ウレパール(一般名:尿素)は、1978年から発売されている角化症・乾燥性皮膚疾患治療薬です。
「角化症・乾燥性皮膚疾患治療薬」と難しい名称に分類されていますが、皮膚が硬くなったり乾燥している疾患に対して効果を認める外用剤だいう事です。
ウレパールの主成分は「尿素」と呼ばれる物質で、その基本的な作用は保湿作用と化学的ピーリング作用になります。その強さは穏やかであり、強力な作用は期待できませんが、その分安全性に治療をしていく事が出来ます。
このウレパールですが、ピーリング作用もある事から「顔に使っても大丈夫か」「顔に用いる際はどのような事に気を付ければいいのか」という疑問を持っている方もいらっしゃいます。
ここではウレパールを顔に塗っても大丈夫かという事をウレパールの作用機序から見ていき、また顔にウレパールを用いる際の注意点なども紹介させていただきます。
1.ウレパールを顔に塗っても大丈夫なのか
ウレパールは顔に塗っても大丈夫なのでしょうか。
結論から言うと、ウレパールを顔に塗って全く問題ありません。
ウレパールの主成分は「尿素」であり、これは市販の外用剤や美容液にも保湿剤としてよく配合されている成分です。
実はウレパールと同じ成分である「尿素」を美容液などで、毎日顔に塗っている方も多いのです。市販の美容液としても顔に使う事に認可されているものですから、当然安全性も高い事が確認されており、顔に塗る事に問題はありません。
では次の項からウレパールを顔に塗っても大丈夫である根拠と、顔に塗る際に注意すべき事を紹介していきます。
2.ウレパールはどのようなお薬なのか
ウレパールを顔に塗っても大丈夫だという理由を理解するために、まずはウレパールがどのようなお薬なのかを理解してみましょう。
ウレパール(尿素)は、
- 保湿作用
- 化学的ピーリング作用
の2つの作用を持つお薬です。
保湿作用とは、その名の通り皮膚を潤わせる作用です。私たちの細胞は適度に潤っている状態(水分がある状態)でもっとも能力を発揮できます。水分が少なかったり(乾燥状態)、多すぎたり(浮腫状態)すると正常なはたらきができなくなってしまうのです。
皮膚細胞もそれは同じで、適度に潤っている状態の方が皮膚のバリア機能が高まり、また老化なども進行しにくくなるのです。
尿素は水分を保持する作用を持つため、皮膚に塗ると、角質層で水分を保持してくれます。ちなみに「角質層」というのは皮膚の一番上の層であり、外界と接している部分です。皮膚の一番表面の部分を潤してくれるため、皮膚乾燥が原因で生じている様々な皮膚トラブルに用いることが出来ます。
また軽い角質溶解作用(皮膚の古い角質を溶かす作用)があり、この作用により古い角質が剥がれて皮膚がスベスベになります。このようなお薬によって皮膚の表面を削るような方法を「化学的ピーリング」と呼びます。
この2つの作用によってウレパールは皮膚細胞の状態を正常化してくれるのです。
3.ウレパールを顔に塗る際に気を付ける事
ウレパールは基本的には顔に塗って全く問題のないものです。
しかしいくつかの注意点を知っていると、より安全にウレパールを顔に用いる事が出来るようになります。
最後にウレパールを顔に塗る際に気を付ける事を紹介します。
Ⅰ.傷があるところには塗らない
ウレパールには化学的ピーリング作用があります。
これは皮膚の表面にある古い角質を溶かす作用の事です。基本的にこの作用は古い角質をそぎ落とす事で新しい角質の新生を促進し、皮膚を若々しく保ってくれますから、皮膚にとっても良い作用になります。
しかし傷がある部位に塗ってしまうと話は違ってきます。
傷がある部位というのは角質が欠損してしまっている事が多く、そのような部位にウレパールを塗ってしまうと、表面に露出している細胞を溶かしてしまう可能性があります。
これによって傷の治りを遅らせてしまったり、刺激感や痛みが生じてしまう事もあります。
実際、ウレパールの添付文書には次のような記載があります。
【重要な基本的注意とその理由及び処置方法】
潰瘍、びらん、傷面への直接塗擦を避けること。【慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)】
炎症、亀裂を伴う症例(一過性の刺激症状を生じることがある)
皮膚に傷がある部位にウレパールを塗る事は、添付文書上も推奨されていないのです。
顔の皮膚に傷がある場合は、その傷を治すようなお薬を使用してからウレパールを使う方が良いでしょう。
Ⅱ.刺激性はクリームの方が低い
ウレパールには、
- ウレパールクリーム
- ウレパールローション
という2つの剤型があります。
どちらも尿素を同じ濃度配合しているのですが、基剤(尿素を溶かしている成分)が異なります。
クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。ローションと比べると油を含むためややべたつきがありますが、その分保湿力に優れます。皮膚への浸透力はローションよりも低いのですが、その分刺激性も低くなっています。
ローションは水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、油を含まないため保湿力はクリームよりも劣ります。皮膚への浸透力は強いのですが、その分刺激性も高くなります。
どちらも一長一短あり症状に応じて使い分けるものですが、保湿をメインとするのであれはクリームの方が優れます。
また顔は身体の中でもとりわけ皮膚が薄い部位です。そのため浸透力が強いローションが必要となる事はほとんどありません。むしろローションは刺激性が強いため、顔においては皮膚トラブルの原因となってしまうリスクもあります。
皮膚の薄い顔に用いる際は、一般的にクリームの方が適しているでしょう。
Ⅲ.使用期限に注意
ウレパールのような外用剤は、長期保管していたものたまたま見つけて「まだ使えるかな」と使ってしまう事があります。
しかしウレパールはお薬であり、お薬には適正な使用期限があります。数年前に処方されたお薬だと使用期限が切れているものもあります。そのようなものを使ってしまうと成分が変性しており、それによってかえって皮膚トラブルを引き起こしてしまう事もあります。
ではウレパールの使用期限はどのくらいなのでしょうか。
これは保存状態によっても異なってきますので一概に答えることはできませんが、製薬会社による記載では室温保存にて「3年」が期限とされています。ウレパールの安定性を見た試験では、室温保存にて36か月間保存しても、使用に問題のないレベルを保てていたと報告されています。
なおウレパールは基本的には室温で保存するものですので、この状態で保存していたのであれば「3年」は持つと考えてよいでしょう。しかし、そうではない場所(極端に暑い場所・寒い場所)で保存していた場合は、3年未満でも効能が失われている可能性があります。
また上記は未開封の場合を想定されている事にも注意が必要です。開封した場合はこれより短くなります。
開封したウレパールの使用期限は明記はされていませんが、一度開けたらおおよそ1~2か月程度で使い切った方が良いでしょう。
顔は皮膚がとても薄いため、お薬の成分が変性していた場合、ダメージが生じやすくなりますのでとりわけ気を付けるようにしましょう。