ゼフィックスの効果・効能と副作用【B型肝炎治療薬】

ゼフィックス(一般名:ラミブジン)は2000年から発売されているお薬です。B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖を抑える事で、慢性B型肝炎を改善させる作用を持ちます。

B型肝炎ウイルスに感染しても、私たちの身体は自力でウイルスをやっつけてしまう事もあります。一方で、ウイルスをやっつける力が弱い状態で感染してしまうと、B型肝炎ウイルスをやっつけきれずに体内にウイルスが残存してしまう事もあり、これは慢性化と呼ばれます。

慢性化を放置しておくと、肝臓は徐々に痛めつけられていき、肝硬変や肝細胞癌といった命に関わるような疾患が引き起こされるリスクがあります。

ゼフィックスは、このような慢性B型肝炎の方の体内に存在するHBVの増殖を抑える事で、なるべく肝臓が痛まないようにし、肝硬変や肝細胞癌が発症するのを抑える作用があります。

とても頼りになるお薬ですが、使用に当たっては注意点も多く、必ずB型肝炎治療に熟知している医師の元で使用する必要があります。

ゼフィックスはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここではゼフィックスの特徴や効果・副作用についてお話させて頂きます。

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1.ゼフィックスの特徴

まずはゼフィックスの特徴を紹介します。

ゼフィックスはB型肝炎ウイルスの増殖を抑えるお薬になります。

副作用が少なく安全性に優れますが、使用中にお薬が効かなくなってしまう事があるため、現在では第一選択として使われる事は少ないお薬です。

ゼフィックスは元々はHIV(エイズ)感染の治療薬として開発されたお薬です。

HIVウイルスは増殖する時に、「逆転写酵素(DNAポリメラーゼ)」という酵素を使って自分の遺伝子を複製します。ゼフィックスはHIVウイルスの逆転写酵素のはたらきをブロックする作用があり、これによりHIVウイルスを増殖できなくします。

開発中にゼフィックスはHIVと同様、B型肝炎ウイルスにおいても逆転写酵素のはたらきをブロックし、B型肝炎ウイルスが増殖にできないようにするはたらきがある事が確認され、現在ではB型肝炎ウイルスの増殖を抑えるためにも用いられています。

ちなみにゼフィックスと同成分(ラミブジン)のお薬はHIV治療薬としても「エピビル」という商品名で発売されています。

ゼフィックスのようにB型肝炎ウイルスの増殖を遺伝子(核酸)レベルで抑えるお薬を「核酸アナログ製剤」と呼びます。ゼフィックスは核酸アナログ製剤の中でもっとも古いお薬であり、一番歴史のあるお薬です。

近年では新しい核酸アナログ製剤も増えてきたため、ゼフィックスが使われる機会は少なくなってきましたが、長い実績がある頼れるお薬でもあります。

メリットとしては副作用の少なさがあります。副作用はほとんどなく、安全性に優れるお薬です。

デメリットはいくつかありますが、1つはゼフィックスの使用を続けていると、一定の割合でゼフィックスが効かなくなってしまうという事が挙げられます。

これはゼフィックス使用中にB型肝炎ウイルスが変異してしまうためです。変異ウイルスが出現してしまった場合、それ以上ゼフィックスのみを投与しても意味がありませんので、お薬を追加する必要があります。

もう1つは、ゼフィックスは中止すると肝機能悪化や肝炎を引き起こすリスクがあります。そのため中止の判断は医師が慎重に行い、勝手にやめる事をしてはいけません。

以上からゼフィックスの特徴として次のような点が挙げられます。

【ゼフィックスの特徴】

・B型肝炎ウイルスの増殖を抑える作用がある
・副作用が少ない
・使用中にウイルスが変異し効かなくなってしまう事がある
・中止する際に肝機能悪化や肝炎が生じるリスクがある

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2.ゼフィックスはどのような疾患に用いるのか

ゼフィックスはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるB型肝炎ウイルスの増殖抑制

とても難しく書かれていますね。

これを読んだだけでは、「B型肝炎に使うお薬っぽい」という事は何となく分かりますが、具体的にどのような方が適応になるのかイメージが沸きにくいと思います。

ゼフィックスはB型肝炎ウイルスに感染しているだけで投与されるお薬ではありません。

適応となるのは、

  • B型肝炎ウイルス量が多い状態であり(B型肝炎ウイルスの増殖を伴い)、
  • B型肝炎を発症していて(肝機能の異常が確認された)、
  • 慢性化している(B型慢性肝炎)

時に使用できるお薬になります。

具体的にこれに該当する状態がどのような状態なのかを考えるために、まず私たちはどのようにB型肝炎ウイルス(HBV)に感染するのかを見てみましょう。

HBVは、何らかの原因によって私たちの血液中に侵入する事で感染します。感染する経路としては主に、

  • 垂直感染(産道感染)
  • 水平感染(性行為など)

があります。

垂直感染(産道感染)とは、母親から子供に感染してしまう経路になります。これはHBVに感染している母親が出産する際、子供が産道を通る時に母親の血液が子供の体内に入ってしまうと感染してしまいます。

水平感染は主に性行為などが原因になります。HBVに感染している方との性行為によって、血液がHBVに感染していない方の体内に入ってしまうと感染します。

しかしHBVに感染してもすべての人が肝炎になるわけではありません。身体の中にHBVはいるものの、肝炎が生じてない方もいらっしゃいます。

この状態(HBVに感染しているけど、肝炎を起こしてない状態)は、「無症候性キャリア」と呼ばれます。

HBVは肝臓に住み着いてしまうウイルスですが、HBV自体は肝臓を攻撃する事はほとんどありません。ではなぜ肝炎が起こるのかというと、HBVが体内に侵入してくると、私たちの身体の免疫システム(ばい菌などの異物を排除するシステム)がそれを感知しHBVを攻撃するからです。

この免疫システムがHBVを攻撃すると、HBVが住み着いている肝臓もダメージを受けてしまうため、B型肝炎が発症してしまうのです。

また免疫系の攻撃によってHBVをやっつける事が出来れば、一時的に肝炎が生じてもその後は「治癒(HBVが体内から排除された状態)」となりますが、中には免疫系が十分にHBVを排除できなかったり、免疫系が十分に機能せずにHBVを発見できない場合もあり、この場合は感染が慢性化してしまう事になります。

慢性化してしまうと、何年・何十年と長期間に渡ってHBVが住み着いている肝臓を免疫システムが攻撃し続けるため、肝臓が痛みやすく、肝硬変や肝細胞癌を発症しやすくなってしまいます。

このような状態に対してゼフィックスは投与する事が出来ます。

ゼフィックスは投与する事で、HBVの増殖が抑える事が出来ます。すると、免疫システムが肝臓を攻撃しにくくなるため、肝臓が痛みにくくなるのです。その結果、肝硬変や肝細胞癌を発症させにくくする事が出来ます。

では、ゼフィックスを投与できる3つの条件、

  • B型肝炎ウイルス量が多い状態であり、
  • B型肝炎を発症していて、
  • 慢性化している

はどのように判定すればよいのでしょうか。

現在B型肝炎ウイルスに感染しているのかどうかは、血液検査で判定する事が出来ます。

検査項目としては「HBs抗原」が現在のHBV感染の有無を調べる項目となり、これが陽性であれば、現在体内にHBVが存在すると考えられます。

また現在B型肝炎ウイルスが多い状態なのかどうかを判断するには、「HBV-DNA」「HBe抗原」を血液検査で確認する事で推定できます。

血液検査でHBV-DNAが高値であったり、HBe抗原が陽性だと、ウイルス量が多く活発に活動している状態であると考える事が出来ます。

次に肝炎を発症しているかどうかはどのように判断すればいいでしょうか。

HBVに感染していても必ず肝炎を起こしているわけではないため、B型肝炎を起こしているのかどうかは、血液検査の肝機能の項目を調べたり、超音波検査で肝臓を調べたり、あるいは生検(針を刺して肝細胞を採取する)などの方法があります。

血液検査の場合「ALT」という項目が1つの指標になり、B型肝炎ウイルスの存在が確認された上でこれが増加している場合(ALT>30)、肝炎を発症している可能性が高くなります。

このようなケースに対してゼフィックスは投与されます。

では、ゼフィックスは慢性B型肝炎に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

慢性B型肝炎にゼフィックスを投与して改善率をみた調査で、ゼフィックス投与により検査値が「改善」以上の結果となった率は、

  • HBV-DNAの改善率は78.5%
  • 肝機能ALTの改善率は71.2%
  • 肝臓の組織学的改善率は90.6%

と報告されています。

またB型肝硬変にゼフィックスを24週間投与した調査では、

  • HBV-DNA陰性化率は69.2%(プラセボでは0%)
  • ALT正常化率は46.2%(プラセボでは20.0%)

と報告されています。

3.ゼフィックスにはどのような作用があるのか

ゼフィックスはB型肝炎ウイルスの増殖を抑える作用を持ちますが、どのような作用機序なのでしょうか。

ゼフィックスの作用機序を理解するためには、そもそもB型肝炎ウイルスがどのように増殖するのかを理解する必要があります。

B型肝炎ウイルスは私たちの血液中への侵入に成功すると、血液に乗って肝臓に到達し、肝細胞の中に入り込みます。

肝細胞の中でB型肝炎ウイルスは、肝細胞のRNAポリメラーゼという酵素を利用して、自分のDNA情報を複写し、また自分が持っているDNAポリメラーゼという酵素によって複写したDNA情報から新しいDNAを合成します。

新しいDNAから新しいB型肝炎ウイルスが作られます。このような機序でB型肝炎ウイルスはどんどん増殖していきます。そして増殖したB型肝炎ウイルスは次々と肝細胞に感染していきます。

ではゼフィックスはどのようにしてこの増殖を抑えているのでしょうか。

ゼフィックスはB型肝炎ウイルスがDNAポリメラーゼを使ってDNAを複製する際に必要なdCTP(デオキシシチジン 5′- 三リン酸)という物質と似た構造を持っています。

いわばdCTPのニセモノというわけです。

DNAポリメラーゼはゼフィックスをdCTPだと思って取り込み、DNAを複製しようとしますが、ゼフィックスはdCTPと異なって、DNAを複製するために機能してくれません。

そのためゼフィックスを取り込んでしまったDNAポリメラーゼは、B型肝炎ウイルスのDNAを複製できなくなってしまいます。

その結果、B型肝炎ウイルスの増殖が抑えられるというわけです。

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4.ゼフィックスの副作用

ゼフィックスにはどのような副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。

ゼフィックスの副作用発生率は3.8%と報告されています。基本的には副作用は少なく、安全性に優れるお薬になります。

生じうる副作用としては、

  • 肝機能障害(AST、ALT上昇)
  • 頭痛
  • 倦怠感

などが報告されています。

また、稀ではありますが重篤な副作用として、

  • 重篤な血液障害(赤芽球癆、汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少)
  • 膵炎
  • 乳酸アシドーシス及び死亡沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)
  • 横紋筋融解症
  • 精神神経系:ニューロパシー、錯乱、痙攣
  • 心不全

が報告されています。

ゼフィックスは副作用でいくつか注意すべき事があります。

まず、長期間ゼフィックスの投与と続けていると、「YMDD変異ウイルスの出現」が生じる事があります。

これは、DNA ポリメラーゼのアミノ酸配列が「YMDD」から「YIDD」又は「YVDD」に変異してしまうという事です。これの何が困るかというと、このように変異してしまうとゼフィックスが効かなくなってしまうのです。

ちなみにMは「メチオニン」、Iは「イソロイシン」、Vは「バリン」の事ですので、変異ウイルスは本来メチオニンが配列されている部位がイソロイシンまたはバリンに置き換わってしまったウイルスになります。

ただしYMDD変異ウイルスは増殖能力は弱いことが知られています。

また注意点としてゼフィックスは途中で中止してしまうと、肝機能が悪化したり、肝炎が重症化する事があります。そのため、自己判断で勝手に中止しないよう十分に気を付ける必要があります。

主治医と相談し、投与終了の基準を満たすまではしっかりと続けるようにしましょう。

5.ゼフィックスの用法・用量と剤形

ゼフィックスは次の剤型が発売されています。

ゼフィックス錠 100mg

ゼフィックスの使い方は、

通常、成人には1回100mgを1日1回経口投与する。

と書かれています。

ただし腎機能が悪い方は、必要に応じてゼフィックスの量を調整する必要があります。詳しくは主治医の指示に従うようにしてください。

6.ゼフィックスはいつまで続けるのか?

ゼフィックスはいつまで服用を続ける必要があるのでしょうか。

ゼフィックスの服用を中止検討できる基準として、

(1)HBe抗原陽性の患者では、HBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョン(HBe-SC)が持続した場合

(2)HBe抗原陰性の患者では、HBs抗原の消失あるいはALTの正常化を伴う HBV-DNAの陰性化が6ヵ月以上持続した場合

が挙げられています。

この基準について詳しく説明します。

そもそも、中止する一番理想的な状況というのは、「体内からHBVがいなくなった時」です。これはHBs抗原の陰性化で確認できますが、ゼフィックスはHBVをやっつけるお薬ではなく、あくまでも増殖を抑えるだけのお薬ですので、これは容易ではありません。

そのため、完全にHBVが体内から排除されなくても、肝臓がダメージを受けるリスクが低いと判断されれば、ゼフィックスの中止が検討される事があります。

まずHBe抗原というのは、HBVの内部に存在する抗原です。この抗原が多く認められる(陽性)という事は、HBVが活発に増殖しているという事が出来ます。そのため、HBe抗原はウイルス量の多さを示す1つの指標となります。

HBe抗体とは、HBe抗原に対する抗体です。この抗体が出てくると、HBVの増殖が弱まっているという事が出来ます。

そして、HBe抗原陽性の状態からHBe抗体陽性の状態に切り替わる事を「セロコンバージョン」と言い、これはHBVの活動性が弱まっている事を表す指標になります。

このセロコンバージョンが持続していれば、HBVはおとなしくなっていると考える事が出来るため、ゼフィックスの中止を検討できます。

またHBe抗原が陰性であっても、必ずしもウイルスが弱まっていると断言はできません。HBe抗原が陰性でもHBVに感染している事が確認されており(HBs抗原が陽性)、HBV-DNA(HBVのDNA)が高値であったり、ALT(肝機能を表す検査値)が高値であればゼフィックスが投与される事があります。

このような場合は、HBV-DNAが検出されなくなったり、ALTが正常化した状態が続いており、かつHBs抗原が陰性になれば、HBVは排除できたと考える事が出来るため、ゼフィックスの中止が検討できます。

ただしいずれにせよ、急にゼフィックスを中止すると、肝機能が悪化したり肝炎を引き起こしたりする可能性があるため、中止後も定期的に血液検査などで肝機能評価を行う必要があります。

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