ユリーフ(一般名:シロドシン)は、2009年から発売されている前立腺肥大症の治療薬です。
主に前立腺肥大症によって生じる排尿障害(尿が出にくくなる症状)を和らげるために用いられます。
ユリーフは「α遮断薬」という種類に属し、アドレナリンのはたらきをブロックする事で尿が出やすいようにしてくれます。
同種のお薬の中でも作用が強くて頼りになるお薬であるため、患者さんから「ジェネリック医薬品はないのか」と相談を受ける事もあります。
ではユリーフにはジェネリック医薬品はあるのでしょうか。
ここではユリーフのジェネリック医薬品について紹介させて頂きます。
1.ユリーフのジェネリック医薬品
ユリーフにジェネリック医薬品はあるのでしょうか。
結論から言ってしまうと2017年11月現在、ユリーフのジェネリック医薬品は発売されていません。
そのためユリーフの服用が必要な方は、先発品であるユリーフを処方してもらうしかないのです。
しかし、今度の見通しとしてはあと数年程度経てばジェネリック医薬品が発売される可能性が高いと考えられます。
2.ジェネリック医薬品が発売されるまで
現時点ではユリーフのジェネリック医薬品は発売されていないという事をお話しました。
では、なぜ発売されていないのでしょうか。また今後ジェネリック医薬品が発売される見込みはどうでしょうか。
これを理解するためには、そもそもジェネリック医薬品ってどんなもので、どのような理由で作られるのかを知る必要がありますので、簡単にこの点について説明させて下さい。
まず、ジェネリック医薬品とはどのようなお薬の事なのでしょうか。
ジェネリック医薬品というのは、先発品(ここでいう「ユリーフ」)の特許が切れた後に、他の製薬会社から発売された、先発品と同じ主成分からなるお薬の事です。
実は新しいお薬(先発品)というのは、発売するに当たって莫大な費用がかかっています。
まず、無数の物質の中から有効成分を見つけ出すのに費用がかかります。そして「この成分は疾患の治療に使えそうだ」と有効成分に目星がついたら、今度はそれを入念に調査・研究して、どのくらいの効果があるのか、人体への安全性に問題はないのかなども厳しく調べないといけません。これにも多額な費用がかかります。
動物実験から始まり、人を対象とした臨床試験を何段階も行う事で有効性や安全性を実証し、それでやっと発売が許可されるのです。
このように、実は先発品を1剤発売するのには、莫大な手間と費用がかかっているのです。
そして、莫大な費用をかけてやっとの事で新しいお薬を発売したのに、発売した途端に他の製薬会社がそのお薬の成分を分析して、同じ有効成分からなるお薬をすぐにマネして発売してしまったら、開発した会社はたまったものではありません。
このような事がまかり通ってしまえば、「どこかが新しいお薬を開発するのを待って、すぐにそれをマネした方が儲かる」わけですから、どの製薬会社も新薬を開発しなくなってしまうでしょう。
これでは困るため、国は新薬(先発品)に関してはおおむね10年程度の特許期間を与え、その期間は新薬を開発した製薬会社以外はその有効成分からなるお薬を製造・販売してはいけないという事を定めています。
これによって新薬を開発した製薬会社は、新薬の研究・開発費を回収する事ができるのです。
しかし、これは逆に言えば特許の期間が切れれば、他の製薬会社もその有効成分から成るお薬を発売してもいいという事です。
そしてこのように他社が発見した有効成分から成るお薬をマネして発売すれば、お薬の有効成分を見つけるための費用や、有効性・安全性を調べる研究費用があまりかかりません。先発品の製薬会社がすでに莫大な費用をかけてその研究・調査を行ってくれているわけですから、同じことをする必要がないのです。そのため、その分お薬を安く発売する事が出来ます。
これがジェネリック医薬品です。
ジェネリック医薬品が発売される事は、先発品を発売している製薬会社にとっては先発品の売り上げが落ちるため、嬉しい事ではありません。しかし特許期間に利益が得られるよう国が最低限は守ってくれたため、ある程度は「仕方ない」と考える事が出来ます。
一方でジェネリック医薬品を発売する製薬会社は、研究・開発費をあまりかけずにお薬を作る事が出来るため、その分薬価を安く設定する事が出来ます。
日本の医療費は年々上昇を続け、その金額は看過できないものとなっており、国も医療費の削減に必死になっています。しかし医療費を削減する事で国民の健康が損なわれては意味がありません。そこで目を付けられているのがこのジェネリック医薬品なのです。
ジェネリック医薬品は、先発品とほぼ同等の効果が期待でき、かつ研究・開発費が少ないため、薬価を大きく下げる事が可能です。そしてこれは医療費削減に大きく貢献します。
そのため、新薬を作った製薬会社の利益を最低限守りつつ、ジェネリック医薬品も積極的に勧めているのが現在の国のスタンスです。
3.ユリーフのジェネリック医薬品は発売されるのか
ではユリーフのジェネリック医薬品は発売されるのでしょうか。
これはユリーフの特許が切れる時期になってみないと分かりませんが、臨床医の予測としては、「まず間違いなく発売されるだろう」と考えます。
その理由をお話しします。
まずジェネリック医薬品が発売されるかどうかの一番のポイントは、「そのお薬のジェネリック医薬品を発売して、収益が得られるか」です。
各製薬会社は医療への貢献のため日々お薬の研究・開発を行っていますが、そうは言っても利益が得られないと会社は存続できませんので、やはり極論を言ってしまえば「売れない(処方されない)お薬を発売する事はできない」のです。
つまり先発品にある程度の評価や人気があり、ジェネリック医薬品が出る事で医師や患者さんがそれを十分使うだろうと判断されるものはジェネリック医薬品が発売されやすく、そうでないものは発売されにくいと言えます。
ではユリーフはどうかというと、その作用の強さから特に症状が中等度~重めである前立腺肥大症の患者さんに対して多く処方されています。
前立腺は加齢とともに男性であれば誰でも肥大していくものです。また、前立腺肥大症の推定患者数も日本で400万人と報告されており、対象患者さんも少なくありません。
ユリーフと同じ前立腺肥大症治療薬のα遮断薬である、
- ハルナール(一般名:タムスロシン塩酸塩)
- フリバス(一般名:ナフトピジル)
は、ユリーフより前に発売されているお薬ですが、いずれもすでにジェネリック医薬品が発売されています。
ここからユリーフのジェネリック医薬品も、発売すればある程度の処方が見込めると十分考えられます。
「もしユリーフのジェネリック医薬品があったら使うか」という事を、医師の立場から考えてみても、あくまでも私個人の意見になりますが「使う」と思います。
であれば各製薬会社はユリーフのジェネリック医薬品を発売する可能性が高いでしょう。
4.ユリーフのジェネリック医薬品はいつ発売されるのか
ではユリーフのジェネリック医薬品はいつ頃に発売されるのでしょうか。
先発品の特許期間は一律に決まっているものではありませんが、おおむね「10年前後」になります。
ユリーフは2009年に発売されたお薬ですから、単純に考えれば2019年以降に発売されると言えます。ただ、ユリーフと同じ前立腺肥大症治療薬のα遮断薬の、先発品とジェネリックの発売年を見てみると、12~16年ほどとなっているため、もう少し後になる可能性もあるでしょう。
【先発品名(発売年)】 | 【ジェネリック名(発売年)】 |
ハルナール(1993年) | タムスロシン(2005年) |
フリバス(1999年) | ナフトピジル(2015年) |
ここから、ユリーフのジェネリック医薬品は2020年代前半に発売されるのではないかと考えられます。
またユリーフのジェネリック医薬品の商品名としては、ユリーフの一般名である「シドロシン」になると思われます。
近年はジェネリック医薬品は先発品の一般名にする事が一般的であるためです。
現時点ではユリーフのジェネリック医薬品はないため、先発品であるユリーフの服用を続けるか、どうしてもジェネリック医薬品にしたいという事であれば同じα遮断薬のジェネリック医薬品である、
- タムスロシン塩酸塩
- ナフトピジル
を試してみるのが方法になります。
ただし同種のα遮断薬の中でもユリーフは効果が強いため、上記のジェネリック医薬品に変更すると同じくらいの効果が得られない可能性もあります。変更する場合は、主治医とよく相談して判断するようにしましょう。