ベギンクリーム(一般名:尿素)は1978年から発売されている「ウレパール」という角化症治療薬・乾燥性皮膚疾患治療薬のジェネリック医薬品になります。
ベギンは尿素が主成分となっており、主な効果は「保湿」になります。「角化症・乾燥性皮膚疾患治療薬」と難しく書きましたが、要するに硬くなったり乾燥した皮膚に潤いを与えるお薬ということです。
尿素の保湿効果はマイルドであり強力な保湿効果はありませんが、安全性に優れます。そのためベギンは、主に乾燥が原因で生じている皮膚疾患を中心によく用いられています。
塗り薬はたくさんの種類があるため、それぞれがどのような特徴を持つのかは分かりにくいものです。
ベギンがどんな特徴のあるお薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのか、ベギンの効能や特徴・副作用についてみてみましょう。
目次
1.ベギンの特徴
まずはベギンの特徴をざっくりと紹介します。
ベギンは尿素が含まれており、保湿効果に優れることが特徴です。
尿素には、皮膚の角質層の水分を保持する作用があります。ちなみに「角質層」というのは皮膚の一番上の層であり、外界と接している部分です。皮膚の一番表面の部分を潤してくれるため、皮膚乾燥が原因で生じている様々な皮膚トラブルに用いることが出来ます。
また軽度の角質溶解作用(皮膚を溶かす作用)があり、この作用により古い角質が剥がれて皮膚がスベスベになります。
ちなみにベギンには、皮膚の傷を治したり(創傷治癒改善作用)、アレルギーや炎症を抑える作用(抗アレルギー作用、抗炎症作用)などはありません。保湿することで、間接的にこれらの効果も期待はできるため、軽度の皮膚炎や皮膚アレルギーに用いることが出来ないわけではありませんが、ベギンの作用はあくまでも「保湿」が主です。
ベギンは人によっては塗った部位に軽い刺激を感じることがあります。これは角質溶解作用によるものだと思われます。そのため、炎症部や皮膚が敏感になっている部分に塗ってしまうと、創部が刺激されてしまい、むしろ良くないことがあります。実際、ベギンの副作用として、紅斑や疼痛などが頻度は低いながらも報告されています。
そのため、炎症部やアレルギーの保湿に用いる際には主治医とよく相談して、その有用性を検討する必要があります。
尿素は安全性が高く、長期連用しても大きな副作用がほとんどないのもメリットです。塗り薬の中にはステロイドなど、長期使用はあまり推奨されていないものもありますが、その点ベギンは安心です。
またベギンはジェネリック医薬品になるため、先発品と比べると薬価が安いのもメリットです。多くのジェネリック医薬品が先発品の6割以下の薬価になっている中、ベギンはやや高めの薬価ではありますが、それでも先発品と比べれば多少は安くなります。
以上からベギンの特徴として次のような事が挙げられます。
【ベギンクリームの特徴】
・保湿作用を持つ
・古い角質を溶解する作用もある
・安全性に高く、長期使用しても問題ない
・角質を溶かすため、炎症部やアレルギー部への使用は慎重に
・ジェネリック医薬品であるため、薬価が安い
2.ベギンはどんな疾患に用いるのか
ベギンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
魚鱗癬
老人性乾皮症
アトピー皮膚
進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)
足蹠部皸裂性皮膚炎
掌蹠角化症
毛孔性苔癬
難しい専門用語が並んでいますが、ざっくりと言えば、皮膚の乾燥や角化症(皮膚が硬く・厚くなる状態)に対して用いられます。これはベギンの保湿効果と角質溶解作用によって、皮膚に潤いを与え、柔らかくしてくれるからです。
また、添付文書上はアトピー皮膚(アレルギー)に対しても適応がありますが、先ほど書いたようにベギンには抗アレルギー作用はなく、むしろ角質溶解による皮膚への刺激性の可能性があるため、その適応は慎重に判断しないといけません。保湿することで改善する可能性の高い、比較的軽症のアトピー皮膚には用いられる場合もあります。
ベギンクリームはジェネリック医薬品であるため有効率に対する詳しい調査は行われていませんが、先発品の「ウレパールクリーム10%」における有効率は、
- アトピー皮膚に対する有効率は76.7%
- 進行性指掌角皮症に対する有効率は66.7%
- 老人性乾皮症に対する有効率は89.3%
- 掌蹠角化症に対する有効率は41.2%
- 足蹠部皸裂性皮膚炎に対する有効率は83.3%
- 毛孔性苔癬に対する有効率は41.9%
- 魚鱗癬に対する有効率は87.1%
と報告されています。
3.ベギンにはどのような作用があるのか
こ主に保湿を目的として用いられるベギンですが、具体的にはどのような作用があるのでしょうか。
ベギンには主に2つの作用があり、これらが皮膚症状を改善させていると考えられています。
Ⅰ.保湿作用
ベギンの主成分である尿素は、角質への水分を保持するはたらきに優れます。そのため、皮膚表面の保湿にベギンは有効です。
逆に言うと、角質がなくなったり薄くなっている皮膚(例えば外傷やアレルギーで炎症が起こっている皮膚)では、角質に作用できないため、効果は乏しくなるということです。この場合、むしろ疼痛や熱感といった副作用によるデメリットの方が大きくなってしまうこともあります。このような皮膚に使用する場合は、その適応は慎重に判断しましょう。
Ⅱ.角質溶解・剥離作用
尿素は、皮膚表面の角質を溶解・剥離させる作用があります。その作用は弱めであり、主に古くなった角質を取るはたらきをします。
ちなみに「正常な皮膚がどんどん溶けてしまう!」ということはありませんので、安心してください。尿素の角質溶解作用は穏やかであるため、主に古くなった角質を中心に作用します。
この角質溶解作用によって、尿素クリームを塗ると皮膚がツルツル・スベスベになるのです。
4.ベギンの副作用
ベギンは塗り薬であり、全身に投与するものではないのでその副作用は多くはありません。
ベギンの副作用発生率の詳しい調査は行われていませんが、同じ成分である尿素を含む「ウレパールクリーム10%」の副作用発生率は4.19%と報告されており、ベギンも同程度であると推測されます。
生じる副作用としては、
- 皮膚刺激感
- 紅斑
- 掻痒感(かゆみ)
- 疼痛
などの局所の副作用です。
いずれも重篤となることは少なく、多くはベギンの使用を中止すれば自然と改善していきます。
特に皮膚が元々ダメージを受けているところ(アトピーの部位や炎症部位)などに塗るとこのような副作用が起こりやすいため、このような皮膚に塗る場合は適応について主治医にしっかりと相談しましょう。
5.ベギンの用法・用量と剤形
ベギンには、
ベギンクリーム 10% 20g (チューブ)
ベギンクリーム 10% 500g (瓶)ベギンクリーム 20% 25g (チューブ)
ベギンクリーム 20% 500g (瓶)
といった剤型があります。
ちなみに塗り薬には「軟膏」「クリーム」「ローション(外用液)」などいくつかの種類がありますが、これらはどのように違うのでしょうか。
軟膏は、ワセリンなどの油が基材となっています。保湿性に優れ、刺激性が少ないことが特徴ですが、べたつきは強く、これが気になる方もいらっしゃいます。
クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。軟膏よりも水分が入っている分だけ伸びがよく、べたつきも少なくなっていますが、その分刺激性はやや強くなっています。
ローションは水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、保湿効果は長続きしません。
ベギンの使い方は、
【ベギンクリーム10%】
1日2~3回、患部を清浄にしたのち塗布し、よくすり込む。なお、症状により適宜増減する。【ベギンクリーム20%】
1 日 1~数回、患部に塗擦する。
と書かれています。実際は皮膚の状態や場所によって回数や量は異なるため、主治医の指示に従いましょう。
6.ベギンの使用期限はどれくらい?
ベギンの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。
「家に数年前に処方してもらった軟膏があるんだけど、これってまだ使えますか?」
このような質問は患者さんから時々頂きます。
これは保存状態によっても異なってきますので、一概に答えることはできませんが、製薬会社による記載では室温保存にて「3年」となっています。
なおベギンは基本的には室温で保存するものですので、この状態で保存していたのであれば「3年」は持つと考えることができます。しかし、そうではない場所で保存していた場合は、3年未満でも効能が失われている可能性があります。
また、上記は未開封の場合を想定されています。開封した場合はこれより短くなると思われます。
7.ベギンが向いている人は?
以上から考えて、ベギンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ベギンの特徴をおさらいすると、
・保湿作用を持つ
・古い角質を溶解する作用もある
・安全性に高く、長期使用しても問題ない
・角質を溶かすため、炎症部やアレルギー部への使用は慎重に
・ジェネリック医薬品であるため、薬価が安い
というものでした。
ここから、乾燥が主である皮膚トラブルの保湿に用いるお薬であると言えます。
保湿の必要もあるけども、それだけでは不十分な皮膚状態では、もしかしたら別のお薬の方が良いかもしれません。
8.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?
ベギンは「ウレパール」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリックは薬価も安く、患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。
しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。
先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。