バルトレックスの効果と副作用【ヘルペスウイルス治療薬】

バルトレックス錠・バルトレックス顆粒(一般名:バラシクロビル塩酸塩)は、2000年から発売されている抗ウイルス薬になります。

抗ウイルス薬はウイルス感染症の治療に用いられるお薬の事で、バルトレックスはウイルスの中でも「ヘルペスウイルス」の感染に対して用いられます。

ヘルペスウイルスは口唇ヘルペスや帯状疱疹、水痘(みずぼうそう)など多くの疾患の原因となるウイルスです。

バルトレックスはヘルペスウイルスに対してどのように効くのでしょうか。また他の抗ウイルス薬と比べてどのような特徴を持っているのでしょうか。

ここではバルトレックスの効果・副作用や特徴を紹介し、どのような作用機序を持つお薬でどのような方に向いているお薬なのかについてお話ししていきます。

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1.バルトレックスの特徴

まずはバルトレックスの特徴について、かんたんに紹介します。

バルトレックスは

  • 口唇ヘルペス、角膜ヘルペスの原因となる単純へルペスウイルスⅠ型(HSV1)
  • 陰部ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV2)
  • 水痘・帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)

の増殖を抑える作用を持つお薬になります。

同じ抗ウイルス薬であるゾビラックス(一般名:アシクロビル)を改良したお薬です。

バルトレックスはこれらのヘルペスウイルスに感染した場合に、有効な治療薬になります。

ただしバルトレックスはヘルペスウイルスを「殺す」お薬ではありません。あくまでも「増殖を抑える」お薬になります。

そのためヘルペスウイルスが増殖しきった状態で投与してもあまり効果は得られません。ウイルスが増殖しきっていない発症初期に投与する事で高い効果が期待できるお薬になります。

抗ヘルペス薬にもいくつか種類がありますが、バルトレックスは古い抗ヘルペス薬である「ゾビラックス(一般名:アシクロビル)」を改良したお薬です。

バルトレックスはゾビラックスの「プロドラッグ」になります。プロドラッグというのは、体内に吸収され、代謝される事によってはじめて作用を発揮する工夫がされたお薬です。

プロドラッグは代謝されてから薬効が出てくるため、効果が欲しい部位に集中的に効いてくれ、余計な部位では作用しないという利点があり、これは効果を必要部位に集中させ、副作用を少なくする事が期待できます。

実際、バルトレックスは胃腸内においてはほとんど活性のない「バラシクロビル」として存在していますが、胃腸から体内に吸収されるとゾビラックスと同じ成分である「アシクロビル」に変換され、薬効を発揮しだします。

簡単に言えばバルトレックスは「ゾビラックス」という古い抗ヘルペス薬を、より効果的に効くように、より副作用が少なくなるように工夫したお薬だと言っても良いでしょう。

安全性は高く副作用も多くはありません。ゾビラックスも副作用が多いお薬ではありませんが、プロドラッグであるバルトレックスは更に副作用も軽減されており、安全性にも優れるお薬になります。

以上からバルトレックスの特徴として次のようなことが挙げられます。

【バルトレックスの特徴】
・HSV1、HSV2、VZVの増殖を抑える抗ウイルス薬である
・ウイルスを殺すのではなく、増殖を抑える作用を持つ
・発症初期に飲まないと高い効果は得られない
・ゾビラックスの改良薬(プロドラッグ)である

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2.バルトレックスはどのような疾患に用いるのか

バルトレックスはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

単純疱疹、造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制、帯状疱疹、水痘、性器ヘルペスの再発抑制

バルトレックスはヘルペスウイルスの増殖を抑えるお薬ですので、ヘルペスウイルス感染症に用いられるお薬になります。

しかしヘルペスウイルスの感染であれば何でも効くわけではありません。

実はヘルペスウイルスには多くのタイプがあり、

  • 単純へルペスウイルスⅠ型(HSV1):口唇ヘルペス、角膜ヘルペス
  • 単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV2):陰部ヘルペス
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV):水痘・帯状疱疹
  • エブスタイン・バーウイルス(EBV):伝染性単核球症
  • サイトメガロウイルス(CMV):サイトメガロウイルス感染症
  • ヒトヘルペスウイルス6(HHV6):突発性発疹
  • ヒトヘルペスウイルス7(HHV7):突発性発疹
  • ヒトヘルペスウイルス8(HHV8):カポジ肉腫

などに分類されます。

このヘルペスウイルス属のうち、バルトレックスが効くのは、

  • 単純へルペスウイルスⅠ型(HSV1):口唇ヘルペス、角膜ヘルペス
  • 単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV2):陰部ヘルペス
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV):水痘・帯状疱疹

の3種類だけです。

そのためこれらのヘルペスウイルス感染と考えられる時にバルトレックスは用いられます。

ではバルトレックスはこれらの疾患に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

バルトレックスの有効率は、

  • 単純疱疹に対する改善率は99.08%
  • 帯状疱疹に対する改善率は97.75%

と報告されています。

またバルトレックスを投与してから疼痛が生じるするまでの期間を調査したところ中央値は「35日」と報告されており、更に帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行した率は24.7%と報告されています。

3.バルトレックスの作用機序

バルトレックスはどのような作用機序によってヘルペスウイルスの増殖を抑えるのでしょうか。

バルトレックスは抗ウイルス薬であり、ウイルスの中でも一部のヘルペスウイルス感染に効果のあるお薬です。

ではこの作用はどのようにしてもたらされているのでしょうか。

バルトレックスが効くのはヘルペスウイルス属の中でも、

  • 単純へルペスウイルスⅠ型(HSV1)
  • 単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV2)
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)

の3種類になります。

これらのウイルスは私たちの身体の細胞内に侵入すると(これを「感染」と呼びます)、感染細胞中でチミジンキナーゼ(TK)という酵素を産生します。

チミジンキナーゼはヘルペスウイルスのDNA合成に関わっている酵素で、ウイルスが産生したチミジンキナーゼはウイルスのDNAをどんどん合成するため、ウイルスがどんどん増殖してしまいます。

これを食い止めるのがバルトレックスです。

バルトレックスはチミジンキナーゼと反応し、バラシクロビル三リン酸(ACV-TP)という物質になります。このバラシクロビル三リン酸がウイルスのDNAに取り込まれると、ウイルスはDNAを複製できなくなってしまうのです。

この結果、ウイルスは増殖できなくなるというわけです。

このようにバルトレックスはウイルス性のチミジンキナーゼが存在している「ウイルス感染細胞」にだけ作用するため、正常な細胞には毒性を示さずに効果を得る事が出来ます。

難しく書きましたが簡単に言えば、ウイルスのDNAに作用する事でウイルスの増殖を抑える作用があるという事です。

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4.バルトレックスの副作用

バルトレックスにはどのような副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。

バルトレックスはウイルスをやっつける目的で投与されます。となれば、「ウイルスをやっつけるという事は身体にも害があるのではないか」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

しかしバルトレックスは安全性の高いお薬であり、副作用が生じる頻度は多くはありません。もちろん注意すべき副作用はありますが、総合的に見れば安全に使えるお薬と言っても良いでしょう。

バルトレックスの副作用発生率は、1.12%と報告されています。

生じうる副作用としては、

  • 頭痛
  • 眠気
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害
  • 腹痛、嘔気

などが報告されています。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • アナフィラキシーショック、アナフィラキシー(呼吸困難、血管浮腫など)
  • 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)、血小板減少性紫斑病
  • 急性腎不全
  • 精神神経症状(意識障害、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺、脳症など)
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)
  • 呼吸抑制、無呼吸
  • 間質性肺炎
  • 肝炎、肝機能障害、黄疸
  • 急性膵炎

などが報告されており、使用中に異変を感じた場合はすぐに主治医に報告する必要があります。

また副作用ではありませんが、ヘルペスウイルスはバルトレックスに耐性を形成する可能性があります。これは、バルトレックスに抵抗力を持つヘルペスウイルスが現れてしまうという事です。

耐性形成はヘルペスウイルスがチミジンキナーゼやDNAポリメラーゼ(DNAを合成する酵素)を変化させることで、バルトレックスが作用できないようにしてしまう事で生じると考えられています。

長期間バルトレックスを投与していると、ヘルペスウイルスが耐性を獲得してしまう可能性があります。バルトレックスを投与しても改善が乏しい場合は耐性化している可能性がありますので、効果が乏しい時は漫然と投与を続けるのではなく、別の治療法への切り替えも検討する必要があります。

5.バルトレックスの用法・用量と剤形

バルトレックスには、

バルトレックス錠 500mg

バルトレックス顆粒50% 1g包
バルトレックス顆粒50% 50g(瓶)

といった剤型があります。

またバルトレックスの使い方は、使用する疾患によって異なってきます。

成人においては、

【単純疱疹】
通常、成人には1回500mgを1日2回経口投与する。

【造血幹細胞移植における単純疱疹の発症抑制】
通常、成人には1回500mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。

【帯状疱疹】
通常、成人には1回1000mgを1日3回経口投与する。

【水痘】
通常、成人には1回1000mgを1日3回経口投与する。

【性器ヘルペスの再発抑制】
通常、成人には1回500mgを1日1回経口投与する。なお、HIV感染症の患者(CD4リンパ球数100/mm3以上)には1 回500mgを1日2回経口投与する。

となっています。

小児においては体重によって使用する量が異なっており、体重が40kg未満の場合には顆粒しか適応がありません。

【単純疱疹】
(錠剤):通常、体重40kg以上の小児には1回500mgを1日2回経口投与する。

(顆粒):通常、体重10kg未満の小児には体重1kg当たり1回25mgを1日3回、体重10kg以上の小児には体重1kg当たり1 回25mgを1日2回経口投与する。ただし、1回最高用量は500mgとする。

【造血幹細胞移植における単純疱疹の発症抑制】
(錠剤):通常、体重40kg以上の小児には1回500mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。

(顆粒):通常、体重10kg未満の小児には体重1kg当たり1回25mgを1日3回、体重10kg以上の小児には体重1kg当たり1回25mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。ただし、1回最高用量は500mgとする。

【帯状疱疹】
(錠剤):通常、体重40kg以上の小児には1回1000mgを1日3回経口投与する。

(顆粒):通常、小児には体重1kg当たり1回25mgを1日3回経口投与する。ただし、1回最高用量は1000mgとする。

【水痘】
(錠剤):通常、体重40kg以上の小児には1回1000mgを1日3回経口投与する。

(顆粒):通常、小児には体重1kg当たり1回25mgを1日3回経口投与する。ただし、1回最高用量は1000mgとする。

【性器ヘルペスの再発抑制】
(錠剤・顆粒):通常、体重40kg以上の小児には1回500mgを1日1回経口投与する。なお、HIV感染症の患者(CD4リンパ球数100/mm3以上)には1回500mgを1日2回経口投与する。

となっています。

注意点として小児の性器ヘルペスの再発抑制に用いる場合は、お子様の体重が40kg以上でなければ投与できません。これは性器ヘルペスにかかる年齢を考えると(中学生以降)、これくらいの体重がある事が普通だからです。

6.バルトレックスが向いている人は?

以上から考えて、バルトレックスが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

バルトレックスの特徴をおさらいすると、

【バルトレックスの特徴】
・HSV1、HSV2、VZVの増殖を抑える抗ウイルス薬である
・ウイルスを殺すのではなく、増殖を抑える作用を持つ
・発症初期に飲まないと高い効果は得られない
・ゾビラックスの改良薬(プロドラッグ)

であるというものでした。

バルトレックスは、

  • 単純へルペスウイルスⅠ型(HSV1)
  • 単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV2)
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)

に感染している時に検討されるお薬になります。

長い歴史を持っているゾビラックス(一般名:アシクロビル)の改良薬であるため安心して使えるお薬です。

またこれは多くの抗ウイルス薬に共通する事ですが、耐性化には注意しないといけません。ウイルスは変異する事があり、これによってバルトレックスが効かない菌が出現する事もあります。

このような状態でバルトレックスの投与を続けていても意味はありません。バルトレックスを投与しても改善が乏しい場合は、耐性化の可能性も考えて治療方針を再検討する必要があります。

また意外なデメリットとしては薬価の高さが挙げられます。最近はバルトレックスのジェネリック医薬品も発売されているため、薬価が高いと感じる方はジェネリック医薬品の利用を検討してもよいかもしれません。

7.ヘルペス感染に効果がある市販薬は?

バルトレックスは病院で処方してもらうしかありませんが、同様の成分を持つお薬で薬局で購入できるものもあります。

始めてのヘルペス感染の場合は、病院を受診し医師に診断をしてもらう事をお勧めしますが、何度も再発している方や病院を受診できないような場合は、このような市販薬を検討しても良いでしょう。

アクチビア軟膏は病院で処方される抗ヘルペス薬である「ゾビラックス(一般名:アシクロビル)」というお薬と同じ成分が含まれています。病院処方薬であるゾビラックスと同じく5%のアシクロビルが含まれており、同程度の効果が期待できます。

アラセナSは病院で処方される抗ヘルペス薬である「アラセナA(一般名:ビダラビン)」と同じ成分が含まれています。病院処方薬であるアラセナAと同じく3%のビダラビンが含まれており、同程度の効果が期待できます。

アラセナAとアラセナSはほぼ同じ成分で病院で処方されるのがアラセナA、薬局で買えるのがアラセナSです。

なぜ名称を分けているかというと薬局で買えるアラセナSは適応上は「ヘルペスの再発」にしか使えません。これは初発の場合はアラセナSで自己治療しないで、病院で医師にちゃんと診断してもらってね、という意味になります。

ドッズは皮膚と同じような色のパッチ剤(皮膚に貼るシール)です。ヘルペスによって水疱が出来てしまった部位を目立ちにくくし、保護する役割があります。

抗ヘルペス薬が入っているわけではなく、あくまでも「傷を隠す」「傷を保護する」目的になります。

有効成分が入っているわけではありませんが創部を保護しますので、治りを多少早める事が期待できます。またヘルペスの水疱が見た目的に気になってしまう方(女性など)にとっては、水疱を目立ちにくくしてくれ、重宝します。

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