シナール配合錠・シナール配合顆粒(一般名:ビタミンC・パントテン酸)は1959年から発売されているビタミン剤です。
シナールの主成分は「アスコルビン酸(ビタミンC)」であり、それに少量の「パントテン酸(ビタミンB5)」も含まれています。シナールはビタミンCとビタミンB5を配合しているビタミン剤なのです。
ビタミンは基本的には食事から摂取できるものです。そのためまずは規則正しい食生活にて摂取をしていただきたいのですが、状況によってどうしても十分なビタミンを食事から摂取できない場合は、シナールのようなお薬でビタミンを補うことがあります。
今日はシナールの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。
1.シナールの特徴
まずはシナールの特徴についてみてみましょう。
シナールの主成分は「アスコルビン酸(ビタミンC)」であり、それに少量の「パントテン酸(ビタミンB5)」も含まれています。シナールはビタミンCとビタミンB5を配合しているビタミン剤なのです。
配合されている量としては圧倒的にビタミンCが多く、シナール配合錠1錠中(=シナール配合顆粒1g中)に、
ビタミンC(アスコルビン酸) 200mg
ビタミンB5(パントテン酸) 3mg
が含まれています。
ビタミンCの1日必要量は成人で約100mg、ビタミンB5の1日必要量は成人で約5mgほどですので、シナールを服用することで必要量はおおむねまかなえることが分かります。
ビタミンCは肌の色素沈着を抑える作用がある他、コラーゲンの生成を促進することで全身の臓器・器官を丈夫にしてくれます。また、抗酸化作用によって免疫力や抵抗力を高めてくれます。
ビタミンB5は糖分や脂質といった栄養分の代謝(栄養素を分解する過程でエネルギ―を取り出すこと)に必要な物質であるほか、腸管の動きを活性化する作用もあります。
ビタミン不足によってこれらの症状が生じている場合には、シナールが症状を改善してくれる可能性があります。
元々これらのビタミンは食品に含まれているものであるため、副作用はほとんどありません。
また水溶性ビタミンであるビタミンB5,Cは、大量に服薬しても身体に蓄積することなく、尿から過剰分は全て排泄されていきますので安全性の高いお薬となります。
以上から、シナールの特徴として次のようなことが挙げられます。
【シナールの特徴】
・ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パントテン酸)からなる
・肌の色素沈着を改善する作用がある
・コラーゲンの生成を促進し、組織を丈夫にする
・抗酸化作用によって細胞を保護し、免疫力・抵抗力を高める
・脂質・糖質の代謝を促進する作用がある
・腸管の動きを良くする作用がある
・副作用はほとんどなく、安全性に優れる
2.シナールはどんな疾患に用いるのか
シナールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。シナールの添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
本剤に含まれるビタミン類(ビタミンC、B5)の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦等)、炎症後の色素沈着。なお、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない。
かなり難しく書かれていますね。
実際はもっと単純で、「ビタミンC及びB5が足りていない時」に用いられます。
まずビタミンC(アスコルビン酸)やビタミンB5(パントテン酸)は、普通に食事を取っていれば十分に摂取できるビタミンだという前提があります。
そのためシナールは、十分なビタミンを食事から摂取できている方には不要のお薬です。シナールは水溶性ビタミンからなるため、大量に摂取しても過剰な分は尿からそのまま排泄されてしまいます。取れば取るほど良いというものではないのです。
シナールを使うのは、「普通に食事を取れていない時」あるいは「普通に食事をとっていてもビタミンC・ビタミンB5が急速に減少するような状態の時」に限られます。
具体的には、ビタミンなどが多く消耗されてしまうような炎症性疾患であったり、必要なエネルギーが増大する妊産婦の方などが挙げられます。
普通に食事をしていて十分量のビタミンC・B5を摂取できている人が、
「肌をきれいにしたい!」
「骨や血管を丈夫にしたい!」
という目的で服薬してもあまり効果は得られません。あくまでも「ビタミンが足りなくて」諸症状を来たしている方のみが使うべきお薬なのです。
3.シナールの作用機序
シナールにはどのような作用があるのでしょうか。
シナールはビタミンCと少量のビタミンB5から成るお薬です。ビタミンの作用というのは多岐に渡るため、ここでその全てを紹介すると大変難しい説明になってしまいます。
そのため、ここではシナールの代表的な作用を紹介させていただきます。
Ⅰ.皮膚の色素沈着の改善
シナールの主成分であるビタミンC・ビタミンB5は、皮膚の黒ずみの原因となるメラニン色素の形成を抑えるはたらきがあります。
そのためシミや黒ずみなどの色素沈着を認める皮膚をキレイにする作用が期待できます。
ちなみに「シナール」という名称は、このお薬を服用することで「肌が白くなる」という言葉が由来となっています。
「肌が白くなる」⇒「しろなる」⇒「シナール」
ということです。
Ⅱ.身体の組織を丈夫にする
ビタミンCは、コラーゲンの生成・保持に関与しています。
コラーゲンは、血管・皮膚・腱や骨といった身体の多くの組織・器官に存在する結合組織であり、これらの器官を丈夫にするために役立ちます。
ビタミンCが欠乏して生じる病気に「壊血病」があります。これは近年では滅多に見ることはなくなりましたが、昔の船乗りによく見られる病気として知られていました。船乗りは長期間船上で過ごすため食生活が不規則になりビタミンC摂取ができなくなるためです。
壊血病はその名の通り、出血しやすくなる疾患です。ビタミンC不足によって皮膚や血管、血球の構造を丈夫にするために必要なコラーゲンが作れなくなり、これらの組織・器官がもろくなるために生じます。
Ⅲ.免疫力を高める
ビタミンCには、抗酸化作用があることが知られており、これはばい菌やストレスに抵抗したり、身体にとって有害となる活性酸素を除去するはたらきになります。
ビタミンCは活性酸素を除去して細胞を保護してくれるのです。活性酸素によって血管や身体の諸臓器が傷つくことを防ぎ、動脈硬化や心疾患の予防、老化の予防にもつながります。
ちなみに活性酸素は喫煙やストレスなどによって産生されやすくなります。
Ⅳ.栄養素の代謝を促進する
シナールに少量含まれているビタミンB5は、脂質や糖質といった主要な栄養素の代謝に関わっており、これらの栄養素の代謝を促進します。
Ⅴ.腸管の動きを良くする
ビタミンCには緩下剤(下剤)としての作用もあり、服薬することで便秘への効果が期待できます。
また、ビタミンB5も副交感神経からアセチルコリンという物質が分泌させるはたらきがあり(コリン作用)、これによって腸管の動きを活性化するはたらきがあります。
これらのビタミン不足によって腸管の動きが悪くなり、便秘が生じている場合はシナールで便秘の改善が期待できます。
4.シナールの副作用
シナールはビタミン剤になり、ビタミンというのは本来食べ物などに含まれている成分になります。
ビタミンC(アスコルビン酸)は、レモンやグレープフルーツといった柑橘系や野菜に多く含まれているのは有名です。またビタミンB5(パントテン酸)も多くの食材に含まれているビタミンになります。
そのため、これらを配合されたシナールは安全性が非常に高く、副作用をほとんど認めないお薬になります。
副作用としては、ほとんどが胃腸系の副作用であり、
- 下痢
- 胃部不快感
- 悪心・嘔吐
などの報告があります。
これはシナールに含まれるビタミンCに下剤としての作用があることと、ビタミンB5が腸管も運動を活発にする作用を持つためだと考えられています。
ビタミンCもビタミンB5も水溶性ビタミンであるため、過剰に服薬しても尿中に排泄されるため過剰服薬によって重篤な副作用を生じることもまずありません。
ちなみに副作用ではないのですが、シナールを服用中の患者さんが注意することとして、「尿検査において各種検査値が偽陰性になることがある」ことが挙げられます。
これはシナールに含まれるビタミンCの作用によるものです。偽陰性というのは、本当は「異常あり」なのに、「異常なし」と検査結果が出てしまうことです。
具体的には尿糖を偽陰性にしてしまったり、尿試験紙法において潜血・ビリルビン・亜硝酸塩を偽陰性にしてしまう可能性があります。
また、便潜血検査も偽陰性にしてしまう可能性があります。
そのためシナールを服薬中の方が尿検査や便検査を受ける場合、事前に主治医に相談する必要があります。
5.シナールの用法・用量と剤形
シナールは、
シナール配合錠
シナール配合顆粒(1g)
の2剤形があります。
シナール配合錠の1錠と、シナール配合顆粒の1gが同等の成分になり、
・アスコルビン酸(ビタミンC) 200mg
・パントテン酸(ビタミンB5) 3mg
を含んでいます。
またシナールの用法・用量は次のようになります。
通常成人には1日1~3錠又は1~3gを1日1~3回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
シナールは食品にも多く含まれるビタミンが主成分であり、その飲み方も厳密に決まってはおらず、ある程度幅を持たせた服薬法となっています。
6.シナールが向いている人は?
以上から考えて、シナールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
シナールの特徴をおさらいすると、
・ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パントテン酸)からなる
・肌の色素沈着を改善する作用がある
・コラーゲンの生成を促進し、組織を丈夫にする
・抗酸化作用によって細胞を保護し、免疫力・抵抗力を高める
・脂質・糖質の代謝を促進する作用がある
・腸管の動きを良くする作用がある
・副作用はほとんどなく、安全性に優れる
というものがありました。
誤解してはいけないのが、シナールはそもそも食事から必要なビタミンを十分に摂取できている人には不要なお薬です。
十分なビタミンC・ビタミンB5が食事で補えているのに、「もっと肌をきれいにしたい!」「抗酸化作用で老化を防ぎたい!」と大量にシナールを服薬してもあまり意味はありません。摂取された余分なビタミンC・B5は尿からそのまま排泄されてしまうだけです。
十分なビタミンC・B5が摂取できていなかったり、ビタミンの消耗が通常より激しいと予測されるような状態において、色素沈着を認めたり、コラーゲンが弱まっている所見があったり、免疫力が低下していたりという時は、シナールを使うことで改善が得られる可能性があります。