バルヒディオ配合錠(一般名:バルサルタン・ヒドロクロロチアジド)は2009年から発売されている「コディオ配合錠」のジェネリック医薬品になります。
降圧剤に属し、高血圧症の方に対して血圧を下げる作用を持つお薬になります。
バルヒディオは「配合錠」という名前からも分かるように、2つの成分が配合された降圧剤です。具体的にはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(AngiotensinⅡ Receptor Blocker:ARB)である「バルサルタン」とチアジド系利尿剤である「ヒドロクロロチアジド」が配合されています。
2種類の成分を1剤にまとめているためお薬の管理も楽になりますし、服薬する錠数も減らせます。高血圧の方は複数の降圧剤を飲まれている方もいらっしゃいますから、このような配合剤は服用の手間を軽減させてくれます。
近年ではこのような配合剤は多く発売されています。その中でバルヒディオはどのような特徴を持っていて、どのような患者さんに向いている降圧配合剤なのでしょうか。
ここではバルヒディオ配合錠の特徴や効果・副作用についてみていきます。
目次
1.バルヒディオ配合錠の特徴
まずは、バルヒディオ配合錠の全体的な特徴について紹介します。
バルヒディオ配合錠は、
- バルサルタン
- ヒドロクロロチアジド
といった2種類の降圧剤(血圧を下げるお薬)が含まれた合剤になります。
要するにバルヒディオを服用する事は、バルサルタンとヒドロクロロチアジドの2剤を服用しているのと同じです。なぜ合剤にしてまとめたのかと言うと、服用の手間を軽減させるためです。また薬価(お薬の値段)が安くなるというメリットもあります。
バルヒディオに含まれるバルサルタンはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)という種類の降圧剤になります。
ARBはアンジオテンシンⅡという物質のはたらきをブロックすることで、血圧を下げるお薬になります。アンジオテンシンⅡは血圧を上げる作用が強い物質なので、これをブロックすると血圧が下がるのです。
また単にARBは血圧を下げるだけでなく臓器保護作用があり、心臓や腎臓を保護してくれます。そのため、心不全や腎不全の方にも向いているお薬になります。
バルサルタンはARBの中でも強めの降圧作用を持つお薬であり、しっかりと血圧を下げてくれます。これはバルサルタンの持つ「インバーストアゴニスト作用」によるものだと考えられています(この作用については後述します)。
バルヒディオに含まれるヒドロクロロチアジドはチアジド系利尿剤という種類の降圧剤になります。「利尿剤」という名前からも分かるようにヒドロクロロチアジドは尿量を増やす事で身体の水分を減らし、血圧を下げるお薬になります。
具体的にはNa+(ナトリウムイオン)を尿中に多く排泄させる事で、身体の中のNa+量を減らし、これにより血圧を下げます。Na+が尿中に多く移動すると、浸透圧の関係で水分も尿中に移動します。これによって体内の水分量も減り、血圧が下がるのです。
ヒドロクロロチアジドは利尿剤でありながら、利尿作用(尿量を増やす作用)はそこまで強くはありません。しかし血圧を下げる作用は比較的しっかりと認められます。
またヒドロクロロチアジドには付加的な効果ではありますが、尿管結石の発症を抑える作用や骨粗しょう症を予防する作用も報告されています。
このような特徴を持つ2剤が配合されているのがバルヒディオです。
更にバルヒディオ配合錠は「コディオ配合錠」のジェネリック医薬品ですので、コディオと比べて薬価が安いというメリットもあります。
以上からバルサルタンとヒドロクロロチアジドを配合したバルヒディオには、次のような特徴が挙げられます。
【バルヒディオの特徴】
・2つの降圧剤が含まれており、血圧を下げる力がしっかりしている |
2.バルヒディオ配合錠はどのような疾患に用いるのか
バルヒディオはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
高血圧症
バルヒディオは降圧剤ですので、「高血圧症」の患者さんに用います。
注意点として、バルヒディオは2つの降圧剤が配合されているお薬ですので、治療の一番最初から使う事は出来ません。
バルヒディオを最初から投与するという事は、降圧薬を一気に2つ始めてしまうのと同じことだからです。まずは1剤から始め、それでも効果が不十分な時に初めて2剤目は検討されるべきです。
ではバルヒディオは高血圧に対してどれくらいの効果が期待できるのでしょうか。
バルヒディオはジェネリック医薬品ですので有効性に対する詳しい調査は行われていませんが、先発品の「コディオ」では行われており、その結果が参考になります。2つの降圧剤を配合しているため、一般的な降圧剤よりは降圧効果は高くなります。
軽症から中等症の本態性高血圧症患者さんに、コディオの服用を8週間続けて頂いた調査では、
- コディオMDの有効率は70.3%
- コディオEXの有効率は83.3%
と報告されています。
ここでいう「有効」とは、試験終了時に「拡張期血圧が90mmHg未満に低下した」または「ベースラインと比較して10mmHg以上低下した」のいずれかを満たした患者さんの割合になります。
また血圧降下の程度としては、
- コディオMDの投与にて収縮期血圧が17.95mmHg、拡張期血圧が13.50mmHgほど低下する
- コディオEXの投与にて収縮期血圧が21.95mmHg、拡張期血圧が13.44mmHgほど低下する
と報告されています。同じ主成分からなるバルヒディオもこれと同程度の効果があると考えられます。
ちなみにバルヒディオは服薬してからどれくらいで効果を判定すれば良いのでしょうか。
これは明確に決まっているわけではありません。通常2週間程度で効果を判定できますが、しっかりと判定するためには「約1カ月」程度は見ておく方が良いでしょう。
3.バルヒディオ配合錠にはどのような作用があるのか
バルヒディオは降圧剤であり、基本的な作用は血圧を下げる事になります。では具体的にどのような作用機序によって血圧を下げてくれるのでしょうか。またそれ以外の作用は何か持っているのでしょうか。
バルヒディオの作用機序について紹介します。
Ⅰ.アンジオテンシンⅡのブロックで血圧を下げる
バルヒディオにはバルサルタンというARBと同じ成分が含まれており、これには血圧を下げる作用があります。
ではバルサルタンはどのように血圧を下げるのでしょうか。
私たちの身体の中には、血圧を上げる仕組みがいくつかあります。その1つに「RAA系」と呼ばれる体内システムがあります(RAA系とは「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン」の略です)。
RAA系は本来、血圧が低くなりすぎてしまった時に血圧を上げるシステムです。
腎臓は血液から老廃物を取り出して尿を作る臓器ですが、ここに「傍糸球体装置」というものがあります。傍糸球体装置は腎臓に流れてくる血液が少なくなると「血液量が少なくなっている!」と感知し、「レニン」という物質を放出します。
レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠという物質に変えるはたらきがあります。
更にアンジオテンシンⅠはACEという酵素によってアンジオテンシンⅡになります(ちなみにこれをブロックするのがACE阻害薬という降圧剤です)。
アンジオテンシンⅡは副腎という臓器に作用して、アルドステロンというホルモンを分泌させます。
アルドステロンは血液中にナトリウムを増やします(詳しく言うと、尿として捨てる予定だったナトリウムを体内に再吸収します)。血液中のナトリウムが増えると血液の浸透圧が上がるため、ナトリウムにつられて水分も血液中に引き込まれていきます。これにより血液量が増えて血圧も上がるという仕組みです。
通常であればこのRAA系は、血圧が低くなった時だけ作動する仕組みです。しかし血圧が高い状態が持続している方は、このRAA系のスイッチが不良になってしまい、普段からRAA系システムが作動してしまっていることがあります。
バルサルタンをはじめとしたARBは、アンジオテンシンⅡのはたらきをブロックすることで、RAA系が作動しないようにします。すると血圧を上げる物質が少なくなるため、血圧が下がるというわけです。
更にバルサルタンは「インバートアゴニスト作用」という作用を持ち、これによって高い降圧力を持っています。
ARBにはインバースアゴニストという作用があるものがあります。ARBはアンジオテンシンⅡ受容体という部位に作用する事でアンジオテンシンⅡのはたらきをブロックしますが、実はアンジオテンシンⅡ受容体は何も結合していない状態でもある程度勝手に活性化して作用をもたらしています。
この受容体自身が持つ活性をも抑制する作用がインバースアゴニスト作用です。アンジオテンシンⅡ受容体をブロックして、アンジオテンシンⅡが結合した時の活性が生じないようにするほか、アンジオテンシンⅡ受容体自身が持っている活性をもブロックする事でより降圧力を高めてくれるのです。
Ⅱ.臓器保護作用
バルサルタンには臓器保護作用があります。
具体的には心臓・腎臓や脳に対して、これらの臓器が傷付くのを防いでくれるのです。
心臓が傷んでしまい十分に機能できなくなる状態を「心不全」と呼びます。高血圧は心不全のリスクになるため、バルサルタンの降圧作用はそれ自体が心保護作用になります。
またそれ以外にも先ほど説明したRAA系の「アンジオテンシンⅡ」は心臓の筋肉(心筋)の線維化を促進し、これも心臓の力を弱める原因となります。
バルサルタンはアンジオテンシンⅡのはたらきをブロックしてくれるため、これも心保護作用になります。
実際、バルサルタンのようなARBは心不全に対しての第一選択薬となっています。
また腎臓に対しても同様です。
腎臓が傷んでしまい、十分に機能できなくなる状態は「腎不全」と呼ばれ、これも高血圧が発症リスクになるため、バルサルタンの降圧作用はそれ自体が腎保護作用になります。
アンジオテンシンは腎臓の線維化も促進し、これも腎不全の原因になるのですが、バルサルタンは同様の機序で腎臓の線維化を抑え、腎保護作用を発揮します。
Ⅲ.尿中にナトリウムを排泄する事で血圧を下げる
バルヒディオに含まれるヒドロクロロチアジドは、尿の量を増やす作用があり、これも血圧を下げる作用となります。
簡単に言えば尿量が増えれば身体の水分の量が減るため、血液の量も減り、血圧が下がるという事です。
ヒドロクロロチアジドの作用機序を更に深く理解するためには、尿がどのように作られるのかを知らなければいけません。
尿は腎臓で作られます。腎臓に流れてきた血液は糸球体という部位でろ過され、尿細管に移されます。このように尿細管に移された尿の元は、「原尿」と呼ばれます。
糸球体は、血液をざっくりとろ過するだけです。そのため原尿には、身体にとって必要な物質がまだたくさん含まれています。
原尿をそのまま尿として排泄してしまうと、本来身体に必要な物質がたくさん失われてしまいます。そのため、尿細管には原尿から必要な物質を再吸収する仕組みがあります。
つまり糸球体でざっくりとろ過されて原尿が作られ、原尿から必要な物質が体内に戻されて最終的に尿が出来上がるわけです。
原尿から必要な物質が再吸収されて最終的に作られた尿は、腎臓から尿管を通り膀胱に達し、そこで一定時間溜められます。膀胱に尿がある程度溜まって膀胱が拡張してくると、その刺激によって尿意をもよおし、排尿が生じます。
これが尿が作られる主な機序になります。
そしてヒドロクロロチアジドは、原尿から必要な物質を「再吸収」する仕組みの1つをブロックする作用を持ちます。
尿細管は糸球体に近い方から「近位尿細管」「ヘンレのループ」「遠位尿細管」「集合管」に分けられています。
このうち「遠位尿細管」には「Na+・Cl–共輸送担体」と呼ばれる仕組みがあります。これは、原尿に含まれるNa+(ナトリウムイオン)とCl-(クロールイオン)を体内に戻す(再吸収する)代わりに、K+(カリウムイオン)を血液から原尿に移動させる仕組みです。
Na+・Cl–共輸送担体によって血液中のNa+、Cl-が増え、K+が減ります。反対に原尿中のNa+、Cl-は減り、K+が増えます。
ちなみにNa+は一緒に水分も引っ張る性質があります。Na+が増えると、血液の浸透圧が上がるため、水を引っ張るのです。難しい説明はここでは省略しますが、体内では水はNa+と一緒に動く傾向があると覚えてください。
ヒドロクロロチアジドはNa+・Cl–共輸送担体のはたらきをブロックします。するとNa+とCl-を再吸収できなくなるため、Na+とCl-はそのまま尿として排泄されやすくなります。
という事はNa+と一緒に動く水分も、そのまま尿として排泄されやすくなるという事です。すると体内のNa+量、水分量が少なくなるため、血圧が下がるというわけです。
これがヒドロクロロチアジドをはじめとしたチアジド系の基本的な作用機序になります。
Ⅳ.炭酸脱水素酵素の働きをブロックする事で血圧を下げる
バルヒディオに含まれるヒドロクロロチアジドは、尿細管のうち近位尿細管細胞に存在する「炭酸脱水素酵素」という酵素のはたらきをブロックする作用もあります。
炭酸脱水素酵素は、炭酸(H2CO3) を分解する酵素で、H2CO3⇒H++HCO3-と、炭酸をH+(水素イオン)とHCO3-(重炭酸イオン)に分解します。
炭酸脱水素酵素によって生成されたH+は、近位尿細管に存在するNa+・H+交換系という仕組みによって原尿中に排泄され、代わりにNa+(ナトリウムイオン)を原尿から体内に再吸収します。
炭酸脱水素酵素のはたらきをブロックすると、H+が生成できなくなるため、Na+・H+交換系がはたらきにくく、原尿からNa+を再吸収できなくなります。
すると体内のNa+量が少なくなるため、これも血圧が下げる方向にはたらいてくれるのです。
Ⅴ.血管平滑筋を緩める事で血圧を下げる
バルヒディオに含まれるヒドロクロロチアジドの主な作用は前述の通りNa+の再吸収を抑える事です。これにより体内のNa+量(及び水分量)が減り、血圧が下がります。
しかしこのような作用は、確かに短期的には血圧を下げるものの、長期的に見ると身体が順応してしまう事でそこまで血圧を下げる効果は得られない事が確認されています。
ではヒドロクロロチアジドの長期的な降圧作用はどのようにして得られるのでしょうか。
ヒドロクロロチアジドの長期的な降圧機序は明確には解明されていませんが、恐らく体内のNa+濃度を減少させる事により、副次的に細胞内 Ca2+(カルシウムイオン)濃度を低下させるためではないかと考えられています。
血管の周りは「平滑筋」という筋肉で覆われています。平滑筋が収縮すると血管が締め付けられるため血圧が上がり、平滑筋が弛緩すると血管が広がるため血圧は下がります。
この平滑筋の収縮は、平滑筋細胞内に Ca2+が流入する事が刺激になって生じます。
という事はヒドロクロロチアジドによってCa2+濃度が減少すれば、平滑筋が収縮しにくくなるため、血圧は上がりにくくなるはずです。
これがヒドロクロロチアジドの長期的な降圧作用の機序だと考えられています。
Ⅵ.尿路結石の再発防止・骨粗しょう症の予防
バルヒディオに含まれるヒドロクロロチアジドの副次的な作用として、「尿路結石の予防作用」「骨粗しょう症の予防作用」があります。
これらの作用は強くはなく、おまけ程度の強さではありますが、尿路結石や骨粗しょう症を併発している方にとっては有難い作用です。
尿管結石はその名の通り、尿管に石が出来てしまい、それが尿管を詰まらせる事で腰背部の激痛が生じる疾患です。
尿管結石は、尿酸やリン酸、カルシウムなど、様々な成分が原因で生じますが、このうちカルシウム結石は尿中のカルシウムイオンの濃度が高いほど生じやすくなります。
Ca2+の尿中の排泄を低下させるヒドロクロロチアジドは、カルシウム結石が尿中で生成されるのを防止する作用があるのです。
また骨粗しょう症は骨がもろくなってしまう疾患です。骨の構成成分の1つにカルシウムがありますので、Ca2+の尿中の排泄を低下させるヒドロクロロチアジドは体内のCa2+の量を増やし、骨がもろくなりにくくする作用が期待できます。
4.バルヒディオ配合錠の副作用
バルヒディオの副作用はどのようなものがあるのでしょうか。またバルヒディオは安全はお薬なのでしょうか、それとも副作用が多いお薬なのでしょうか。
バルヒディオはジェネリック医薬品ですので副作用発生率に関する詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「コディオ」では行われており、副作用発生率は43.9%と報告されています。
同じ主成分からなるバルヒディオも同程度の副作用発生率があると考えられ、この数値は低くはありません。臨床的な印象としては重篤な副作用は多くはないものの、血液検査上の異常はしばしば認められるため、一定の注意は必要になります。
生じうる副作用としては、
- めまい
- 頭痛
- 低血圧
- 高尿酸血症
- 蛋白尿
- 肝機能異常
- CK(CPK)増加
などがあります。
バルヒディオを長期間副作用されている方は定期的に血液検査などで検査異常が出現していないかをチェックしておくことが望ましいでしょう。
また、稀ですが重篤な副作用として
- アナフィラキシー、血管浮腫
- 肝炎
- 腎不全
- 高カリウム血症
- 低ナトリウム血症
- ショック・失神・意識消失
- 無顆粒球症・白血球減少・血小板減少、再生不良性貧血・溶血性貧血
- 壊死性血管炎
- 中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑
- 天疱瘡、類天疱瘡
- 間質性肺炎、肺水腫
- 全身性エリテマトーデスの悪化
- 低血糖
- 横紋筋融解症
- 急性近視、閉塞隅角緑内障
などが報告されています。
また、バルヒディオは
- バルヒディオの成分に対し過敏症の既往歴のある方
- チアジド系薬剤又はその類似化合物に対する過敏症の既往歴のある方
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
- 無尿の方または透析中の方
- 急性腎不全の方
- 体液中のナトリウム・カリウムが明らかに減少している方
- ラジレスを投与中の糖尿病の方
は原則服薬することが出来ません。
バルヒディオに含まれるバルサルタンは、妊婦さんに投与する事で児の奇形の発生率が高まるという報告があり、このような理由から妊婦さんへの投与は禁忌となっています。
またバルヒディオに含まれるヒドロクロロチアジドは尿の排泄を増やす事で血圧を下げるお薬ですので、尿が出ない状態の方には使用しても意味はありません。
また腎臓に作用するお薬であるため、急性腎不全の方に使用すると腎機能を更に悪化させる危険があります。
ヒドロクロロチアジドはナトリウム、カリウムといった電解質の排泄をお薬によってコントロールするお薬ですので、低ナトリウム血症、低カリウム血症など、元々電解質に異常がある方が服用すると更に電解質の異常を悪化させてしまう危険があります。
最後の項目に関しては、どうしても他の降圧剤で治療できない高血圧症の方に限り、慎重に用いることは認められていますが、両者の併用が禁忌となっているのはラジレスとディオバン(ARB)の併用で非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加が報告されているためです。
5.バルヒディオの用法・用量と剤形
バルヒディオには、
バルヒディオ配合錠MD (バルサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド6.25mg)
バルヒディオ配合錠EX (バルサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg)
の2剤形があります。
ちなみにMDは「moderate(適度)」の略で、適度な降圧効果が期待できるという意味です。一方でEXは「extra(特上)」の略で、より強い降圧効果が期待できるという意味になります。
バルヒディオの使い方は、
成人には1日1回1錠を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。
となっています。
2つの成分を含むバルヒディオは高血圧治療を行う時に最初に用いてはいけません。まずはバルサルタンやヒドロクロロチアジドといった単剤で治療をはじめ、それでも効果不十分な時にのみ、バルヒディオのような合剤が検討されます。
またバルヒディオは午前中に服用する事が推奨されています。これは夕方や寝る前に服用してしまうと利尿作用によって夜中にトイレに行きたくなり、眠りが妨げられる可能性があるためです。
6.バルヒディオ配合錠が向いている人は
以上から考えて、バルヒディオが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
バルヒディオの特徴をおさらいすると、
【バルヒディオの特徴】
・2つの降圧剤が含まれており、血圧を下げる力がしっかりしている |
というものがありました。
バルヒディオは、ARBである「バルサルタン」とチアジド系利尿剤である「ヒドロクロロチアジド」を合体させたお薬です。
2つの降圧剤を配合する事で高い降圧作用を発揮してくれます。
ARBは心保護作用・腎保護作用といった臓器保護作用を持ちます。またヒドロクロロチアジドは程度は強くないものの利尿作用(尿量を増やす作用)を持ち、また尿路結石や骨粗しょう症を予防するという付加的な作用も期待できます。
ここから、
・心臓や腎臓といった臓器の障害も合併している方
・軽度のむくみを伴っている方
・尿路結石や骨粗しょう症を合併している方
に向いているお薬と言えます。
配合剤は2剤を配合することにより、1剤ずつで処方してもらうよりも薬価が安くなっています。ジェネリック医薬品であるバルヒディオはここから更に薬価が安くなっていますので、この点もバルヒディオ配合錠のメリットになります。