ザジテンカプセルの効果と副作用

ザジテンカプセル・ザジテンシロップ・ザジテンドライシロップ(一般名:ケトチフェンフマル酸塩)は1983年から発売されているお薬で、抗アレルギー薬と呼ばれています。

アレルギーによって生じる諸症状を抑え、主に花粉症(アレルギー性鼻炎)を始め、気管支喘息、じんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられています。

ザジテンは主にヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。

抗アレルギー薬の中でザジテンはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

ザジテンの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

 

1.ザジテンの特徴

まずはザジテンの全体的な特徴についてみてみましょう。

ザジテンは「抗ヒスタミン薬」と呼ばれ、ヒスタミンという物質のはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。ヒスタミンはケミカルメディエータ―と呼ばれるアレルギー症状発症の誘因となる物質の1つです。

抗ヒスタミン薬には、古い第1世代抗ヒスタミン薬と、新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。

そのためまずは第2世代から使用するのが現在では一般的です。

ザジテンはというと、第2世代に属する抗ヒスタミン薬になります。しかし第2世代の中では古いお薬であり、眠気などの副作用は比較的多めです。抗ヒスタミン薬は「非鎮静系(あまり眠くならない)」と「鎮静性(眠くなる)」という分け方をします。だいたい第1世代が鎮静系で第2世代のうち新しいものは非鎮静系なのですが、ザジテンは第2世代であるものの鎮静系に属しています。

ザジテンは主に、

  • 抗ヒスタミン作用
  • ロイコトリエン拮抗作用
  • 抗好酸球作用
  • 抗PAF(血小板活性化因子)作用

などによって、アレルギー症状を改善させるお薬です。

注意点として、稀ながらてんかんを起こすことが報告されているため、てんかんの患者さんは用いることが出来ません。

以上から、ザジテンの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ザジテンの特徴】

・アレルギー症状を抑えるために用いられるお薬である
・抗ヒスタミン作用、ロイコトリエン拮抗作用、抗好酸球作用、抗PAF作用がある
・眠気などの副作用が比較的多め
・てんかんの方は禁忌(絶対に使ってはダメ)

 

2.ザジテンはどのような疾患に用いるのか

ザジテンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】
気管支喘息
アレルギー性鼻炎
蕁麻疹
湿疹、皮膚炎、皮膚そう痒症

ザジテンは、抗アレルギー薬になりますので、アレルギー疾患に用いられます。

代表的なのは花粉症(アレルギー性鼻炎)です。その他、喘息やじんま疹もアレルギーによるものですので効果が期待できます。

皮膚のかゆみも乾燥などで生じている場合はザジテンは効果が乏しいと思われますが、アレルギーによって生じている場合は効果が期待できます。

 

3.ザジテンはどのような作用があるのか

ザジテンはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。

ザジテンの作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

Ⅰ.抗ヒスタミン作用

ザジテンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックする作用になります。

アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。

ザジテンは、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ケミカルメディエータ―)が分泌されるのを抑える作用があります。これによりアレルギー症状を和らげてくれるのです。

ヒスタミンは代表的なケミカルメディエーターの1つです。

 

Ⅱ.抗ロイコトリエン作用

ヒスタミン以外のケミカルメディエーターとして、ロイコトリエン(LT)があります。

ロイコトリエンも肥満細胞から分泌され、身体にアレルギー反応を起こしたり、気管を収縮させたりします。

ザジテンは、ヒスタミンと同じようにこのロイコトリエンの分泌を抑えるはたらきがあります。また、すでに分泌されてしまったロイコトリエンのはたらきをブロックする作用も持ちます。

これによってアレルギー症状を緩和させてくれます。

 

Ⅲ.血小板活性化因子拮抗作用

血小板活性化因子(PAF)は、血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、気管支喘息を誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。

ザジテンはPAFのはたらきもブロックすることが確認されており、これによって気管支の収縮や気道反応性亢進などの喘息症状を軽減させます。

 

Ⅳ.抗好酸球作用

アレルギー反応の1つに、アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)によって好酸球の脱顆粒(好酸球が顆粒を分泌する)という現象があります。

好酸球から分泌される顆粒には様々な成分が含まれています。中にはヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギーの原因となる物質のはたらきを中和する作用もあります。

しかし一方で、炎症の原因となる物質も放出してしまい、これによってアレルギー反応がより悪化してしまう事もあります。

ザジテンは好酸球数を減少させ、また好酸球の脱顆粒を減少させるはたらきがあることが確認されており、これもアレルギー症状の緩和に役立っている可能性があります。

 

4.ザジテンの副作用

ザジテンにはどんな副作用があるのでしょうか。

ザジテンの副作用は5.4%前後と報告されています。他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べるとやや副作用の頻度が多くなっています。

副作用として多いのが、

  • 眠気

です。ザジテンの副作用発生率が他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べて高いのは、眠気が生じやすいからです。

抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じやすいのですが、ザジテンは他の抗ヒスタミン薬と比べても眠気の副作用はやや多めになります。ザジテンは鎮静力の比較的強い抗アレルギー薬なのです。

他にも、

  • 倦怠感
  • 口渇
  • 悪心

などといった副作用の報告もわずかながらあります。

また、稀ながら重篤な副作用としては、

  • 痙攣
  • 興奮
  • 肝機能障害、黄疸

が報告されています。

そのため、ザジテンはてんかん又はその既往歴のある患者さんへの投与は禁忌(絶対にダメ)となっています。

また肝機能障害、黄疸などの副作用の報告もあることから、長期に渡りザジテンの服薬を続ける場合は、定期的に血液検査などで肝機能を見ておくことが望ましいでしょう。

 

5.ザジテンの用法・用量と剤形

ザジテンにはどのような剤型があるのでしょうか。

ザジテンは、

ザジテンカプセル 1mg
ザジテンシロップ 0.02%
ザジテンドライシロップ 0.1% (ストロベリー味)

の3剤形があります。

また、局所に投与するお薬として、

ザジテン点眼液 0.05%
ザジテン点鼻液 0.05%

もあります。これらは主に花粉症による鼻症状(アレルギー性鼻炎)、眼症状(アレルギー性結膜炎)に対して用いられます(なお、これら点眼液・点鼻液については別記事で詳しく紹介します)。

ザジテンの使い方としては、

<カプセル>
通常、成人には1回1mgを1日2回、朝食後及び就寝前に経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

<シロップ>
通常、小児には1日量0.3mL/kgを2回、朝食後及び就寝前に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

<ドライシロップ>
通常、小児には1日量0.06g/kgを2回、朝食後及び就寝前に分け、用時溶解して経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

と書かれています。

シロップとドライシロップは主に小児に対して用いられることを想定されています。

 

6.ザジテンが向いている人は?

以上から考えて、ザジテンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ザジテンの特徴をおさらいすると、

・アレルギー症状を抑えるために用いられるお薬である
・抗ヒスタミン作用、ロイコトリエン拮抗作用、抗好酸球作用、抗PAF作用がある
・眠気などの副作用が比較的多め
・てんかんの方は禁忌(絶対に使ってはダメ)

といったものでした。

ザジテンは、第2世代抗ヒスタミン薬になりますが、第2世代の中では古いお薬であり眠気が強めです。

ちなみに抗アレルギー薬に対して、「眠気が強いお薬は効果も強い」と考えていらっしゃる方もいますが、これは誤りです。

眠気の強さと抗アレルギー作用の強さは別物になります。実際最近の抗ヒスタミン薬は眠気をあまり起こさないけどもしっかりと効果が得られるものが多くなっています。

ザジテンは効果は比較的しっかりしていますが、眠気が出やすいため日中に作業をしなくてはいけない方にはあまり適していません。最近は眠気が少なくて効果がしっかりしている抗アレルギー薬が増えてきましたので、ザジテンが処方される頻度は減っているのが現状です。

眠気の副作用は時に強い鎮静力として役立つこともあるため、このような効果が欲しい症例においては検討するお薬になるでしょう。

 

7.お薬以外の花粉症の治療法

花粉症をはじめとしたアレルギー疾患は、お薬で症状を抑える事が出来ます。

しかしお薬だけが有効な治療法はではありません。日常の生活習慣の工夫で症状を和らげる事も可能ですし、食べ物に含まれる成分にもアレルギーを抑える効果が報告されているものもあります。

最後にお薬以外で花粉症を抑える、有効な予防法について紹介します。

 

Ⅰ.花粉を目・鼻に入れない

やはり一番大切なのは、毎日の生活の中での工夫です。

花粉症の症状は、花粉が目や鼻の中に入る事で生じます。という事は花粉がこれらの部位に接触しなければ症状は生じないわけです。

当たり前の事ですが、これは非常に重要な事です。

花粉が飛散する時期になったら、外出時はメガネやマスクなどを装着するようにしましょう。これだけでも症状は大分軽減します。なるべく皮膚と密着するようなメガネ・マスクが良いでしょう。

また服装も重要です。花粉がくっつきやすい服を着ていれば、外出時に服にたくさん花粉がついてしまい、それが家の中で舞ってしまいます。

具体的には、ウールなどのモコモコした生地の服は花粉が付きやすく、ポリエステルなどのツルツルした服は花粉が付きにくいと言われています。花粉が飛散する時期は、このように服装にも気を付けるようにしてみましょう。

 

Ⅱ.乳酸菌

乳酸菌はヨーグルトなどに含まれている細菌で、いわゆる「善玉菌」として知られています。

腸内細菌のバランスを適正に整える事で、便秘や下痢、腹部膨満といった胃腸症状を改善させる作用があり、整腸剤の成分としても用いられています。

近年、乳酸菌はただ腸内細菌のバランスを整えるだけではなく、腸内細菌のバランスを整える事によって免疫力も整えてくれる事が分かってきました(免疫力:身体に有害な異物が入ってきた時に、異物を排除するシステム)。

アレルギー疾患は免疫反応の誤作動によって生じています。具体的には花粉症であれば、「花粉」という本来であれば身体に害のない物質に対して、「敵だ!排除しなければ」と免疫が誤作動してしまう事で鼻水・目のかゆみなどが生じるのです。

つまり免疫力を整えてくれる乳酸菌は、花粉症の改善にも効果が期待できるという事です。

また乳酸菌の中でも特にアレルギー反応を抑える事が確認されている菌としては、

  • L-92乳酸菌
  • フェリカス菌

などがあります。最近ではこのような抗アレルギー作用のある乳酸菌を含む乳製品(ヨーグルトやチーズなど)も発売されるようになってきましたので、花粉症の時期にはこれらを積極的に摂取するようにしましょう。

また、乳酸菌の栄養となる「オリゴ糖」の摂取も有効です。オリゴ糖が十分に腸内に届けば、それだけ乳酸菌が増殖しやすくなるためです。

 

4種類の生菌で腸内バランスを整える医薬品【ファスコン整腸錠プラス】

京都薬品より発売されている乳酸菌錠剤です。抗アレルギー作用のあるフェリカス菌をはじめ、多くの乳酸菌が含まれています。

 

Ⅱ.ポリフェノール

「ポリフェノール」は、抗酸化作用が注目される事が多く、「アンチエイジング効果がある物質」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

確かにポリフェノールには抗酸化作用がありますが、それ以外にも抗アレルギー作用もあります。

ポリフェノールはアレルギーを誘発する物質であるヒスタミンの放出を抑える作用が報告されており、抗ヒスタミン薬と似た機序でアレルギー症状を改善させてくれます。

ポリフェノールを多く含む食品としては、

  • 野菜
  • 果物
  • ワイン
  • お茶

などがあります。

ちなみにお茶には「カテキン」が含まれていますが、このカテキンもポリフェノールの1種です。

日常で野菜をあまり取れない方は、サプリメントも有効です。ただし一部のサプリメントや野菜ジュースなどにはポリフェノールがほとんど除去されてしまっているものもあるため、注意しましょう。

 

じゃばらジュース

抗アレルギー作用が確認されているポリフェノールの1種である「ナリルチン」を豊富に含むお茶です。

 

白井田七。茶

カテキンを豊富に含むお茶です。日本茶ですので、毎日の生活の中で無理なく摂取する事ができます。

 

Ⅳ.ω脂肪酸(EPA・DHA)

EPAやDHA「ω3脂肪酸」と呼ばれ、魚に多く含まれる物質で「血液をサラサラにする」という効果がよく知られています。

以前は「食べると頭が良くなる」と言われた事もありましたが、直接頭を良くする作用があるわけではありません。血液をサラサラにする事で脳の血流を増やす作用があるため、このように言われるようになりました。

その他にもコレステロールを低下させたり、精神状態を安定させる作用(抗うつ作用)なども報告されています。

近年では、アレルギーを抑える作用もある事が報告されるようになりました。アレルギーを引き起こす物質にはヒスタミン以外にも、ロイコトリエンやプロスタグランジンなどがあります。

DHAやEPAはロイコトリエンやプロスタグランジンのはたらきを抑える作用が報告されています。DHA、EPAは青魚に多く含まれていますので、花粉症の時期には積極的に摂取するようにしても良いでしょう。

またDHA・EPAはサプリメントとしても各製薬会社から発売されていますので、このようなものを利用するのも方法の1つです。

 

DHA・EPAサプリAOZA

DHA・EPAを高用量配合しているサプリメントです。

 

Ⅴ.アロマエッセンス

アロマ(精油)は日本ではまだあまり普及していませんが、海外では医薬品として病院から処方されるような国もあり、その効果は侮れません。

アロマオイルの中にはアレルギー症状に効果があるものもあります。例えばユーカリやティーツリーといったアロマオイルは免疫の調子を整え、鼻粘膜の炎症を和らげてくれる作用があると言われています。

またペパーミントは鼻腔の通りを改善させる作用があると言われています。

このような成分を配合したアロマオイルを使ってみるのも方法の1つです。

 

ナチュラルハーブスプレー

ユーカリ、ティーツリー、ペパーミントやカユプテ、ラベンダーを配合したアロマスプレーで花粉症への効果が期待できます。

 

Ⅵ.甜茶の効果は不確か?

「花粉症に効くお茶」として有名な甜茶(てんちゃ)ですが、本当に花粉症に効果があるのでしょうか。

甜茶は元々は「甘いお茶」の総称で、一口に甜茶といっても含まれる成分はお茶によって異なります。

甜茶に含まれるバラ科キイチゴ属の植物の葉に抗アレルギー効果があるという報告から、一時期甜茶が花粉症の時期に流行りましたが、明確な効果はないとする報告も多く、その抗アレルギー作用は不確かなところがあります。

厚生労働省や独立行政法人国立健康・栄養研究所などの公的機関も、甜茶の効果に対しては否定的であり、甜茶ブームも長くは続いていない事から、少なくともしっかりとした効果はないと考えられます。