ヘモクロンカプセル(トリベノシド)の効果と副作用【痔疾患治療薬】

ヘモクロンカプセル(一般名:トリベノシド)は「痔疾患治療薬」という種類のお薬で、1978年から発売されています。主に痔の諸症状の改善に用いられます。

痔の治療薬には「飲み薬」と、患部にのみ使う「軟膏」「坐薬」に分けられますが、ヘモクロンは飲み薬になり、服薬することで痔を改善させるような効果を発揮します。

ヘモクロンカプセルはどんな特徴を持っていて、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

ヘモクロンカプセルの効果・効能や特徴、副作用についてみてみましょう。

 

1.ヘモクロンカプセルの特徴

まずはヘモクロンカプセルの特徴をざっくりと紹介します。

ヘモクロンカプセルの主成分であるトリベノシドにはいくつかの作用があり、それが痔の改善に役立ちます。

具体的には、

  • 循環改善作用(血液の流れを良くする)
  • 抗浮腫作用(患部の腫れを改善する)
  • 創傷治癒促進作用(傷の治りを早める)

といった作用があることが確認されています。

ヘモクロンカプセルの効きは穏やかで強くはありませんが、これらの作用によって痔の改善を助けてくれるのです。

このような作用から海外では静脈炎などに適応を持っている国もあります。ヘモクロンの作用を考えれば、下肢の静脈炎にも効果は十分期待できます。

また飲み薬であるため、軟膏や坐薬が届かないような肛門の奥に出来ているような痔に対しても使いやすいお薬です。

痔の治療薬はステロイドを含むものも多いのですが、ヘモクロンカプセルはステロイドを含まないため、長期間使用しても比較的安全なお薬になります。

以上からヘモクロンカプセルの特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。

【ヘモクロンカプセルの特徴】
・痔を改善させる治療薬
・血流を良くする事で痔を改善させる
・腫れを抑える作用がある
・傷の治りをはやめる作用がある
・ステロイドを含まないため長期使いやすい

 

2.ヘモクロンカプセルはどのような疾患に用いるのか

ヘモクロンカプセルはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
内痔核に伴う出血・腫脹

ヘモクロンカプセルは特に血液の循環を良くして、腫れを抑える作用に優れるため、痔で出血・腫脹が強い症例に用いられるお薬になります。

痔の治療薬は軟膏・坐薬か飲み薬の2種類に分けられますが、ヘモクロンカプセルは飲み薬になります。

 

3.ヘモクロンカプセルにはどのような作用があるのか

ヘモクロンカプセルは痔を治すために使われますが、どのような作用を持っているのでしょうか。

実はヘモクロンの主成分であるトリベノシドの作用機序は十分に解明されていないところもあります。しかし次のような作用があることが確認されています。

具体的なヘモクロンカプセルの作用について紹介します。

 

Ⅰ.血流促進作用

ヘモクロンカプセルに含まれるトリベノシドは、血流を促進する作用があります。

明確な作用機序は分かっていないところもあるのですが、血液を固まりにくくしてサラサラにしたり、血液のうっ滞を防ぐような作用があることが確認されています。

 

 

Ⅱ.抗浮腫作用

ヘモクロンは腫れやむくみを取る作用があります。

これは先ほど紹介した、血流を改善していることによって生じている作用です。血流が良くなれば末梢の血液のうっ滞が軽減しますので、むくみは軽減します。

 

Ⅲ.創傷治癒促進作用

ヘモクロンは、傷の治りを早める作用があることが確認されています。

痔の治療薬にはステロイドを含むものもありますが、ステロイドは炎症は抑えてくれますが、傷の治り自体は遅めてしまう傾向があります。

その点ヘモクロンは、炎症を抑える作用はおだやかですが(腫れを取る作用があるため、これが炎症を抑える作用にもつながります)、傷の治りを早めてくれるお薬になります。

 

4.ヘモクロンカプセルの副作用

ヘモクロンカプセルは副作用発生率自体は3%前後と報告されており、局所にしか作用しない塗り薬の痔治療薬と比べると副作用の率はやや多めのお薬になります。しかしヘモクロンの作用は穏やかであり、危険なお薬だというわけではありません。。

ヘモクロンカプセルの副作用は、

  • 皮膚症状(発疹、かゆみなど)
  • 消化器症状(腹痛、悪心、下痢など)
  • 頭痛

などが報告されています。

稀ですが注意すべき副作用として

  • 多形滲出性紅斑

があります。多形滲出性紅斑は全身に隆起性の紅斑が生じる疾患であり、しばしばお薬が原因で生じることがあります。

軽症例であれば、抗アレルギー薬を服薬したりステロイドを塗ったりすれば治ることもありますが、重症例の場合はステロイドの内服や入院・点滴加療が必要になることもあります。

多型浸出性紅斑を疑うような症状が出たら、すぐに使用を中止し主治医に相談して下さい。

 

5.ヘモクロンの用量・用法と剤型

ヘモクロンは、

ヘモクロンカプセル 200mg

の1剤型のみがあります。

ヘモクロンカプセルの使い方は、

通常成人には1回1カプセル(200mg)を1日3回、食後に経口投与する。

と書かれています。

ヘモクロンは1日600mgを用います。

研究において、より高用量(1200mg/日や2400mg/日)で用いた方が効果は高くなることが分かっていますが、高用量だと皮膚症状や胃腸障害の副作用も増えることが確認されているため、効果と安全性のバランスが取れている600mg/日の服薬が指示されています。

 

6.ヘモクロンカプセルが向いている人は?

以上から考えて、ヘモクロンカプセルが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ヘモクロンカプセルの特徴をおさらいすると、

・痔を改善させる治療薬
・血流を良くする事で痔を改善させる
・腫れを抑える作用がある
・傷の治りをはやめる作用がある
・ステロイドを含まないため長期使いやすい

というものでした。

ヘモクロンカプセルをはじめとした痔に対するお薬は主に軽症例に対して用いられます。軽度のものであればお薬だけでも改善しますが、ある程度進行しているものだと手術などを検討する必要もあります。

ヘモクロンカプセルは穏やかに効き、血流を良くして腫れを取り、傷の治りも早めてくれます。ステロイドを含まないため長期間でも使いやすいのですが、炎症を抑えたり痛みを取ったりといったはっきりした効果には乏しいお薬です。

そのため、激しい痛みや炎症がないような症例において向いているお薬でしょう。また飲み薬ですので、肛門に坐薬や塗り薬を入れることに抵抗がある方にも良いかもしれません。

ちなみに痔の治療薬に「ボラザG」という軟膏・坐剤がありますが、これはヘモクロンと同じトリベノシドを含んでいます。ボラザGはトリベノシドに加えてリドカインという局所麻酔薬を含んでいるため、痛みが強い症例に向いています。

ヘモクロンを使ったけど、痛みがひどくてつらいという方には痛み止めが追加されているボラザGに変えてみるのも良いかもしれません。ただしヘモクロンは飲み薬ですが、ボラザGは軟膏・坐剤になります。

また痔の治療はお薬だけでなく生活習慣の改善が一番大切です。

  • 座る時間を減らす
  • 食事を規則正しく、バランス良く
  • 飲酒やタバコを控える
  • しっかりと睡眠を取る
  • 刺激物(からいものなど)の摂取を控える

など、生活習慣の改善も忘れないようにしましょう。