を複写し、また自分が持っているDNAポリメラーゼという酵素によって複写したDNA情報から新しいDNAを合成します。

そして新しいDNAから新しいB型肝炎ウイルスが作られます。

このような機序でB型肝炎ウイルスはどんどん増殖していき、増殖したB型肝炎ウイルスは次々と肝細胞に感染していくのです。

ではテノゼットはどのようにしてこの増殖を抑えているのでしょうか。

テノゼットはB型肝炎ウイルスがDNAポリメラーゼを使ってDNAを複製する際に必要なdATP(デオキシアデノシン5’-三リン酸)という物質と似た構造を持っています。

いわばdATPのニセモノというわけです。

DNAポリメラーゼはテノゼットをdATPだと思って取り込み、DNAを複製しようとしますが、テノゼットはdATPと異なって、DNAを複製するために機能してくれません。

そのためテノゼットを取り込んでしまったDNAポリメラーゼは、B型肝炎ウイルスのDNAを複製できなくなってしまいます。

その結果、B型肝炎ウイルスの増殖が抑えられるというわけです。

4.テノゼットの副作用

テノゼットにはどのような副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。

テノゼットの副作用発生率は23.1%と報告されています。同種の核酸アナログ製剤の中では副作用発生率は多めの報告となっていますが、臨床的な印象としては他の核酸アナログ製剤と比べて特段に副作用が多いお薬ではありません。

生じうる副作用としては、

  • 肝機能検査値異常(AST、ALT及びγ-GTP増加など)
  • クレアチニン増加
  • アミラーゼ増加
  • リパーゼ増加
  • 悪心
  • 腹痛

などが報告されています。

肝機能障害は、お薬の副作用の可能性もありますが、B型肝炎による症状の可能性もあります。

またテノゼットは腎臓に負担をかけるため、腎機能の指標であるクレアチニン(Cr)が上昇する事があります。

膵臓に負担をかける可能性もあり、これによりアミラーゼやリパーゼといった酵素が上昇したり腹痛が生じる事があります。

また、稀ではありますが重篤な副作用として、

  • 腎不全等の重度の腎機能障害
  • 乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)
  • 膵炎

が報告されています。

乳酸アシドーシスになるのは、テノゼットがDNAポリメラーゼのはたらきをブロックしてしまうためです。B型肝炎ウイルスのDNAポリメラーゼだけをブロックするのではなく、ミトコンドリアに存在するDNAポリメラーゼγという酵素のはたらきもブロックしてしまい、これにより乳酸アシドーシスが生じます。

乳酸アシドーシスの症状としては、全身倦怠、食欲不振、急な体重減少、胃腸障害、呼吸困難、頻呼吸、アミノトランスフェラーゼの急激な上昇などがあります。

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5.テノゼットの用法・用量と剤形

テノゼットは次の剤型が発売されています。

テノゼット錠 300mg

テノゼットの使い方は、

通常、成人には1回300mgを1日1回経口投与する。

と書かれています。

腎機能が悪い方は、必要に応じてテノゼットの量を調整する必要があります。詳しくは主治医の指示に従うようにしてください。

6.テノゼットはいつまで続けるのか?

テノゼットはいつまで服用を続ける必要があるのでしょうか。

テノゼットの服用を中止検討できる基準として、

(1)核酸アナログ薬投与開始後2年以上経過

(2)中止時、血中HBV-DNAが検出感度以下

(3)中止時、血中HBe抗原が陰性

が挙げられています(B型肝炎治療ガイドラインより)。

この基準について詳しく説明します。

そもそも、中止する一番理想的な状況というのは、「体内からHBVがいなくなった時」です。これはHBs抗原の陰性化で確認できますが、テノゼットはHBVをやっつけるお薬ではなく、あくまでも増殖を抑えるだけのお薬ですので、これは容易ではありません。

そのため、完全にHBVが体内から排除されなくても、肝臓がダメージを受けるリスクが低いと判断されれば、テノゼットの中止が検討される事があります。

HBe抗原というのは、HBVの内部に存在する抗原です。この抗原が多く認められる(陽性)という事は、HBVが活発に増殖しているという事が出来ます。そのため、HBe抗原はウイルス量の多さを示す1つの指標となります。

反対にHBe抗原が陰性だという事は、HBVは完全に排除されているかは分かりませんが、少なくともHBVの増殖が弱まっているという事が出来ます。

またHBV-DNA(HBVのDNA)が高値であれば、HBVがたくさん体内にいる事が推測されるため、テノゼットを使用した方が良く、反対にHBV-DNAが極めて少なければ、HBVの量が少なくなっていると考えられるため、テノゼットの中止が検討できます。

ただしいずれにせよ、急にテノゼットを中止するとHBVが再度増殖してしまい、肝機能が悪化したり肝炎を引き起こしたりする可能性があるため、中止後も定期的に血液検査などで肝機能評価を行う必要があります。

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